棚橋泰文の発言 (憲法調査会)
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○棚橋委員 私の方からも、地域安全保障という観点から少し意見を述べさせていただきたいと思います。
私ども、この議論をするに当たって二つの本質を忘れてはいけないと思っておりまして、第一は、日本国憲法は、ある意味では本当に世界に冠たる高邁な理想を掲げた。二度と、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起きることのないようにするということを前文に掲げ、また憲法九条においては、これまた皆様方御承知のように、国権の発動としての戦争を、永久にこれを放棄する。そして、そういう観点からこの国の平和主義を世界に発信し、曲がりなりにも戦後五十九年、我が国は平和であったという事実をまず私どもは深く認識すべきだと思っております。
しかし、一方で、この憲法ができたときの前提条件、プラスの面とマイナスの面があったでしょうが、米ソの冷戦構造の中での資本主義陣営に属している中で、例えば日米安保条約のように片務的な条約であっても、我が国の防衛が基本的に担保されたという状況が非常に流動化してきて、そして地域紛争が起きやすくなっている状況になっていること、あるいは、残念ながら、軍事的な技術が進歩して、我が国の近くでも地政学的なリスクを抱えるような状況になったこと、こういう中で、我が国の国益をどういうふうに守っていくかということから私は改めてこの安全保障問題というのは議論されるべきだと思っております。
その中で、当然のことながら、いわゆる集団的安全保障、これに踏み込まなければ我が国の安全は基本的に守れないんではないかという意見も当然一つの理解をしなければいけない側面があるとは私は思いますが、しかし、今楠田委員のお話にもございましたように、国の安全というのは単に軍事面においてのみ守られるものではなくて、むしろ、本来、政治、外交、そしてさらには私どもの経済、生活に一番密着する経済的な、ある意味では運命共同体をつくるという観点からも私はこれは十分考えていけるんではないかと思っております。
FTAの問題なんかはまさにその最たるものだと思っておりますが、私どもは、この二十一世紀の国際関係が流動化する中で、日本の安全保障、日本国民の生命、財産を守るにはいかなる方法が一番効率的で、なおかつ私どもが掲げてきた平和主義というものを侵すことがない方策であるのかということをまず虚心坦懐考えて、そして、当然のことながら、憲法九条を柱としてきた我が国憲法の議論の中においては、まず平和主義を大原則とする、そして、流動化する国際関係の中で、経済面あるいは外交、政治面も含めた地域安全保障を考えていく、そしてその中で、国際状況がどうしてもこれを許さないのであれば集団的自衛権の議論もやっていくというのが私は筋ではないかと思っております。
私は、集団的安全保障の議論を否定するものではございませんし、これはやはり虚心坦懐議論をすべきだと思っております。しかし、安易にこちらに走るべきではなくて、この国の国益を守るためには、現状の国際社会の現実を認識した上で、どの方法がまずベスト、ベターなのかということを虚心坦懐議論すべきでしょうし、軍事面ばかりにやはり物を考えずに、今楠田委員のお話にもございましたように、例えば外交、政治面における国際的な枠組みの強化、そして何よりも、意外とこれがきいてくると私は思っておりますが、経済面における国際的な連携、あるいは運命共同体としての何らかの枠組みの強化あるいは枠組みをつくること、こういった視点から考えていくべきだと思っております。
以上でございます。