下村博文の発言 (憲法調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○下村委員 今回は、特に憲法九十八条がポイントになるというふうに思います。第一項の中で憲法は最高法規であるという規定がされており、また、第二項では国際協調主義に基づいて日本も条約あるいは国際法規についてそれを遵守する必要がある、この二つの規定があるわけでございます。
当初、日本国憲法ができた直後においては、条約優位説が学説の中では主流であったというふうに思いますが、歴史的な経緯の中で、現在においては憲法優位説というのがだんだん学説の中で主流になっている。その中で、政府の解釈によっては、条件つき憲法優位説ということでケース・バイ・ケースによって議論がされるけれども、基本的には憲法が優位に立つというのが今の学説上の通説であるということが参考人からもお話があったというふうに思います。
一方、今お話がありましたが、法律と条約との関係において、現在においては、学説上、こちらの方は条約優位説というのが通説である、こういうのが学説の中で一般的に認識されているものであるというふうに思うわけでありますが、それだけ、憲法九十八条の中で二つの規定があることによって、非常に、歴史的な経緯を含めて不明確な部分がある。そういう意味では、憲法九十八条を改正することによって、わかりやすい解釈、これを別の項目にする、あるいは九十八条そのものを改正する、このようなことをしていくことが、私はこれから求められるのではないかというふうに思うわけであります。
特に今回は、我が国の憲法と、それから条約の中では、人権関係における条約についての議論があったわけでございまして、現在、我が国は、二百六十を超える未批准条約、まだ結んでいないという指摘がございました。その中で、ILOに関係する条約が八十三、また、特に人権関係の未批准条約が二十七あるということで、我が国の法整備がおくれているのではないかという指摘があったわけでございます。
端的に申し上げると、一九九三年に、自由権規約四十条に基づき人権委員会から勧告を受けたことがありましたが、その中で、我が国の死刑廃止への取り組みがおくれているという指摘を受けたわけでございます。実際に、国会の中においても、死刑廃止の議員連盟もあるわけでございますが、しかし、我が国の世論調査等によりますと、死刑を存続すべきであるという声が九割近くあるわけでありまして、多くの国民の方々は、圧倒的にこの死刑制度の存続を求めているわけでございます。
私は、ある意味では、このことというのは一つの文明観、文明史観、これはサミュエル・ハンチントンが「文明の衝突」という著書で著したわけでありますが、この人権についての考え方というのも文明観によって異なっている部分があるのではないかと。それを画一的に全部統合するということが必ずしも適切であるとは思わないわけでありまして、その国のあるいはその文明における価値観ということを一方で大切にするということが求められるのではないかというふうに思うわけであります。
特に、この死刑廃止問題というのは、ある意味では、これは我が国の文明観として、死生観といいますか、人は肉体は死ぬことによって滅びるけれども、ある意味では魂は永遠であるというような輪廻転生観、こういう部分もあるわけでありまして、これが死刑廃止に結びつかないということが、我が国が、ほかの世界から見た人権条約から見て、劣っている考え方であるとか劣った文明であるというふうな見方をすることは、これはこれからの二十一世紀の将来において適切でない、こういうふうに逆に思うわけでございます。
以上でございます。