山花郁夫の発言 (憲法調査会)

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○山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。
 今国会中、大変多くのテーマについて議論がなされてまいりましたので、そのすべてについて総括的な意見を申し上げる時間はございませんので、何点か印象に残ったポイントについて意見を述べさせていただきたいと思います。
 特に、この通常国会では、広島における地方公聴会、そしてまた中央公聴会が開催をされました。中央公聴会では、五月十二日に行われました猪口参考人のお話が大変私は印象に残りました。猪口参考人は、二〇〇二年四月から二年間にわたって軍縮会議日本政府代表部特命全権大使としてジュネーブに赴任されまして、その外交実務に携わる経験に基づいて意見の開陳をされております。
 その中でも、主たるテーマは軍縮の話でありました。我が党の大出委員は、「日本はこの軍縮問題に取り組んでいることがかなり有名なんだぞ、そういうふうに私は思っているんですね。」こういう発言をされておりますけれども、ただ、果たして十分にそういったことが我が国の中で紹介されているかどうか、またそういった実績が広く認識されているのかどうかということについては、私自身は若干疑問が残ります。
 同僚委員との質疑の中で猪口参考人がお話しになられていたことで、少々長くなりますが、紹介をさせていただきたいと思います。
 猪口公述人の発言です。
 日本の核廃絶決議案でございますけれども、NPT条約上の核兵器国、核兵器を保有している国の支持を取りつけることができるかどうか、ここが大きな一つのポイントになりましたが、ある核兵器国は、昨年の総会第一委員会におけます投票を終わった後、その投票においてはついに支持票を入れてくれましたが、以下のように述べました。日本提出の本決議の内容のある部分については我が国の国防方針に抵触する可能性が十分にある、しかし、本決議は日本提出のものなので賛成票を入れると。非常に重い言葉ではなかったかと思いました。
  ほかの国が提出したならば賛成票にはならなかった可能性があるということをその政府代表は国連の議場で堂々と述べ、日本提出であるから賛成票であるという立場を表明した。日本の、軍縮外交におけますやはり特別に重要な役割が世界の側で認識されていたと感じました。
  あと、もう一つは、先ほどの小型武器軍縮のことでございますけれども、国連の多国間主義はさまざまな分野で行き詰まっております中、私は、やはりこの兵器範疇が今日最大の戦争関連死の原因となっているということから、つまり、年間五十万人ということは毎日千四百人ぐらいでありまして、一分一人ぐらいですので、こうして私たちがここで議論している間も、もう何十人も亡くなるということでございます。いや、百人以上ですね。
  そういう兵器範疇ですので、何としても軍縮が必要という観点から、国連での、一国も取り逃さないといいますか、一国も置いていかない全会一致での多国間主義というものを推進しようという語りかけをして、そして先ほど申し上げたような結果を得たんですけれども、その過程においても、やはり日本議長の言うことであるから一応協議には応じなければならないと。
  何度も決裂する非公式協議を経て、しかし、日本議長がここまでの合意を世界でつくりつつあるので、自分の一票で全会一致を崩すということはやはりやり得ないのであるというところまで各国を持っていきました。国連議場ですので多くの国、最近国際政治でいろいろと指摘される多くの国、例えば北朝鮮、リビア、イラン、イラク、いずれも私の議場で全会一致に参加してくれました。
  このようなことは、ほかの国もできたかもしれず、あるいはできなかったかもしれません。それを検証することはなかなか難しいですが、私は、自分の印象論からのみ述べることができますけれども、やはり日本が積極的に軍縮、不拡散、人道支援のような分野で強い主張をし、かつ強く世界を率いていこうとしたときに、ほかの国にはできない力を発揮できることがあろうと思います。
このように述べられております。
 特に、安全保障などの分野では、湾岸戦争のときのトラウマと申しましょうか、そういったことが多く喧伝されるケースが見受けられますけれども、こういったことについては、もっと広く紹介をされていいのではないかと思いました。
 また、その猪口公述人の日本国憲法についての御意見ですけれども、
  日本国憲法を再検討するどのような試みも、その点、すなわち、戦後日本の国家と社会の努力の評価と、それが現にもたらした世界における貴重な存在感についての深い認識を出発点とする必要があるように感じます。そうすることにより、仮に国民世論が今後、憲法の修正を求めることとなった場合にも、軸足が浮遊して過度な修正へと漂流することなく、必要最小限の簡潔な修正によって連続性を保ち、既に日本国として国際社会において築いた地位や評価を混乱させることなく発展させ、将来の国民に引き継いでいくことが可能になると考えます。
このように述べられております。
 憲法の改正について、どういうスタンスをとるかということについては、学者の方ですのでやや慎重な言い回しなのかなという印象も受けましたけれども、しかし、こういった経験を踏まえての発言ということですので、大変重く受けとめるべきではないかと感じました。
 ところで、私は、人権の小委員会の小委員長を務めさせていただきましたけれども、人権の分野では、特に出版物に対する司法的事前抑制であるとか、あるいは靖国神社に対する内閣総理大臣の参拝など、トピックになる事柄については全体会でも、意見の相違は見られましたけれども、多くの発言がなされました。この分野では、しばしば、権利の観点でなく義務も記述すべしという意見も聞かれましたけれども、比較憲法的にも日本国憲法の第三章は人権宣言と位置づけられるべきものでありまして、そういった意見には、私は違和感を覚えます。また、そういった論旨は、憲法十二条の規定によって既に包含されていると見ることもできるのではないかと考えております。
 また、これは人権の分野に限ったことではありませんけれども、時として、議論の中で、立法的な解決を進めるべき問題なのか憲法次元で検討すべき問題なのかの混同があるように見受けられたような印象を持っております。もちろん、新しい人権であるとか、すべて憲法十三条の解釈にゆだねるべきであって字句修正をしてはならないと主張するつもりは毛頭ありませんけれども、ただ、憲法次元の解決が必要か否かということは、もっと吟味されてしかるべきではないかと思います。
 つまり、法律で規定するということと憲法で保障するということで法的効果に相違が生まれるのかどうか、また、国のあり方として、人権に対してどう向き合うかなど、多面的な考慮が必要ではないかと思います。
 具体的な例を申し上げます。
 過日の憲法調査会で、刑事手続上の人権及び犯罪被害者保護についての議論がありました。死刑制度についても議論がございました。私は、六月一日に、アメリカからレニー・クッシングさんという方からお話を聞く機会がありました。クッシングさんという方は、一九八八年に、自宅玄関のスクリーンドア越しに見知らぬ人間が撃った二発のショットガンによって実の父親を亡くされた方であります。この方は、犯罪の被害者ではありますけれども、死刑廃止運動に取り組んでおられる方です。
 彼は、このように言っております。
 私は、殺人事件が起きたとき、私たち殺人被害者遺族の心の傷をいやすものとして、死刑存置論者が独善的に死刑の執行を主張するとき胸が悪くなる。このように死刑執行という一つの行事を心の痛みに対する解決策として主張する人々は、いやしに対する理解が皆無である。いやしとは過程であり、一つの行事ではないという御意見の持ち主です。
 もちろん、犯罪の被害者がすべてこういう意見の持ち主だということを主張するつもりはありませんし、ただ、事実として、アメリカでは、MVFRといって、殺人被害者遺族であり、かつ、死刑廃止を求める人々が五千人規模の団体を持っているということは御紹介をしておきたいと思います。
 その上で、既に死刑廃止国が世界では存置国を上回っているわけですけれども、ここで死刑存廃についての是非を議論するということではありません。印象的だったのは、死刑廃止は人権問題であるというふうにクッシング氏がとらえているということであります。欧州評議会と私はセッションを持ったことがありますが、そのときも、死刑は人権の問題であるという発言が相次いでおりましたし、この憲法調査会でも紹介されましたEUの憲法草案にも、死刑廃止が人権としてうたわれております。
 我が国では、少なくとも政府は、刑事政策の問題であるという認識だと思われますが、このような意識のギャップについては驚かされるものがあります。
 このように、立法政策として廃止をするのか、あるいは憲法レベルの課題として取り上げるのか、死刑存廃に対する意見の相違は別として、人権の分野での憲法論議は、その時々の政策論なのか、あるいは普遍的な課題と認識するか、こういった視点が必要なのではないかと思います。また、人権保障の最後のとりでが司法権であるとするならば、現在の司法手続の中でのみ憲法問題を提起できるというシステムがよいかどうかということは検討される価値があるのではないか。その意味で、人権と憲法裁判、人権と統治機構のあり方は、関連する問題があるように思われます。
 以上です。

発言情報

speech_id: 115904184X00820040610_004

発言者: 山花郁夫

speaker_id: 324

日付: 2004-06-10

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会