山口富男の発言 (憲法調査会)
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○山口(富)委員 私は、アメリカとメキシコでの調査に参加しましたので、感想の一端として二点述べたいと思います。
まず第一点なんですが、今回の調査は、アメリカの先制攻撃戦略がイラク戦争という形で発動された直後でしたから、日本でも世界でも、憲法や国連憲章など基本法とのかかわりが非常に鋭く問われる中での調査になったと思います。そのために意見交換の主題の一つも、ごく自然な形で、アメリカの単独行動主義に対して世界はどう臨むのか、その際、各国は、法規範としての足場をどこに見出すのかなどに置かれるようになったと思います。
カリフォルニア州立大学バークレー校での懇談では、ブッシュ政権の対外政策への批判が相次いで出されましたし、メキシコでは、ソラーナ元外相がアメリカの一国主義への強い懸念を表明されていました。また、メキシコですけれども、セラーノ教授からは、ヘゲモニー主義に同調しないメキシコの憲法原則と同国を取り巻く歴史状況について説明を受けました。
先ごろの国連総会で、アナン事務総長や各国からの批判の言明に見られますように、アメリカの先制攻撃戦略は国連憲章に反しており、国際協調を揺るがすものになっております。
日本は憲法で恒久平和の原則を打ち立て、九条では、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」した国として、国連憲章に反する事態を黙視しない明確な立場を持っております。この原則からいっても、私は、イラク戦争への自衛隊の派遣は行うべきではないと考えております。
先ほどの会長の報告でも紹介されましたが、私は、バークレー校での発言で、憲法九条を守り抜くことが世界とアジアの平和と安定にとって極めて重要だという意見を述べました。あの会場ではアジアの留学生たちから、意見表明後、憲法九条を大事にしていただきたいという激励を多数私はいただきました。このことは私にとって、世界とアジアの願いを実感する得がたい経験になりました。
以上が感想の第一です。
感想の第二ですが、各国の憲法は、当たり前のことですけれども、その国の歴史と文化、政治的経験を踏まえたものであると同時に、二十一世紀に通用する国際的な普遍性を持っています。このことも今回の調査で認識を新たにいたしました。
アメリカでは、議会でも司法でも、徹底した三権分立の生きた姿を、短期間ではありましたけれどもかいま見ることができましたし、またカリフォルニアでは、あの州が独立後、連邦に参加したということを背景にして、州憲法の独自の意義が強調されていたように思います。
また、メキシコでは、ワイマール憲法に先駆けて社会権、労働権の保障が明記されましたが、これを生み出すには二十世紀初頭のメキシコ革命に至る波乱の歴史があったと、詳しい説明を受けました。またセラーノ教授からは、メキシコでは、憲法で定められた法規範が実現していない場合も、規範を変えるのではなく、そこに近づく努力をすることが憲法に対する態度だということが述べられたことも大変印象的でした。
このように、私としましては、今回の調査では、それぞれの国が憲法と向き合い、また世界と自国の現実と向き合いながら憲法問題について考えている、また事に当たっている、そのことを痛感させられる調査になったというふうに思います。
以上二点、感想を述べまして、私の報告としたいと思います。