大山礼子の発言 (憲法調査会二院制と参議院の在り方に関する小委員会)
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○参考人(大山礼子君) 駒澤大学の大山でございます。本日はお招きいただきまして、大変ありがとうございます。
今回、事務局からお話をいただきましたときに、私からはジェンダー論と申しますか、女性の政治参加をいかに進めていくかという観点からお話を申し上げるようにということでございました。
実は私、そちらの方面の必ずしも専門家ではございませんので、ちょっと困惑したところもあるんですけれども、なるべく御要望に沿うお話をいたしたいと思います。
本日のテーマでございます参議院の選挙制度ということなんですけれども、やはり参議院の選挙制度を考えるときには、どうしてもこれは参議院をどうやって独自性を発揮させるかということがまずございまして、その独自性を発揮させるための選挙制度はどういうものがいいのかということに話の順番がなるのではないかと思います。
それで、参議院の独自性というのは一体何かということなんですけれども、私はいわゆるカーボンコピー論というのは取りませんで、実は参議院は現在も非常にいろんな意味で独自の審議をなさっているというふうに考えております。
特に注目すべきは、これは昭和六十一年から、御存じのとおり、三年ごとに三つずつ置かれております参議院の調査会の活動ではないかというふうに考えております。もっとこういう活動が注目されてよいと思います。
この調査会の活動ですけれども、これはかなりレベルの高い議論がなされておりまして、割にしっかりした調査報告書も出ておりますし、それから立法上の成果も上がっております。
例えば、国民生活に関する調査会では高齢社会対策基本法案というのを出しておりまして、成立に結び付いている。あるいは共生社会に関する調査会では、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法案いわゆるドメスティック・バイオレンスの防止法案ですけれども、これがやはり成立に結び付いていると、こういった成果を上げているわけでございます。
ですので、既にこういう独自の活動がなされているのであれば、それが一体どのような条件によって支えられているのかということを考えて、それを強化していくということが参議院の独自性を高めるための方法としてはよろしいんではないかというふうに私は思います。
さて、それでは一体、今行われているような特色のある活動を支えている条件はどういうものかということをちょっと考えてみたいと思います。
まず第一に、これは衆議院では必ずしも十分に代表されていないような様々な意見が参議院には反映されているということが申せると思います。
これはいろいろなことがありますけれども、仮にここで共生社会に関する調査会の場合を取り上げてみますと、もちろん男性議員が共生社会を論じていけないということはないのですけれども、この調査会のメンバーとしてかなり女性議員が活躍されておりまして、参議院に女性議員がかなり多いということがこうした活動を支えるということが言えると思います。
ちなみに、女性議員の比率でございますが、これは列国議会同盟が継続的に調査をしておりまして、その結果はインターネットで簡単に見ることができます。これ、今年の三月末現在という統計を見てみましたところ、衆議院の場合は女性議員比率が七・一%でございます。これは百二十九か国中の九十四位といういささか情けない数字なわけでございます。これに対して参議院の方は一五・四%でございまして、上院だけの順位というのはないんですけれども、これを仮に下院の順位に当てはめてみますと五十五位になります。
ですから、特別、特に女性議員の多い議院であるということは国際的には申し上げられませんけれども、まず世界標準の数ではないかと思います。ちなみに、アメリカよりは少し多いという数でございます。
女性に限らず、このように、衆議院では必ずしも十分に反映されていない国民の各層の意見が参議院では代表されているということが一つ大きな力になっているというふうに考えるわけでございます。
それから二番目の条件ですが、これは非党派的な、客観的な議論の存在ということでございます。
先ほど申し上げました調査会の活動では、中身を見ると、拝見すると分かりますけれども、必ずしも党利党略でない、大所高所からの議論がなされておりまして、こうしたことが立法上の成果につながっているんだろうと思います。
これ衆議院との比較でございますけれども、衆議院と申しますのは、飯尾参考人のお話にもございましたように、これは政権基盤となる議院でございますので、どうしても政府・与党対野党の議論というのが主流になる、これはある程度やむを得ないところだと思います。ただし、外国の議会の下院を見ますと、これは、仮に本会議がいわゆる党派対立的な、政府・与党対野党の論戦に終始しておりましても、ほかの場、例えば特別委員会などでは非党派的議論の場が確保されているという例がかなり多いわけです。
例えば、イギリス議会の下院、これは世界的にもかなり党派的な議論一色になっている議会だと言ってもいいんですけれども、ここでも主題別に特別委員会というものが置かれておりまして、そこでは党派を離れた、与党議員であっても政府の立場からは距離を置いた議論がなされている、こういうことがございます。ところが、衆議院では残念ながらそうした場がほとんどないわけでございます。こうした現状で、参議院で非党派的な客観的な議論をなされているということはもっと評価されてしかるべきことだろうと考えております。
次に、それでは、その二つの条件があるわけですけれども、こうした参議院の独自性を支えている条件を更にもうちょっと強めていくにはどうすればいいか、どういう改革をしていったらいいかということを考えてみたいと思います。
本日のテーマでございます選挙制度について、多様な意見を反映していくための選挙制度改革はどういうものがいいかということになります。そして、これにつきましては、従来の議論というのはどうしても参議院の場合は政党色を弱めて個人本位にした方がいいんだという話が多かったと思います。例えば、任命制にするとか、そこまで行かなくても、職能代表にするとか地域代表の性格を強めるとか、こうした話が今までの主流であったように思われます。
ただし、特に任命制のようなことになりますとそうなんですが、こうした改革というものはどうしてもその分、民主的正当性を弱める、国民と参議院との距離を遠くするという問題がございます。そうなった場合に、そういう議院が、ハウスの方の議院でございますけれども、これが立法府の一翼を担うということが果たしていいのかという問題が出てきまして、そこでどうも何か袋小路のようなところに入ってしまって、そこから先に進まない、うまいアイデアが出てこないということだったように思います。
これはある程度仕方がない面もございまして、政党というのは、これは現代の大衆政治におきましては要するに有権者と議員をつなぐ役割を果たしているわけでございまして、選挙をするとなりますと、どうしてもこれが前面に出てくるというのは必然と申し上げてもよろしいだろうと思います。ですので、これは公選制を維持している限りは、いろいろ工夫してみてもどうしても政党色が強まってしまう。このことはかつての全国区の体験などからも分かるところでございます。
そうしますと、むしろここでは政党色のある選挙制度でも仕方がない、政党色を肯定するというところから議論を進めてはいかがかと思います。
そのときに考えなくてはいけないのは衆議院のことなんですけれども、衆議院では現在、いわゆる政権選択を目指す選挙をするんだということで、なるべく完全な形での小選挙区制にした方がいいんじゃないかという議論が出ております。これ自体についてのいろいろな当否の問題はあると思いますけれども、仮に衆議院が小選挙区制に向かって動くということであるならば、参議院はこれと違う方向、すなわち全国規模かあるいはなるべく大きな選挙区単位での比例代表制、それも拘束名簿式がどうかというのが私の今の段階での一つの案でございます。
これはあるいはちょっと奇異な感じを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。比例代表制というのは、もちろん政党本位ということになります。ただし、その場合は、例えば政党でないグループの名簿ですとか、一人で名簿を作るというようなことを認めるということで御理解いただきたいんですけれども、ですが、仮に衆議院が小選挙区制中心ということになりますと、比例代表制中心にすることはこれは明らかに衆議院と違う方向を目指すということにはなります。そして、比例代表制と申しますのは、小選挙区制と比べますと、これは明らかな特徴は小さい政党の候補者でも当選するということですけれども、それだけではなくて、例えば女性であるとか様々なマイノリティーにも有利な制度だと言われておりまして、これは統計的にもそういう結果が出ております。
これ、どうしてそうなるのかということですけれども、恐らくは、何人か並べた名簿を作るということになりますと、これは余り同質的な候補者を並べるのはどうかということで、少しバリエーションを持たせようという配慮が政党の側からも働くということがあろうかと思います。
それを考えますと、これも意外な感じを持たれるかもしれませんけれども、拘束名簿の方が非拘束名簿より良いのではないかということになります。非拘束名簿というのは、結局、選挙に強い方が上位当選するという制度ですので、これをやりますと衆議院の選挙に当選するのと同じような方が上に来るという可能性がある。この辺にも注意が必要ではないかと思います。
そこで、ちょっとここでクオータ制についてもお話をしておこうと思いますけれども、いわゆる女性を増やすためのクオータ制、これが最近フランスで半ば強制的なものが導入されまして、大変話題になりました。ここにも書いてありますけれども、二〇〇一年からいわゆるパリテというものなんですけれども導入されて、半強制的なクオータ制をやっております。
具体的に申し上げますと、二〇〇〇年の六月に法律ができまして、これは下院と地方議会では少々異なるんですけれども、下院の場合は男性か女性かいずれかの候補者が全候補の四九%を下回った場合には政党に対する公的な助成金を減額するという方法でございます。仮に一〇〇%男性ばかり擁立した政党は助成金を五〇%減額されるという、こういう制度になっております。
この導入の背景は、実はフランスと申しますのは意外に女性議員の少ない国でございまして、導入時には議会下院の女性議員比率が一〇・九%、これはEUの諸国の中では最下位グループでございます。こうしたことから、既に七〇年代からクオータ制の議論が行われてきました。
ただ、もちろんクオータ制というのは憲法に反するんではないか、選挙権、被選挙権というのは市民という資格だけに基づくべきだというような反対論がございまして、大激論がありました。既に一九八二年にいったんクオータ制を導入しようとしたのですが、違憲判決が出まして挫折しているという経緯がございます。このため、今回は一九九九年に憲法を改正しまして、法律は選挙によって選出される職への男女の均等なアクセスを促進するという条項を憲法に加えてしまいました。その上で、パリテを導入したということでございます。
さて、結果なんですけれども、これは地方議会は名簿式の投票なものですから非常に効果的で、ほぼ女性議員が倍増した結果になったんですけれども、下院の場合はこれ小選挙区制ということもございまして、結局、政党の側が助成金を減らされても男性中心の候補者を出してくるというようなことがございまして、二〇〇二年の選挙結果では女性比率が一二・三%、微増ということにとどまっております。
これに対して、女性の政治参加の先進国であります北欧でありますとかドイツの場合には、強制的なものではなくて各政党が自主的にクオータを実施しております。例えば、ドイツの連邦議会では女性議員の比率は三二・二%で、これは十一位でございます。
ただ、ちょっと注意しなければいけないのは、ドイツの場合、政府が何もしていないというわけではございませんで、一九九四年に憲法に当たる基本法を改正いたしまして、男性と女性は同権である、国は女性と男性の同権が現実に達成されることを促進し、現に存在する不利益の除去を目指すという条文が加えられております。こうした憲法規定が政党によるポジティブアクションを側面から支えていたという面があることは見逃せないだろうと思います。
次に参ります。
次に、審議における政党色を薄める工夫でございますが、これはたとえ選挙が政党本位で行われたとしても、院内の活動の政党色を薄めること、特に与党議員が政府からある程度距離を置いた議論をするということは決して不可能ではないと考えます。これ、方法については、既に歴代の参議院議長の下で参議院改革論が長年続いておりまして、この辺の議論が大変参考になるわけでございます。例えば、党議拘束の緩和であるとか審議方式の改革、公聴会の開催の重視でありますとか決算審査の重視とか、こういったものはやはり客観的で充実した議論を目指すという、そういう方法だろうと思います。
それから、大臣等を出さない慣行。これも、特に今は副大臣、政務次官制度が導入されておりまして、この制度は政府と与党の一体化を促進するものですから、こういうときに参議院がそれとは違うものを打ち出すということは非常に重要なのではないかというふうに考えます。
それからもう一つ、これは余り言われていないことをちょっと申し上げたいのですが、調査報告書を活用することによって非党派的な議論を促進するということでございます。
これは、先ほど申し上げました調査会の例でも、非党派的な議論が活発に行われているので、その成果として立派な報告書が出ているわけですけれども、これちょっと逆にいたしまして、報告書を出すことを義務付けることによって客観的な非党派的な議論を促進するという効果もあるのではないかというふうに私は考えております。
前回の小委員会で岩井参考人がフランスの報告書制度のことを御紹介なさったようですけれども、諸外国の議会においては委員会活動の結果として報告書を作るということが半ば常識になっております。これは調査委員会だけではなくて法案審査の委員会についてもそういうことが言えます。法案審査についても、これは党派対立ももちろんありますけれども、報告書を作るということになれば、やはり後からの批判に堪える客観的な分析が必要になります。そういうところから、修正案の提出の活発化といったような副次的な結果ももたらされるのではないかというふうに私は考えます。
このようなことをいろいろ申し上げましたけれども、こうした改革の実現可能性というのが一体どのぐらいあるのかということですけれども、これはなかなか難しいと思います。これは既に多くの参考人の方のお話にも出てまいりましたけれども、やはりその障害となるのが、結局、衆議院の総選挙で政権選択を実現し、その多数派に基礎を置く政府ができた。そして、政策を実行しようという場合に、参議院の独自性強化というものがそれと矛盾しないか、両立は可能かという、そういうところに落ち着くんだろうと思います。
もう時間もございませんのでこの点は詳しく申し上げませんけれども、私ももう少し参議院が身軽になって独自性を発揮された方がよろしいのではないかというふうに考えておりますことを申し上げて、発言を終わらせていただきます。
ありがとうございました。