宇都宮深志の発言 (憲法調査会統治機構のあり方に関する調査小委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○宇都宮参考人 東海大学の宇都宮でございます。
 本日は、衆議院憲法調査会にお招きいただきまして、非常に光栄でございます。
 早速でございますけれども、お手元にありますレジュメに沿いまして、順次お話をさせていただきたいというように思います。
 私が書きました本の中から論文がそちらに配付されておると思います。第一章の第四ページをあけていただきますと、「世界のオンブズマンの設置状況」というのが載っていると思いますが、それをまず参照していただきながら、第一項目の世界へのオンブズマンの普及と進展というところから、順次話をさせていただきたいというように思います。
 この「世界のオンブズマンの設置状況」を見ていただきますと、まず、御承知のことと思いますけれども、スウェーデンで、制度が一八〇九年にできて、一八一〇年にオンブズマンが任命されたというのが世界で最初のことでありまして、この表から見ていただきますと、一九五〇年代それから六〇年代、七〇年代、八〇年代に、このオンブズマン制度は西欧諸国を中心としてほとんどの国で導入されたというのが一つ注目すべきところだと思います。
 一九五〇年以前には、スウェーデンとフィンランドだけにオンブズマン制度は限られていた。といいますのは、スウェーデンというのは、独特の行政組織機構を持っている。実際の行政執行は政府各省ではなくて独立行政機関、一般的に行政機関と言われていますけれども、それが存在しておりまして、政府各省は政策の形成、立案、それから立法の準備などをやりまして、大臣がそこに責任を持って立法の準備とかそういうことをやっているということで、実際の行政執行というのは独立行政機関というのがやっております。数年前にスウェーデンのオンブズマンにお会いしまして、独立行政機関というのは一体どのくらいあるんだということを質問しましたら、数百ぐらいはあるということで、ABC順にずらりと一覧表が出ているんですが、これがオンブズマンの調査の対象になると。
 したがって、スウェーデンの場合は、大臣の行為はオンブズマンの調査ができないことになっているんですね。これは国会に憲法委員会というのがありまして、憲法委員会が大臣の行為を監視するといいますか、憲法委員会がやる、こういう形になっております。したがって、そういう独特の組織を持っているものですから、これはもう他の国にはちょっと適用できないということで、ほとんど関心を持たれなくて、そのままスウェーデン、フィンランドに限られていた。それが世界的に注目されるようになったのは、この設置状況から見ますと、五五年にデンマークがオンブズマン制度を導入した、これが世界に発展する契機になった。
 デンマークは大臣責任制をとっておりまして、議院内閣制をとっている。議院内閣制でオンブズマンが適用できるんであれば、これはもうほかの国、西欧諸国全体に適用できるんだ、こういう形で一つのきっかけになったということで、デンマークの場合は大臣の行為がオンブズマンの調査の対象になっております。これはもうイギリスもほかの国も大臣の行為はオンブズマンが調査できるというようになっております。それからデンマークを越えて、スカンディナビアを越えて西欧諸国に、アングロサクソン系の諸国に導入をされていった。
 それからもう一つ注目すべき点は、一九六二年にニュージーランドがオンブズマンを導入した。これが、ニュージーランドは世界のオンブズマンだと言われて、この一つのニュージーランド・モデルがカナダとかオーストラリア、それからイギリス、アメリカ、そういうところにモデルとして導入をされていったという契機があります。
 六〇年代には、ニュージーランドを皮切りに、ノルウェーとかタンザニアとかイギリス、十一の制度が誕生しまして、七〇年代には、そこを数えていただきますと、十年間で六十二の制度が誕生した。それから八〇年代、九〇年代と発展をしてまいりまして、九〇年代におきましては、東ヨーロッパとかアジアとかアフリカ、それから中南米。アジアにおきましては、この近辺の韓国とか台湾、フィリピン、それからタイとかそういうところでオンブズマンが導入をされてきております。
 それから欧州議会、EUにおきまして、マーストリヒト条約百三十八e条に、欧州議会は一人のオンブズマンを任命しなければならないという規定が設けられまして、九五年に一人のオンブズマンが任命されまして、今二代目が就任をして、大体年間三千件ぐらいの苦情を受け付けて、また行政監視を行っております。こういうように、世界に急ピッチに導入をされてきております。
 こういう傾向から、私は、以下の四点が注目されるんではないかなと。
 まず一つは、世界に広まったオンブズマン制度というのは、廃止されたものがなくて、国民及び行政からなくてはならない信頼される制度として発展、定着をしてきている。例えばイギリスを見てみますと、御承知のように、七九年から九五年、イギリス保守党政権があったんですが、この保守党政権においては非常にラジカルな行政改革が行われました。ニュージーランドでも、非常に過激といいますか、大きな行政改革が行われましたけれども、このオンブズマン制度は全く行政改革の対象にならなくて、ますます重要なものとして位置づけられて拡充をされてきているということで、一つはそういうように信頼される制度として世界に定着、発展をしてきているということであります。
 それから第二点は、世界に普及しているオンブズマンの多くは、議会に置く立法オンブズマンである。これを国会オンブズマンとか議会オンブズマンとか言いますけれども、議会が任命したオンブズマンを私は本当の意味でのオンブズマンなんだと。行政府から独立して中立的立場で調査を行う権限が与えられているということであります。これを国会オンブズマンとか議会オンブズマンとか言うわけです。
 オンブズマンのタイプにつきましては、資料がありますけれども、衆憲資料四十二号の七ページを参照していただきますと、どういうタイプのオンブズマンがあるかということを、ここに東北学院大学の佐藤教授がまとめられた類型を参考にさせていただきたいと思います。
 まず、公的オンブズマンというのは、国政オンブズマンとそれから地方オンブズマンと国際オンブズマンというように分けられる。国政オンブズマンは、議会型オンブズマン、議会が任命するオンブズマンと、行政府型オンブズマン、行政がみずから監察し、みずから統制していこうというのが行政府型オンブズマン。地方オンブズマンは、同様に議会型オンブズマンと行政府型オンブズマン。それから国際オンブズマンというのは、例えばEUの欧州議会が任命するようなものを国際オンブズマンと言うと。
 その下に私的オンブズマンとして市民オンブズマンというのが類型化されておりますけれども、私は、この市民オンブズマンというのはオンブズマンに類型化すべきではないという意見を持っております。世界的に一般的には、公的オンブズマンと民間オンブズマンと言う場合は、その民間オンブズマンには、例えばイギリスの場合は住宅オンブズマンとか銀行オンブズマンとかそういうものを言いますし、ニュージーランドでは銀行オンブズマンとかいうように、そういうのを民間オンブズマンと言っているということで、日本で言われるいわゆる市民オンブズマンは私はオンブズマンのカテゴリーに入れるべきではないというように思っております。
 それから、同じ文献の次のページに「管轄対象による分類」ということで、これは、例えば議会オンブズマンは行政全般に対して調査をするわけでございますけれども、特殊オンブズマンとか、私は特別オンブズマンと言っておりますけれども、ノルウェーの子どもオンブズマンとか、あるいはスウェーデンに、報道オンブズマンとか消費者オンブズマンとか男女差別の撤廃に関するオンブズマンとか、さまざまなオンブズマンができております。日本の地方自治体におきましても、人権オンブズマンとかあるいは福祉オンブズマンとか、こういうのが管轄対象別のオンブズマンであるということであります。それが第二点でございます。
 第三点は、憲法によりオンブズマン制度を設ける場合と法律によりオンブズマン制度を設ける場合がある。スウェーデンとかフィンランドとかデンマークは憲法によりオンブズマン制度を規定しておりまして、最近では、南アフリカとかエルサルバドルとかメキシコ、パラグアイ、コロンビアなどが憲法に基づいてオンブズマン制度が設けられております。
 私の意見といたしましては、憲法にオンブズマンの設置を規定することは、オンブズマン制度を憲法に位置づけることにより高い地位を与え独立性を保障しようとするものである、この意味で、憲法によりオンブズマン制度の設置を明記することは非常に重要である、しかしながら、憲法に定めないとオンブズマン制度を設けられないことを意味するものではなく、法律によりオンブズマン制度を設けることが可能なのは言うまでもない、こういう意見を持っております。
 第四点といたしまして、五〇年代に入ってオンブズマン制度が世界に注目され導入されてきたんでありますけれども、なぜ五〇年代に世界がオンブズマン制度を必要としたのか、ここをよく考えてみなきゃいけないんではないかなと思います。
 私は、三つの理由があると。
 第一点は、一九二九年の世界恐慌以来見られるようになったビッグガバメント、大きな政府、まあ福祉国家とか行政国家と言いますけれども、大きな政府現象を挙げなければいけない。統治機構の中でも国会とか議会とか内閣のもとでのビューロクラシー、官僚機構があるんですが、福祉国家の中においてビューロクラシーというのが巨大な力を持つようになってきた。これはもう、行政組織にいたしましても公務員の数にいたしましても、あるいは財政支出とかさまざまな分野で、国民の生活の隅々まで政府がサービスを供給するようになってきた。これは福祉国家現象と言われておりますけれども、各国は、この福祉国家に合わせるために、オンブズマン制度と、もう一つは情報公開制度を導入してきたということが一つ注目すべき点ではないかなというように思います。
 第二点は、第一とも関連をしますけれども、十九世紀型の政治システムにおける伝統的行政統制装置は、福祉国家の時代における大規模な行政組織を統制するには限界がある。要するに、十九世紀型の伝統的な行政統制、もう御承知のことだと思いますけれども、立法部門が意図した法律とかそういったものを行政部門が実際に実行しているかどうかということを立法部門が監視、統制する、司法部は実施の結果を司法審査するというのが伝統的な行政装置だと思いますけれども、一方の官僚機構が巨大な力を持つようになってきたということで、相対的に国会とか議会の統制装置というのが低下してきているんではないかなというように私は思います。そういうような必要性から、世界各国で五〇年代に導入をされていった。
 第三点は、福祉国家において伝統的な苦情処理制度が機能しなくなってきた。過去においては裁判所というのが市民の権利を守るとりでだったんですが、この裁判所も弾力性を失い、手続が非常に厄介である、また非常に時間がかかる、お金もかかるということで、なかなか市民が行政に対して被害を受けても、これを迅速に解決するということができない、そういう限界があるということで、この三点で世界に導入をされていったということであります。
 それから、レジュメに沿ってお話をしてまいりたいと思いますけれども、次に、日本の取り組みについて簡単にお話をしておきたいと思います。この四十二号の十二ページを見ていただきますと、「我が国におけるオンブズマン制度導入に向けた動き」ということで、簡潔にまとめられておりますので、参照させていただきたいと思います。
 我が国でオンブズマン制度が論議をされ始めたのは一九七七年のロッキード事件だということで、ほぼ世界で七〇年代にどんどん導入されたわけですから、日本で議論し始めたのもそんなにおくれて議論されたわけではないと、研究はその前から始まっておりますので。このロッキード関連で七九年に内閣総理大臣の私的諮問機関というのができておりまして、航空機疑惑問題等防止対策に関する協議会という、その提言の中で、我が国の風土に合ったオンブズマン制度のあり方について、長期的課題として検討する必要があるという意見があったというように明示をされております。
 それが最初のきっかけだと思いますが、八〇年には旧行政管理庁でオンブズマン制度研究会というのができた。臨調の最終答申で、八三年の三月のことでありますけれども、オンブズマン制度のあり方について、権威ある機関とする必要がある、それから、既存の制度では十分に果たし得ない役割を担当する必要があるということで、オンブズマン的な機能を持った機関を設けることを検討すべきだというのが臨調の最終答申になっております。
 その後、八六年にオンブズマン制度研究会が報告書をまとめておりますが、政府におきましては、その後本格的なオンブズマン制度の導入は行われていない。国会におきましては、九七年に衆議院の決算委員会が決算行政監視委員会、参議院の常任委員会の再編により行政監視委員会というのが設けられたということであります。
 よく議論されることでありますけれども、我が国においては、行政相談委員制度というのがある、これは類似制度でございますけれども。これは日本型オンブズマンである。全国に五千人、四千八百、その正確な数字は今ここにありませんけれども、五千人に近い行政相談委員が任命されていますよね。それは、国民の足元で行政に対する苦情を受け付けて相談しているということは、世界の中でも非常にユニークな制度で、非常に効果が上がっているということは私は見ておりますが、この日本型オンブズマンがあるということで、本当の意味での、例えば国会オンブズマンがこれに代置できるかというと、それは代置できない。両方とも連携しながら、国民の苦情とか行政に対する不満とかそういうものに対応していく、これは両方とも私は必要なんだろうと思うんですよ。だから、日本型オンブズマンがあるから国会オンブズマンとか行政府型オンブズマンが要らないということにはならないというような意見を持っております。
 それから、自治体につきましては、この四十二号の十七ページに自治体の状況、それから私の書きました論文の九章にずっと細かいことが出ておりますので、参照していただきたいと思います。
 自治体におきましては、九〇年に本格的なオンブズマンの導入が始まったということで、神奈川県の川崎市、私も関係して、日本の現行地方自治制度の中でどういうものができるかということで、相当知恵を絞ってつくり上げたんですが、市民オンブズマンが任命をされたというのが本格的なオンブズマンが日本に導入された最初だと思います。
 その後は、沖縄県とか北海道とか札幌市とか導入をされてきておりますが、大体、数えますと、現在四十に近い制度が地方自治体の中でつくられております。それは特別オンブズマン、介護関係のオンブズマンとか福祉オンブズマンとか人権オンブズマンとか、そういったものを含めて四十に近いオンブズマン制度ができているのではないかなと思っています。
 しかしながら、日本の場合、日本の自治体で今つくっているオンブズマンは、行政府型オンブズマンである。地方自治法をいろいろ検討しまして、どうも議会に置くのはなかなか現行制度では難しいのではないかなということで、市長が任命する附属機関としてのオンブズマンをつくろうということで、日本の地方自治体のオンブズマンは行政府型のオンブズマンであります。
 次に、レジュメの第二のオンブズマン制度の特色と機能というところに移ってまいりたいと思います。
 特色といたしましては、私は、五つあるのではないかなと。特にスウェーデン型のオンブズマンについてこれからお話をしたいと思いますけれども、これは本物のオンブズマンと私は見ておりますので。五つの特色がある。
 一つは、オンブズマンは執行部ではなくて立法部の公職者である。パブリックオフィシャルである。立法部に任命され、いつでも議会とか国会にレポートをすることができる。重大な事案については説明する年次報告書を立法部に提出するということが第一点であります。
 第二点は、公平な調査官である。政治的にも立法部から独立をしている。スウェーデンの場合、デンマークとか、憲法により規定され、その調査を開始すれば、立法者は干渉しない。それから、伝統的には、すべての有力な政党というのは、ほぼ彼の任命に対して同意するということでありまして、党派的な影響で任命されれば中立的なことが維持できませんので、超党派で任命に同意をする。
 第三点は、裁判所と違って、決定を取り消したり破棄する権限もなく、また、裁判所や行政に対して直接、実施を強制する権限はないということで、勧告権限のみが与えられている。これは、私はいろいろな各国のオンブズマンを見ておりますと、非常に勧告権限というのが意味がある。ほとんどの勧告された行政機関というのはそれに従っている。従わなかったのはまれなケースですね。ほとんど従ってやっているということであります。
 オンブズマンのパワーというのはどこにあるんだろうかというと、まず事実を調査し、事実をつかむ権限が与えられているということで、広範囲な調査権限が与えられております。スウェーデンのオンブズマンの場合は、まず、これはスウェーデン独特で、裁判所も調査の範囲に入っているんですね。裁判にも出席できますし、行政機関のいろいろな会議にも出席をすることができる。これは出席権を持っている。
 それから、視察権ですね。調査対象になっているどこの行政機関にも視察をすることができる。大体、スウェーデンの場合は、四十日か五十日、年に視察に行っていると言って、私がオンブズマンにお会いしたときに話がありましたけれども、出かけていって、ずっと、刑務所とかいろいろなところを見ながら、そこで服役者と話をしながら、そこで苦情が訴えられるとか、そういう形で視察権が与えられている。
 それから、調査権ですね。資料提出権、閲覧権が与えられておりまして、日本で川崎で導入する場合にいろいろありまして、プライバシーに関する、カルテとかそういったものもオンブズマンが見ることができるかどうかという議論がありまして、私は、オンブズマンは、ニュートラルであるために客観的に調査するには、あらゆる情報が見られるようにしなければ客観的に調査はできないわけだから当然であるということを言っておりますけれども、そういうように、資料を閲覧し、資料を要求する権利が与えられております。そういう意味で、客観的な調査ができるということであります。
 それから、影響はどういうところにあるかというと、調査の客観性、能力、卓越した知識、それからオンブズマンの威信、こういうものに基づいている。調査結果が、勧告をして、それでも従わない場合には、最終的には立法部と報道機関、そういうものに、立法部に報告をし、報道機関にパブリシティーをやる。パブリシティーまでやれば従わない行政機関はないわけですが、そういうように、公表するというのが有力な手段になっております。
 第四点といたしましては、自分のイニシアチブで調査する権限を持っている。これは職権調査と言っておりますけれども、スウェーデンの場合、一八一〇年から生まれまして、大体、一八〇〇年代というのはほとんど苦情はないんですね。年間七十件ぐらいだったと言っています。したがって、オンブズマンが視察に出かけていって、刑務所とかそういうところに行って、それでちょっときな臭いなと思えば職権調査で調べて、それを取り上げていってやる、そういうことが行われていたんですが、これは行政統制に非常に有効に働くということで、我が国のほとんどの地方自治体でも職権調査というのを、川崎でも私は入れるようにいたしましたけれども、これは非常に重要なことだと思います。
 第五点といたしましては、苦情の処理に当たっては、裁判所とは異なりまして、非常に直接的でインフォーマルで、しかも迅速で無料であるというところが裁判と違う点だろうと思いますね。したがって、無料ですから、私はハワイへ調査しに行ってきましたけれども、ハワイはハワイ島とかいろいろありますけれども、ハワイの州民は、直接コレクトコールでオンブズマン事務所に電話して、電話で受け付けて処理をするということで、非常に簡易、迅速に解決をするというのが第五の特色であります。
 それから、オンブズマンの機能と役割でございますけれども、今までお話ししたところをまとめますと、オンブズマンには、一つは、行政をコントロールする役割、機能がある。行政監視、行政統制というのが一つ重要な役割だと思いますね。第二点は、国民からの苦情を受理してそれを迅速に処理するという苦情処理機能というのがある。第三点は、行政手続の欠陥や法令、規則に問題があれば、それらの改善を勧告する機能がある。
 では、行政改革とオンブズマンの改善機能というのはどこが違うんだという点でありますけれども、オンブズマンの場合は、あらゆる行政改革について勧告したり提言するのではなくて、調査した結果、そこに欠陥があって、それを続けていけばまた国民が被害をこうむるおそれがある、そういった場合には、規則とか手続の改善を求める、勧告をする、意見表明をする、こういうような意味での行政改善の役割であります。
 以上がオンブズマン制度の特色と機能でありますけれども、最後に、オンブズマン制度導入の必要性と課題というところを、私の論文の第九章に書いております。
 二百九十八ページから三百一ページ、私の論文の方を見ていただきますと、我が国のオンブズマン制度導入には、先ほど申し上げましたように、本格的なオンブズマン制度は我が国で現在導入をされていない、国のレベルでですね。西欧におきましては、六〇年代、七〇年代でほとんどのところが導入をされたということでありますから、率直に申し上げまして、非常に立ちおくれている。
 情報公開制度も、アメリカで情報自由法ができたのは一九六六年ですから、日本で、国でできたのは、九九年に可決、成立したのですが、これも三十何年間おくれているということで、オンブズマン制度も、西欧で六〇年代、七〇年代に必要とした、ビッグガバメントに対する対応、行政統制に対する拡充、それから苦情処理制度、この三つの必要性というのは、日本でも六〇年代に生じていた。したがって、現在においては必要性がますます増大をしているという意見を私は持っております。
 そこの私の、必要性の理由の第三のところに、行政事件訴訟とか行政不服審査、苦情相談、行政監察、現行の行政救済制度には幾つかの制約があるということを書いております。オンブズマン制度研究会も既存の制度を評価、検討しておりまして、行政事件訴訟制度については、「国民の権利救済の手段として重要な役割を果たし、国民からみていわば権利救済の最後のとりでともいうべき存在となっている」、こういうように評価しておりますが、この制度には、訴えを提起するに当たっての厳格なスタンディング、原告適格、訴状による訴え、出訴期間などについては処分または採決があったことを知った日から三カ月以内に提起しなければならないなど、それから審理期間の長期化などの課題がある、こういう指摘がされております。
 行政相談委員制度については、先ほど申し上げましたのでここでは繰り返しませんけれども、そういう必要性があるということ。
 それから、可能性については一体どうなんだろうか。これは、憲法に設けるのは、とにかく重要な制度でありますから、位置づけるということは非常に重要なことで、憲法に位置づけることには私は非常に賛成でありますけれども、それでは憲法の改正をしなきゃできないかというと、法律によってオンブズマン制度を私は日本で導入することができると。これは、デンマーク、イギリス、議院内閣制をとっている国でありますから、法律で制度を導入することができるということは言うまでもないことであります。
 導入の課題がどういうところにあるかといいますと、レジュメに一から九つまで書いておりますが、これを全部やっておりますと時間がとてもいけませんので、幾つかのところをかいつまんでお話をしておきたいと思います。
 重要な点は、議会型オンブズマン設置か行政府型オンブズマンの設置かということだろうと思います。
 議会型オンブズマンの場合は、国民の代表により構成される国会に責任を負い、国会に所属する公職者である。運用上においては、立法部から独立した中立的な地位を確保する。行政府型のオンブズマンは、行政の長、例えば、国の場合でいうと内閣総理大臣、都道府県とか市町村の場合でいうと都道府県知事とか市町村長が任命するとされる公職である。ということで、議会型オンブズマンも行政府型オンブズマンも、いずれも日本で設置することが可能である。
 国でつくる場合に、議会型と行政府型の利点とマイナスというのがある。両者を慎重に比較する必要があると思いますが、行政の長が任命する行政府型オンブズマンの制度は、これはあくまでも内部統制である。要するに、みずから自己コントロールしましょう、そこにオンブズマンを置いて行政を監視したり国民の苦情を受けるという、非常に内部統制である。行政府や政治的影響から独立した地位を確保することに問題があるのではないか。一方では、行政の長の権限に依拠することにより、多くの案件を迅速かつ簡易、安価に処理することができるなどの長所を持っている。
 一方、議会型の場合は、議会が任命する制度でございますから、これは外部統制である。行政府から独立した中立的な立場から行政監視機能を公正に実施することができるという長所があります。ここにも幾つか問題がありまして、オンブズマンの任命に当たって、政党や政治的影響をいかに排除するかという課題がある。あるいは、オンブズマン事務局の独立性を確保し、調査能力のあるスタッフ組織をどのように整備するかという問題がある。
 いずれにいたしましても、国のレベルでオンブズマン制度を導入する場合は、議会型オンブズマンも行政府型オンブズマンも、いずれも設置可能であるということであります。
 いずれが適切であるかということでありますけれども、私は、行政府型オンブズマンよりも議会型の方が行政監視の機能はより有効に働き、国会に置くオンブズマンを制度化することに賛成であります。現行憲法の改正をしなくても、現行憲法の中で国会に置くオンブズマン制度をつくることができるという意見を持っております。
 これにつきましては、いろいろこの資料の中にも出ておりますけれども、肯定的な意見と否定的な意見が学界などでも議論をされてきております。憲法を改正しなければオンブズマン制度はできないということは、苦情処理というのは内閣に付与されている行政権にかかわるものであるということで、改正しなければできないという意見を持っている学者の先生もいらっしゃいます。
 私は、国会には、自分たち国会が意図したものを内閣が実行しているかどうかを監視する任務があると。行政統制は、国民の代表から構成される国会の重要な任務の一つである。この国会による行政統制を強化する手段として、さらに、国民が行政機関からこうむった不利益を救済する護民官として機能する中立的な第三者機関である立法オンブズマンの方がより適している。
 国民は、国会請願権というのがある、憲法十六条にありますようにね。だから、この請願権に基づいて、憲法の十六条を実定法で具体化する意味でも、国会に設けられたオンブズマンが国民の苦情を受け付けて処理をするということは憲法にかなっているというように意見を持っております。だから、苦情処理は行政権に属するということじゃなくて、ちゃんと憲法の十六条に基づいて処理することができるんだということであります。
 したがいまして、内閣は行政権の行使について国会に対して連帯して責任を負い、立法の意図に沿い内閣が実施しているか否かを監視することは国会の重要な役割であり、現行憲法のもとで、国会オンブズマンの制度化は可能であり支障はないというような意見を持っております。
 そのほかの課題といたしましては、制度の名称をどうするかとか任命の手続、資格要件とか人数をどうするかとかいろいろ細かい課題がございますけれども、時間が少し過ぎておりますので、私の陳述をこのぐらいで終わりにいたしたいと思います。
 どうもありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 115904192X00220040311_002

発言者: 宇都宮深志

speaker_id: 14571

日付: 2004-03-11

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会統治機構のあり方に関する調査小委員会