土井たか子の発言 (憲法調査会)
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○土井委員 社民党の土井たか子でございます。
従来、この憲法調査会に私は属する希望を持っておったんでございますけれども、党の役職にございまして、どうも党の方の会議とこの時間が一致をいたしておりますために憲法調査会に出席することができませず、前回までは断念をいたしておりました。改めまして、これからメンバーに加えていただきますので、どうかよろしくお願いをいたします。
今、課題は山ほどあるんですけれども、やはり最大の政治課題というと、イラクに対して、自衛隊が武装して、派兵と申し上げていいと思いますが、いよいよこれが決められて具体化するという国の主権のありよう、国家主権にかかわる問題としても大変重大な事柄が、目下、一番注目を浴びておりますし、憲法問題としても何といっても一番大きな課題だと私は思います。
きょうは、その問題を申し上げて、そして、あと、改憲について、既に改憲案を二〇〇五年には具体化したいというふうなことが自民党の方からも出されておりますから、改憲をめぐる基本的な認識をどういうふうに考えたらいいかということを、私自身の考えとして申し上げさせていただきたいと思うんです。
昨日から内閣総理大臣の施政方針演説に対して代表質問が始まりました。そのトップを切って民主党の菅代表が質問の冒頭に聞かれたのも、このイラクに対しての自衛隊の派遣の問題です。憲法に対して違反しているということを非常に明確にきのうは述べられておりましたけれども、それに対して、総理大臣の御答弁は、違反していないとおっしゃるわけですね。既に内閣でこの基本計画に対して閣議決定がなされた後、記者会見で説明をされた節にも、憲法の前文のある部分を読み上げられて憲法に矛盾しないということを言われておりました。施政方針演説の中も同じ箇所を取り上げて、憲法に違反しないと言われておりました。
けれども、これを聞いて、果たして国民のどれほどの皆さんが納得なさったか、私はクエスチョンマークと思っております。前文のすべての箇所を読み上げられたわけじゃないんであって、後半部分の一部、それは、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という部分ですね。ここを取り上げて言われたわけです。しかし、この前半部分と、そしてあと半分の部分というのは一体ですから、憲法の前文のある部分だけというのは、いかにもこれは作為的だとしか言いようがないと私は思うんですね。
しかも、この前文を受けて戦争放棄を掲げた九条というのがあるわけですから、九条もあわせて解釈することが当たり前だというのが、大体のところ、その学界における通説だと申し上げていいと思うんですよ。
しかし、とうとう、九条に対しては聞かせていただくことができていないんです。九条に対しての解釈、九条に対しての認識というのがお聞かせいただけていないんですね。
改めて九条の趣旨というのをここで確認しておきたいと私は思うんです。
前文で、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることがないようにするということを決意して、この憲法が制定されているわけですが、つまり、戦争というのは、ゲリラとか個人的なレベルの戦争もありますけれども、少なくとも、フランス革命以降見てみますと、各国の間で起こった戦争というのは、国家という主体がかかわってきたと申し上げて大きく間違っていないと思うんです。国家は抽象的な概念ですから、戦争遂行主体を政府として考えると、日本国憲法の前文でも、戦争を遂行する主体は政府ということを明確に意識しているわけですね。日清、日露、日中十五年戦争、アジア太平洋戦争、これを含めまして、日本政府が直接戦争を遂行する主体であったというところが認識されているわけで、その反省を込めて、日本国憲法前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」というこの文言がここに書かれていると思うわけです。
けれども、この部分は、前文の部分を先ほどもつまみ読みとおっしゃいましたけれども、言われる中からは外されているんですね。平和憲法という由来からすると、この前文のこの部分を受けた形で第九条は、戦争しないということを条文ではっきり明確化しているわけであって、この点は、認識の上では欠かすことができない問題だというふうに私は思っております。
そうして、この第九条をめぐる問題から忘れてならないのは、一九五四年に今の自衛隊法と防衛庁設置法、二法が国会で立法されましたが、これを採決するときに、参議院で国会決議がつくられています。鶴見祐輔さんが提案趣旨説明をされているわけですけれども、この決議の名前は、「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」なんですね。中身を読んでみますと、ただいまも全くばっちりというふうに申し上げていい中身だと私は実は思います。「現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。」という中身なんです。
戦後、日本にいろいろと新しい方向転換を示唆するがごとき要素を含む問題も出てきているけれども、自衛隊出発の初めに当たって、その内容と使途を慎重に検討して、我々が過去において犯したごとき過ちを繰り返さないようにすることは、国民に対して我々の担う厳粛なる義務であると思うのでありますという前置きがございまして、一番のこの決議の中で問題になるところだけを簡単にして読んでみます。
どういうことが言われているかというと、「この日本国民の平和に対する希求は外国の指導に原因するものでもなく、又一時の流行でもありません。」「然るにこの自衛隊という文字の解釈について、政府の答弁は区々であつて、必ずしも一致しておりません。この間、果して思想の統一があるか、疑いなきを得ないのであります。その最も顕著なるものは、海外出動可否の点であります。」したがって、海外に出動するかしないかということが、一番のやはり焦点になったということがまず申し述べられた後に、「我が国の場合には、自衛とは海外に出動しないということでなければなりません。如何なる場合においても、一度この限界を越えると、際限もなく遠い外国に出動することになることは、先般の太平洋戦争の経験で明白であります。それは窮屈であつても、不便であつても、憲法第九条の存する限り、この制限は破つてはならないのであります。」と非常にはっきりこれは申し述べられている国会決議なんです。
この国会決議は無効ではありません。ただいまも有効でございます。したがって、この決議からすると、ただいまのイラクに対しての自衛隊の派遣というのは、憲法の第九条からしても違反である。これははっきりしていると思うんですね。
しかし、今、現に改憲ということを問題にされている方々の改憲論というのを見ますと、これは、憲法に則して状況を動かしていく、つくっていくということではないのであって、むしろ、憲法に違反した事実というのが先行させられることによって、それに合わせて憲法を変えるという側面なんですね。仙谷さんがさっきおっしゃったとおりであると私は思っています。為政者がこのことによって解釈をどんどんどんどん広げていけばいくほど憲法の形骸化が進む。形骸化が進むにつれて、その乖離をどのように調整するかというときに、憲法に則して事実を改めるとか改善するという方策をとることをサボタージュして、憲法に違反した事実に合わせて憲法を変えるという側面が、改憲論の中ではその出発点としてあるのが現実の問題でございますから、私は、そこのところを憲法の改正とは言わないと思うんです。
改正というのは、正しく変えると書きます。したがって、中身からすれば改善されるということでなきゃならないわけで、それでは、今の憲法に違反している事実に即して憲法を変えるということは、どう言ったってやはり改悪としか言いようがないと私は思うんですね。
改善するということに対して、憲法は九十六条で改正という言葉を使っているわけであって、改悪が具体的な中身になっていることに対して、これを改悪すると改憲論者の方々はおっしゃいません。すべてこれを改正とおっしゃるからややこしいんであって、改悪である実態に対して改正と言うのは間違いだと私は思っていますから、その辺が非常に大事な問題だと思っています。