小林元の発言 (本会議)

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○小林元君 私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました武力攻撃事態対処関連三法案につきまして、内閣総理大臣及び関係大臣に質問をいたします。
 本題に入る前に、一点お伺いいたします。
 十七日、初の金融危機対応会議が開催され、りそなグループに対し公的資金の再投入を決定いたしました。これまで金融危機は絶対起こさないと再三繰り返してきましたが、これは正に経済無策の表れではないか。小泉総理、こうした経済有事を招いた責任を明らかにしていただきたい。
 民主党は、結党時に確認された基本政策について、シビリアンコントロールや基本的人権を侵害しないことを原則としながら、有事、危機に際して超法規的措置が取られることのないよう、関連法制の整備を進めることを宣言しました。そして、その後も機会あるごとに、我が国は有事における法整備が欠けており、緊急事態法制は是非とも整備されなければならない旨、一貫して主張し続けてきたのであります。
 しかしながら、昨年、政府より提出された有事関連三法案は、冷戦時代における北方脅威論、大規模上陸型侵攻を前提とした、いささか時代後れのものでございまして、さらに、事態認定における民主的統制の在り方が不十分であること、さらに基本的人権の確保に関する規定があいまいであることなどの問題がありました。
 このため、我々民主党は、緊急事態法制は是非とも必要であるが政府案は不十分であるとの立場から、真剣な議論を重ねてまいりました。すなわち、今日においては、上陸型侵攻の事態よりも、むしろ大規模自然災害や原子力発電事故、又はテロ攻撃やミサイル飛来などの事態の方がはるかに発生の可能性が高いのではないか、又は、これら緊急事態に際しては、国民の基本的人権が侵害されるおそれはないのか、さらに、緊急事態に際し、国会は一体どのような役割を果たすべきなのか、これらの点につき、真剣かつ熱心、具体的かつ前向きな議論を長時間にわたって重ねてきたのであります。
 御存じのとおり、我が民主党は既得権益に侵された自民党政治と日本の将来の行く末を案じる同志が大同団結を遂げた国民政党であります。多種多様な人材が集まることにより、その考え方がやや幅広いことも事実でございます。中には、人によっては我々のことを、悪意を持ってばらばらな政党だとやゆする向きもあります。
 しかし、私は思うのです。様々な考え方を持つ我々だからこそ、真剣かつ熱心な議論を尽くすことによって、本当に厚みのある真に国民が必要とする政策を作り出すことができるのです。既得権益にまみれ、官僚に依存し、政策論議を忘れた自民党には、これは不可能なことであります。そして、我々民主党こそが、政権担当能力がある責任政党として、国民に約束した責務を果たすことができるのであります。
 その結果として、我々は、緊急事態における原理原則を定めた緊急事態基本法案を取りまとめ、政府案への対案として国会提出するに至りました。そして、過日十三日、与党三党と民主党の間で、ここに議題となっている武力攻撃事態対処法案について修正合意を見るに至ったのであります。
 そこで、総理にお伺いいたします。
 戦後、長らく我が国では、とりわけ安全保障に関する考え方につき、与野党で鋭く対立をしてきました。しかしながら、今回、緊急事態法制につき合意するに至ったことは、我が国の安全保障の在り方を考える上で正に歴史的な出来事だと考えますが、いかがですか。その意義について総理はどのように認識しておられるか、御所見をお伺いいたします。
 さて、先日の合意、さらに、引き続き行われた党首会談において、緊急事態への対処及びその未然防止に関する基本法案の意義につき、政党間で真摯に検討し速やかに必要な措置を取る旨が確認され、また、衆議院の委員会質疑においても、総理から、必要という考え方は共有できるという前向きな答弁をいただいたと理解しております。これは正に我々が主張してきた点、つまり緊急事態において、国民の基本的人権を守ることが必要であること、国家権力の行き過ぎを防ぐ必要があること、そしてそれを担保するために基本法を制定する必要があることが世論にも広く認知された結果によるところが大きいと考えます。
 そこで、総理にお伺いしたい。
 この政党間合意に基づき今後政府が基本法を検討するに当たっては、今述べた点、すなわち国家権力の濫用、暴走を防ぎ、国民の基本的人権を守ることが立法の趣旨として第一に大切だと私は考えます。今後検討する基本法のあるべき姿について、総理は現時点でどのような認識をお持ちなのか、お答えください。
 さて、我々は、緊急事態法制の在り方を考える上で、人権侵害等の危険な対処措置が取られないようにするため、国会による適切な統制が図られなければならないと主張してきました。今回の与野党合意で、対処基本方針の終了につき国会の議決により可能とする旨が盛り込まれたこともその一環なのであります。
 そこで、官房長官にお伺いします。
 本法では、対処基本方針の策定につき閣議決定後速やかに国会の議決を求めるとありますが、この速やかにとはどのようなプロセスを意味するのでしょうか。民主的統制を適切に図るためには、閣議決定後、間髪を入れずに国会議決の手続をする必要があり、いたずらにそれが遅延されないような仕組みとするため、事前にそのプロセスにつき周知しておく必要があると考えますが、いかがですか。
 次に、基本的人権に関連してお伺いいたします。
 先日の合意において、従来の政府案の記述に加え、憲法十四条、十八条、十九条、二十一条の規定を最大限尊重する旨が加筆され、基本的人権の確保を重要視する我々の主張が取り入れられることになりました。
 もとより、我々民主党は、ここで規定された条文以外の基本的人権、例えば学問の自由や信教の自由、裁判を受ける権利などについても、平時、有事を問わず、最大限尊重されなければならないと考えているところであります。この点につき政府はどのようにお考えになりますか、官房長官の御見解をお伺いします。
 さらに、本法案には、地方公共団体や指定公共機関が実施すべき対処措置につき、これが実施されない場合は、内閣総理大臣は自ら又は所管大臣を指揮することによって当該措置を実施又は実施させることができるとされています。これについて、内閣総理大臣が例えば警察や自衛隊などの実力部隊を用いることによって当該実施措置の実行を迫ることは、憲法十八条に定める意に反する苦役の禁止に抵触することだと私は考えます。
 そこで、官房長官にお伺いします。
 政府は、このような手段により対処措置の実施を強制することを想定しているのでしょうか。仮に想定しているのであれば、これは憲法上許されるものではないと思いますが、いかがでしょうか。
 さて、本法案には、事態対処法制に関するプログラム規定が設定されています。また、先日の与野党合意では、二年以内に目標として整備とされている部分につき速やかにと修正するとともに、国民保護法制について、衆議院の特別委員会における附帯決議に一年以内を目標に実施との文言が盛り込まれました。しかしながら、国民保護に係る措置を実際に実施することとなる地方自治体を中心にこの国民保護法制の内容に関する懸念が高まっています。
 政府は、既に都道府県知事を始めとする地方自治体に対して説明を行っているとしておりますが、今後一年以内を目途に行われる法制化作業に当たっては、自治体の意見をダイレクトに反映させる機会を更に強化させる必要があると考えますが、いかがですか。今後の法制化作業に関し、地方自治体への説明と意見反映の機会につき、その基本的な考え方をお答え願います。
 さらに、事態対処法制に関連して質問いたします。
 本法案第二十一条二項に、「事態対処法制は、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施が確保されたものでなければならない。」とされております。しかしながら、例えば文民保護、非人道的行為の処罰、捕虜の処遇等を定めたジュネーブ条約について、その関連する国内法の整備はいまだに行われておりません。早急に法整備を行う責務が政府にはあると考えますが、いかがですか。その具体的な見通しにつきまして、外務大臣の答弁をお願いいたします。
 次に、対処すべき緊急事態の範囲に関連して、緊急事態への対処に資する組織の在り方について質問いたします。
 今回の法案では、いささか時代後れの事態が想定されておりますが、このような準備も必要でありましょう。しかし、わずか八年前の一九九五年の出来事を思い起こしていただきたい。かつて世界一安全な日本で何が起きましたか。
 その一つは、言うまでもなく阪神・淡路大震災であります。何千名もの方々が崩壊した家屋の下敷きとなり、炎に包まれている中で、政府には十分な情報すらも伝わらず、いかに無力な存在であったかを忘れてはなりません。極めて得難い貴重な教訓を我々は得たはずであります。
 そして、その三月、東京であのオウム真理教が地下鉄サリン事件を引き起こしました。世界一の大都市で一般市民を標的にした無差別テロが行われる恐ろしさを私たちは身をもって見せ付けられたのであります。
 確かに、阪神・淡路大震災の後、災害対策基本法の改正、内閣危機管理監の設置、初動対処における指揮命令系統の強化など、一定の改善は図られました。しかしながら、これら緊急事態につき対策本部を設置するに当たっては、各省庁から派遣された寄せ集めの人員が中心になるなど機動性に欠ける面があり、さらに、救援、復旧、復興など住民保護のための措置の実際は依然として各省庁が行うことから、相互連絡の不都合や機能の重複など行政の縦割りの弊害が指摘されているところであります。
 そこで、総理に質問いたします。
 民主党は危機管理庁設置を求めたのに対し、先日の党首会談における合意で、本法案の附則に、政府は、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態へのより迅速かつ的確な対処に資する組織の在り方を検討するとの文言が追加されました。この点を踏まえてお答えいただきたい。
 総理は、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす事態について、どのような事態の発生が現在最も切迫して想定されるのか、そしてまた、その事態の発生について的確に対応するため、現行の政府組織に欠けているのはどのような点にあると認識しているのか、そのためにどのような組織の在り方が望ましいと考えておられるのか、お伺いいたします。
 最後に、我が国が、国際平和及び安全のため、我が国の積極的かつ恒常的な取組が直ちに我が国の平和の確保につながることから、国際連合を中心に各国との相互理解の増進を図り、国際紛争の未然防止に積極的に取り組むべきことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 115615254X02420030519_011

発言者: 小林元

speaker_id: 25484

日付: 2003-05-19

院: 参議院

会議名: 本会議