浅田正彦の発言 (憲法調査会)
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○参考人(浅田正彦君) 拒否権の問題については、経緯は御存じのとおりでありますけれども、当初は世界の警察官という形で五つの国が中心となって世界の国際の平和と安全を維持するということで、それが一致しなければいけないという趣旨で、五つの国が賛成しなければ安全保障理事会で実質的事項について決定できないというわけでありますけれども、ただこれを、これが大きな問題となっているというのはいろんなところで出てきておりまして、例えば実質的な意味は別としまして、コソボの武力行使の際には、安保理で武力行使のいわゆる容認決議を採択して、それに基づいて武力行使をするという国際法上異議のない形での武力行使が可能であったわけですけれども、その際にはロシアが拒否権を行使するというふうなことをほのめかしたので安保理でそういった決議案を出さなかったというわけであります。
こういう形で、一国が賛成しなければ決議が通らないわけで、そのユーゴとロシアとの関係のためにロシアがそのような態度を取ったわけですけれども、こういった形で、結局はNATOを中心に安保理の決議を経ない形で武力行使を行うという一つの大きな先例ができてしまったというわけで、拒否権、こういった例から分かりますように、拒否権の問題というのは非常に大きな問題をはらんでいますけれども、しかしながらこれを変えるということになりますと、これは国連憲章の二十七条の三項に規定されておる制度でありますから、それを変えるためには国連憲章二十七条三項を変えなければいけないと。
変えるというのはどうするかといいますと、これは国連憲章の改正手続を経るわけでありまして、国連憲章の場合は憲法と違いまして、日本国憲法と違いまして、国連憲章の改正というのはこれまでもなされています。どのような手続を経るかといいますと、これは国連憲章の百八条に書かれておりますように、安全保障理事会のすべての常任理事国を含む国連加盟国の三分の二によって批准されたときに効力を生ずると。したがって、安全保障理事会の常任理事国が賛成しなければ国連の、国連憲章の改正はできないという制度になっています。
したがって、果たして自己の特権的なものを放棄するようなそういった改正に応ずるかというと、これはあり得ない、常識的に考えてあり得ないことだと思います。したがって、こういった拒否権の弊害をなくすためには、もう法的な国連憲章の改正という手続を取らずに、もう政治的な形で、ある問題については、拒否権の行使については、例えば常任理事国の二国以上が反対した場合とか、いろんな形の内部的な合意を作るということはあり得ると思いますけれども、制度としてこれを変えるということは事実上不可能ではないかというふうに思っております。