古屋圭司の発言 (憲法調査会)
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○古屋(圭)委員 自民党の古屋圭司でございます。
昨年十一月の総選挙後初めての委員会でございます。早速、自民党を代表して発言をさせていただきます。
今週から国会が始まっておりますが、この国会の主要なテーマは、安全保障、社会保障、地方分権、こういったテーマが大きな柱でございますけれども、憲法を論じる視点からも、このテーマは重要な柱をなしています。
そこで、きょうは、この三つのテーマに関して意見を述べさせていただいた上で、今後の憲法調査会のあり方、進め方について意見を述べさせていただきたいと思います。
まず安全保障でございますが、冷戦終えん後、世界規模の武力紛争の可能性は遠のきましたが、一方では、やはりグローバル化の負の遺産として、地域紛争の発生だとか大量破壊兵器の拡散、また九・一一に象徴されるテロの脅威というものが出現しました。また、北朝鮮による拉致問題であるとかあるいはミサイル発射問題、核兵器開発問題は、我が国の安全にとっても差し迫った脅威であります。
九条は、国の主権や国民の生命財産を守るための国の基本的な責務を定めたものでありますけれども、しかしこの九条をめぐりましては、これまでに、一体我が国は自衛権を保持しているのか、自衛権の行使として認められる範囲はどこまでなのかといった視点で永遠の議論が繰り返されてきたわけでございます。内閣法制局の集団的自衛権の権利はあるが行使はできないという解釈の上に、我が国の安全保障やあるいは国際協力に関する一連の法律が積み重ねられてきたわけでございまして、その結果、九条をめぐる議論というのは、非常に国民にとってわかりづらい、難解なものになってしまい、いわば神学論争ともやゆされているわけであります。
一方、現行憲法は、六十年近く一度の改正もされておりません。時の変化に対応できなくなっており、現実からかけ離れているということも否定できないと思います。
日本の安全と発展というのは、やはり世界の平和と安定が不可欠の前提条件だと思います。その観点から、我が国は当然のことながら国際的な平和創造活動に積極的に参加をすべきであります。しかし、むしろ逆に、自国の防衛に必要な武力行使の限度を定めるはずのこの九条の存在が理由となって、国際貢献に支障を来しているというのが実情だと思います。
以上の状況を踏まえまして、九条並びに前文の改正に向けて、次のような提言をしたいと思います。
まず第一、九条一項の侵略戦争放棄の理念は今後とも堅持をする。
第二点、国民の生命財産を守るという国の責務を果たす意味でも、また一国平和主義の批判から脱却する意味でも、国際社会の実情にそぐわない二項、これは戦力の不保持及び交戦権の否認でありますけれども、これを削除。その上で、個別的であるかあるいは集団的であるかを問わず、自衛のための権利を保持することを認める、そしてこれを行使できるということを明記いたしまして、国の防衛と国際貢献を担う主体として自衛隊の憲法上の位置づけを明確にする、こういうことであります。
第三番目は、大規模な災害であるとかあるいは侵略等の非常事態においては、首相への権限集中、そして人権の保護とか制約に関する非常事態条項というものを新たに設けるということが三番目であります。
また、この九条の改正に当たっては、前文との整合性を保つという必要もございますので、前文の見直しを行う必要があるということはもう申し上げるまでもありません。特に、国際貢献に積極的に取り組む姿勢を内外に示すため、国際社会の平和と繁栄の実現に日本が積極的に貢献するということを明記すべきだというふうに考えます。
以上が安全保障についての提言です。
二番目でございますが、社会保障についてでございます。
社会保障制度の中で中核をなすのは公的年金制度でございますけれども、憲法二十五条の生存権をいわば具体化する重要な制度でありまして、昭和三十六年に国民皆年金ができまして、これによって国民の安心と国の発展を大いに下支えをしてきたということは、もう異論のないところであります。
しかし今、国民は、老後の生活だとか年金に大変不安を抱いておりまして、将来に対するこういった不安というものが経済の沈滞化の一因となっていることは非常に残念なことであります。そういった意味で、年金制度改革というのは喫緊な政治課題であることは、もう申し上げるまでもないことであります。
この年金改革の推進に当たって、まず、国民一人一人がみんなで国を支えるという意識を持つ、これが重要だと思います。やはり、国民は国家という共同体の一員であるわけでありますので、お互いに支え合い、応分の義務、負担を果たすことなくして、共同体も個人の生活も成り立たないわけであります。したがって、年金制度維持のためには、このみんなで支え合うという理念に基づいて、世代間で公平な負担を担うという意識が必要であります。
しかし、一方では、その負担増ということによって現役世代に過分な負担を強いるということになりますと、勤労意欲が失われ、結果として経済の活力が喪失するようなことがあっては、これは本末転倒でありますので、そこで、例えば保険料の設定などの具体的な検討を行うに当たりましては、やはり国民負担率というのが大変重要な意味を持つと思います。したがって、憲法の改正の議論に当たりましても、この国民負担率の問題について、国の財政との関係において徹底的な議論を行った上でそれを位置づけていく必要があるんではないかというふうに思います。
次に、三番目の地方分権に関して発言をさせていただきます。
地方自治に関する条文は、御承知のように九十二条から九十五条でございますけれども、全体の構成から見るとやや迫力不足であるということは否めないと思います。
九十二条に定める「地方自治の本旨」というのは、それぞれの地域が、歴史、文化、伝統ある独自性を発揮して、地域の自主性あるいは自立性を高めて、多くの住民の協力と参加によって個性豊かで活力に満ちた地域づくりをする、こういうことだというふうに理解をいたしておりますけれども、この地方自治の本旨に基づく地方自治を進めるためには、まず、国の関与というものを縮小して地方の権限と責任を大幅に拡大するということは、これは不可欠であることだと思います。
したがいまして、財政面においては、できるだけ自前の財源を地方に付与する、補助金の削減、縮減を図る、地方交付税のあり方も自主性を重視するように改めていくということが重要だと思います。ということは、地方公共団体の自己責任、自己決定の原則が徹底をされるということでありまして、このことは、真に住民本位の行政サービスの提供につながるということが大変期待されるわけであります。そういった視点から現在国会においても議論しておりますし、また、取り組み始めました国庫補助金・負担金の廃止・縮減、基幹税の充実を基本とした税源移譲、地方交付税の見直し、いわゆる三位一体改革をまず徹底的に進めるということが大前提だと思います。
その上で、明治維新の廃藩置県以来の地方の形の創造とも言える道州制というものをやはり将来は目指していくべきでありまして、憲法改正の議論に当たっても、このことをしっかり反映させていく必要があるんではないかというふうに思っております。
以上が地方分権についてでございます。
残された時間、わずかでございますので、最後に、この憲法調査会における議論の進め方について申し上げたいと思います。
この調査会においては、一昨年、小委員会ができまして、個別の論点についていろいろな調査を行ってまいりました。残された論点についてこの国会で徹底的な調査を行いまして、それを踏まえて、やはり各党の憲法に対する具体的な考え方というものを早急にこの調査会の場に提示して、それを土台に議論していく必要があるのではないかと考えております。
自民党は、来年結党五十周年を迎えますが、小泉総理・総裁も指摘をしているように、平成十七年に新憲法草案をまとめる方向で、今党内でも活発な議論を進めておりまして、各党においても具体的な憲法改正の案について議論を進めていくということをぜひ期待したいと思います。
この調査会の活動期間はおおむね五年間ということなので、もう残された時間は多くありません。そこで、最終報告書において方向性を示すことができるように、積極的、精力的に議論を積み重ねていっていただきたいと思います。
また、本調査会が最終報告を提出した後ですけれども、やはり、議案提出権を有する機関というものを早急に設置して、憲法改正の発議に向けてさらに議論を深めていくべきだと考えます。
また、今会長から指摘もありましたように、憲法改正について定めるいわゆる九十六条の規定、これを具体的に実施するための法整備がなされていないということは、いわば立法府の不作為に当たるとも言えますので、憲法改正のための国民投票法案等々、関連法案を直ちに整備する必要があるというふうに考えます。
結びに当たりまして、やはり、二十一世紀という新しい時代にふさわしい、世界に誇るべき国民のための憲法、この制定に向けて早急に議論を進めて、合意形成を図っていくべきだと考えます。
以上をもって私の発言にかえさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)