榛葉賀津也の発言 (本会議)

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○榛葉賀津也君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました川口順子外務大臣に対する問責決議案に賛成の立場で討論を行います。
 川口大臣は、前任の田中眞紀子大臣が数々の問題ある言動で物議を醸し出し更迭されたことから、元通産官僚としてその手腕を買われ、伏魔殿と言われた外務省の抜本的な改革を期待されていました。
 正直、私は、かつて、川口大臣のパレスチナ問題に対する理解の深さを評価し、中東外交を発展させる可能性に期待をしていました。外務省改革においても、省員の信頼を集めながら尽力していると信じ、JICAの総裁人事を始め、必ずや抜本的な改革が行われるに違いないと信じたこともありました。
 しかし、それが、イラク攻撃前後からの大臣の姿勢は、余りにも外務省的、官僚的な発想で、すべてにおいてアメリカ追随、アメリカを正当化するためだけの答弁に全知性、全精力を傾けているとしか国民には思えないのであります。
 外務省を変えなければならないはずの大臣までが迎合してしまった外務省的発想は、我が国の外務省が戦後六十年近くアメリカによるあめとむちの対日外交を最も身近に体験したことからくるものにほかありません。しかし、その結果として、国連中心主義の日本外交の独自性を根本から覆してしまったと言っても過言ではありません。
 アメリカとの同盟関係は無論大事であります。日本が自らの戦力を持たない以上、憲法の精神からも、日米安全保障の観点からも、盾と矛の役割で国の安全保障を論ずることは重要であります。しかし、だからといって盲目的にアメリカの外交戦略に追随することが日米の信頼関係を強化することには決してならないのであります。今回の日本の対イラク政策が正にその顕著な例であります。
 三月二十日に開戦したイラク戦争は、米英軍の死者が百五十人以上を数え、日数、被害者ともにあの湾岸戦争をはるかに超える泥沼化した様相を呈してまいりました。
 加えて、日本政府が戦争を支持した最大の原因である大量破壊兵器でさえも、いまだにそのかけらも発見されていないばかりか、米英両国で情報操作の疑惑に火が付き、自殺者まで出ている有様であります。ニジェールからのウラン購入計画問題の捏造発覚や、七月十一日、新根拠なしの開戦と、新聞報道などを見れば、日本が大義と説明されてきた証拠は正にずぶずぶであります。
 パウエルが衛星写真をスライドで披露までし、千二百キロ以上の長射程ミサイル用でイラクが完成した最大級のものとしてきたエンジン実験台、テストスタンドは実は全くの未完成で、使用不可能なものでありました。移動式の生物化学兵器の研究施設、これは全く見付かりません。地下に隠されているとした施設も見付かりません。距離五百キロ以上飛行可能な無人偵察機、いわゆるUAVも見付かりません。
 そもそも、差し迫った脅威に対する攻撃というのがアメリカのイラク戦争開戦の主張であり、日本もそれを支持したはずでありました。脅威は全然差し迫っていなかったのではないでしょうか。イラクには大量破壊兵器の有無を積極的に明らかにしないと責め、他方、アメリカの劣化ウラン弾使用については目をつぶる外務大臣の姿勢には疑問を持たざるを得ません。この事実は、あなたたちが支持をしたアメリカのイラク攻撃の大前提を揺るがす大きな問題であり、我々はこの重大な過ちから目を背けることはできないのであります。
 今、イラクにおいて日本ができること、日本にしかできないことは、アメリカの顔色をうかがい、自衛隊をイラクに派遣することではなく、アメリカとイラク国民との間にできてしまった溝を埋めることにあります。その役割は欧米諸国にはできないものであります。同じアジアの一員として、またアメリカによる敗戦、占領行政を経験した国として、また核兵器廃絶を願う平和主義国家として、我々日本にしかできない役割があるはずであります。
 このような品格ある我が国の国家としての哲学を初めから全面的に打ち出すことが、なぜあなたにはできなかったのでしょうか。そして、なぜ今もなおこのようなイラク特措法を無理やり国民の反対を押し切って通そうとするのでしょうか。
 我々民主党は、イラクの復興支援には全力を傾けるべきだと主張しています。しかし、法的にも現実的にもあらゆる無理を重ねて自衛隊派遣ありきのこの法案には断固反対するものであります。
 イラク支援の方法はごまんとあります。イラク周辺国やアジア諸国、国際機関やNGO、そして何よりイラク国民自身などとの共同支援の枠組みを考えただけでも、何通りもあるではありませんか。
 今日までの審議で明らかになったのは、法案自体もさることながら、その答弁内容の余りのいい加減さであります。非戦闘地域というフィクションをつくり上げたばかりか、そのありもしない非戦闘地域に自衛隊を派遣するなどということは、国を守ろうとする自衛官を愚弄する極めて不誠実な政治判断だと言わざるを得ません。
 イラクはいまだ戦争状態にあります。アビザイド・アメリカ中央司令官は、十六日の国防省の会見で、我々に対して古典的なゲリラ戦が行われていると述べて、抵抗が相当過激化されている、計画化されていることを示唆しました。これにラムズフェルド国防長官は反論をしましたが、それに対し、アビザイド中央司令官は、現状はどう表現しようとも戦争状態にあることは間違いないと述べ、この事実を明らかにしました。大臣はこの事実と中央司令官の言葉をどう受け止めるのでしょうか。
 イラクには、現在、この法案に照らすと三つの地域があります。戦闘地域、非戦闘地域内の安全な場所、非戦闘地域内の安全でない場所の三つであります。大臣には地域の現状を見極めるという重大かつ困難な責任がありますから、是非、大臣自らがイラクのこの三種類の地域へ足を運んでいただきたいと思います。
 政府は、今月末にも自衛隊派遣に向けた調査団の第一陣をイラクに派遣し、治安状況を調査するとしていますが、調査団も大臣の見解もこの法案も、すべてが順番が逆であります。まず現地を調査して、自衛隊派遣が可能かどうか、新法が必要かどうか、見極めるのは当然であります。加えて、この法案を英語とアラビア語に翻訳し、現地で活躍する米英兵と現地で苦労をしているイラク人にその翻訳した法案を見せ、この内容を、いかなるものか、使用可能かどうか、現地のイラク人や米英兵に、吟味をし、意見を聞いたらどうでしょうか。
 今回のこの法案は、実際は政局絡みで自衛隊派遣は総選挙の後にしようとたくらむなど、与党の対応も党利党略の支離滅裂なものと断ぜざるを得ません。
 残念ながら、川口大臣が損なってしまった国益は対外的なものだけではありません。それは、国民の中に漂うこの無力感であります。結局、日本はアメリカの言いなりなのか。日本国憲法、平和憲法で武力による解決を否定したはずなのに、占領軍と一緒に活動しなければいけないのかというあきらめであり、日本人としての誇り、アイデンティティー、自立性を失ってしまった失望感であります。政府の国家としての理念のなさ、品格のなさ、そして歴史観のなさに改めて絶望感と怒りを覚えます。
 憲法の前文は、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」。この人類にとっての命題に対し我々日本が自ら出す解答が、イラクを攻撃したアメリカと一緒に行動するためにイラクに自衛隊を派遣します、どうしてこのようになるのでしょうか。
 十数年前、あの湾岸戦争当時、私はイスラエルにおりました。アラブやイスラエルの友人たちと生死をともにした一人として、国連安保理決議六七八、六八七には武力行使を正当化する何の根拠もないことを改めて訴えたいと思います。これはあくまで当時のクウェート侵攻の事態を収拾するために採択された決議であり、その後の国連安保理決議一四四一も対イラク攻撃を正当化するものでは到底あり得ないのであります。
 私はイラクのフセイン政権を決してかばうものではありません。が、かといって、フセイン憎しで、安保理決議を歪曲化し、恣意的に解釈して攻撃することとは全く別問題であると強く訴えたいと思います。そして、このような法解釈は、世界の安定を揺るがし、近い将来、我が国を含め、必ず我々自身の首を絞めることになることを改めて大臣に警告をしたいと思います。
 大臣、あなたの言動は、国民の目からは、小泉総理の感情的な答弁、非論理的で乱暴な発言に対して後ろから冷静に援護射撃しているとしか映らないのであります。大臣が小泉総理を弁護すれば弁護するほど、日本にとって最悪の事態がそれだけ長引いてしまうことにあなたはいつになったら気付くのでしょうか。
 適材適所、重い言葉であります。私は、前任者に比べ、大臣の専門性や人間性を評価しておりました。しかし、今回のイラク問題への対応ばかりか、北朝鮮情勢、特に拉致事件に対する消極姿勢と大臣が犯した外交における大失態は、我が国の国益を根本から損ね、国際社会における日本の地位を失墜させる結果をもたらしたことは明確であります。
 これ以上、川口大臣に日本外交を担う外務大臣の重責を任せるわけにはまいりません。日本外交の将来を考えると、一刻も早く小泉政権に終止符を打つ、そのためには川口大臣の辞任が最優先であることを改めて強調し、問責決議に対する私の賛成討論を終わります。(拍手)

発言情報

speech_id: 115615254X04320030724_007

発言者: 榛葉賀津也

speaker_id: 9438

日付: 2003-07-24

院: 参議院

会議名: 本会議