山口富男の発言 (憲法調査会)
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○山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。
日本国憲法は、戦争と戦力、交戦権を否定した憲法九条を初め恒久平和主義の点でも、主権者である国民の人権を豊かに、多面的に保障している点でも、二十一世紀の世界において誇るべき内容と値打ちを持っていると思います。今後とも、私たちの暮らしを守り世界の平和に働きかけていく際の重要な指針になっている。日本共産党は、憲法の制定経過や憲法の基本精神などを織り込んだ前文を含めまして、憲法の全条項を守り、二十一世紀の日本の国づくりに、平和、人権、民主主義の憲法原則を生かし、具体化するという立場に立っております。
問題は、この憲法が国政の土台に据えられないばかりか、むしろないがしろにされてきたという現状にあると思います。今必要なのは、憲法の改正ではなく、憲法を土台にして現実政治を改革することだと思います。今国会の四つの小委員会での参考人質疑でもしばしば、憲法の改正でなく憲法原則の具体化こそが必要だという提議が各分野から行われてきたところです。
二十一世紀を迎えた世界では、イラク戦争への各国の対応ぶりでも示されましたけれども、無法な侵略を許さない、国際紛争は平和的な手段で解決を図る、こういう原則を掲げた国際連合の憲章や世界の平和のルールというものは各国によって受け入れられております。それだけに、世界に対して日本は、自衛隊の海外派兵ではなく、戦争放棄を定めた九条を堅持して、世界とアジアの平和と安定を図るために積極的な役割を果たすことが今強く求められていると思います。
また、年金や暮らしへの不安と痛みが広がっている中で、健康で文化的な生活を国民の権利とし、社会保障の充実を国の責任とうたった憲法二十五条の実現が求められています。
また、両性の同権、平等を規定した憲法十四条、二十四条、四十四条を生かし、男女の平等、同権を社会の隅々で擁護し、保障することが求められます。この点は、国際機関からも繰り返し、日本の政治の現状として、社会の現状として改善が求められてきた点です。
そのほか、参考人の皆さんからも、国権の最高機関である国会に多様な民意が多元的に反映するような努力をしていただきたい、あるいは違憲立法審査の活性化の問題や、地方自治の本旨を踏まえた地方分権の展開など、具体的に提起された問題も少なくなかったと思います。その点では、選挙制度や国会のあり方、行政機構、司法制度など、憲法の国民主権の精神に立った改革が引き続き重要であると考えます。
さて、憲法九条について言いますと、この間、さまざまな名前で自衛隊を海外に派兵するための法律がつくられてきました。そこでも、海外で戦争はしない、武力行使はしない、これを建前にせざるを得ませんでした。憲法九条がやはり歯どめになって、戦争するとの法律はつくれなかったと言ってよいと思います。
九条を変えようというのは、端的に言いまして、日本を米軍とともに海外で戦争できる国に変えてしまう道に入ることになります。こういう憲法改正論は、今国民の中からは生まれておりません。イラク戦争のようなアメリカの引き起こす戦争に、憲法の歯どめを取り外し、自衛隊を積極的に参加させようというアメリカからの要求を背景にしたもので、その一つに、いわゆるアーミテージ報告があります。
憲法九条は、繰り返すまでもなく、戦争の悲惨な体験を踏まえ、国民が二度と戦争を繰り返すまいという決意を国の進路として刻み込んだものです。
公聴会では、先ほども紹介が山花委員からありましたけれども、外交の現場と国際政治に詳しい参考人から、次のような発言がありました。
我が国が憲法第九条一項において、国際平和を誠実に希求する志のあかしとして、国権の発動たる戦争等の放棄を掲げていること、また二項において陸海空軍その他の戦力は保持しないという考え方を示していることは、今日では広く国際社会において知られており、その志と理念は、戦禍に苦悩した歴史を真剣に受けとめるという国民の真摯な生き方及び国家の賢明な選択を伝えるものとして、世界で特別の評価を獲得するに至っていると感じております。
私は、こうした指摘を正面から踏まえることが重要であって、集団的自衛権の明記を含めた九条改正論は、憲法の恒久平和主義にも、日本と世界の平和と安定の流れにも反したものと言わなければならないと思います。
関連して、昨日、小泉首相が、日米首脳会談において、イラクにおける多国籍軍に自衛隊を参加させる方針を事実上表明したことについて、一言したいと思います。
これは、イラク情勢の前向きな打開にとっても、憲法に照らしても極めて危険な表明だと考えます。
政府はこれまで、多国籍軍などの任務、目的が武力行使を伴う場合には自衛隊の参加は憲法上許されないとの見解を述べてきました。連合軍機関紙などでも、反連合軍、反イラク勢力との戦争を遂行することをみずからの任務としている米英中心の多国籍軍への参加は、従来の政府の見解に照らしても憲法に反したものですし、ましてイラク特措法の規定からいえば決して容認されるものではありません。
日本共産党は、改めて、自衛隊のイラクからの速やかな撤退を強く求めるものです。
次に、今国会の参考人質疑などで繰り返し提議された中から二点指摘しておきたいと思います。
一つは、近代立憲主義の筋をあいまいにしてはならないという提議が繰り返しなされました。日本国憲法は、個人の自由、権利の保障を目的として、そのために国家権力の抑制、制限を図るという近代立憲主義の流れの中に位置しております。この問題は、憲法九十九条の憲法尊重擁護義務にもかかわる問題ですけれども、いまだ本調査会ではこの点を主題にした調査は行われておりません。
いま一つは、憲法規範が豊富になってきたという問題です。例えば、環境権にしてもプライバシー権にしても、憲法規範と無縁だったのではなく、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利、第十三条、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、第二十五条を初め、憲法の規範に基づいて生み出されてきた権利であり、思想です。それらが今日、憲法の保障している基本的人権の重要な内容に含まれているものであることは国民の常識となり、国政、地方政治がよって立つべきものとなっております。
このように、憲法制定後の憲法理論、判例実務、また主権者国民の運動は、法規範としての内容をさまざまな形で豊富にしてきました。だからこそ、参考人質疑で、各章や条文の憲法制定時の趣旨と同時に、その後の豊富化、あるいは実現に至らなかった阻害要因は何だったのか、この点が繰り返し私は述べられたのだというふうに考えております。
振り返ってみて、日本国憲法は、侵略戦争とその惨禍をめぐる国民的な体験、またいわゆる社会権を初めとした国際的な憲法原則の発展を基礎に置きながら、その後の約六十年余り、社会の変化に見合う形でこの憲法原則を具体化しようとしてきたさまざまな営みによって支えられてきました。私は、これが憲法改正を現実の課題としない力にもなったと考えております。こうした到達点を踏まえ、日本国憲法を二十一世紀に生きる憲法として、私は守り、育てていきたいと感じております。
最後になりますが、先ほど、改正手続法にかかわる問題といわゆるポスト調査会という話がありましたので、その点について意見を述べておきたいと思います。
改正手続について言いますと、私は、現在、憲法改正が求められておりませんので、改正手続法の具体化は必要ないと考えております。それからまた、ポスト調査会について言いますと、本調査会はもともと定められた目的と期間の中で調査をやるわけであって、その中にはポスト調査会の審議事項というものは一切含まれておりません。
また、私は、こういう憲法についての常設委員会化というものを図ろうとすれば、立法府の中に恒常的に憲法についてあれこれ論じ合うという場を設けることによって憲法が不安定になっていきますから、これは、これまでのとおり各常任委員会などで必要な討議をその分野で行えばいいことであって、ポスト調査会などの常設化の方向はとるべきではないというふうに考えております。
以上です。