安保克也の発言 (憲法調査会公聴会)

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○安保公述人 ただいま御紹介いただきました日本電子専門学校の安保でございます。
 本日は、このような場で公述をする機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。
 私の公述ですが、先生方の手元にレジュメをお配りいたしたと思います。一応、六枚ほどのレジュメに沿ってお話を申し上げたいと思っております。そのほかに、私自身が執筆した新聞記事を三枚ほど補足ということでお配りさせていただきました。そちらの方は御参考ということで、お時間があったときには御説明したいと思いますが、ない場合は割愛させていただきたいと思います。
 私自身の今回の考え方は、憲法制定から半世紀を経ている間に戦争のあり方も大きく変化したように思われるという問題意識の上に成り立っております。それはどのような点かと申しますと、テクノロジーの急激な進歩によって世の中は変化しており、新しい時代の憲法を論じるときには、テクノロジーによる、いわゆる技術的進歩に関する情報を収集した上で論じなければならないと考えているからでございます。
 特に、最近の戦争は、ハイテクを使ったいわゆるハイテク戦争、もしくはサイバー戦、情報戦という視点が非常に重要になってくるかと思っております。そして、このハイテク戦争を支える技術の中心というのはいわゆるインターネットでございます。
 そこで、インターネットの歴史ということで、一番に簡単に触れてみたいと思います。
 まず、インターネットについて申しますと、一九五七年にソ連が世界初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功した、これに衝撃を受けたアメリカが、ソ連の科学技術の分野に対抗するため、国防総省内につくった組織ARPAが原型と言われております。
 その後、一九六九年に米国防総省が、ARPAに、ミサイル攻撃を受けても軍の作戦全体に支障がないような分散型コンピューターネットワークにするように指示し、ARPAネットワークというものができました。これは、今日のインターネットの原型だと言われております。その当時主流だった中央集中型ではなく分散型を選んだのは、核攻撃を受けても全体が停止することのないコンピューターシステムをつくるためだと言われております。
 次、三番目ですが、米国防総省は、一九八三年に核攻撃で部分的に破壊されても全体が停止することのないようなコンピューターネットワークを開発しました。そして、日本なんですが、一九九三年にゴア副大統領が情報スーパーハイウエー構想を発表いたしましたが、この構想の裏には、日本のVIP、いわゆる新高度情報通信サービスというものがあったと思われます。ですから、日本の当時の先端技術の構想は、アメリカの構想に非常に似ていたと思われます。ただ、残念ながら、この案は余り考察されなかったということです。
 五番目、一九九四年ですが、日本の首相官邸がホームページを開設しました。そして、一九九五年になりますと、アメリカがインターネットの接続を完全商業化して、今日のようにインターネットが世界じゅうに普及したという簡単な過程がございます。
 以上から何が言えるかと申しますと、最初は軍事目的であったものが民生に転用された、このことは、今後の軍事問題を考える上で非常に重要な視点だと私は思っております。
 次に二番目でございますが、サイバー戦の重要性という点でございます。
 戦争という行為は、国家対国家という対称同士の争いだった。それが今では、世界じゅうで米国に正面から対等に戦争を挑める国家は存在しないような状況になっている。それでは、なぜ米国の一強国状態になっているかであるが、米国は、ベトナム戦争での敗北以来、情報収集、情報分析、攻撃計画の立案や攻撃を統合し、同一システムでの全兵器の運用を目指すため、RAMやC4ISRシステムなどの組織改革を推し進めた結果であろうと思われます。そのため、装備に劣る国の軍が米国軍相手に唯一勝機を見出せるとすれば、それは非対称による戦いであろうと思われます。したがって、この分野の技術的な進歩の重要性は非常に高まると思っております。
 いみじくも、中国の人民解放軍の現役幹部が、米国は、九・一一の本土をねらう攻撃か、もしくはコンピューターネットワークを攻撃するしか米国を倒せることはないという指摘は、非常に重要な示唆だと思っております。また、自爆テロなども非対称の戦いであろうかと思っておりますが、おのずと限界があると思います。今後考えられる非対称戦のうち最も重要なのは、サイバーテロやサイバー兵器を活用した戦争であろうと認識しております。
 今回のイラク戦争において、統合運用がうまくいかなかったケースも多々報告されているようでありますが、結果的には、開戦日を変更し、軍事攻撃に支障のない柔軟性のある対応を考えますと、米国軍の統合作戦はうまくいったと認識するべきだと思っております。
 また、ハイテク戦争の定石がほぼ決まりつつあるように思います。次のページに行きますが、今後のハイテク戦争は、ステルスウイルスやスパイウエアなどによる日常攻撃で航空管制システムを麻痺させることにより、迎撃ミサイル等の精密誘導兵器を機能麻痺な状態にし、あるいは、電気や水道といったインフラ制御のシステムの設定などを破壊し得る状況で、ステルス戦闘機などによる空爆をした上で、地上部隊や特殊部隊の投入というパターンが今後続くものと思われます。特に今回の開戦で特徴的だったことですが、昼夜の戦闘に差がなかったことであろうと思われます。
 そこで、世間で言われておりますサイバー戦というものですが、私自身、大きく三段階に分かれると思います。一つがサイバーテロ、二番目はサイバー攻撃、三番目はネットワーク中心の戦いという三段階があると思います。
 まずサイバーテロでございますが、定義はなかなか、一概にないのですが、私自身はインターネットなどのコンピューターネットワーク上で行われる大規模な破壊攻撃であろうと思っております。人に危害を加えたり、社会機能に打撃を与えるような、深刻かつ悪質なものをこのように呼ぶと認識しております。
 そして、このようなテロをしかける人たちを通常ハッカーと呼びますが、これは正しい認識ではないと思います。ハッカーというのは、高い技術を持った人たちに対する尊敬の言葉であり、通常、技術を悪用する場合はクラッカーと呼ばれるべきだと思います。通常、我々が新聞報道などで聞くサイバーテロというのは、ほとんどがクラッカーだと思っております。サイバーテロの特徴ですが、直接的な物理的破壊は伴わず、情報の破壊や改ざん、漏えい、機器や回線の停止などによって被害をもたらす行為というのが特徴だと思います。
 二番目として、サイバー攻撃ですが、サイバー攻撃は、インターネット経由で他のコンピューターに不正アクセスを行い、相手の国や企業にダメージを与えるような行動だと思います。
 このサイバー攻撃は、大きく分けて二つあると思います。
 一つは、ターゲットとなるサーバーをピンポイントで決めておき、そのサーバーのみを対象としたあらゆる不正アクセスを試みる。この攻撃に対するディフェンスは、サーバーやネットワークの設定をしっかり行っている必要があるなど、かなり手間がかかるものと思います。
 そして、二つ目ですが、ターゲットのサーバーを特定せずに大量のサーバーにセキュリティーホールを悪用するデータを無差別に送りつけるもので、主に社会全体に混乱をもたらす目的で行われるケースだと思われます。この攻撃からのディフェンスは、ほとんどの場合はセキュリティーパッチをインストールするだけで簡単に防ぐことができると思われます。
 なお、この攻撃で代表的なものは、コードレッドやニムダなどのいわゆるワーム、コンピューターウイルスの一種でございます。この二種類のワームは、感染したサーバーから他のサーバーに自動的に感染を試みるという機能を持ち、セキュリティーパッチが適用されないサーバーに次々に感染し、社会問題化する勢力を持つに至ったのでございます。
 なお、ウイルスとワームの違いですが、実際上自己増殖や破壊をもたらす点では共通点がありまして、若干の表現の違いで、ウイルスの場合は他のファイルに寄生するプログラムと説明しますが、要するに、生物界のウイルスと同じような形態でよろしいかと思います。それに対して、ワームというのは単独で活動できるプログラムと定義されますが、これは、勝手にどんどん増殖していくという形でございます。この識別は余り意味がないのですが、通常ウイルスと言われているのは、ほとんどこのワームだと思っております。
 三番目ですが、ネットワーク中心の戦いです。
 平成十五年度の防衛白書でも指摘しているように、米国は軍事における革命の中で、特に情報通信技術を最大限に利用したネットワーク中心の戦いを重視しております。ネットワーク中心の戦いでは、GPSなどを活用して収集された敵部隊などに関する情報はネットワークを通じて共有され、遠隔地の司令部からであってもネットワークを通じて極めて短時間に指揮、統制を行い、目標に対して迅速、正確かつ柔軟に攻撃力を発揮することが可能だと思っております。
 その際の兵器としては、無人機、E爆弾、あとはロボットの軍事的利用だと思っております。ロボットの軍事的利用は、日本においてはロボット技術が非常に進歩しておりますので、平和目的に、特に地雷探索などにも活用できるかと思っております。
 三番目として、サイバー戦の対応策でございますが、これは情報の重要性ということでもございます。
 まず、安岡先生の指摘によれば、日本人はスパイというものを非常に過小評価し、何か機密書類や機密情報のようなものを巧みに盗み出した者がスパイであると思っているが、それはスパイ活動のほんの一部にすぎない、スパイ活動の大きな目的は、相手の国策を誤らせることにあると、情報の重要性を指摘しております。
 そこで、情報が重要だということを認識しまして、私自身は三つのことを提案したいと思っております。
 一つは、情報を収集する、いわゆる情報省の新設が望まれると思っております。二つ目に、情報を収集して情報を分析する者、すなわち教育制度を抜本的に見直し、人材育成が必要だと思っております。そして、さらにこの分析したものを参謀本部に必ず伝達するシステムも必要かと思っております。三つ目なんですが、今の教育に関する問題ですが、特殊な才能を持つ者の発掘でございます。例えば昨年経済産業省が企画したセキュリティ甲子園などのイベントを行いながら、人材を発掘することが非常に重要かと思っております。
 これに関連することですが、最近、東京大学の助手の方がいろいろ話題を起こしたという新聞記事もございましたし、東京大学の方よりも、きょうお配りした新聞記事の方ですけれども、京都大学の方で、ハッカーの技術力を生かせというもので書かせていただきましたので、そちらの方をあわせて御参照いただければと思っております。
 四番目にございますが、私自身、望まれる法整備はどんなものかということを考えております。
 平成十一年に成立した通信傍受法は国家による諜報政策、情報獲得のレベルの問題であるが、国家による防諜政策、情報保全のレベルの問題に関する法が存在していないという欠陥は早急に是正しなければならないと思っております。いわゆる守秘能力の問題でございます。
 なお、危機管理を有効にさせるためには、国家機密に係るスパイ行為等の防止に関する法律、国家機密法またはスパイ防止法の制定が望まれ、憲法二十一条も立法趣旨を尊重した上での改正は必要だろうと考えております。
 日本では、情報公開法が存在しているにもかかわらず、国家の安全、国民の安全を脅かす情報機密の漏えいを厳重に処罰するための個別法が存在していないことに強い危機意識を感じ、電子通信技術などの発展した現代社会においては、防諜政策なき国家では、国民保護を全うし得ない国家と私は非常に危惧しております。
 五番目でございますが、サイバー戦とかいうことをお話ししたので、何か非常に唐突なお話をして、何の話をしているのかということでなかなか、憲法調査会ということもございますので、私自身、憲法の九条の改正案ということで、自分自身で考えてみました。
 そこで、まず、二つ前文案と九条案がございますが、これは基本的には九条案が中心で、前文の方はちょっと九条に書けなかったものを持ってきたというだけでございます。現在の憲法九条にかえて、私自身の提案としましては、国軍という形にして、国軍は、サイバー軍、陸軍、海軍、空軍の四軍から構成され、日本の主権及び独立を保障し、領土を保全し、国民の基本的人権を尊重することを使命とする。近年は、やはりサイバー戦というのは非常に重要視すると思っておりますので、陸海空に独立したサイバー軍というのが必要かなと思っております。
 二番目として、軍事組織の基本については組織法で定め、政府は非常事態においては法律の定めるところにより必要な措置をとることができる。非常事態という、これから何が起きるか全くわからない時代になっておりますので、そのような時代に対応するためにはやはり必要かなと私自身は思っております。
 そこで、現憲法の九条の趣旨を生かすために、前文の三行目にございますが、途中省略したからですが、国内的には国民の平穏を保障し、さらに福祉を増進させる。国外的には、国民は祖国防衛に備えるが、日本国は侵略戦争を放棄することを宣言する。ただし、正義と秩序を基調とする国際社会においては、日本国は国力に応じた国際平和協力に貢献するため、国際組織への参加を促進し、かつ、助成すると。
 戦争は放棄する、侵略戦争は放棄する。ただ、国家としての防衛は必要だろう。それが抑止力でもあり、やはり平和の一つの道ではないか。戦争放棄、いわゆる軍事を放棄するという考え方も一つの考え方だとは思いますが、やはり抑止力というのはお互いに攻め込めば自分も犠牲になるという観点で安全保障は構築していくべきではないだろうか。
 特に、これからの技術進歩というのは我々自身、かつて経験のない事態でございますので、そのような事態に対しては、何が起こるか、不測の事態をやはり憲法上予定しておくことが国民の基本的人権を守るために必要だと思っております。
 非常に早口でしゃべりまして、私自身も、ちょっと時間との兼ね合いで、こういう場で話すのは初めてでございまして、非常に緊張して震えておりますが、先ほどお配りした新聞記事の方なんでございますが、三月の十三日に、東京新聞の方で依頼を受けまして、昨年のイラク戦争、どういうふうな形になるか予想しなさいという、予想屋じゃございません、そんな当たるわけはないなと思いつつ、まあこんなような展開になるのかなと。さほど大きくずれていることはないと思っておりますが、やはりこういう新しい先端技術が軍事の表面に出てきてしまったということ、その辺について対応することが今後必要ではないかと非常に強く感じているわけでございます。そして、そのような御議論をこの憲法調査会で推進していくことを切に望んでおります。
 以上でございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 安保克也

speaker_id: 27906

日付: 2004-05-13

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会公聴会