森下伸昭の発言 (憲法調査会統治機構のあり方に関する調査小委員会)

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○森下会計検査院長 会計検査院長の森下でございます。
 本日は、憲法調査会で会計検査院について説明をする機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
 それでは、説明に入ります。
 まず、会計検査院の現行法制上の地位でございますが、会計検査院は、憲法九十条と会計検査院法の一条によりまして、国会、裁判所、内閣のいずれにも属さない独立した機関とされております。そして、その使命は、憲法では、国の収入支出の決算を検査し、検査報告を作成して、内閣を経由して国会へ提出することとされております。具体的な組織、権限は法律に委任され、会計検査院法が制定されております。
 会計検査院の独立の意義でございますが、国の財政監督機関として、客観的、中立の立場に立って厳正、公平にその職務を遂行するために、検査を受けるものを初めとし、さまざまな外部の勢力からの影響を受けないで、中立、公正な立場からの活動や意思決定が行えることが必要であろうというふうに考えております。
 この独立性を担保する措置といたしまして、現行法では三つを挙げることができようかと思います。人事の面から、検査活動の面から、それから予算の面からということでございます。
 まず、人事面での独立性でございますけれども、検査院は、意思決定機関である検査官会議と、その指揮監督のもとに検査等の事務を行う事務総局とから構成されております。
 このうち、検査官会議の構成員である三人の検査官の任命は内閣が行いますが、この任命に当たっては、国会の両議院の同意が必要となっております。検査官は任命されますと、心身の故障等の場合を除いて、その意に反してその官を失うことがないという身分保障が与えられております。
 また、事務総局の職員の任免、進退につきましても、検査官会議の合議によって院長が行うこととされております。このようにして、人事面について外部の意思が介入しないような仕組みになっているわけでございます。
 次に、検査活動の独立性につきましては、規則制定権というのが国会や裁判所と同様に認められております。これによりまして、会計検査院は、検査報告に掲記する事項を定めたり、各省庁から提出させる計算書の書式や証拠書類の種類を定めたりすることができまして、会計検査に必要な事項は、閣議決定を要する政令によらないで、会計検査院法を運用していくことができる、そういう自主性が認められているということでございます。
 それから三つ目の、予算における独立性でございますが、財政法において二重予算制度というのがとられております。
 予算は内閣において編成されますが、会計検査院の歳出見積もりを減額した場合、検査院の要求額を歳入歳出予算に付記して、国会が、この歳出額を修正する場合の必要な財源についても明記する、こういう仕組みが財政法に規定されております。
 これは、国会、裁判所についても同様でございますけれども、独立機関の独立性を予算の面から制約することがないようにという趣旨から出たものでございます。ただ、会計検査院の予算につきまして、この規定が今までに発動されたことはございません。
 さらに、独立性についての国際的認識を御紹介いたしますと、各国の会計検査院の組織であります最高会計検査機関国際組織、INTOSAIというふうに略称しておりますが、このINTOSAIの一九七七年リマ宣言によりますと、各国は、会計検査院の独立性を憲法または法律によって保障することが不可欠であること、それから、会計検査院の独立性は、受検庁から独立し、かつ外部の影響から保護されている場合に限り、その職務を客観的かつ効果的に遂行できるものであるという旨が掲げられているところでございます。
 このように、幾つかの措置がとられており、会計検査院の独立性が確保されているということでございます。
 それから次に、会計検査院と国会との関係を御説明申し上げます。
 国権の最高機関である国会は、内閣から決算と会計検査院の検査報告の提出を受けるところでありまして、また、その決算を審議する機関でもあります。したがいまして、会計検査院は独立機関ではございますが、国会と密接な関係を有していることになります。
 国会との関係について幾つか御説明をいたしますと、まず第一には、検査官の任命には国会の同意が必要となっております。これは先ほど独立性のところで申し上げたとおりでございます。
 それから、二つ目に挙げられますのは、国会が検査院の検査報告の提出先となっているということでございます。会計検査院は、内閣を通してその検査報告を国会に提出しております。国会の決算審査の際、この検査報告も参考資料としながら審議が行われております。
 この検査報告の提出期限につきましては、憲法では「次の年度に、」と定められ、財政法四十条で「翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とする。」とされておりまして、近年では、別紙二に資料がございますけれども、会計検査院から内閣への送付が十一月の末ごろとなっておりますが、国会への提出は翌年の常会の冒頭、一月下旬ごろとなっておりました。
 これに対しまして、昨年、参議院から内閣に対し、平成十五年度決算以降は、決算の国会への提出期限はこれを早めて、会計年度翌年の十一月二十日前後にお願いしたいという要請があり、本年の検査から、会計検査院もこれに協力すべく、検査サイクルの大幅な前倒しをして現在検査に臨んでいるところでございます。
 これは、十一月二十日前後に召集されているであろう臨時国会に決算と検査報告が提出されることによりまして、直ちにそこで決算審査を行い、十二月から本格的に行われる予算編成に国会の決算審査の内容を反映させるという目的を持っているものでございます。このことが実現いたしますと、予算におけるプラン・ドゥー・シーのサイクルが完成することになるわけでございます。
 具体的に申し上げますと、十二月の予算編成から始まって国会での予算審議、それから予算の成立、新年度においての予算の執行、そして年度終了による決算の作成、会計検査院による決算検査と検査報告、それが秋の国会に提出され、そこで決算審査が行われ、また次の年度の予算編成、十二月に行われます予算編成に反映されるという予算過程の循環が閉じることになるわけでございます。
 国会とそれから検査院の関係でさらに申し上げますと、会計検査院長以下検査院の職員の国会での出席説明ということがございます。これは、各議院の委員会は、会計検査院長の出席説明を求めることができると国会法でされており、また会計検査院も、検査報告に関して国会に出席して説明することができることと会計検査院法でなっております。実際にも、たびたび決算委員会を初め各種の委員会に出席をして説明しているところでございます。
 さらに、平成十年の通常国会から、国会による検査要請ができるようになりました。国会の各議院または各議院の委員会は、会計検査院に対して、特定の事項について会計検査を行い、その結果を報告するよう求めることができるというふうになったわけでございます。
 これまで、二件の実績がございます。その事項については別紙三にタイトルを紹介してございますが、平成十年の衆議院決算行政監視委員会からの公的宿泊施設の運営についてという事項と、それから、平成十二年に参議院行政監視委員会からの政府開発援助に関する決議の実施状況についてという事項の二件でございます。
 正式の検査要請は以上の二件、これまで二件でございますけれども、会計検査院といたしましては、正式の検査要請には至りませんけれども、国会の審議の内容を念頭に置きまして、会計検査院の判断において検査を実施して、それを検査報告に掲記してきたものも幾つかあるわけでございます。
 それから、さらに国会と会計検査院との関係で申し上げますと、衆参両議院のそれぞれの関係の調査室へ検査報告の内容をかなり詳細に説明を行っております。衆議院においては決算行政監視調査室であり、参議院では決算調査室でございますけれども、本年の例でいきますと、それぞれ、衆議院に対しましては延べ十九日をかけて約八十時間、それから参議院に対しましては延べ十日間、五十五時間をかけて会計検査院の担当課長が説明に当たっております。
 このように、会計検査院は国会と密接な連携を図って、その検査活動の効果を上げるようにしているということでございます。
 今度は、検査成果の反映ということについて御説明をいたします。検査結果は、行政や予算へどのように反映しているのかを説明いたします。
 会計検査院は、会計経理を監督し、その適正を期し、かつ是正を図ることを目的として、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性など多角的な観点から常時会計検査を行っておりますが、その検査結果を行政や制度あるいは予算へ反映させるための仕組みや取り組みについて、次のようなものを挙げることができると思います。
 まず第一には、国会の審議を通じての反映ということでございます。会計検査院の検査結果は、検査報告によって国会へ報告され、国会における決算審査の際の重要な参考資料となっております。この審議に当たりましては、会計検査院の職員のほか、財政当局や関係省庁も出席して説明を求められております。このことによって、会計検査院の検査成果が行政や予算編成に反映されるという道筋が一つございます。
 それから、決算審議が終了する際に、衆参両院とも、多少違いがあるようですけれども、警告決議でありますとか報告を求める決議が行われており、この中には検査報告で取り上げた事項も含まれておりますことから、各省庁に対するインパクトは大きいものがあるというふうに考えられます。
 それからまた、政府が毎年度決算及び検査報告とともに国会に提出しております「決算検査報告に関し国会に対する説明書」という文書には、会計検査院が不当事項として掲記した事項についての各省庁でとられた補助金の返還やあるいは手直し工事等の是正の処置が記載されておりますし、さらに、会計検査院法三十四条または三十六条によって、意見を表示したり改善の処置を要求したりした事項についての各省庁の対処方針が記載されておりまして、各省庁には検査の結果に対して速やかに処置を講ずることがこのことによって求められているということが言えようかと思います。
 それから、会計検査院といたしましても、院法三十四条または三十六条によって、行政庁に対し改善の処置を要求したり意見を表示したりした事項につきましては、指摘を受けて各省庁がとった処置を把握いたしまして検査報告に掲記しなければならないこととなっております。これによって、事後処置の状況が国会へ報告されることになりまして、各省庁に対する是正改善への牽制となっているというふうに考えられます。
 次に、三番目に、これは予算編成、予算への反映についてでございますけれども、国会審議による予算への反映は当然のことでございますけれども、会計検査院としても、財務省の主計局や理財局との間で毎年定期的に連絡会を開催して、財務省からは予算編成の考え方を聴取したり、検査院からは検査結果を説明したりして、予算編成等に関して相互の活動に資することとしております。
 昨年の例でいきますと、三月に延べ八日間、七月から八月にかけて延べ六日間、それから秋には財務省の主計局長と会計検査院の事務総局次長が会談をし、意見交換、情報交換もしております。
 さらに補足して申し上げますと、会計検査院は、検査報告に掲記した事項についてもその後の状況をフォローアップするように努めておりまして、改善の実が十分上がっていないような事態があればさらに検査を深めて検査報告に再度掲記するというようなことも行っております。
 例えば、昨年のODAの検査におきましては、過去に効果が上がっていないとして取り上げました事業について、その改善状況を調査してその結果を検査報告に掲記する、こういうことをやってみました。
 戦前の会計検査院法では、法律または行政上改正を要すべき点があれば、天皇に上奏することができましたけれども、主務官庁には注意書を発するのみで、直接積極的に行政庁に対し是正改善を求める方途がなかったということの反省に立ちまして、現行の院法は、検査結果を直ちに行政に反映させる方途として、この院法の三十四条や三十六条の各省庁に対する改善処置の要求あるいは改善の意見の表示を規定したということでございます。
 また、会計検査院のそれぞれの局長は、各省庁等検査を受ける者に対して質問を発することができます。そして、その回答を受け取っているわけでございますが、その受検庁とのやりとりの中で、検査結果を行政や予算執行に反映させるということも可能になってきているわけでございます。
 会計検査院は、今申し上げましたように、憲法、法律によって独立性を保障され、そして自主的な検査活動を積極的に行いまして、国会との連携を図りながら、その検査成果を行政や予算に反映させるように努めているところでございます。
 最後に、外国の会計検査院についてごく簡単に御紹介をいたします。
 まず、アメリカですけれども、GAOと呼ばれまして、明文の規定はございませんが、実質的には連邦議会の附属機関とされております。毎年千件ぐらいの報告書を議会等に提出しておりますが、議会はこれらの検査報告に基づいて連邦省庁に対する改善勧告を行っております。議会や議員個人からの検査要請は、その報告の九〇%程度を占めていると言われております。ただ、この中に勧告の内容を含むのは半数程度であろうということも言われております。
 次に、イギリスでございますが、NAOと呼ばれ、院長は下院の官吏とされております。そして、会計検査院という組織は院長の職務執行を補助する機関とされております。NAOは財務検査とバリュー・フォー・マネーの検査を行っております。
 前者に関しては、毎年五百ないし六百件の報告書、それからバリュー・フォー・マネーに関しては、五十件前後の報告書を下院の決算委員会に提出しております。下院の決算委員会は、NAOの検査報告書に基づきまして、各省庁への改善勧告をまとめた委員会報告書というものと、それから改善措置をまとめた財務省覚書というものを作成いたしまして、本会議で議決しているということでございます。
 ドイツにつきましては、議会にも政府にも裁判所にも属さない独立機関でございます。検査報告は年度終了後議会と政府へ提出されますが、特別検査報告というのが毎年十ないし十五件あるということでございます。下院では、この検査報告をもとに予算委員会報告書を作成し議決をしております。
 それから、フランスにつきましては、これも議会にも政府にも裁判所にも属さない独立機関であります。年次報告書が大統領と議会両院に提出されておりまして、業績検査報告書が議会からの要請を含めて年間数件程度提出されているということでございます。
 以上、雑駁な説明でございましたが、これで終わります。

発言情報

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発言者: 森下伸昭

speaker_id: 7157

日付: 2004-05-27

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会統治機構のあり方に関する調査小委員会