憲法調査会統治機構のあり方に関する調査小委員会
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会
会議録情報#0
平成十六年五月二十七日(木曜日)
午後二時四分開議
出席小委員
小委員長 鈴木 克昌君
岩永 峯一君 永岡 洋治君
野田 毅君 船田 元君
古屋 圭司君 森山 眞弓君
鹿野 道彦君 玄葉光一郎君
辻 惠君 馬淵 澄夫君
斉藤 鉄夫君 山口 富男君
土井たか子君
…………………………………
憲法調査会会長 中山 太郎君
会計検査院長 森下 伸昭君
会計検査院事務総局次長 重松 博之君
参考人
(一橋大学大学院法学研究科助教授) 只野 雅人君
衆議院憲法調査会事務局長 内田 正文君
—————————————
五月二十七日
小委員土井たか子君同日委員辞任につき、その補欠として土井たか子君が会長の指名で小委員に選任された。
同日
小委員衛藤征士郎君同日小委員辞任につき、その補欠として船田元君が会長の指名で小委員に選任された。
同日
小委員船田元君同日小委員辞任につき、その補欠として衛藤征士郎君が会長の指名で小委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
統治機構のあり方に関する件(二院制と会計検査制度)
————◇—————
この発言だけを見る →午後二時四分開議
出席小委員
小委員長 鈴木 克昌君
岩永 峯一君 永岡 洋治君
野田 毅君 船田 元君
古屋 圭司君 森山 眞弓君
鹿野 道彦君 玄葉光一郎君
辻 惠君 馬淵 澄夫君
斉藤 鉄夫君 山口 富男君
土井たか子君
…………………………………
憲法調査会会長 中山 太郎君
会計検査院長 森下 伸昭君
会計検査院事務総局次長 重松 博之君
参考人
(一橋大学大学院法学研究科助教授) 只野 雅人君
衆議院憲法調査会事務局長 内田 正文君
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五月二十七日
小委員土井たか子君同日委員辞任につき、その補欠として土井たか子君が会長の指名で小委員に選任された。
同日
小委員衛藤征士郎君同日小委員辞任につき、その補欠として船田元君が会長の指名で小委員に選任された。
同日
小委員船田元君同日小委員辞任につき、その補欠として衛藤征士郎君が会長の指名で小委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
統治機構のあり方に関する件(二院制と会計検査制度)
————◇—————
鈴
鈴木克昌#1
○鈴木小委員長 これより会議を開きます。
統治機構のあり方に関する件、特に二院制と会計検査制度について調査を進めます。
本日は、参考人として一橋大学大学院法学研究科助教授只野雅人君に御出席をいただいております。
この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。
本日の議事の順序について申し上げます。
二院制と会計検査制度について、まず、会計検査院当局から説明を聴取いたします。次に、只野参考人から御意見を四十分以内でお述べいただきます。次に、参考人及び会計検査院当局に対する質疑を行います。
なお、発言する際はその都度小委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は小委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
御発言は着席のままでお願いいたします。
それでは、まず、会計検査院当局から説明を聴取いたします。会計検査院長森下伸昭君。
この発言だけを見る →統治機構のあり方に関する件、特に二院制と会計検査制度について調査を進めます。
本日は、参考人として一橋大学大学院法学研究科助教授只野雅人君に御出席をいただいております。
この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。
本日の議事の順序について申し上げます。
二院制と会計検査制度について、まず、会計検査院当局から説明を聴取いたします。次に、只野参考人から御意見を四十分以内でお述べいただきます。次に、参考人及び会計検査院当局に対する質疑を行います。
なお、発言する際はその都度小委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は小委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
御発言は着席のままでお願いいたします。
それでは、まず、会計検査院当局から説明を聴取いたします。会計検査院長森下伸昭君。
森
森下伸昭#2
○森下会計検査院長 会計検査院長の森下でございます。
本日は、憲法調査会で会計検査院について説明をする機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
それでは、説明に入ります。
まず、会計検査院の現行法制上の地位でございますが、会計検査院は、憲法九十条と会計検査院法の一条によりまして、国会、裁判所、内閣のいずれにも属さない独立した機関とされております。そして、その使命は、憲法では、国の収入支出の決算を検査し、検査報告を作成して、内閣を経由して国会へ提出することとされております。具体的な組織、権限は法律に委任され、会計検査院法が制定されております。
会計検査院の独立の意義でございますが、国の財政監督機関として、客観的、中立の立場に立って厳正、公平にその職務を遂行するために、検査を受けるものを初めとし、さまざまな外部の勢力からの影響を受けないで、中立、公正な立場からの活動や意思決定が行えることが必要であろうというふうに考えております。
この独立性を担保する措置といたしまして、現行法では三つを挙げることができようかと思います。人事の面から、検査活動の面から、それから予算の面からということでございます。
まず、人事面での独立性でございますけれども、検査院は、意思決定機関である検査官会議と、その指揮監督のもとに検査等の事務を行う事務総局とから構成されております。
このうち、検査官会議の構成員である三人の検査官の任命は内閣が行いますが、この任命に当たっては、国会の両議院の同意が必要となっております。検査官は任命されますと、心身の故障等の場合を除いて、その意に反してその官を失うことがないという身分保障が与えられております。
また、事務総局の職員の任免、進退につきましても、検査官会議の合議によって院長が行うこととされております。このようにして、人事面について外部の意思が介入しないような仕組みになっているわけでございます。
次に、検査活動の独立性につきましては、規則制定権というのが国会や裁判所と同様に認められております。これによりまして、会計検査院は、検査報告に掲記する事項を定めたり、各省庁から提出させる計算書の書式や証拠書類の種類を定めたりすることができまして、会計検査に必要な事項は、閣議決定を要する政令によらないで、会計検査院法を運用していくことができる、そういう自主性が認められているということでございます。
それから三つ目の、予算における独立性でございますが、財政法において二重予算制度というのがとられております。
予算は内閣において編成されますが、会計検査院の歳出見積もりを減額した場合、検査院の要求額を歳入歳出予算に付記して、国会が、この歳出額を修正する場合の必要な財源についても明記する、こういう仕組みが財政法に規定されております。
これは、国会、裁判所についても同様でございますけれども、独立機関の独立性を予算の面から制約することがないようにという趣旨から出たものでございます。ただ、会計検査院の予算につきまして、この規定が今までに発動されたことはございません。
さらに、独立性についての国際的認識を御紹介いたしますと、各国の会計検査院の組織であります最高会計検査機関国際組織、INTOSAIというふうに略称しておりますが、このINTOSAIの一九七七年リマ宣言によりますと、各国は、会計検査院の独立性を憲法または法律によって保障することが不可欠であること、それから、会計検査院の独立性は、受検庁から独立し、かつ外部の影響から保護されている場合に限り、その職務を客観的かつ効果的に遂行できるものであるという旨が掲げられているところでございます。
このように、幾つかの措置がとられており、会計検査院の独立性が確保されているということでございます。
それから次に、会計検査院と国会との関係を御説明申し上げます。
国権の最高機関である国会は、内閣から決算と会計検査院の検査報告の提出を受けるところでありまして、また、その決算を審議する機関でもあります。したがいまして、会計検査院は独立機関ではございますが、国会と密接な関係を有していることになります。
国会との関係について幾つか御説明をいたしますと、まず第一には、検査官の任命には国会の同意が必要となっております。これは先ほど独立性のところで申し上げたとおりでございます。
それから、二つ目に挙げられますのは、国会が検査院の検査報告の提出先となっているということでございます。会計検査院は、内閣を通してその検査報告を国会に提出しております。国会の決算審査の際、この検査報告も参考資料としながら審議が行われております。
この検査報告の提出期限につきましては、憲法では「次の年度に、」と定められ、財政法四十条で「翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とする。」とされておりまして、近年では、別紙二に資料がございますけれども、会計検査院から内閣への送付が十一月の末ごろとなっておりますが、国会への提出は翌年の常会の冒頭、一月下旬ごろとなっておりました。
これに対しまして、昨年、参議院から内閣に対し、平成十五年度決算以降は、決算の国会への提出期限はこれを早めて、会計年度翌年の十一月二十日前後にお願いしたいという要請があり、本年の検査から、会計検査院もこれに協力すべく、検査サイクルの大幅な前倒しをして現在検査に臨んでいるところでございます。
これは、十一月二十日前後に召集されているであろう臨時国会に決算と検査報告が提出されることによりまして、直ちにそこで決算審査を行い、十二月から本格的に行われる予算編成に国会の決算審査の内容を反映させるという目的を持っているものでございます。このことが実現いたしますと、予算におけるプラン・ドゥー・シーのサイクルが完成することになるわけでございます。
具体的に申し上げますと、十二月の予算編成から始まって国会での予算審議、それから予算の成立、新年度においての予算の執行、そして年度終了による決算の作成、会計検査院による決算検査と検査報告、それが秋の国会に提出され、そこで決算審査が行われ、また次の年度の予算編成、十二月に行われます予算編成に反映されるという予算過程の循環が閉じることになるわけでございます。
国会とそれから検査院の関係でさらに申し上げますと、会計検査院長以下検査院の職員の国会での出席説明ということがございます。これは、各議院の委員会は、会計検査院長の出席説明を求めることができると国会法でされており、また会計検査院も、検査報告に関して国会に出席して説明することができることと会計検査院法でなっております。実際にも、たびたび決算委員会を初め各種の委員会に出席をして説明しているところでございます。
さらに、平成十年の通常国会から、国会による検査要請ができるようになりました。国会の各議院または各議院の委員会は、会計検査院に対して、特定の事項について会計検査を行い、その結果を報告するよう求めることができるというふうになったわけでございます。
これまで、二件の実績がございます。その事項については別紙三にタイトルを紹介してございますが、平成十年の衆議院決算行政監視委員会からの公的宿泊施設の運営についてという事項と、それから、平成十二年に参議院行政監視委員会からの政府開発援助に関する決議の実施状況についてという事項の二件でございます。
正式の検査要請は以上の二件、これまで二件でございますけれども、会計検査院といたしましては、正式の検査要請には至りませんけれども、国会の審議の内容を念頭に置きまして、会計検査院の判断において検査を実施して、それを検査報告に掲記してきたものも幾つかあるわけでございます。
それから、さらに国会と会計検査院との関係で申し上げますと、衆参両議院のそれぞれの関係の調査室へ検査報告の内容をかなり詳細に説明を行っております。衆議院においては決算行政監視調査室であり、参議院では決算調査室でございますけれども、本年の例でいきますと、それぞれ、衆議院に対しましては延べ十九日をかけて約八十時間、それから参議院に対しましては延べ十日間、五十五時間をかけて会計検査院の担当課長が説明に当たっております。
このように、会計検査院は国会と密接な連携を図って、その検査活動の効果を上げるようにしているということでございます。
今度は、検査成果の反映ということについて御説明をいたします。検査結果は、行政や予算へどのように反映しているのかを説明いたします。
会計検査院は、会計経理を監督し、その適正を期し、かつ是正を図ることを目的として、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性など多角的な観点から常時会計検査を行っておりますが、その検査結果を行政や制度あるいは予算へ反映させるための仕組みや取り組みについて、次のようなものを挙げることができると思います。
まず第一には、国会の審議を通じての反映ということでございます。会計検査院の検査結果は、検査報告によって国会へ報告され、国会における決算審査の際の重要な参考資料となっております。この審議に当たりましては、会計検査院の職員のほか、財政当局や関係省庁も出席して説明を求められております。このことによって、会計検査院の検査成果が行政や予算編成に反映されるという道筋が一つございます。
それから、決算審議が終了する際に、衆参両院とも、多少違いがあるようですけれども、警告決議でありますとか報告を求める決議が行われており、この中には検査報告で取り上げた事項も含まれておりますことから、各省庁に対するインパクトは大きいものがあるというふうに考えられます。
それからまた、政府が毎年度決算及び検査報告とともに国会に提出しております「決算検査報告に関し国会に対する説明書」という文書には、会計検査院が不当事項として掲記した事項についての各省庁でとられた補助金の返還やあるいは手直し工事等の是正の処置が記載されておりますし、さらに、会計検査院法三十四条または三十六条によって、意見を表示したり改善の処置を要求したりした事項についての各省庁の対処方針が記載されておりまして、各省庁には検査の結果に対して速やかに処置を講ずることがこのことによって求められているということが言えようかと思います。
それから、会計検査院といたしましても、院法三十四条または三十六条によって、行政庁に対し改善の処置を要求したり意見を表示したりした事項につきましては、指摘を受けて各省庁がとった処置を把握いたしまして検査報告に掲記しなければならないこととなっております。これによって、事後処置の状況が国会へ報告されることになりまして、各省庁に対する是正改善への牽制となっているというふうに考えられます。
次に、三番目に、これは予算編成、予算への反映についてでございますけれども、国会審議による予算への反映は当然のことでございますけれども、会計検査院としても、財務省の主計局や理財局との間で毎年定期的に連絡会を開催して、財務省からは予算編成の考え方を聴取したり、検査院からは検査結果を説明したりして、予算編成等に関して相互の活動に資することとしております。
昨年の例でいきますと、三月に延べ八日間、七月から八月にかけて延べ六日間、それから秋には財務省の主計局長と会計検査院の事務総局次長が会談をし、意見交換、情報交換もしております。
さらに補足して申し上げますと、会計検査院は、検査報告に掲記した事項についてもその後の状況をフォローアップするように努めておりまして、改善の実が十分上がっていないような事態があればさらに検査を深めて検査報告に再度掲記するというようなことも行っております。
例えば、昨年のODAの検査におきましては、過去に効果が上がっていないとして取り上げました事業について、その改善状況を調査してその結果を検査報告に掲記する、こういうことをやってみました。
戦前の会計検査院法では、法律または行政上改正を要すべき点があれば、天皇に上奏することができましたけれども、主務官庁には注意書を発するのみで、直接積極的に行政庁に対し是正改善を求める方途がなかったということの反省に立ちまして、現行の院法は、検査結果を直ちに行政に反映させる方途として、この院法の三十四条や三十六条の各省庁に対する改善処置の要求あるいは改善の意見の表示を規定したということでございます。
また、会計検査院のそれぞれの局長は、各省庁等検査を受ける者に対して質問を発することができます。そして、その回答を受け取っているわけでございますが、その受検庁とのやりとりの中で、検査結果を行政や予算執行に反映させるということも可能になってきているわけでございます。
会計検査院は、今申し上げましたように、憲法、法律によって独立性を保障され、そして自主的な検査活動を積極的に行いまして、国会との連携を図りながら、その検査成果を行政や予算に反映させるように努めているところでございます。
最後に、外国の会計検査院についてごく簡単に御紹介をいたします。
まず、アメリカですけれども、GAOと呼ばれまして、明文の規定はございませんが、実質的には連邦議会の附属機関とされております。毎年千件ぐらいの報告書を議会等に提出しておりますが、議会はこれらの検査報告に基づいて連邦省庁に対する改善勧告を行っております。議会や議員個人からの検査要請は、その報告の九〇%程度を占めていると言われております。ただ、この中に勧告の内容を含むのは半数程度であろうということも言われております。
次に、イギリスでございますが、NAOと呼ばれ、院長は下院の官吏とされております。そして、会計検査院という組織は院長の職務執行を補助する機関とされております。NAOは財務検査とバリュー・フォー・マネーの検査を行っております。
前者に関しては、毎年五百ないし六百件の報告書、それからバリュー・フォー・マネーに関しては、五十件前後の報告書を下院の決算委員会に提出しております。下院の決算委員会は、NAOの検査報告書に基づきまして、各省庁への改善勧告をまとめた委員会報告書というものと、それから改善措置をまとめた財務省覚書というものを作成いたしまして、本会議で議決しているということでございます。
ドイツにつきましては、議会にも政府にも裁判所にも属さない独立機関でございます。検査報告は年度終了後議会と政府へ提出されますが、特別検査報告というのが毎年十ないし十五件あるということでございます。下院では、この検査報告をもとに予算委員会報告書を作成し議決をしております。
それから、フランスにつきましては、これも議会にも政府にも裁判所にも属さない独立機関であります。年次報告書が大統領と議会両院に提出されておりまして、業績検査報告書が議会からの要請を含めて年間数件程度提出されているということでございます。
以上、雑駁な説明でございましたが、これで終わります。
この発言だけを見る →本日は、憲法調査会で会計検査院について説明をする機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。
それでは、説明に入ります。
まず、会計検査院の現行法制上の地位でございますが、会計検査院は、憲法九十条と会計検査院法の一条によりまして、国会、裁判所、内閣のいずれにも属さない独立した機関とされております。そして、その使命は、憲法では、国の収入支出の決算を検査し、検査報告を作成して、内閣を経由して国会へ提出することとされております。具体的な組織、権限は法律に委任され、会計検査院法が制定されております。
会計検査院の独立の意義でございますが、国の財政監督機関として、客観的、中立の立場に立って厳正、公平にその職務を遂行するために、検査を受けるものを初めとし、さまざまな外部の勢力からの影響を受けないで、中立、公正な立場からの活動や意思決定が行えることが必要であろうというふうに考えております。
この独立性を担保する措置といたしまして、現行法では三つを挙げることができようかと思います。人事の面から、検査活動の面から、それから予算の面からということでございます。
まず、人事面での独立性でございますけれども、検査院は、意思決定機関である検査官会議と、その指揮監督のもとに検査等の事務を行う事務総局とから構成されております。
このうち、検査官会議の構成員である三人の検査官の任命は内閣が行いますが、この任命に当たっては、国会の両議院の同意が必要となっております。検査官は任命されますと、心身の故障等の場合を除いて、その意に反してその官を失うことがないという身分保障が与えられております。
また、事務総局の職員の任免、進退につきましても、検査官会議の合議によって院長が行うこととされております。このようにして、人事面について外部の意思が介入しないような仕組みになっているわけでございます。
次に、検査活動の独立性につきましては、規則制定権というのが国会や裁判所と同様に認められております。これによりまして、会計検査院は、検査報告に掲記する事項を定めたり、各省庁から提出させる計算書の書式や証拠書類の種類を定めたりすることができまして、会計検査に必要な事項は、閣議決定を要する政令によらないで、会計検査院法を運用していくことができる、そういう自主性が認められているということでございます。
それから三つ目の、予算における独立性でございますが、財政法において二重予算制度というのがとられております。
予算は内閣において編成されますが、会計検査院の歳出見積もりを減額した場合、検査院の要求額を歳入歳出予算に付記して、国会が、この歳出額を修正する場合の必要な財源についても明記する、こういう仕組みが財政法に規定されております。
これは、国会、裁判所についても同様でございますけれども、独立機関の独立性を予算の面から制約することがないようにという趣旨から出たものでございます。ただ、会計検査院の予算につきまして、この規定が今までに発動されたことはございません。
さらに、独立性についての国際的認識を御紹介いたしますと、各国の会計検査院の組織であります最高会計検査機関国際組織、INTOSAIというふうに略称しておりますが、このINTOSAIの一九七七年リマ宣言によりますと、各国は、会計検査院の独立性を憲法または法律によって保障することが不可欠であること、それから、会計検査院の独立性は、受検庁から独立し、かつ外部の影響から保護されている場合に限り、その職務を客観的かつ効果的に遂行できるものであるという旨が掲げられているところでございます。
このように、幾つかの措置がとられており、会計検査院の独立性が確保されているということでございます。
それから次に、会計検査院と国会との関係を御説明申し上げます。
国権の最高機関である国会は、内閣から決算と会計検査院の検査報告の提出を受けるところでありまして、また、その決算を審議する機関でもあります。したがいまして、会計検査院は独立機関ではございますが、国会と密接な関係を有していることになります。
国会との関係について幾つか御説明をいたしますと、まず第一には、検査官の任命には国会の同意が必要となっております。これは先ほど独立性のところで申し上げたとおりでございます。
それから、二つ目に挙げられますのは、国会が検査院の検査報告の提出先となっているということでございます。会計検査院は、内閣を通してその検査報告を国会に提出しております。国会の決算審査の際、この検査報告も参考資料としながら審議が行われております。
この検査報告の提出期限につきましては、憲法では「次の年度に、」と定められ、財政法四十条で「翌年度開会の常会において国会に提出するのを常例とする。」とされておりまして、近年では、別紙二に資料がございますけれども、会計検査院から内閣への送付が十一月の末ごろとなっておりますが、国会への提出は翌年の常会の冒頭、一月下旬ごろとなっておりました。
これに対しまして、昨年、参議院から内閣に対し、平成十五年度決算以降は、決算の国会への提出期限はこれを早めて、会計年度翌年の十一月二十日前後にお願いしたいという要請があり、本年の検査から、会計検査院もこれに協力すべく、検査サイクルの大幅な前倒しをして現在検査に臨んでいるところでございます。
これは、十一月二十日前後に召集されているであろう臨時国会に決算と検査報告が提出されることによりまして、直ちにそこで決算審査を行い、十二月から本格的に行われる予算編成に国会の決算審査の内容を反映させるという目的を持っているものでございます。このことが実現いたしますと、予算におけるプラン・ドゥー・シーのサイクルが完成することになるわけでございます。
具体的に申し上げますと、十二月の予算編成から始まって国会での予算審議、それから予算の成立、新年度においての予算の執行、そして年度終了による決算の作成、会計検査院による決算検査と検査報告、それが秋の国会に提出され、そこで決算審査が行われ、また次の年度の予算編成、十二月に行われます予算編成に反映されるという予算過程の循環が閉じることになるわけでございます。
国会とそれから検査院の関係でさらに申し上げますと、会計検査院長以下検査院の職員の国会での出席説明ということがございます。これは、各議院の委員会は、会計検査院長の出席説明を求めることができると国会法でされており、また会計検査院も、検査報告に関して国会に出席して説明することができることと会計検査院法でなっております。実際にも、たびたび決算委員会を初め各種の委員会に出席をして説明しているところでございます。
さらに、平成十年の通常国会から、国会による検査要請ができるようになりました。国会の各議院または各議院の委員会は、会計検査院に対して、特定の事項について会計検査を行い、その結果を報告するよう求めることができるというふうになったわけでございます。
これまで、二件の実績がございます。その事項については別紙三にタイトルを紹介してございますが、平成十年の衆議院決算行政監視委員会からの公的宿泊施設の運営についてという事項と、それから、平成十二年に参議院行政監視委員会からの政府開発援助に関する決議の実施状況についてという事項の二件でございます。
正式の検査要請は以上の二件、これまで二件でございますけれども、会計検査院といたしましては、正式の検査要請には至りませんけれども、国会の審議の内容を念頭に置きまして、会計検査院の判断において検査を実施して、それを検査報告に掲記してきたものも幾つかあるわけでございます。
それから、さらに国会と会計検査院との関係で申し上げますと、衆参両議院のそれぞれの関係の調査室へ検査報告の内容をかなり詳細に説明を行っております。衆議院においては決算行政監視調査室であり、参議院では決算調査室でございますけれども、本年の例でいきますと、それぞれ、衆議院に対しましては延べ十九日をかけて約八十時間、それから参議院に対しましては延べ十日間、五十五時間をかけて会計検査院の担当課長が説明に当たっております。
このように、会計検査院は国会と密接な連携を図って、その検査活動の効果を上げるようにしているということでございます。
今度は、検査成果の反映ということについて御説明をいたします。検査結果は、行政や予算へどのように反映しているのかを説明いたします。
会計検査院は、会計経理を監督し、その適正を期し、かつ是正を図ることを目的として、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性など多角的な観点から常時会計検査を行っておりますが、その検査結果を行政や制度あるいは予算へ反映させるための仕組みや取り組みについて、次のようなものを挙げることができると思います。
まず第一には、国会の審議を通じての反映ということでございます。会計検査院の検査結果は、検査報告によって国会へ報告され、国会における決算審査の際の重要な参考資料となっております。この審議に当たりましては、会計検査院の職員のほか、財政当局や関係省庁も出席して説明を求められております。このことによって、会計検査院の検査成果が行政や予算編成に反映されるという道筋が一つございます。
それから、決算審議が終了する際に、衆参両院とも、多少違いがあるようですけれども、警告決議でありますとか報告を求める決議が行われており、この中には検査報告で取り上げた事項も含まれておりますことから、各省庁に対するインパクトは大きいものがあるというふうに考えられます。
それからまた、政府が毎年度決算及び検査報告とともに国会に提出しております「決算検査報告に関し国会に対する説明書」という文書には、会計検査院が不当事項として掲記した事項についての各省庁でとられた補助金の返還やあるいは手直し工事等の是正の処置が記載されておりますし、さらに、会計検査院法三十四条または三十六条によって、意見を表示したり改善の処置を要求したりした事項についての各省庁の対処方針が記載されておりまして、各省庁には検査の結果に対して速やかに処置を講ずることがこのことによって求められているということが言えようかと思います。
それから、会計検査院といたしましても、院法三十四条または三十六条によって、行政庁に対し改善の処置を要求したり意見を表示したりした事項につきましては、指摘を受けて各省庁がとった処置を把握いたしまして検査報告に掲記しなければならないこととなっております。これによって、事後処置の状況が国会へ報告されることになりまして、各省庁に対する是正改善への牽制となっているというふうに考えられます。
次に、三番目に、これは予算編成、予算への反映についてでございますけれども、国会審議による予算への反映は当然のことでございますけれども、会計検査院としても、財務省の主計局や理財局との間で毎年定期的に連絡会を開催して、財務省からは予算編成の考え方を聴取したり、検査院からは検査結果を説明したりして、予算編成等に関して相互の活動に資することとしております。
昨年の例でいきますと、三月に延べ八日間、七月から八月にかけて延べ六日間、それから秋には財務省の主計局長と会計検査院の事務総局次長が会談をし、意見交換、情報交換もしております。
さらに補足して申し上げますと、会計検査院は、検査報告に掲記した事項についてもその後の状況をフォローアップするように努めておりまして、改善の実が十分上がっていないような事態があればさらに検査を深めて検査報告に再度掲記するというようなことも行っております。
例えば、昨年のODAの検査におきましては、過去に効果が上がっていないとして取り上げました事業について、その改善状況を調査してその結果を検査報告に掲記する、こういうことをやってみました。
戦前の会計検査院法では、法律または行政上改正を要すべき点があれば、天皇に上奏することができましたけれども、主務官庁には注意書を発するのみで、直接積極的に行政庁に対し是正改善を求める方途がなかったということの反省に立ちまして、現行の院法は、検査結果を直ちに行政に反映させる方途として、この院法の三十四条や三十六条の各省庁に対する改善処置の要求あるいは改善の意見の表示を規定したということでございます。
また、会計検査院のそれぞれの局長は、各省庁等検査を受ける者に対して質問を発することができます。そして、その回答を受け取っているわけでございますが、その受検庁とのやりとりの中で、検査結果を行政や予算執行に反映させるということも可能になってきているわけでございます。
会計検査院は、今申し上げましたように、憲法、法律によって独立性を保障され、そして自主的な検査活動を積極的に行いまして、国会との連携を図りながら、その検査成果を行政や予算に反映させるように努めているところでございます。
最後に、外国の会計検査院についてごく簡単に御紹介をいたします。
まず、アメリカですけれども、GAOと呼ばれまして、明文の規定はございませんが、実質的には連邦議会の附属機関とされております。毎年千件ぐらいの報告書を議会等に提出しておりますが、議会はこれらの検査報告に基づいて連邦省庁に対する改善勧告を行っております。議会や議員個人からの検査要請は、その報告の九〇%程度を占めていると言われております。ただ、この中に勧告の内容を含むのは半数程度であろうということも言われております。
次に、イギリスでございますが、NAOと呼ばれ、院長は下院の官吏とされております。そして、会計検査院という組織は院長の職務執行を補助する機関とされております。NAOは財務検査とバリュー・フォー・マネーの検査を行っております。
前者に関しては、毎年五百ないし六百件の報告書、それからバリュー・フォー・マネーに関しては、五十件前後の報告書を下院の決算委員会に提出しております。下院の決算委員会は、NAOの検査報告書に基づきまして、各省庁への改善勧告をまとめた委員会報告書というものと、それから改善措置をまとめた財務省覚書というものを作成いたしまして、本会議で議決しているということでございます。
ドイツにつきましては、議会にも政府にも裁判所にも属さない独立機関でございます。検査報告は年度終了後議会と政府へ提出されますが、特別検査報告というのが毎年十ないし十五件あるということでございます。下院では、この検査報告をもとに予算委員会報告書を作成し議決をしております。
それから、フランスにつきましては、これも議会にも政府にも裁判所にも属さない独立機関であります。年次報告書が大統領と議会両院に提出されておりまして、業績検査報告書が議会からの要請を含めて年間数件程度提出されているということでございます。
以上、雑駁な説明でございましたが、これで終わります。
鈴
鈴
只
只野雅人#5
○只野参考人 只野でございます。本日はお招きいただきましてどうもありがとうございました。
私、これまで二院制について幾つか論文を発表したりしておりますけれども、本日は随分詳しい資料を事前にいただいております。その中に、きょうお話ししようと思っております重要な視点が随分含まれているように思います。ですから、私の話というのは、むしろそれらを再構成して改めて提示する、そんな形になろうかというふうに思います。
お手元に簡単なレジュメと資料がございますので、そのあたり、ごらんになりながらお聞きいただければというふうに思います。
最初に引きました、第一院は、第二院と一致するなら無用であり、一致しないなら有害である、これは二院制を論ずればよく引かれる言葉でして、趣旨は明瞭であります。二つの議院を設ける以上、第二院については第一院と異なる独自性が必要になる。両院の行動が一致してしまいますと、第二院の存在は無用となってしまう。そうなりますと、どう独自性を発揮させるのかということが問題になってまいります。
通常、まず考えられますのは、例えば代表方法を変える、あるいは選挙制度を変えるということで、構成を異ならせる、こういうことであります。
この場合、構成が大きく異なりますと、第二院が第一院の決定を阻止する、こういうことが生じてまいります。これはもちろん独自性と呼ぶこともできるわけですが、その場合同時に問題になりますのは第二院の正当性ということではないだろうか。特に、民主的な正当性が劣るような選挙制度で独自性が生み出されるような場合、なぜ第二院が第一院の決定を阻止できるのかということがあわせて問題になるように思われます。
こうした独自性の発揮が問題にならない場合もあると考えられます。これは後で若干申し上げますけれども、例えば連邦国家の場合でして、この場合には第二院が独自性を発揮するということの根拠、非常に強い正当性が憲法上存在しているということになろうかと思います。
これに対して、そうした正当性を持たない単一国家における第一院の場合、第二院の独自性をどこに求めるのか、それから、独自性が発揮された場合のその正当性の問題、これをどう考えるかということがやはり大きな問題になってくるように思われます。これはとりわけ、日本の参議院に当てはまる問題であろうかというふうに考えるわけです。
そこで、まず、日本の参議院について考えます前に、一般に二院制というものにどういうものがあるのか、それから二院制というシステムにどういう意味があるのかということにつきまして、皆様方よく御存じかと思いますけれども、改めて私なりに整理をいたしたいというふうに思います。
まず、二院制についてはさまざまな分類の仕方が存在しております。これは、どのような基準で分類を進めるかということによっていろいろあるわけですけれども、例えば、一般的なものとしましては、国家類型といいますか、あるいは政治体制から分類を試みるということが考えられます。
こうした分類としては、一般に貴族院型、連邦国家型、そして単一国家における第二院、こうした分類がなされるのが一般的ではないかというふうに思うわけです。
このうち、貴族院型につきましては、これは歴史の中の過渡期に生じてきたものでありまして、現在は数が少なくなっておりますし、イギリスのように存在する場合においても、第二院の権限は大幅に縮小されております。
恐らく、第二院が一番大きな存在意義を持ち得るのが二番目の連邦国家の場合であろう。これはよく言われることでありますけれども、私もそう考えております。
この場合の第二院といいますのは、個々の国民ですとか市民ではなくて、連邦の構成単位である、通常は州ということになろうかと思いますが、この州を代表する、こういう役割を担うことになります。当然、その州を代表するということですので、通常の例えば人口比例等とは異なった選挙制度によって第二院が選挙される。
そうなりますと、非常に強い独自性が発揮される可能性があるわけですけれども、連邦国家におきましては、その連邦を構成しますそれぞれの単位の同意なくして決定できない事項というものが当然考えられましょうから、仮にそれが第一院の決定を阻害したとしても、ここで第二院の正当性という問題は直ちに生じないわけです。
これに対して、日本のように単一国家において第一院を設ける場合、そこにどういう意味を読み込むのかということは非常に大きな問題になってまいります。
先ほど、独自性とかかわってどのような代表を考えるのかという問題があるであろうというお話をいたしましたけれども、二番目の類型の切り口といたしましては、代表原理ということが考えられるかと思います。
通常、第一院というのは特別な代表原理を持っておりませんので、一応、政治代表、こう呼ぶといたしますと、政治代表である第一院とは異なった代表原理によって第二院を選出する、そうすることによって第二院の独自性を発揮させてはどうか、こういう方向が考えられるわけです。
具体的に挙げますと、例えば地域代表という考え方がございます。これは、先ほど申しました連邦国家の場合もここに含まれますけれども、連邦国家までいかなくとも、連邦制の途上にある国家というんでしょうか、国家を構成する自治体に、州と呼ぶ場合もあろうかと思いますが、非常にやはり強い自治性、自律性が認められているような国家においても同じようなことが考えられるだろうと思います。
いずれにしても、この場合は、人口や有権者を基礎とするのではなくて、それぞれの地域を代表単位にする、こういう発想に立った代表原理だということになります。有名なのはアメリカでして、人口にかかわらず上院議員は各州二名、こういうことになっております。例外的に、日本と同様の単一国家におきましても、例えばフランスがこの地域代表という原理を取り入れております。
ただ、私、ここにはいろいろ問題があると思っておりまして、この点も後でまた若干御説明させていただきたいというふうに思っております。
地域代表以外にも、例えば、利益職能代表といった考え方も存在しております。こちらの方は、やはり、個人以外にも社会を構成する要素が存在するであろう、そうした要素をいかに代表するのか、こうした発想に立った考え方でありまして、さまざまな個人以外の要素、例えば、社会的な階層ですとか、あるいは経済活動の単位であるとか、あるいはある種専門的な能力を持った人たちの集団であるとか、そういった個人以外の要素を代表に反映してはどうか、こういう考え方であります。
ただ、こちらにつきましては、非常に大きな問題がございます。つまり、適切な代表の指標といいますか、これをどう見出すのか。特に、普通選挙ですとか平等選挙といった原則と調和する形で利益職能代表を考えるということは非常に難しい部分がございます。
そこで、先ほどフランスの話をいたしましたけれども、例えばフランスでは、二院制を設けた上で、それとは異なる形で、諮問機関という形で、経済社会評議会という利益職能代表的な機関を設ける、こういう位置づけになっております。
このように、幾つか異なる代表原理というのを考えることはできるわけですけれども、いずれにしても問題になるのは、それらをとらない場合、あるいは憲法上それらをとることが難しいと考えられる場合、いかに政治代表という枠の中で第二院の独自性、特に単一国家における第二院の独自性を考えるのか、こういうことになってまいります。
一つ考えられますのは、言うまでもなく、選挙制度あるいはその任期といった点であろうかと思いますが、もう一つ重要なのが、恐らく、両院の間の権限配分をどう行うかということになると思います。
権限配分から見た類型というのは、これは非常に簡単でして、通常は対等型と不対等型というものが区別されます。
対等型といいますのは、両院に同等の権限を与えて、両院の合意を決定の条件にする、こういう場合もございますし、それから、例えばアメリカの上院などがそうですけれども、ある特定の事項について、上院のみに決定権を付与する、こういった形もあろうかと思います。
これに対して、不対等型の場合、これもさまざまなバリエーションを考えることができるかと思いますけれども、例えば、立法について不対等型をとるということになりますと、両院の意見が食い違った場合、最終的には第一院の意思によって決定を行うことを可能にする、あるいはそれを容易にする、こういうスタイルが考えられるわけです。
日本の衆議院、参議院の関係というのは、不対等型だ、衆議院の優越ということがよく強調されますけれども、私、この点は若干疑問に思っておりまして、この点は後でまたお話をいたしたいというふうに思います。
以上、漫然と幾つか分類を申し上げてまいりましたけれども、実際には、これらを組み合わせて、それからまた実際の二院制の機能というものを考慮しながら二院制の類型化を行っていくということが恐らく必要になろうかと思います。
これもさまざまな考え方がございますけれども、きょうレジュメで御紹介していますのは、レープハルトという著名な政治学者による分類であります。
御存じの方もいらっしゃるかと思いますけれども、レープハルトは、二院制というものを、強い二院制、弱い二院制、それからその中間、中間的強度の二院制、仮にこう呼んでおきたいと思いますが、この三つに区分しております。それぞれの強さ、弱さを決める要素として、一つは権限の問題、それからもう一つが、やはり、さきに申し上げました議院構成の問題が要素として考えられているわけです。
このうち、強い二院制というのは非常にイメージがクリアでして、まず、両院は対等な権限を持つ、その上で両院の構成を異ならせる、こういうことになります。構成が異なりますので、非常に強い独自性、第一院と異なる投票行動が予想される。しかも、権限が対等ですので、第一院の決定が第二院によって阻止されるということが当然予想されるわけです。したがいまして、冒頭で申し上げましたように、なぜ第二院にそうした権限があるのかという第二院の正当性の問題が生じてまいります。
そこで、この種の二院制をとっている国としてどういうものがあるかといいますと、これはレープハルトの分類に従いますと、筆頭はアメリカでございまして、基本的には連邦制を採用している国ということになろうかと思います。この場合には、第二院が第一院の決定を阻止することについて、ある種憲法上強い正当性が見出されるということになります。
これに対して、この対極にありますのが弱い二院制ということでして、権限の面から見ますと、不対等型、つまり第二院の権限が弱い。それから、構成の面から見ますと、両院の構成は似通っている。これは、人為的につくられる場合もあるでしょうし、事実上そうなっていくという場合もあろうかというふうに思いますけれども、構成が似通った議院で、しかも第一院より権限が劣る第二院ということになりますと、なかなか独自性が発揮されにくい、こういうことになろうかと思います。
もっとも、この種の二院制に存在意義がないかどうか、この点はやや検討の余地があるように思われますが、これも後でまたお話をいたしたいと思います。
日本との関係で一番問題になりますのは、この中間ということになるわけです。事実、レープハルトも日本をこの中間に分類しております。これは、日本で一般になされております二院制の認識とはやや違うように思われますけれども、ここには実は二つのパターンが区別されております。
一つは、両院の構成をまず異ならせる。こうなりますと、当然独自性が発揮される余地というものが考えられるわけです。しかし、独自性が発揮された上で、両院の意思をどう調整するかというレベルでは、基本的に第一院の意思を優越させる、つまり第二院の権限を劣らせるということで不対等型を採用する、こういう型が考えられます。これには幾つかの国がございますけれども、後に述べますように、単一国家ではフランスがここに分類されております。
これに対して、中間的強度のもう一つのパターン、ここに日本が実は分類されているわけですけれども、こちらの方は、両院の議院構成は似通っているということが前提になっております。どうやってその独自性を発揮するかということになりますと、こちらは、構成の違い、議院構成の相違ではなくて、むしろ強い権限を第二院に付与する、対等な権限を第二院に付与することで独自性を考えていく、恐らくこういう方向性ではないかというふうに思われます。
通常、日本で参議院の問題を議論します場合、両院の構成が似通っている、したがってその独自性が発揮されないのだということをよく言われますけれども、実は私、きょう一つ申し上げたいと思っていた点が、構成が比較的類似しているということが果たして第二院の独自性を阻害するような決定的な要因となり得るのかどうか、この点でありまして、ここは少しまた後で詳しくお話をしていきたいというふうに思っております。
以上、二院制の分類をいろいろお話ししてきたわけですけれども、当然これ以外にも、二院制を採用しない国、つまり一院制を採用している国というのがあるわけです。単純に数の面だけで申しますと、二院制を採用している国よりも一院制の国の方が多い、こういうふうに言われております。
ただ、これには若干注釈が必要でして、特にやはりレープハルトが指摘をしていることですけれども、ある一定以上の人口規模を持っている国では一般に二院制が採用されている例が多い。具体的に申しますと、人口規模一千万人という数字を挙げていたかと思いますが、一千万人を超えますと二院制が採用される例が多い、こういうことであります。
もちろん、一院制が採用される場合であっても、二院制に類似したメカニズムが政治機構の中に組み込まれている場合は多いわけです。例えば、比例代表制を採用する、少数代表的な機能を強調する、あるいは地方分権を進めるとか、あるいは議事手続で少数派を優遇する、さまざまなメカニズム、一院制の中でも考えることができます。しかし、人口規模がある一定の限度を超えると二院制を採用する例がふえてくる。
これは経験的な問題でありまして、理論的に説明することはなかなか難しいのですけれども、私は、それがゆえに非常にこれは重要な事実ではないかというふうに思っております。
つまり、一院のみでは酌み尽くせない民意というものが存在するのではないか。人口がある一定規模を超えた場合、ある一定規模の政治共同体を考えますと、民主的に選挙された一つの議院だけですべての民意を代表するということにはやはり限界が生じてくる。そういう中で経験的に生み出されてきたシステム、これが二院制ではないだろうか、こんなふうに思うわけです。
いずれにしましても、その上で二院制を考えてみますときに、重要なのは、これも先ほど申しましたように、第二院の独自性と同時に、その第二院の持っている正当性、特に民主的な正当性ということになろうかと思います。
第二院が民主的にやや劣る制度によって選挙されて独自性を発揮するということになりますと、最終的には、やはり第一院に強い権限を与えて、第一院が最終的な決定権を持つ、こういうシステムをとらざるを得なくなるだろうというふうに思うわけです。
この場合、両院の対立ということは頻繁に生じるかもしれませんし、最終的に第一院が独自に決定をするということになるんですが、果たしてこういった対立型といいますか、正面衝突を繰り返すような二院制が本当に好ましいのかどうか、これは一つ考えてみる余地のある問題ではないかと私かねがね思っております。
それから、その裏返しになりますけれども、両院の構成が似通っているということが本当に第二院の独自性を阻害する要因になるのかどうか。当然、これに答えるためには、第二院の独自性というものをどういう意味で考えるのかということを考えざるを得ないわけです。
以上、二院制一般についてお話をしてまいりましたけれども、今度は、それを踏まえて少し具体的な例を考えてまいりたいというふうに思います。
まず参議院をということになるわけですが、参議院に入る前に、もう一つ、日本と同様に単一国家における第二院を採用しておりますフランスの例を挙げてみたいと思います。これは、たまたま私がフランスのことを研究してきたということもございますが、日本との関係を考える上でも、フランスの第二院というのはなかなか興味深い素材になるのではないか、かねてこう考えているわけです。
一枚物の簡単な選挙制度に関する資料がございますので、そちらをあわせてごらんになりながらお話を聞いていただければというふうに思います。
現在のフランス憲法のもとでは、第二院、これは元老院と普通訳すようですけれども、この元老院には地方公共団体の代表、つまり先ほど申しました地域代表としての地位が付与されております。
問題は、その地域代表、つまり人ではなくて、人口ではなくて、地域を代表するということをどう実現するかということでありますけれども、この点でフランスは実は非常に独特な制度をとっております。つまり、間接選挙ということになります。具体的に申しますと、各県ごとに、その県選出の国会議員、それから各種の地方議会議員が集まって、選挙人団を構成して元老院議員を選挙する、こういうシステムであります。
フランスの地方自治制度というのは、若干複雑なところがございます。三層制になっておりまして、一番下に基礎自治体であるコミューン、これは日本でいうと市町村に当たるでしょうか、それからその上に県があり、さらに広域自治体として地域圏というものがその上に存在しておりますが、数の上から申しますと圧倒的多数を占めるのがこの基礎自治体であるコミューンでして、総数では恐らく三万六千程度、これはヨーロッパのすべての基礎自治体を集めたより多い、こう言われております。日本の基礎自治体の十倍以上ということになりますが、数の上ではこのコミューンが圧倒的多数を占めるわけです。
地方公共団体の代表を保障するということになりますので、少なくともそれぞれの自治体に最低一定数の選挙人を配分しなければならない、こういうことになります。そうなりますと、コミューンの代表が選挙人団に占める比率というものが非常に高くなってまいります。三万六千基礎自治体がありますと、当然人口の不均衡というものも非常に大きい。一番大きいのはパリで、二百万を超える人口を持っておりますけれども、小さなところですと百人を切るようなコミューンもたくさんあるわけです。それらに人口に比例した選挙人を配分するということは事実上不可能ですので、実際には人口比例という観点から見ますと非常に大きな不均衡が存在しております。
その次に、若干、議席配分の表がありますので、こちらもごらんいただければというふうに思うのです。
いずれにしましても、独自性を出すためにフランスでは地域代表という原理を導入する、それから、その具体化の手段として、人口比例を犠牲にした間接選挙というシステムをとっております。したがいまして、これは最初に申しましたように、しばしば第二院が第一院の決定を阻害するということが起こり得るわけです。
フランス憲法はそれをどう解決しているかといいますと、これも先ほどから繰り返し申し上げておりますように、第一院の権限を第二院に優越させる、つまり、両院の決定が対立した場合、一応両院協議会を開きまして、その上で最終的には第一院が決定をする、こういうシステムを採用しております。ただ、不対等型とはいいましても、実際上の機能の面から見ますと、第二院の権限は実際以上に非常に強いように私には思われます。
なぜ、こうした地域代表としての第二院が置かれているのか、これも興味深い点でありますけれども、幾つかの説明が可能であろうかと思います。
一つは、これは日本でよく言われることですけれども、第一院とは異なる角度から民意を反映しているのだ、こういう説明であります。地域を代表するというのが表立っての説明でありますけれども、この地域代表というのは、実際の機能の面におきましては、中央に対する地方の代表といいますか、あるいは、さらに言いますと、都市部に対する農村部の代表といったイメージでとらえられることも多いようです。
それから、そういった選挙制度をとりますと、当然議会構成の面では保守派、あるいは中道派、保守派という言い方をする方が正確かもしれません、が常に議会では多数を占める、こういうことになります。ですから、特に下院の方、左翼、フランスですと社会党ですけれども、社会党が議席の多数を握った場合、両院の衝突ということが非常に先鋭化してあらわれるわけです。
いま一つの説明、これは日本でもよくなされるところでありますけれども、第一院に対する均衡といいますか、あるいは熟慮の議院といったらいいでしょうか、こういった役割分担であります。
これは、特に選挙制度ともかかわっておりまして、間接選挙がとられているということがあって、比較的議会構成の変化が第一院に比べると少ない。それからさらに、議員の任期が、最近少し改正がありましたけれども、従来は九年と非常に長い。そういう中で、比較的、中道右派に偏ったような安定した議会構成が続いている。そこで、第一院の行き過ぎに対するある種のブレーキをかけているのだ、こういう説明が伝統的になされてきたわけです。
さらに、加えて、地方の代表ということもあって、その地方の問題ですとか、あるいは文化的な問題ですとか、こういった特定の領域で第二院は一定の成果を上げてきたのだ、こう言われることもよくございます。
ただ、実際の機能ということを眺めてみますと、必ずしもそういった熟慮の議院といいますか、中立的な役割ではない部分が随分ございまして、一番最後に簡単な表を準備いたしました。ちょっと最新のデータが入っておりませんけれども、一枚物の一番下のところですね。
フランスの政治制度というのは、大統領と首相が併存しておりまして、ちょっと複雑なんですけれども、特に一九八〇年以降、国民議会で社会党が多数をとり、大統領に社会党のミッテランが選ばれる。その左翼政権があらわれた局面で、第二院の政治化ということが非常に顕在化してまいりました。これは、どういうふうにつかむかというのはなかなか難しいのですが、一つの指標として、議会に関する統計を使うことができるかと思います。
右の方にCMPと書き出してある、これは日本風にいいますと両院協議会、つまり、両院の意思が対立した場合、調整の場として両院協議会がどれだけ設けられたかという数であります。期間にばらつきがありますし、扱われた立法の数も違いますので、単純な比較はできないのですけれども、八〇年代初頭を見ていただきますと、両院協議会の開催は非常にふえている。しかも、そのうち、かなりの事例では、最終的に第一院が単独で決定をする、両院の対立が非常に先鋭的にあらわれる、こういう場面が出てまいります。
それから、一方、その数年後、一九八六年の半ばに選挙がありまして、下院の多数派が入れかわりますと、今度は元老院、上院は、下院に対して非常に協調的になる。場合によると、審議権を放棄してまでその審議の促進化に協調するということで、非常に政治的な動きがあらわれてまいりました。
その意味で、よく非政党化ということを日本の参議院についても言われるわけですが、普通選挙を前提とします限り、特に間接選挙をとっていてもなかなかこれは難しい問題ではないかと私は考えているわけです。
こういった、選挙制度で選ばれて、しかも、時々、第一院の決定と激しく衝突する、場合によると、それを阻害するという第二院の存在がありますので、選挙制度のあり方というのが従来からずっと問題になってまいりました。特に、左翼政権にとってはこれは悩みの種でして、一九九七年に誕生した社会党のジョスパン政権のもとで、選挙制度の民主化、これは括弧つきの民主化かもしれませんが、試みられております。
具体的には、先ほど申しましたように、選挙人の配分に非常に大きな人口上の不均衡があったわけですが、ここに徹底して人口比例の原則を導入しようということを考えたわけです。ところが、この改革については、憲法院から、憲法裁判所ですが、憲法違反という判断が一部下されております。
なぜそうなったかといいますと、人口上、非常に大きな不均衡が基礎自治体であるコミューンについては存在しております。一番人口規模が小さいところに最低限一人の選挙人を配分するということになりますと、人口規模が大きい、例えばパリのように二百万を超えるような人口規模を持っているところにそれに比例した形で選挙人を配分するということになりますと、これは膨大な数の選挙人を配分しなければならない。二十人、三十人という数ですと、議会の議員全てを選挙人にすることで対応ができますけれども、人口比例を徹底しますとそれが難しくなる。議会外から、いわば普通選挙によって選ばれていない人たちを補助的な選挙人として加えることでしか人口比例というものが成立しない。ここが非常に問題になったわけです。
その意味で、大きなジレンマを抱えた二院制だ、一方で高い評価もございますけれども、そういうことが言えるかと思います。
それから、もう一つ、フランスの二院制について指摘したいと思いますのは、今、両院の構成が違った場合の話をしていたんですけれども、両院の構成が似通っていた時期、実は、この時期に、比較的有益な役割を第二院が演じていたのではないか、こういう評価があります。
これは、私も実は同感でありまして、先ほど見ていただいた一番下の表をごらんいただくとわかるんですが、具体的に申しますと、一九七〇年代の半ば以降、大統領も、それから上下両院も、それぞれ保守中道が多数を占めるという時期がございました。両院の構成が一致しまして、しかも、権限でいいますと不対等ということになりますから、さっきのレープハルトの分類からいきますと、これは弱い二院制だ、こういうことになりそうなんですが、実際は必ずしもそうでありませんで、構成は似通っておりますけれども、両院の意思が食い違う場面というのが結構生じております。それからさらに、その上で両院が協議をして一定の合意に至るというケース、これは両院の構成が似通っていますので、当然そうなるかと思うのですが、これがかなり生じているわけです。
そういう意味で、最初にもちょっと申しましたように、両院の構成が似通っているから独自性が発揮されないのだと本当に言えるのかどうか。この点は、改めて検討を要するように思われます。特に、そこでの独自性ということをどういう方向に求めるのかということともこれはかかわってくると思います。
そこで、最後になりますが、以上の話を踏まえまして、今度は日本の参議院についても簡単にお話をさせていただきたいと思います。
制定の経緯という項目を設けましたが、時間の関係でここは割愛させていただきまして、まず、前提として、一つ確認したいと思います点が、日本の参議院あるいは二院制についてよく言われます、衆議院の優越あるいは不対等型の二院制という認識についてであります。
これも繰り返し申してきたところなんですけれども、本当に日本の二院制というのは不対等型なのか。これは、実は、ここにいらっしゃる国会議員の皆様方がよく御存じの点ではないかというふうに思うのですが、私は必ずしもそう思っておりません。
特に、法律ということに限ってみますと、再議決のためには衆議院で三分の二の特別多数が必要になります。これは、現実的に見ましても非常に高いハードルでありまして、この点だけ取り上げても、日本の参議院というのは実は非常に強いのではないか、レープハルトが分類するように、むしろ対等型に近いのではないか、こういうふうに思われるわけです。
そのことを前提とした上で、参議院の独自性をこれまでどこに求めてきたのか、参議院の独自性をめぐってどういう議論があったのかということについても簡単に触れてみたいというふうに思うのです。
最初に代表原理という話を少ししましたが、一つの方向は、政治代表とは異なる方向、つまり、例えば、利益職能代表的な要素を加える。これは正面から導入することはできませんけれども、旧の全国区についてはこういうことが言われてきたわけです。それから、他方で、これは人口比例を犠牲にした上でのことですので、非常に問題がございますけれども、都道府県代表的な要素を加えるんだということも言われてまいりました。しかし、にもかかわらず、両院の間には大きな相違は生じてこなかった、また、目立った独自性が発揮されてこなかった、これが現実ではないかと思います。
それから、もう一つの方向性、これもフランスとやや似通っておりますけれども、一言で言いますと、理性の府ということになろうかと思います。
つまり、数が支配する衆議院とは異なる観点から、国政にそれとは違った視点を持ち込むのだ、こういう話でありまして、これとの関係でよく言われてまいったのが、一つは、非党派性といいますか、非党派的な要素を参議院に持ち込むことで独自性を求めていこう、こういう話です。
特に、これもよく言われることですけれども、戦後初期の参議院では緑風会という独特の組織があったこともあって、参議院は非党派的な議院であるべきだということがよく言われております。
ただ、さきに御紹介しましたフランスの例からもわかりますように、普通選挙を前提といたしまして、どこまで非党派的な議院が実現できるのか、私自身は非常に懐疑的でありまして、むしろ、目指すべきは非党派的な議院ではなくて、参議院らしい政党化ということではないだろうか、こう思っているわけです。
具体的にどういう参議院らしい政党化があるのかということなんですが、一つの方向は、これは憲法との関係で申しますと、憲法は議院内閣制を採用して、解散と不信任というメカニズムをとっておりますけれども、参議院は一応この外に置かれております。
そうなりますと、衆議院が内閣をつくる、あるいは、衆議院が内閣を維持するのに対して、参議院は内閣の批判に徹する。場合によると、参議院から閣僚を出さないというような慣行を確立して、内閣からは一線を置いたところに参議院の独自性を見出していこう、こういう方向性が一つ考えられるわけです。
ただ、実際には、解散と不信任のメカニズムの外にあるといいましても、例えば内閣が提出した重要な法案を否決するという形で参議院は内閣の存立に大きな影響を及ぼすことができます。そこで、こうした方向が好ましい効果を生み出すかどうか、あるいは有効かどうかということについては、私は若干疑念を持っております。
それから、参議院の独自性に関しては、もう一つ、特に一九九〇年代以降、衆議院と参議院のいわゆるねじれ現象といいますか、構成が食い違った状況が続いてきているということについても触れておきたいと思います。
本来ですと、両院の構成が食い違っていますので、参議院の独自性が発揮されることが期待されるわけですが、必ずしもそうなってこなかったところがございます。
なぜかということですが、一つには、やはり一番大きいのは、参議院の反対を見越して、参議院を含めた形での多数派形成が行われる。奇妙な慣行と呼ばれたり、あるいは国会内閣という言葉が使われたりいたしますけれども、参議院も含めた多数派というものを事前につくって、両院の対立が起きないような状況をつくるということが行われてまいりました。
なぜこうした方向がとられてきたのか。これはやはり理由があることだと思っておりまして、これは先ほどの参議院が強いのかという話とかかわってまいります。
つまり、参議院が法案の成立に非常に強い権限を持っている。したがって、その対立が生じそうなのであれば、事前にそれを抑えるような方策が必要になるだろう、こういう方向から、両院にまたがる形での内閣の形成というものが考えられてきたのではないか。それに基づいて、参議院の独自性の発揮というものがなかなか果たされなかったのではないか、こう考えられるわけです。
そうなりますと、では、憲法を改正して参議院の権限を弱めたらどうか、不対等型であればそうした慣行は生じないのではないか、こういう話になりそうでありますけれども、これは繰り返し申しましたとおり、仮にそうした形で参議院の独自性が強く発揮される、最終的に第一院が決定を下す、こういう図式が果たして二院制として本当に好ましいのかどうか、ここは私としては考えてみるべき余地があるように思っております。
そもそも、なぜ憲法が三分の二という再議決の高いハードルを設けたのか、問題はここにもかかわってまいります。私が考えておりますのは、あえて高いハードルを設けることで両院の間のある種の妥協なり協調を促しているのではないか、こういうことであります。
日本の場合、両院は同じような民主的正当性を持ち、似通った選挙制度で選ばれておりますので、なかなか構成の相違が生まれにくい、こういうことはあるわけです。しかし、それはあくまで大枠での話でして、先ほどのフランスの例からもわかりますように、細かな点で、細かなというといささか言葉が悪いかもしれませんけれども、大枠とはかかわらない部分でさまざまな修正を第二院が第一院に加える、こういう余地は十分にあり得るのではないか。いささか地味な二院制ということになるかもしれませんが、二院制のあり方としてこれはこれで有用なものではないだろうか、私自身はそんなふうに考えているところがございます。
時間も随分なくなってまいりましたが、その上で、参議院の意味ということについて、私なりに最後に簡単に整理してみたいと思うのです。
やはり、一つ重要な役割は、衆議院と異なる形で民意を反映するということであろうというふうに思うわけです。
代表原理なり選挙制度が大きく異なれば、確かに、異なった形での民意の反映がなされたのだ、こういう評価があるかもしれませんけれども、最終的にそれが両院の対立をもたらし、最終的に一院のみによる決定を導くということになりますと、これはやはりいささか問題ではないだろうか。
そうではなくて、それほど大きな対立は生じないかもしれませんけれども、例えば法案の修正という形で参議院がイニシアチブを発揮していく、ここに実は多様な民意の反映という意味を一つ求めることができるのではないか、こう思っているわけです。
日本の場合、ヨーロッパに比べて国民なり世論が等質であるということはよく言われるわけです。社会学的に見ますと、確かにそういう面はあるのかな、こう思っております。しかし、世論が等質か多様かということは、これは所与のものとして決まっていない部分がある。特に、代表のあり方を通じて世論の多様性というものが具体化されてくる部分があるわけです。
世論の中に潜んでいます非常に微妙なニュアンスとか細かな表情といったもの、これを拾い出して、それから、例えば修正なり調整という形で国政に生かしていく、これは実は多様な民意の反映を考える上でも一つ重要な視点なのではないだろうか、私はこう思っております。
では、どうしたらそれが発揮されるのか、では、なぜ現在それが発揮されていないのか、これは一つ検討を要する点でありますけれども、二つほど指摘をさせていただきたいと思っておりまして、一つは、さきに申しました政党化ということにかかわっております。
参議院の政党化を防ぐことはできないであろう。これは先ほど申し上げた点でありますけれども、政党化が防げないということは、参議院と衆議院が全く同じような政党化をするのがよいということではもちろんないわけです。特に、任期や選挙が違いますと、同じような政党や党派構成を前提としましても、民意と議院の関係というものは大きく変わってまいります。
ところが、現在の選挙制度を見てまいりますと、衆参で制度が似通っている、代表原理に着目してこういうことがよく言われるわけですけれども、同時に、もう一つ大きな意味を持っていると思われますのは、特に政治改革以降、政党本位ということが非常に強調されてまいりました。これはさまざまな面にあらわれておりますが、他国と比べてもかなり強力な政党本位の制度が衆議院、参議院双方に導入されております。
ということになりますと、議院と政党の関係というものが衆議院、参議院双方で同じように固定化されているのではないだろうか。この点は、例えば選挙制度に関しては一つ見直してみるべき価値があるのではないか、こう思っているわけです。
それからもう一つ、これはきょうぜひ申し上げておきたいと思った点なのですけれども、両院の独自性を発揮させる前提として、当然、それぞれの院の自律性というものを考える必要があります。
日本国憲法の場合ですと、例えばそれぞれの院に独自に議院規則の制定権を認める、こういう規定がおかれております。戦前の憲法には議院法の存在というものが予定されておりまして、議院法が決めた後で残りの細かな事項を議院規則が決める、こういう役割分担が考えられていたのだと思いますけれども、日本国憲法はこの種の法律の存在を本来は予定しておりません。
現実には、国会法等で、例えば委員会等についても細かな規定が置かれておりますけれども、これが本来の姿なのかといいますと、私は必ずしもそうではないと思っております。
これは私の先輩の諸先生方が繰り返し指摘されてきたことでもありますけれども、本来からしますと、憲法が法律に留保している事柄を除いて、基本的に、両院の組織に関する重要事項、これはそれぞれの議院が自律的に議院規則という形で定めてもよいのではないか、こう思っております。つまり、みずからの院の組織をみずから決定することができない議院に独自性を期待するということは難しいのではないか、こういうことであります。
議院規則と国会法の役割分担、ある意味では、憲法改正にも匹敵するような大きな意味を持っておりますけれども、これはぜひひとつお考えいただければと思っている点であります。
こう考えた上で、改めて、参議院の役割をどこに求めるかということになるわけですが、一つは、先ほどから申し上げておりますように、必ずしも衆議院との大きな違いではないかもしれないけれども、ある種細かな世論の違いというものを反映していく、こういう方向が一つあり得るのではないか。
それから、それと結びついてもう一つ、憲法は参議院に長い任期を保障しておりますけれども、こことの関係でも、多様な民意の反映を具体化する方向性というものが考えられていいように思われます。
衆議院と異なって解散がない、しかも六年の任期が保障されているということですので、当然考えられますのは、長期的な視野に立った調査活動、現実には調査会といった制度がございますけれども、あるいは行政に対するコントロール、こういった方向性が、一つ、参議院の好ましい機能として、あるいは役割として憲法上考えられるように思われます。
本日のテーマの一つの、決算ともこれはかかわってまいります。
時間がございませんので、簡単にここではコメントだけすることにいたしますけれども、予算の事後的な統制というのは、かかる視点からいたしますと、当然、参議院の一つの役割というふうに考えられるわけです。
ただ、これもこういうお話があるというふうに伺っておるのですけれども、例えば憲法を改正して、衆議院に予算の議決権を与える、参議院は決算に特化したらどうか、こういう方向があるというお話を伺いました。これは確かに一つの方向性ではあるわけですけれども、それが果たして好ましい方向なのかどうかということにつきましては、私自身はやや疑問を持っております。
といいますのは、これはレープハルトの分類ともかかわってまいりますけれども、決算に特化した参議院を考えるということになりますと、当然、予算の審議とは切り離した参議院を考えることになる。例えば、内閣とは一線を引いた形で参議院を考える、それで決算という形で比較的弱い権限を付与する、こういうことになりますので、そういった弱い権限を持った参議院がどこまで有効なコントロールを行使できるのか、これは一つ問題になる点ではなかろうか、こう思っております。
きょうの私のお話は、基本的には、現在の憲法を前提としても参議院にはさまざまな役割を考え得るのではないか、こういうことでございましたけれども、さらにもう一歩踏み込んで申しますと、憲法政策的に見ましても、現在の日本国憲法が想定している二院制、これは方向として大きく間違っていないのではないか、むしろ問題なのはそれを生かすための前提条件なり、その前提となるさまざまな要素ではないだろうか、これが私なりの一つの結論でございます。
時間もございますので、足りない点は質疑の中で補わせていただければと思います。
どうもありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →私、これまで二院制について幾つか論文を発表したりしておりますけれども、本日は随分詳しい資料を事前にいただいております。その中に、きょうお話ししようと思っております重要な視点が随分含まれているように思います。ですから、私の話というのは、むしろそれらを再構成して改めて提示する、そんな形になろうかというふうに思います。
お手元に簡単なレジュメと資料がございますので、そのあたり、ごらんになりながらお聞きいただければというふうに思います。
最初に引きました、第一院は、第二院と一致するなら無用であり、一致しないなら有害である、これは二院制を論ずればよく引かれる言葉でして、趣旨は明瞭であります。二つの議院を設ける以上、第二院については第一院と異なる独自性が必要になる。両院の行動が一致してしまいますと、第二院の存在は無用となってしまう。そうなりますと、どう独自性を発揮させるのかということが問題になってまいります。
通常、まず考えられますのは、例えば代表方法を変える、あるいは選挙制度を変えるということで、構成を異ならせる、こういうことであります。
この場合、構成が大きく異なりますと、第二院が第一院の決定を阻止する、こういうことが生じてまいります。これはもちろん独自性と呼ぶこともできるわけですが、その場合同時に問題になりますのは第二院の正当性ということではないだろうか。特に、民主的な正当性が劣るような選挙制度で独自性が生み出されるような場合、なぜ第二院が第一院の決定を阻止できるのかということがあわせて問題になるように思われます。
こうした独自性の発揮が問題にならない場合もあると考えられます。これは後で若干申し上げますけれども、例えば連邦国家の場合でして、この場合には第二院が独自性を発揮するということの根拠、非常に強い正当性が憲法上存在しているということになろうかと思います。
これに対して、そうした正当性を持たない単一国家における第一院の場合、第二院の独自性をどこに求めるのか、それから、独自性が発揮された場合のその正当性の問題、これをどう考えるかということがやはり大きな問題になってくるように思われます。これはとりわけ、日本の参議院に当てはまる問題であろうかというふうに考えるわけです。
そこで、まず、日本の参議院について考えます前に、一般に二院制というものにどういうものがあるのか、それから二院制というシステムにどういう意味があるのかということにつきまして、皆様方よく御存じかと思いますけれども、改めて私なりに整理をいたしたいというふうに思います。
まず、二院制についてはさまざまな分類の仕方が存在しております。これは、どのような基準で分類を進めるかということによっていろいろあるわけですけれども、例えば、一般的なものとしましては、国家類型といいますか、あるいは政治体制から分類を試みるということが考えられます。
こうした分類としては、一般に貴族院型、連邦国家型、そして単一国家における第二院、こうした分類がなされるのが一般的ではないかというふうに思うわけです。
このうち、貴族院型につきましては、これは歴史の中の過渡期に生じてきたものでありまして、現在は数が少なくなっておりますし、イギリスのように存在する場合においても、第二院の権限は大幅に縮小されております。
恐らく、第二院が一番大きな存在意義を持ち得るのが二番目の連邦国家の場合であろう。これはよく言われることでありますけれども、私もそう考えております。
この場合の第二院といいますのは、個々の国民ですとか市民ではなくて、連邦の構成単位である、通常は州ということになろうかと思いますが、この州を代表する、こういう役割を担うことになります。当然、その州を代表するということですので、通常の例えば人口比例等とは異なった選挙制度によって第二院が選挙される。
そうなりますと、非常に強い独自性が発揮される可能性があるわけですけれども、連邦国家におきましては、その連邦を構成しますそれぞれの単位の同意なくして決定できない事項というものが当然考えられましょうから、仮にそれが第一院の決定を阻害したとしても、ここで第二院の正当性という問題は直ちに生じないわけです。
これに対して、日本のように単一国家において第一院を設ける場合、そこにどういう意味を読み込むのかということは非常に大きな問題になってまいります。
先ほど、独自性とかかわってどのような代表を考えるのかという問題があるであろうというお話をいたしましたけれども、二番目の類型の切り口といたしましては、代表原理ということが考えられるかと思います。
通常、第一院というのは特別な代表原理を持っておりませんので、一応、政治代表、こう呼ぶといたしますと、政治代表である第一院とは異なった代表原理によって第二院を選出する、そうすることによって第二院の独自性を発揮させてはどうか、こういう方向が考えられるわけです。
具体的に挙げますと、例えば地域代表という考え方がございます。これは、先ほど申しました連邦国家の場合もここに含まれますけれども、連邦国家までいかなくとも、連邦制の途上にある国家というんでしょうか、国家を構成する自治体に、州と呼ぶ場合もあろうかと思いますが、非常にやはり強い自治性、自律性が認められているような国家においても同じようなことが考えられるだろうと思います。
いずれにしても、この場合は、人口や有権者を基礎とするのではなくて、それぞれの地域を代表単位にする、こういう発想に立った代表原理だということになります。有名なのはアメリカでして、人口にかかわらず上院議員は各州二名、こういうことになっております。例外的に、日本と同様の単一国家におきましても、例えばフランスがこの地域代表という原理を取り入れております。
ただ、私、ここにはいろいろ問題があると思っておりまして、この点も後でまた若干御説明させていただきたいというふうに思っております。
地域代表以外にも、例えば、利益職能代表といった考え方も存在しております。こちらの方は、やはり、個人以外にも社会を構成する要素が存在するであろう、そうした要素をいかに代表するのか、こうした発想に立った考え方でありまして、さまざまな個人以外の要素、例えば、社会的な階層ですとか、あるいは経済活動の単位であるとか、あるいはある種専門的な能力を持った人たちの集団であるとか、そういった個人以外の要素を代表に反映してはどうか、こういう考え方であります。
ただ、こちらにつきましては、非常に大きな問題がございます。つまり、適切な代表の指標といいますか、これをどう見出すのか。特に、普通選挙ですとか平等選挙といった原則と調和する形で利益職能代表を考えるということは非常に難しい部分がございます。
そこで、先ほどフランスの話をいたしましたけれども、例えばフランスでは、二院制を設けた上で、それとは異なる形で、諮問機関という形で、経済社会評議会という利益職能代表的な機関を設ける、こういう位置づけになっております。
このように、幾つか異なる代表原理というのを考えることはできるわけですけれども、いずれにしても問題になるのは、それらをとらない場合、あるいは憲法上それらをとることが難しいと考えられる場合、いかに政治代表という枠の中で第二院の独自性、特に単一国家における第二院の独自性を考えるのか、こういうことになってまいります。
一つ考えられますのは、言うまでもなく、選挙制度あるいはその任期といった点であろうかと思いますが、もう一つ重要なのが、恐らく、両院の間の権限配分をどう行うかということになると思います。
権限配分から見た類型というのは、これは非常に簡単でして、通常は対等型と不対等型というものが区別されます。
対等型といいますのは、両院に同等の権限を与えて、両院の合意を決定の条件にする、こういう場合もございますし、それから、例えばアメリカの上院などがそうですけれども、ある特定の事項について、上院のみに決定権を付与する、こういった形もあろうかと思います。
これに対して、不対等型の場合、これもさまざまなバリエーションを考えることができるかと思いますけれども、例えば、立法について不対等型をとるということになりますと、両院の意見が食い違った場合、最終的には第一院の意思によって決定を行うことを可能にする、あるいはそれを容易にする、こういうスタイルが考えられるわけです。
日本の衆議院、参議院の関係というのは、不対等型だ、衆議院の優越ということがよく強調されますけれども、私、この点は若干疑問に思っておりまして、この点は後でまたお話をいたしたいというふうに思います。
以上、漫然と幾つか分類を申し上げてまいりましたけれども、実際には、これらを組み合わせて、それからまた実際の二院制の機能というものを考慮しながら二院制の類型化を行っていくということが恐らく必要になろうかと思います。
これもさまざまな考え方がございますけれども、きょうレジュメで御紹介していますのは、レープハルトという著名な政治学者による分類であります。
御存じの方もいらっしゃるかと思いますけれども、レープハルトは、二院制というものを、強い二院制、弱い二院制、それからその中間、中間的強度の二院制、仮にこう呼んでおきたいと思いますが、この三つに区分しております。それぞれの強さ、弱さを決める要素として、一つは権限の問題、それからもう一つが、やはり、さきに申し上げました議院構成の問題が要素として考えられているわけです。
このうち、強い二院制というのは非常にイメージがクリアでして、まず、両院は対等な権限を持つ、その上で両院の構成を異ならせる、こういうことになります。構成が異なりますので、非常に強い独自性、第一院と異なる投票行動が予想される。しかも、権限が対等ですので、第一院の決定が第二院によって阻止されるということが当然予想されるわけです。したがいまして、冒頭で申し上げましたように、なぜ第二院にそうした権限があるのかという第二院の正当性の問題が生じてまいります。
そこで、この種の二院制をとっている国としてどういうものがあるかといいますと、これはレープハルトの分類に従いますと、筆頭はアメリカでございまして、基本的には連邦制を採用している国ということになろうかと思います。この場合には、第二院が第一院の決定を阻止することについて、ある種憲法上強い正当性が見出されるということになります。
これに対して、この対極にありますのが弱い二院制ということでして、権限の面から見ますと、不対等型、つまり第二院の権限が弱い。それから、構成の面から見ますと、両院の構成は似通っている。これは、人為的につくられる場合もあるでしょうし、事実上そうなっていくという場合もあろうかというふうに思いますけれども、構成が似通った議院で、しかも第一院より権限が劣る第二院ということになりますと、なかなか独自性が発揮されにくい、こういうことになろうかと思います。
もっとも、この種の二院制に存在意義がないかどうか、この点はやや検討の余地があるように思われますが、これも後でまたお話をいたしたいと思います。
日本との関係で一番問題になりますのは、この中間ということになるわけです。事実、レープハルトも日本をこの中間に分類しております。これは、日本で一般になされております二院制の認識とはやや違うように思われますけれども、ここには実は二つのパターンが区別されております。
一つは、両院の構成をまず異ならせる。こうなりますと、当然独自性が発揮される余地というものが考えられるわけです。しかし、独自性が発揮された上で、両院の意思をどう調整するかというレベルでは、基本的に第一院の意思を優越させる、つまり第二院の権限を劣らせるということで不対等型を採用する、こういう型が考えられます。これには幾つかの国がございますけれども、後に述べますように、単一国家ではフランスがここに分類されております。
これに対して、中間的強度のもう一つのパターン、ここに日本が実は分類されているわけですけれども、こちらの方は、両院の議院構成は似通っているということが前提になっております。どうやってその独自性を発揮するかということになりますと、こちらは、構成の違い、議院構成の相違ではなくて、むしろ強い権限を第二院に付与する、対等な権限を第二院に付与することで独自性を考えていく、恐らくこういう方向性ではないかというふうに思われます。
通常、日本で参議院の問題を議論します場合、両院の構成が似通っている、したがってその独自性が発揮されないのだということをよく言われますけれども、実は私、きょう一つ申し上げたいと思っていた点が、構成が比較的類似しているということが果たして第二院の独自性を阻害するような決定的な要因となり得るのかどうか、この点でありまして、ここは少しまた後で詳しくお話をしていきたいというふうに思っております。
以上、二院制の分類をいろいろお話ししてきたわけですけれども、当然これ以外にも、二院制を採用しない国、つまり一院制を採用している国というのがあるわけです。単純に数の面だけで申しますと、二院制を採用している国よりも一院制の国の方が多い、こういうふうに言われております。
ただ、これには若干注釈が必要でして、特にやはりレープハルトが指摘をしていることですけれども、ある一定以上の人口規模を持っている国では一般に二院制が採用されている例が多い。具体的に申しますと、人口規模一千万人という数字を挙げていたかと思いますが、一千万人を超えますと二院制が採用される例が多い、こういうことであります。
もちろん、一院制が採用される場合であっても、二院制に類似したメカニズムが政治機構の中に組み込まれている場合は多いわけです。例えば、比例代表制を採用する、少数代表的な機能を強調する、あるいは地方分権を進めるとか、あるいは議事手続で少数派を優遇する、さまざまなメカニズム、一院制の中でも考えることができます。しかし、人口規模がある一定の限度を超えると二院制を採用する例がふえてくる。
これは経験的な問題でありまして、理論的に説明することはなかなか難しいのですけれども、私は、それがゆえに非常にこれは重要な事実ではないかというふうに思っております。
つまり、一院のみでは酌み尽くせない民意というものが存在するのではないか。人口がある一定規模を超えた場合、ある一定規模の政治共同体を考えますと、民主的に選挙された一つの議院だけですべての民意を代表するということにはやはり限界が生じてくる。そういう中で経験的に生み出されてきたシステム、これが二院制ではないだろうか、こんなふうに思うわけです。
いずれにしましても、その上で二院制を考えてみますときに、重要なのは、これも先ほど申しましたように、第二院の独自性と同時に、その第二院の持っている正当性、特に民主的な正当性ということになろうかと思います。
第二院が民主的にやや劣る制度によって選挙されて独自性を発揮するということになりますと、最終的には、やはり第一院に強い権限を与えて、第一院が最終的な決定権を持つ、こういうシステムをとらざるを得なくなるだろうというふうに思うわけです。
この場合、両院の対立ということは頻繁に生じるかもしれませんし、最終的に第一院が独自に決定をするということになるんですが、果たしてこういった対立型といいますか、正面衝突を繰り返すような二院制が本当に好ましいのかどうか、これは一つ考えてみる余地のある問題ではないかと私かねがね思っております。
それから、その裏返しになりますけれども、両院の構成が似通っているということが本当に第二院の独自性を阻害する要因になるのかどうか。当然、これに答えるためには、第二院の独自性というものをどういう意味で考えるのかということを考えざるを得ないわけです。
以上、二院制一般についてお話をしてまいりましたけれども、今度は、それを踏まえて少し具体的な例を考えてまいりたいというふうに思います。
まず参議院をということになるわけですが、参議院に入る前に、もう一つ、日本と同様に単一国家における第二院を採用しておりますフランスの例を挙げてみたいと思います。これは、たまたま私がフランスのことを研究してきたということもございますが、日本との関係を考える上でも、フランスの第二院というのはなかなか興味深い素材になるのではないか、かねてこう考えているわけです。
一枚物の簡単な選挙制度に関する資料がございますので、そちらをあわせてごらんになりながらお話を聞いていただければというふうに思います。
現在のフランス憲法のもとでは、第二院、これは元老院と普通訳すようですけれども、この元老院には地方公共団体の代表、つまり先ほど申しました地域代表としての地位が付与されております。
問題は、その地域代表、つまり人ではなくて、人口ではなくて、地域を代表するということをどう実現するかということでありますけれども、この点でフランスは実は非常に独特な制度をとっております。つまり、間接選挙ということになります。具体的に申しますと、各県ごとに、その県選出の国会議員、それから各種の地方議会議員が集まって、選挙人団を構成して元老院議員を選挙する、こういうシステムであります。
フランスの地方自治制度というのは、若干複雑なところがございます。三層制になっておりまして、一番下に基礎自治体であるコミューン、これは日本でいうと市町村に当たるでしょうか、それからその上に県があり、さらに広域自治体として地域圏というものがその上に存在しておりますが、数の上から申しますと圧倒的多数を占めるのがこの基礎自治体であるコミューンでして、総数では恐らく三万六千程度、これはヨーロッパのすべての基礎自治体を集めたより多い、こう言われております。日本の基礎自治体の十倍以上ということになりますが、数の上ではこのコミューンが圧倒的多数を占めるわけです。
地方公共団体の代表を保障するということになりますので、少なくともそれぞれの自治体に最低一定数の選挙人を配分しなければならない、こういうことになります。そうなりますと、コミューンの代表が選挙人団に占める比率というものが非常に高くなってまいります。三万六千基礎自治体がありますと、当然人口の不均衡というものも非常に大きい。一番大きいのはパリで、二百万を超える人口を持っておりますけれども、小さなところですと百人を切るようなコミューンもたくさんあるわけです。それらに人口に比例した選挙人を配分するということは事実上不可能ですので、実際には人口比例という観点から見ますと非常に大きな不均衡が存在しております。
その次に、若干、議席配分の表がありますので、こちらもごらんいただければというふうに思うのです。
いずれにしましても、独自性を出すためにフランスでは地域代表という原理を導入する、それから、その具体化の手段として、人口比例を犠牲にした間接選挙というシステムをとっております。したがいまして、これは最初に申しましたように、しばしば第二院が第一院の決定を阻害するということが起こり得るわけです。
フランス憲法はそれをどう解決しているかといいますと、これも先ほどから繰り返し申し上げておりますように、第一院の権限を第二院に優越させる、つまり、両院の決定が対立した場合、一応両院協議会を開きまして、その上で最終的には第一院が決定をする、こういうシステムを採用しております。ただ、不対等型とはいいましても、実際上の機能の面から見ますと、第二院の権限は実際以上に非常に強いように私には思われます。
なぜ、こうした地域代表としての第二院が置かれているのか、これも興味深い点でありますけれども、幾つかの説明が可能であろうかと思います。
一つは、これは日本でよく言われることですけれども、第一院とは異なる角度から民意を反映しているのだ、こういう説明であります。地域を代表するというのが表立っての説明でありますけれども、この地域代表というのは、実際の機能の面におきましては、中央に対する地方の代表といいますか、あるいは、さらに言いますと、都市部に対する農村部の代表といったイメージでとらえられることも多いようです。
それから、そういった選挙制度をとりますと、当然議会構成の面では保守派、あるいは中道派、保守派という言い方をする方が正確かもしれません、が常に議会では多数を占める、こういうことになります。ですから、特に下院の方、左翼、フランスですと社会党ですけれども、社会党が議席の多数を握った場合、両院の衝突ということが非常に先鋭化してあらわれるわけです。
いま一つの説明、これは日本でもよくなされるところでありますけれども、第一院に対する均衡といいますか、あるいは熟慮の議院といったらいいでしょうか、こういった役割分担であります。
これは、特に選挙制度ともかかわっておりまして、間接選挙がとられているということがあって、比較的議会構成の変化が第一院に比べると少ない。それからさらに、議員の任期が、最近少し改正がありましたけれども、従来は九年と非常に長い。そういう中で、比較的、中道右派に偏ったような安定した議会構成が続いている。そこで、第一院の行き過ぎに対するある種のブレーキをかけているのだ、こういう説明が伝統的になされてきたわけです。
さらに、加えて、地方の代表ということもあって、その地方の問題ですとか、あるいは文化的な問題ですとか、こういった特定の領域で第二院は一定の成果を上げてきたのだ、こう言われることもよくございます。
ただ、実際の機能ということを眺めてみますと、必ずしもそういった熟慮の議院といいますか、中立的な役割ではない部分が随分ございまして、一番最後に簡単な表を準備いたしました。ちょっと最新のデータが入っておりませんけれども、一枚物の一番下のところですね。
フランスの政治制度というのは、大統領と首相が併存しておりまして、ちょっと複雑なんですけれども、特に一九八〇年以降、国民議会で社会党が多数をとり、大統領に社会党のミッテランが選ばれる。その左翼政権があらわれた局面で、第二院の政治化ということが非常に顕在化してまいりました。これは、どういうふうにつかむかというのはなかなか難しいのですが、一つの指標として、議会に関する統計を使うことができるかと思います。
右の方にCMPと書き出してある、これは日本風にいいますと両院協議会、つまり、両院の意思が対立した場合、調整の場として両院協議会がどれだけ設けられたかという数であります。期間にばらつきがありますし、扱われた立法の数も違いますので、単純な比較はできないのですけれども、八〇年代初頭を見ていただきますと、両院協議会の開催は非常にふえている。しかも、そのうち、かなりの事例では、最終的に第一院が単独で決定をする、両院の対立が非常に先鋭的にあらわれる、こういう場面が出てまいります。
それから、一方、その数年後、一九八六年の半ばに選挙がありまして、下院の多数派が入れかわりますと、今度は元老院、上院は、下院に対して非常に協調的になる。場合によると、審議権を放棄してまでその審議の促進化に協調するということで、非常に政治的な動きがあらわれてまいりました。
その意味で、よく非政党化ということを日本の参議院についても言われるわけですが、普通選挙を前提とします限り、特に間接選挙をとっていてもなかなかこれは難しい問題ではないかと私は考えているわけです。
こういった、選挙制度で選ばれて、しかも、時々、第一院の決定と激しく衝突する、場合によると、それを阻害するという第二院の存在がありますので、選挙制度のあり方というのが従来からずっと問題になってまいりました。特に、左翼政権にとってはこれは悩みの種でして、一九九七年に誕生した社会党のジョスパン政権のもとで、選挙制度の民主化、これは括弧つきの民主化かもしれませんが、試みられております。
具体的には、先ほど申しましたように、選挙人の配分に非常に大きな人口上の不均衡があったわけですが、ここに徹底して人口比例の原則を導入しようということを考えたわけです。ところが、この改革については、憲法院から、憲法裁判所ですが、憲法違反という判断が一部下されております。
なぜそうなったかといいますと、人口上、非常に大きな不均衡が基礎自治体であるコミューンについては存在しております。一番人口規模が小さいところに最低限一人の選挙人を配分するということになりますと、人口規模が大きい、例えばパリのように二百万を超えるような人口規模を持っているところにそれに比例した形で選挙人を配分するということになりますと、これは膨大な数の選挙人を配分しなければならない。二十人、三十人という数ですと、議会の議員全てを選挙人にすることで対応ができますけれども、人口比例を徹底しますとそれが難しくなる。議会外から、いわば普通選挙によって選ばれていない人たちを補助的な選挙人として加えることでしか人口比例というものが成立しない。ここが非常に問題になったわけです。
その意味で、大きなジレンマを抱えた二院制だ、一方で高い評価もございますけれども、そういうことが言えるかと思います。
それから、もう一つ、フランスの二院制について指摘したいと思いますのは、今、両院の構成が違った場合の話をしていたんですけれども、両院の構成が似通っていた時期、実は、この時期に、比較的有益な役割を第二院が演じていたのではないか、こういう評価があります。
これは、私も実は同感でありまして、先ほど見ていただいた一番下の表をごらんいただくとわかるんですが、具体的に申しますと、一九七〇年代の半ば以降、大統領も、それから上下両院も、それぞれ保守中道が多数を占めるという時期がございました。両院の構成が一致しまして、しかも、権限でいいますと不対等ということになりますから、さっきのレープハルトの分類からいきますと、これは弱い二院制だ、こういうことになりそうなんですが、実際は必ずしもそうでありませんで、構成は似通っておりますけれども、両院の意思が食い違う場面というのが結構生じております。それからさらに、その上で両院が協議をして一定の合意に至るというケース、これは両院の構成が似通っていますので、当然そうなるかと思うのですが、これがかなり生じているわけです。
そういう意味で、最初にもちょっと申しましたように、両院の構成が似通っているから独自性が発揮されないのだと本当に言えるのかどうか。この点は、改めて検討を要するように思われます。特に、そこでの独自性ということをどういう方向に求めるのかということともこれはかかわってくると思います。
そこで、最後になりますが、以上の話を踏まえまして、今度は日本の参議院についても簡単にお話をさせていただきたいと思います。
制定の経緯という項目を設けましたが、時間の関係でここは割愛させていただきまして、まず、前提として、一つ確認したいと思います点が、日本の参議院あるいは二院制についてよく言われます、衆議院の優越あるいは不対等型の二院制という認識についてであります。
これも繰り返し申してきたところなんですけれども、本当に日本の二院制というのは不対等型なのか。これは、実は、ここにいらっしゃる国会議員の皆様方がよく御存じの点ではないかというふうに思うのですが、私は必ずしもそう思っておりません。
特に、法律ということに限ってみますと、再議決のためには衆議院で三分の二の特別多数が必要になります。これは、現実的に見ましても非常に高いハードルでありまして、この点だけ取り上げても、日本の参議院というのは実は非常に強いのではないか、レープハルトが分類するように、むしろ対等型に近いのではないか、こういうふうに思われるわけです。
そのことを前提とした上で、参議院の独自性をこれまでどこに求めてきたのか、参議院の独自性をめぐってどういう議論があったのかということについても簡単に触れてみたいというふうに思うのです。
最初に代表原理という話を少ししましたが、一つの方向は、政治代表とは異なる方向、つまり、例えば、利益職能代表的な要素を加える。これは正面から導入することはできませんけれども、旧の全国区についてはこういうことが言われてきたわけです。それから、他方で、これは人口比例を犠牲にした上でのことですので、非常に問題がございますけれども、都道府県代表的な要素を加えるんだということも言われてまいりました。しかし、にもかかわらず、両院の間には大きな相違は生じてこなかった、また、目立った独自性が発揮されてこなかった、これが現実ではないかと思います。
それから、もう一つの方向性、これもフランスとやや似通っておりますけれども、一言で言いますと、理性の府ということになろうかと思います。
つまり、数が支配する衆議院とは異なる観点から、国政にそれとは違った視点を持ち込むのだ、こういう話でありまして、これとの関係でよく言われてまいったのが、一つは、非党派性といいますか、非党派的な要素を参議院に持ち込むことで独自性を求めていこう、こういう話です。
特に、これもよく言われることですけれども、戦後初期の参議院では緑風会という独特の組織があったこともあって、参議院は非党派的な議院であるべきだということがよく言われております。
ただ、さきに御紹介しましたフランスの例からもわかりますように、普通選挙を前提といたしまして、どこまで非党派的な議院が実現できるのか、私自身は非常に懐疑的でありまして、むしろ、目指すべきは非党派的な議院ではなくて、参議院らしい政党化ということではないだろうか、こう思っているわけです。
具体的にどういう参議院らしい政党化があるのかということなんですが、一つの方向は、これは憲法との関係で申しますと、憲法は議院内閣制を採用して、解散と不信任というメカニズムをとっておりますけれども、参議院は一応この外に置かれております。
そうなりますと、衆議院が内閣をつくる、あるいは、衆議院が内閣を維持するのに対して、参議院は内閣の批判に徹する。場合によると、参議院から閣僚を出さないというような慣行を確立して、内閣からは一線を置いたところに参議院の独自性を見出していこう、こういう方向性が一つ考えられるわけです。
ただ、実際には、解散と不信任のメカニズムの外にあるといいましても、例えば内閣が提出した重要な法案を否決するという形で参議院は内閣の存立に大きな影響を及ぼすことができます。そこで、こうした方向が好ましい効果を生み出すかどうか、あるいは有効かどうかということについては、私は若干疑念を持っております。
それから、参議院の独自性に関しては、もう一つ、特に一九九〇年代以降、衆議院と参議院のいわゆるねじれ現象といいますか、構成が食い違った状況が続いてきているということについても触れておきたいと思います。
本来ですと、両院の構成が食い違っていますので、参議院の独自性が発揮されることが期待されるわけですが、必ずしもそうなってこなかったところがございます。
なぜかということですが、一つには、やはり一番大きいのは、参議院の反対を見越して、参議院を含めた形での多数派形成が行われる。奇妙な慣行と呼ばれたり、あるいは国会内閣という言葉が使われたりいたしますけれども、参議院も含めた多数派というものを事前につくって、両院の対立が起きないような状況をつくるということが行われてまいりました。
なぜこうした方向がとられてきたのか。これはやはり理由があることだと思っておりまして、これは先ほどの参議院が強いのかという話とかかわってまいります。
つまり、参議院が法案の成立に非常に強い権限を持っている。したがって、その対立が生じそうなのであれば、事前にそれを抑えるような方策が必要になるだろう、こういう方向から、両院にまたがる形での内閣の形成というものが考えられてきたのではないか。それに基づいて、参議院の独自性の発揮というものがなかなか果たされなかったのではないか、こう考えられるわけです。
そうなりますと、では、憲法を改正して参議院の権限を弱めたらどうか、不対等型であればそうした慣行は生じないのではないか、こういう話になりそうでありますけれども、これは繰り返し申しましたとおり、仮にそうした形で参議院の独自性が強く発揮される、最終的に第一院が決定を下す、こういう図式が果たして二院制として本当に好ましいのかどうか、ここは私としては考えてみるべき余地があるように思っております。
そもそも、なぜ憲法が三分の二という再議決の高いハードルを設けたのか、問題はここにもかかわってまいります。私が考えておりますのは、あえて高いハードルを設けることで両院の間のある種の妥協なり協調を促しているのではないか、こういうことであります。
日本の場合、両院は同じような民主的正当性を持ち、似通った選挙制度で選ばれておりますので、なかなか構成の相違が生まれにくい、こういうことはあるわけです。しかし、それはあくまで大枠での話でして、先ほどのフランスの例からもわかりますように、細かな点で、細かなというといささか言葉が悪いかもしれませんけれども、大枠とはかかわらない部分でさまざまな修正を第二院が第一院に加える、こういう余地は十分にあり得るのではないか。いささか地味な二院制ということになるかもしれませんが、二院制のあり方としてこれはこれで有用なものではないだろうか、私自身はそんなふうに考えているところがございます。
時間も随分なくなってまいりましたが、その上で、参議院の意味ということについて、私なりに最後に簡単に整理してみたいと思うのです。
やはり、一つ重要な役割は、衆議院と異なる形で民意を反映するということであろうというふうに思うわけです。
代表原理なり選挙制度が大きく異なれば、確かに、異なった形での民意の反映がなされたのだ、こういう評価があるかもしれませんけれども、最終的にそれが両院の対立をもたらし、最終的に一院のみによる決定を導くということになりますと、これはやはりいささか問題ではないだろうか。
そうではなくて、それほど大きな対立は生じないかもしれませんけれども、例えば法案の修正という形で参議院がイニシアチブを発揮していく、ここに実は多様な民意の反映という意味を一つ求めることができるのではないか、こう思っているわけです。
日本の場合、ヨーロッパに比べて国民なり世論が等質であるということはよく言われるわけです。社会学的に見ますと、確かにそういう面はあるのかな、こう思っております。しかし、世論が等質か多様かということは、これは所与のものとして決まっていない部分がある。特に、代表のあり方を通じて世論の多様性というものが具体化されてくる部分があるわけです。
世論の中に潜んでいます非常に微妙なニュアンスとか細かな表情といったもの、これを拾い出して、それから、例えば修正なり調整という形で国政に生かしていく、これは実は多様な民意の反映を考える上でも一つ重要な視点なのではないだろうか、私はこう思っております。
では、どうしたらそれが発揮されるのか、では、なぜ現在それが発揮されていないのか、これは一つ検討を要する点でありますけれども、二つほど指摘をさせていただきたいと思っておりまして、一つは、さきに申しました政党化ということにかかわっております。
参議院の政党化を防ぐことはできないであろう。これは先ほど申し上げた点でありますけれども、政党化が防げないということは、参議院と衆議院が全く同じような政党化をするのがよいということではもちろんないわけです。特に、任期や選挙が違いますと、同じような政党や党派構成を前提としましても、民意と議院の関係というものは大きく変わってまいります。
ところが、現在の選挙制度を見てまいりますと、衆参で制度が似通っている、代表原理に着目してこういうことがよく言われるわけですけれども、同時に、もう一つ大きな意味を持っていると思われますのは、特に政治改革以降、政党本位ということが非常に強調されてまいりました。これはさまざまな面にあらわれておりますが、他国と比べてもかなり強力な政党本位の制度が衆議院、参議院双方に導入されております。
ということになりますと、議院と政党の関係というものが衆議院、参議院双方で同じように固定化されているのではないだろうか。この点は、例えば選挙制度に関しては一つ見直してみるべき価値があるのではないか、こう思っているわけです。
それからもう一つ、これはきょうぜひ申し上げておきたいと思った点なのですけれども、両院の独自性を発揮させる前提として、当然、それぞれの院の自律性というものを考える必要があります。
日本国憲法の場合ですと、例えばそれぞれの院に独自に議院規則の制定権を認める、こういう規定がおかれております。戦前の憲法には議院法の存在というものが予定されておりまして、議院法が決めた後で残りの細かな事項を議院規則が決める、こういう役割分担が考えられていたのだと思いますけれども、日本国憲法はこの種の法律の存在を本来は予定しておりません。
現実には、国会法等で、例えば委員会等についても細かな規定が置かれておりますけれども、これが本来の姿なのかといいますと、私は必ずしもそうではないと思っております。
これは私の先輩の諸先生方が繰り返し指摘されてきたことでもありますけれども、本来からしますと、憲法が法律に留保している事柄を除いて、基本的に、両院の組織に関する重要事項、これはそれぞれの議院が自律的に議院規則という形で定めてもよいのではないか、こう思っております。つまり、みずからの院の組織をみずから決定することができない議院に独自性を期待するということは難しいのではないか、こういうことであります。
議院規則と国会法の役割分担、ある意味では、憲法改正にも匹敵するような大きな意味を持っておりますけれども、これはぜひひとつお考えいただければと思っている点であります。
こう考えた上で、改めて、参議院の役割をどこに求めるかということになるわけですが、一つは、先ほどから申し上げておりますように、必ずしも衆議院との大きな違いではないかもしれないけれども、ある種細かな世論の違いというものを反映していく、こういう方向が一つあり得るのではないか。
それから、それと結びついてもう一つ、憲法は参議院に長い任期を保障しておりますけれども、こことの関係でも、多様な民意の反映を具体化する方向性というものが考えられていいように思われます。
衆議院と異なって解散がない、しかも六年の任期が保障されているということですので、当然考えられますのは、長期的な視野に立った調査活動、現実には調査会といった制度がございますけれども、あるいは行政に対するコントロール、こういった方向性が、一つ、参議院の好ましい機能として、あるいは役割として憲法上考えられるように思われます。
本日のテーマの一つの、決算ともこれはかかわってまいります。
時間がございませんので、簡単にここではコメントだけすることにいたしますけれども、予算の事後的な統制というのは、かかる視点からいたしますと、当然、参議院の一つの役割というふうに考えられるわけです。
ただ、これもこういうお話があるというふうに伺っておるのですけれども、例えば憲法を改正して、衆議院に予算の議決権を与える、参議院は決算に特化したらどうか、こういう方向があるというお話を伺いました。これは確かに一つの方向性ではあるわけですけれども、それが果たして好ましい方向なのかどうかということにつきましては、私自身はやや疑問を持っております。
といいますのは、これはレープハルトの分類ともかかわってまいりますけれども、決算に特化した参議院を考えるということになりますと、当然、予算の審議とは切り離した参議院を考えることになる。例えば、内閣とは一線を引いた形で参議院を考える、それで決算という形で比較的弱い権限を付与する、こういうことになりますので、そういった弱い権限を持った参議院がどこまで有効なコントロールを行使できるのか、これは一つ問題になる点ではなかろうか、こう思っております。
きょうの私のお話は、基本的には、現在の憲法を前提としても参議院にはさまざまな役割を考え得るのではないか、こういうことでございましたけれども、さらにもう一歩踏み込んで申しますと、憲法政策的に見ましても、現在の日本国憲法が想定している二院制、これは方向として大きく間違っていないのではないか、むしろ問題なのはそれを生かすための前提条件なり、その前提となるさまざまな要素ではないだろうか、これが私なりの一つの結論でございます。
時間もございますので、足りない点は質疑の中で補わせていただければと思います。
どうもありがとうございました。拍手
鈴
鈴
中
中山太郎#8
○中山会長 自民党の中山でございます。
まず、会計検査院長にお尋ねしたいのですが、私、かつて参議院におりましたころは、二年、三年分の決算報告を一年で処理したというような歴史が参議院にはございます。そういうことで、決算の承認がそんなに大した意味を持たないという意識が非常に私はあったと思うのです、旧来の参議院のあり方の中で。
そういう中で、コンピューターが導入されて計算速度が非常に上がったということで、次年度の十一月ごろには検査の報告が出るという時代に来たのではないかと思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
この発言だけを見る →まず、会計検査院長にお尋ねしたいのですが、私、かつて参議院におりましたころは、二年、三年分の決算報告を一年で処理したというような歴史が参議院にはございます。そういうことで、決算の承認がそんなに大した意味を持たないという意識が非常に私はあったと思うのです、旧来の参議院のあり方の中で。
そういう中で、コンピューターが導入されて計算速度が非常に上がったということで、次年度の十一月ごろには検査の報告が出るという時代に来たのではないかと思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
森
森下伸昭#9
○森下会計検査院長 予算編成が行われる前に決算の審査をすることができるように、その時期に間に合うよう決算の検査の結果を出してほしいということでございまして、それは大変意味のあることだというふうに考えております。
ただ、決算そのものの確認というものはコンピューターを駆使すれば時間短縮はできるわけでございますけれども、具体的な検査活動の、検査の内容になりますと、これは問題によりましてはかなり時間がかかるものもございます。
そういう点で、今私ども会計検査院の悩みは、時期が早められたことによって検査の内容とか質が劣るものにならないように頑張っていかないといけないという点でございます。
この発言だけを見る →ただ、決算そのものの確認というものはコンピューターを駆使すれば時間短縮はできるわけでございますけれども、具体的な検査活動の、検査の内容になりますと、これは問題によりましてはかなり時間がかかるものもございます。
そういう点で、今私ども会計検査院の悩みは、時期が早められたことによって検査の内容とか質が劣るものにならないように頑張っていかないといけないという点でございます。
中
中山太郎#10
○中山会長 会計検査院長、もう一回別の立場から質問させていただきますが、会計検査院の職員の採用に当たって、理工系の出身者というのは何%ぐらいか、アバウトで結構ですが。
この発言だけを見る →森
森下伸昭#11
○森下会計検査院長 現在、二百名を超えておるかと思います。約千二百五十人ぐらいの職員のうち、二百人を超える者が理工系の学部を卒業した者でございます。
本年、検査報告を早く出すということのために四十人の定員の増が認められまして、約千三百人ぐらいになってはおります。これからいろいろな分野の採用に心がけていかなければいけないというふうに思っています。
この発言だけを見る →本年、検査報告を早く出すということのために四十人の定員の増が認められまして、約千三百人ぐらいになってはおります。これからいろいろな分野の採用に心がけていかなければいけないというふうに思っています。
中
中山太郎#12
○中山会長 そこで、アメリカのGAO、我々は去年調査をいたしましたけれども、これは議会に附属したような機関であって、非常に強い立場を得ているわけですね。ここのいわゆる検査結果によって、二〇〇二年度は年間約三百七十七億ドルの節約がなされた、こういう調査結果が出ております。GAOの年間予算が約四億四千二百六十万ドルでありますから、八十倍以上のいわゆるコスト削減に向かってのアドバイスができた。
ここで、会計検査院が中立的な機関であるということは先ほど御説明いただきましたけれども、政府から独立して、いわゆる議会に密着した立場で検査報告を出すようなことはできないかどうか。これは非常に議会にとっても大切なことだろうと思うのです。
というのは、予算審議それから予算関連法案は、まずこの審議の過程で、衆議院で優先的に議論されている間、参議院に法案審議の余裕が出てくるわけですね。その期間に会計検査というものを参議院に集中して調査させていくということが納税者にとって非常に意味があるんじゃないか、こういうふうに実は感じておりまして、この点については只野参考人にもお伺いしたいと思うのですが、どのようにお考えでしょうか。
この発言だけを見る →ここで、会計検査院が中立的な機関であるということは先ほど御説明いただきましたけれども、政府から独立して、いわゆる議会に密着した立場で検査報告を出すようなことはできないかどうか。これは非常に議会にとっても大切なことだろうと思うのです。
というのは、予算審議それから予算関連法案は、まずこの審議の過程で、衆議院で優先的に議論されている間、参議院に法案審議の余裕が出てくるわけですね。その期間に会計検査というものを参議院に集中して調査させていくということが納税者にとって非常に意味があるんじゃないか、こういうふうに実は感じておりまして、この点については只野参考人にもお伺いしたいと思うのですが、どのようにお考えでしょうか。
森
森下伸昭#13
○森下会計検査院長 会計検査院は、決算の検査ということでございまして、できるだけそういう成果を早くまとめて、そして国会の方に明らかにしていきたいという姿勢で今検査にも臨んでおります。
ただ、検査報告といいますのは、憲法上、決算とともに提出するということになっておりまして、年一回という制約がございます。その制約はございますけれども、先ほども少し触れました、会計検査院法の三十四条でありますとか三十六条によります改善の処置要求とか意見の表示というのはその都度行うことができるものでございますので、こういった手段を活用して、今の中山委員の御要望のようなことに沿っていけたらなというふうに思っております。
この発言だけを見る →ただ、検査報告といいますのは、憲法上、決算とともに提出するということになっておりまして、年一回という制約がございます。その制約はございますけれども、先ほども少し触れました、会計検査院法の三十四条でありますとか三十六条によります改善の処置要求とか意見の表示というのはその都度行うことができるものでございますので、こういった手段を活用して、今の中山委員の御要望のようなことに沿っていけたらなというふうに思っております。
只
只野雅人#14
○只野参考人 ただいまの御質問にありました、会計検査院を例えば国会の附属機関としてといいますか、国会とリンクさせる形で機能させてはどうかという点でございますが、国会なりそれぞれの議院によります財政統制ということを考えますと、有能なスタッフを国会が備えるというのは確かに一つの方向であろうかとは思います。
ただ、これはなかなか難しいところがございまして、これはよく会計検査院について言われるところでありますけれども、アメリカのように、大統領制という形で立法と行政の厳格な分立が果たされている場合とは異なりまして、議院内閣制の場合、議会の多数派と、それから予算の執行の責任を有します内閣との関係は非常に密接でございます。
特に、予算の執行という面について会計検査院がかなり踏み込んだチェックをする、場合によると、専門合理性という観点から政策的に問題があるのではないかという指摘をすることも本来あろうかと思うのですけれども、そういったものまで考えてみますと、特に内閣からの独立性ということを考えてみますと、議院内閣制のもとで、国会のもとに会計検査院を置くというのはなかなか難しい面も他面においてあろうかというふうに思っております。
この発言だけを見る →ただ、これはなかなか難しいところがございまして、これはよく会計検査院について言われるところでありますけれども、アメリカのように、大統領制という形で立法と行政の厳格な分立が果たされている場合とは異なりまして、議院内閣制の場合、議会の多数派と、それから予算の執行の責任を有します内閣との関係は非常に密接でございます。
特に、予算の執行という面について会計検査院がかなり踏み込んだチェックをする、場合によると、専門合理性という観点から政策的に問題があるのではないかという指摘をすることも本来あろうかと思うのですけれども、そういったものまで考えてみますと、特に内閣からの独立性ということを考えてみますと、議院内閣制のもとで、国会のもとに会計検査院を置くというのはなかなか難しい面も他面においてあろうかというふうに思っております。
中
中山太郎#15
○中山会長 最後の質問でありますけれども、これは只野参考人にお尋ねしたいと思うのです。
両院制の中で、参議院は、衆議院と違って内閣不信任案は出せない、問責決議案ですね。だから、直接内閣が退陣するとか、そういうことは参議院ではあり得ない。
こういった中で、戦後のドイツの内閣総理大臣と日本の総理大臣の数を比較してみますと、大体、日本が五十人近いでしょう、ドイツは十二、三人じゃないかと思いますね。つまり、内閣不信任案を出すときに、あらかじめ次の首班候補を決めてからでないとドイツの憲法は不信任案を出せないのですね。こういうところに、この失われた十年というか、いろいろな政治の変化が絶え間なく起こってきた。
ここらの点は、国会の仕組みについてよく御存じの只野参考人、どういうふうにお考えでしょうか。
この発言だけを見る →両院制の中で、参議院は、衆議院と違って内閣不信任案は出せない、問責決議案ですね。だから、直接内閣が退陣するとか、そういうことは参議院ではあり得ない。
こういった中で、戦後のドイツの内閣総理大臣と日本の総理大臣の数を比較してみますと、大体、日本が五十人近いでしょう、ドイツは十二、三人じゃないかと思いますね。つまり、内閣不信任案を出すときに、あらかじめ次の首班候補を決めてからでないとドイツの憲法は不信任案を出せないのですね。こういうところに、この失われた十年というか、いろいろな政治の変化が絶え間なく起こってきた。
ここらの点は、国会の仕組みについてよく御存じの只野参考人、どういうふうにお考えでしょうか。
只
只野雅人#16
○只野参考人 今ドイツの建設的不信任のお話がございましたけれども、日本でなぜ総理大臣がよくかわるのかということについては、不信任とは若干違う要素があるのではないかというふうに考えております。
特に、日本の場合、衆議院には、場合によると参議院まで含めまして、安定した多数派が少なくとも外見的にはずっと存在してきたわけでありまして、そこから多数派が支える内閣不信任が出されるということは非常に考えにくいわけです。
そうした安定的な基盤があるにもかかわらず、なぜ内閣総理大臣がよくかわるのか。これは、やはり党と内閣の関係をどう考えるのかというような問題を含んでおりますので、直接その不信任のメカニズムとかかわらないのではないか、こんなふうに思っております。
それから、参議院が衆議院の命運を左右するのはいかがなものか、これも一つ筋の通った議論ではないかというふうに思っているんです。しかし、現実には、例えば参議院によって内閣の命運が大きく左右された事案というのはそれほど日本の場合多くないのではないか、これも、私、感じているところでございます。
この発言だけを見る →特に、日本の場合、衆議院には、場合によると参議院まで含めまして、安定した多数派が少なくとも外見的にはずっと存在してきたわけでありまして、そこから多数派が支える内閣不信任が出されるということは非常に考えにくいわけです。
そうした安定的な基盤があるにもかかわらず、なぜ内閣総理大臣がよくかわるのか。これは、やはり党と内閣の関係をどう考えるのかというような問題を含んでおりますので、直接その不信任のメカニズムとかかわらないのではないか、こんなふうに思っております。
それから、参議院が衆議院の命運を左右するのはいかがなものか、これも一つ筋の通った議論ではないかというふうに思っているんです。しかし、現実には、例えば参議院によって内閣の命運が大きく左右された事案というのはそれほど日本の場合多くないのではないか、これも、私、感じているところでございます。
中
鈴
鹿
鹿野道彦#19
○鹿野小委員 最初に、森下院長、只野参考人、大変貴重な話を賜りまして、ありがとうございました。
最初に、森下院長にお聞きいたします。今もお話がございましたが、いわゆる会計検査院というのは、国会、内閣、裁判所、いずれにも属さない独立機関だ、こういう中で、議会の附属機関化を検討すべきでないかという声もあるわけですね。
これは、やはりアメリカがそれだけの成果を出しているというふうなことだと思いますが、実質的に、議院内閣制のもとで立法府に監視機関を設置するというふうなことについては本当に中立性というものが保たれるのかどうか、こういうふうなこと。すなわち、与党と内閣という非常に密接な関係からして、重ねて申し上げますけれども、十分中立性というものは維持できるのかどうか、この辺のところのお考えを聞かせてください。
この発言だけを見る →最初に、森下院長にお聞きいたします。今もお話がございましたが、いわゆる会計検査院というのは、国会、内閣、裁判所、いずれにも属さない独立機関だ、こういう中で、議会の附属機関化を検討すべきでないかという声もあるわけですね。
これは、やはりアメリカがそれだけの成果を出しているというふうなことだと思いますが、実質的に、議院内閣制のもとで立法府に監視機関を設置するというふうなことについては本当に中立性というものが保たれるのかどうか、こういうふうなこと。すなわち、与党と内閣という非常に密接な関係からして、重ねて申し上げますけれども、十分中立性というものは維持できるのかどうか、この辺のところのお考えを聞かせてください。
森
森下伸昭#20
○森下会計検査院長 お答えするのは難しいのでございますけれども、そういう政治の場に近いところに密着しておりますれば、何らかのやはり影響は受けるのではないかというような感じを個人的に持っております。
現在の会計検査院法が新憲法とともに制定されるときの改正要綱の中でも、なぜ国会に附属させないかという説明で、やはり政治的影響を避けるべきであるというような趣旨のことが言われております。
この発言だけを見る →現在の会計検査院法が新憲法とともに制定されるときの改正要綱の中でも、なぜ国会に附属させないかという説明で、やはり政治的影響を避けるべきであるというような趣旨のことが言われております。
鹿
鹿野道彦#21
○鹿野小委員 そうしますと、只野先生がおっしゃったとおりに、いわゆる統治機構が違う、議院内閣制のもとでなくて、アメリカのように大統領制、大統領と議会の関係ならば議会の附属機関化するというふうなことはどうだろうかということについての考えはどうですか。
この発言だけを見る →森
森下伸昭#22
○森下会計検査院長 これも、そういう統治機構を専門に研究したわけでもございませんので、今までのつたない知識の上でのお答えになるかと思いますけれども、アメリカにおいて厳格な三権分立のもとでGAOというのが存在するということであれば、我が国も、そういう厳格な三権分立ということであれば、それはあり得るのではないかということでございます。
ただ、我が国で厳格な三権分立というのがいかがなものかというのは、また次の問題があろうかと思います。
この発言だけを見る →ただ、我が国で厳格な三権分立というのがいかがなものかというのは、また次の問題があろうかと思います。
鹿
鹿野道彦#23
○鹿野小委員 もう一つお聞きしたいと思います。
先ほどの説明の中でも、平成九年の国会法の改正で、いわゆるそれぞれの議院もしくは委員会、調査会が、審査、調査のために必要なときは、特定の事項について会計検査を行い、その結果報告をするよう求めることができる、こういうことになりました。これについてはまだ二件きりやっていない、こういうことですよね。
果たして、せっかくこういう法改正によってということならば、より有効に機能させるにはどういう見直しが必要なのかということについてはどうお考えでしょうか。
この発言だけを見る →先ほどの説明の中でも、平成九年の国会法の改正で、いわゆるそれぞれの議院もしくは委員会、調査会が、審査、調査のために必要なときは、特定の事項について会計検査を行い、その結果報告をするよう求めることができる、こういうことになりました。これについてはまだ二件きりやっていない、こういうことですよね。
果たして、せっかくこういう法改正によってということならば、より有効に機能させるにはどういう見直しが必要なのかということについてはどうお考えでしょうか。
森
森下伸昭#24
○森下会計検査院長 二件にとどまっている理由というのは、私どももどういうことによるのかよくわからないわけでございます。
先ほどもちょっと御説明いたしましたように、やはり国会のいろいろな審議の中から検査要請というのが生まれてくると思いますけれども、私ども会計検査院は、そういう審議内容を十分に把握しながら検査計画の中で検査テーマに選定したりしておりますので、ある意味では先取りをしながらやっているという面はあるのかなというふうにも思ったりしております。
この発言だけを見る →先ほどもちょっと御説明いたしましたように、やはり国会のいろいろな審議の中から検査要請というのが生まれてくると思いますけれども、私ども会計検査院は、そういう審議内容を十分に把握しながら検査計画の中で検査テーマに選定したりしておりますので、ある意味では先取りをしながらやっているという面はあるのかなというふうにも思ったりしております。
鹿
鹿野道彦#25
○鹿野小委員 只野先生にお聞きしますけれども、結局、二件きりやっていないということは、与党がオーケーしない限り提出ができない、こういうふうなことになるものですから、そこは見直しの中で、一定の数で要求すればそれはできる、今申し上げたようなやり方も一つの考え方ではないかなと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
この発言だけを見る →只
只野雅人#26
○只野参考人 これはおっしゃるとおりではないかと思います。
先ほど統制機能という話を少しいたしましたけれども、議院内閣制というシステムを前提にいたしますと、特に有効に行政統制を行うためには、議会内の少数派がイニシアチブをとった形でのコントロールを考えるということが非常に私も重要だというふうに考えております。
この発言だけを見る →先ほど統制機能という話を少しいたしましたけれども、議院内閣制というシステムを前提にいたしますと、特に有効に行政統制を行うためには、議会内の少数派がイニシアチブをとった形でのコントロールを考えるということが非常に私も重要だというふうに考えております。
鹿
鹿野道彦#27
○鹿野小委員 只野先生にお聞きいたします。
先生は、両院が対立するようなことは決して望ましいことではない、いわゆる衝突するような状況になるということは二院制の機能にとって果たして望ましいと言えるのかどうかというお考えだと思うわけでございますけれども、そうすると、結局、選挙制度によって両院間に大きな相違というものをつくり出すことはどうなのかということは慎重にやはり検討する必要がある、こういうふうに先生もおっしゃっておられるわけですね。
ただ、一方において、せっかく二つの議院が個々の選挙を行うということならば、それぞれ異なる形でも代表機能が期待されるというふうなこともいわゆる自然なことではないかと思うんです。
この辺のことを考えたときに、先生のお考えとして、選挙制度のあり方というのはどうお考えかをお聞かせいただきたいと思います。
この発言だけを見る →先生は、両院が対立するようなことは決して望ましいことではない、いわゆる衝突するような状況になるということは二院制の機能にとって果たして望ましいと言えるのかどうかというお考えだと思うわけでございますけれども、そうすると、結局、選挙制度によって両院間に大きな相違というものをつくり出すことはどうなのかということは慎重にやはり検討する必要がある、こういうふうに先生もおっしゃっておられるわけですね。
ただ、一方において、せっかく二つの議院が個々の選挙を行うということならば、それぞれ異なる形でも代表機能が期待されるというふうなこともいわゆる自然なことではないかと思うんです。
この辺のことを考えたときに、先生のお考えとして、選挙制度のあり方というのはどうお考えかをお聞かせいただきたいと思います。
只
只野雅人#28
○只野参考人 確かにどうやって両院を、特に第二院の独自性を出すかということになりますと、まず考えられるのは構成を異ならせるということでありまして、そうであれば両院の選挙制度を異ならせたらどうか、これは比較的自然に出てくる結論であろうかと思います。そういう点で、私、先ほど申し上げた結論は余り普通でないのかもしれません。
ただ、先ほども申しましたように、両院が大きく対立したような場面を考えてみますと、やはりどちらの決定に正当性があるのかということが問題とならざるを得ないように思われます。
フランスのように、第一院が最終的に決定をするという形で、つまり不対等型の第二院とであればこれは比較的うまく機能する可能性があるというふうに思っているわけですが、対等型の第二院の場合、なかなかそれは難しい部分があるのではないか。
そうであれば、両院の協調を考えるということを重視いたしまして、むしろ選挙制度によって大きな差異を生み出すということに必ずしもこだわらなくてもよろしいのではないか、こういうことでございます。
この発言だけを見る →ただ、先ほども申しましたように、両院が大きく対立したような場面を考えてみますと、やはりどちらの決定に正当性があるのかということが問題とならざるを得ないように思われます。
フランスのように、第一院が最終的に決定をするという形で、つまり不対等型の第二院とであればこれは比較的うまく機能する可能性があるというふうに思っているわけですが、対等型の第二院の場合、なかなかそれは難しい部分があるのではないか。
そうであれば、両院の協調を考えるということを重視いたしまして、むしろ選挙制度によって大きな差異を生み出すということに必ずしもこだわらなくてもよろしいのではないか、こういうことでございます。
鹿
鹿野道彦#29
○鹿野小委員 最後に、只野先生にもう一つお聞きします。
我が国の憲法では、四十三条の第一項に、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」ということだけ定められているわけでありまして、選挙制度についての、いわゆる参政権にかかわる事柄ついては憲法上明記されていないんですが、諸外国なんかは、選挙制度について、非常に重要な事項だということからきちっと明記されている、我が国においてもやはり具体的な定めを置くべきではないか、この憲法調査会における参考人質疑におきましても、大石先生がそういうこともおっしゃっておられたことがあるのでございますけれども、只野先生のお考えはどのようなお考えでしょうか。
そして、規定をするならば、具体的にどういう形の規定がよろしいかということもお聞かせいただければと思います。
この発言だけを見る →我が国の憲法では、四十三条の第一項に、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」ということだけ定められているわけでありまして、選挙制度についての、いわゆる参政権にかかわる事柄ついては憲法上明記されていないんですが、諸外国なんかは、選挙制度について、非常に重要な事項だということからきちっと明記されている、我が国においてもやはり具体的な定めを置くべきではないか、この憲法調査会における参考人質疑におきましても、大石先生がそういうこともおっしゃっておられたことがあるのでございますけれども、只野先生のお考えはどのようなお考えでしょうか。
そして、規定をするならば、具体的にどういう形の規定がよろしいかということもお聞かせいただければと思います。