保岡興治の発言 (憲法調査会)
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○保岡委員 私は、今国会における我が党の憲法調査会における議論、及び国民投票法等に関する与党協議会の実務者会議における我が党の主張を踏まえ、まず、憲法改正に関連する手続法につきまして所見を申し述べ、続けて憲法の改正条項について意見を開陳したいと思います。
アメリカ独立宣言の起草者で、第三代アメリカ合衆国大統領でありますトーマス・ジェファーソンは、次のような言葉を残しておると伺っています。「人間の作品で、完全なものは存在しない。時代の流れのなかで、成典化憲法の不完全さがあらわになるのは、避けられない。さらに、時代の経過は、憲法が適合しなければならない社会に変化をもたらすであろう。それゆえ、憲法を改正するという現実的な方法を定めておくことは、絶対に必要なのである」。
憲法九十六条は、このジェファーソンのその言葉が示すとおり、時代の変化に応じて憲法制定権者の意思により憲法が改正されることを見通した上で、国の最高法規として、その改正方法を明示しております。憲法改正の主役はあくまでも憲法制定権者たる国民であり、国民は国民投票を通じてその意思を表明することとなっております。ところが、このような国民投票実施のための法律は、憲法制定後、半世紀にわたった現在に至るまで、制定されておりません。国会がその発議のできる状態を待って国民投票の手続を整えるというのは、憲法制定権者たる国民の信託を受け、国民にとって最も根幹的な主権行使である憲法改正の手続、すなわち、その道筋を用意するという国会が一番大切な任務を怠っているということになると言わざるを得ません。
今こそ、憲法九十六条の精神に立ち返って、憲法改正に関連する手続法を整備し、我が国憲政史上初めて憲法に国民の意思を反映させ、我が憲法を名実ともに国民憲法と呼ぶにふさわしいものにすることは、我々国会議員に課せられた急務であると考えます。
平成十三年の十一月、本調査会の会長である中山先生が会長を務める憲法調査推進議連が、まさに私が今指摘申し上げたことと同じ趣旨のもとに、苦心の末、国会法の一部を改正する法律案及び日本国憲法改正国民投票法案を作成されました。これは非常に意義深いことであり、でき上がった法案も大変すばらしいものでございます。しかし、この二本の議連案をたたき台として、今国会、我が党とまた公明党とで行いました与党における議論を通じて、幾つかの問題点や考えなければならないことが浮き上がってまいりました。
まず、国会が各議院の総議員の三分の二以上の賛成で憲法改正を国民に発議するまでのプロセスに関することでありますが、議連案では、憲法改正案の付託委員会についての規定が設けられておりません。この点に関し、与党協議会の実務者会議の場におきまして、我が党は、憲法改正の重要性にかんがみ、平素から憲法について広範かつ総合的な調査を行う機関を常設的に設けておくことが望ましいことから、衆参両院に常任委員会として憲法委員会を設置することが適当であるとの意見を表明いたしました。
憲法改正案の付託委員会については、院の構成に係る事項であり、最終的には、両院議院運営委員会において与野党の審議、検討を要することであります。と同時に、これは衆参両院の憲法調査会の後継機関、すなわちポスト調査会に関することでもあります。日本国憲法について広範かつ総合的な調査を行った結果出てまいりました成果を、どのように次のステップにつなげていくかを議論することも、本調査会の所管に属することであると存じます。本調査会設置の際に各党で申し合わせた五年の調査期間の大詰めを迎えている今こそ、このポスト調査会の性格づけについて、本調査会においても早急に御議論していただき、しっかりした結論を出していくべきだと考えますので、そのようによろしく御審議のほどお願い申し上げます。
次に、議連案では、憲法改正案の原案の発議要件を、衆議院において議員百人以上、参議院において議員五十人以上の賛成を要するものとしています。この点に関し、実務者会議で、我が党からは、常時憲法について調査や議論をすると同時に、国会の会派を構成する各党が憲法改正案を出し合って議論を深めることが、国民にとって常に憲法のあり方を考える機会を持っていただくことにもつながり、憲法議論を国民に身近なものにすることにつながることから、この憲法改正案の原案の発議要件を緩和すべきであるとの意見を出したところであります。
また、議連案では規定が設けられておりませんが、憲法改正の発議があった場合には、国会により憲法改正の発議があったこと及びその発議に係る憲法改正案の内容を、速やかに国民に対して周知する必要があり、衆参両院議長連名で憲法改正の発議の公示を行うことが適当であるとの意見が出されました。
次に、憲法改正が発議された後の国民投票についてでありますが、議連案では、公職選挙法の選挙人名簿とは別に投票人名簿を調製し、被登録資格として三カ月間の居住要件を設けないなどとしております。しかし、国民投票の投票権は、国民の国政への参加の権利として国政選挙の選挙権と同等のものと考えられること、また、投票人名簿を選挙人名簿と別に調製することに伴い実務上さまざまな問題が生ずることから、国民投票においても選挙人名簿を利用することが適当であるとの意見が出されました。
また、議連案では、国民投票の際に用います投票用紙に憲法改正案を記載することとしていますが、在外投票、洋上投票等の特殊な投票方法による場合、投票用紙の調製が時間的に困難であること、また全面改正の場合には、投票用紙への記載が事実上困難なことなど、原案では対応しがたい事情もあり、適切な代案を考えるべきとの意見が出ております。
最後に、議連案は、国政選挙と国民投票の告示日をそろえるなど両者が同時に行われる場合を明確に区別して規定しておりますが、与野党が政権の維持、獲得を目指して相戦う国政選挙と、憲法改正に対する賛否を争点とする国民投票との性格の相違にかんがみれば、国民投票と国政選挙は別個に行われることが適当であり、また、仮に両者が同時に行われると、原則として自由であるべき国民投票運動と、管理、規制が多い選挙運動との適切な調整が必要となるところ、これは相当困難が予想されることなどから、あえて両者が同時に行われる場合を明確に区別せずに、国民投票の期日の告示日を定める方が適当であるとの意見が出されました。
さらにつけ加えますと、内閣に憲法発議案を出す権限があるかどうかなども明確にするべきだという意見も出ております。
次に、憲法の改正条項について、意見を申し述べたいと思います。
憲法九十六条一項は、国会が憲法改正を発議するには各議院の総議員の三分の二以上の賛成を要すると規定しています。しかし、この要件が厳格に過ぎて、今の憲法を改正することが困難になっているとの指摘が出ております。
世界は今、時代の大転換期を迎えており、内外の諸情勢は大きく移り変わっています。このような時代にあって、憲法に対して、主権者である国民の意思はどうなのか、どういう憲法であってほしいと願っているのか、そういうものを問うてみる機会がもっと必要ではないかと考えます。
冒頭で申しましたが、憲法改正手続において中心的役割を果たす国民に憲法について考える機会を多くしていただくためにも、私は各議院の総議員の過半数の賛成で国会が国民に憲法改正案を発議できるとすべきであると考えます。この点に関し、委員各位の御意見をちょうだいできればと思っております。
なお、この際つけ加えさせていただきますと、憲法九十六条一項では、国民投票について、「その過半数の賛成を必要とする。」となっておりますが、この「過半数」が何の過半数かについて解釈が分かれています。この点について、議連案は明快に、有効投票総数の過半数であると規定して問題に決着をつけたわけでありますが、そもそもこのように解釈が分かれるような規定が憲法にあること自体が問題であると思います。
本調査会においても、憲法全体について徹底的にこのような規定の洗い出しをしていただき、最終報告においては、現憲法の解釈の疑義がいかに憲法の権威を損ね、憲法の最高法規としての機能を希薄なものにしているか、軽いものにしているかを明らかにしていくべきだと存じます。
以上で、私の十分間の意見の表明にさせていただきます。ありがとうございました。