辻惠の発言 (憲法調査会基本的人権の保障に関する調査小委員会)

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○辻小委員 民主党・無所属クラブの辻惠でございます。
 憲法の問題に関連して、憲法改正の項目については、九条が現実とは乖離しているのではないかとか、あと、二院制の問題や憲法裁判所の問題、そして何より地方自治をめぐる諸規定について論議がされているところであります。
 私の知る限りでは、刑事手続に関係して憲法改正論議が特に起こっているということはないのであります。大きく言えば、裁判所が憲法の趣旨を実現するような役割を本当に果たせているのか、違憲立法審査権の行使と司法消極主義の現状についてどう考えるのか、これは大きな憲法問題であると思いますが、具体的な刑事手続に関連する問題としては、憲法問題としては今余り問題提起は、憲法改正との関係での問題点の指摘はないように思います。
 私は、この問題については、憲法の趣旨にのっとった刑事手続の現状が果たしてどこまで実現されているのか、むしろ本来憲法が予定していたあるべき姿というか、それが現実の必要性の前に徐々に緩和されていっているのが刑事司法の現実ではないかというふうに思います。例えば刑事訴訟法の三百二十一条以下の伝聞法則の問題をめぐっても、多くの例外が判例上認められていってしまっているというような問題があります。
 ですから、むしろ憲法と刑事手続というふうに考えた場合には、憲法が本来予定していた趣旨、これは参考人が先ほどお述べになられましたように、三十一条のデュープロセスを総則として、例えば刑事訴訟法の一条にその精神が生かされていて、実体的真実の発見と人権保障ということを考えた場合に、人権保障を基軸とするのが憲法の本来の趣旨であるという御説明をいただきましたけれども、では、それにのっとった具体的ないろいろ制度なり運用の実態が乖離する方向になっていないのかどうなのかということ、ここを検討することが大きな問題点であろう。
 他方で、視野を広げて、これは松尾先生の、配付された資料の中で、被告人の役割そして被害者救済、そういうふうに視野を広げる必要があるんだということを御指摘になっておられるように、これに限らず、先ほど質疑がありましたけれども、捜査の可視化をどのようにしていくのか、弁護人の立ち会い権をどのように認めていくのか、どのように充実させていくのかという新たな制度論を考えるべきである。だから、二つの問題があるというふうに私は思うわけであります。
 前者の問題に関連して、憲法、刑事訴訟法の本来予定していた趣旨が、現実の必要性という中でおろそかにされかねないような事実がないのかという観点に関連して、私はやはり、今般成立いたしました裁判員制度、そして公判前整理手続を中心とした刑事訴訟法の改正ということについて、依然として大きな危惧を抱いております。
 このことについては、衆議院の法務委員会でも私は繰り返し質疑をさせていただいておりますが、公判前整理手続の導入というのは、予断排除の原則を実現するための起訴状一本主義ということとの兼ね合いで、現実の運用の中で非常に微妙な問題が生じてくる可能性がある。公判中心主義、公判での直接主義、口頭主義を充実させるということを本来は目的としているのであろうというふうに思われますが、運用のいかんによっては非常にそれと背反するような結果にもなりかねない。
 第一回の公判期日以前に被告側、弁護側もすべての立証計画を明らかにしなければいけないというのは憲法三十八条の黙秘権との関係でも問題であろうし、現実問題として、検事側が立証できなければ弁護側が反証しなくても無罪判決がなされるべきだというのが無罪の推定の原則でありますから、それ以前に弁護側も立証計画を全部明らかにせよというのは無罪の推定の原則に反することでもあるのではないか、こういう危惧感を抱くわけであります。
 そういう意味におきまして、この裁判員制度というのは施行まで五年間という期間がありますから、その間にもっと、今私が申し上げた憲法上の理念を含めた議論なり、そして運用をどのようにすべきだということを議論されるべきであり、場合によっては見直しも考えられるべきものではないかと思いますが、この点、参考人はどのようにお考えでしょうか。

発言情報

speech_id: 115904186X00520040527_011

発言者: 辻惠

speaker_id: 30633

日付: 2004-05-27

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会基本的人権の保障に関する調査小委員会