長有紀枝の発言 (国際問題に関する調査会)
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○参考人(長有紀枝君) 山崎先生の御質問、どこまでお答えできるか分かりませんが、私見を述べさせていただきます。
日本のNGOがイスラム社会、特にアフガニスタンで働く場合にやはり一番念頭に置かなければいけないのは、イスラム教と、それから女性という問題です。欧米のNGOもそういう面が多々あるかもしれませんが、日本のNGOの場合、やはり女性が圧倒的に多うございます。これまでの様々な現場ですと、女性だけが現場に出るとか、女性だけのチームというのが十分成り立つ場合も多うございましたが、イスラム社会においては、女性だけで行っても一切お仕事はすることができません。まず、政府関係者など相手が男性の場合には、一切会っていただくこともできないですし、ですので、まず、女性、それと女性一人では、イスラム社会、歩くことさえできない。場合によっては、一人で歩いていますと、もう私はだれの庇護も受けていないフリーな立場だから何をされてもいいというような意思表示になりまして、実際、ちょっと道端を横切っただけでも体を触られたり、ぴたっと付いてくる男性がいたり、そういうような状況で、そこで働く女性陣のストレスも大変なものでございます。
そうすると、必ず男女ペアでなければいけない。小さいNGOなどでは複数の男女をペアで出すというのは大変難しい問題がございます。かといって、男性だけでいいかといいますと、女性に対する支援の場合は、これは完全に女性でないとできないわけですから、必ず男性、女性出すということがイスラム特有の必須条件になるかと思います。
それからまた宗教に関連してですが、なかなかイスラム教あるいはイスラム社会の専門家をNGOの職員として現地に出すわけではございませんので、NGO職員にとってもイスラムというのは初めての経験でございます。どこに行っても、例えばお茶を一杯飲むにしても出てくるのは全部男性で、女性というのは不可侵といいますか、顔を見てもいけない。仲のいい友達であっても奥さんは紹介してもらえないと。そういう中で、何か女性に対することで問題を起こしてしまうと、命がねらわれるような場合もありますし、場合によってはその団体自体が撤退しなければならないような場合にもなると。実際、そういうことが起きた団体も聞いております。これは女性の問題だけではありませんが、イスラム教に対する冒涜などがあった場合も同じでございます。そういったことに対する知識といいますか、そういったものが必要になるのではないかと思います。
もう一つ、アフガニスタンなどで難しいのは、やはり二十代、三十代、場合によっては四十代の日本人の男性、女性が行くわけですが、人生経験、これまでの艱難辛苦という面からいきますと、アフガニスタンの職員、現地の方の方が大変な困難を今までなめてきたわけですので、相手の方が一枚も二枚も三枚も上手といいますか、そういう意味で、なかなか全員をまとめていくのが難しかったり、あるいは金銭的な面でも苦労するような場合も多々ございます。
そういった中で、やはりそれでもなお日本のNGOとして強みがあるかなと思いますのは、やはり宗教的な側面といいますか、社会的なバックグラウンドといいますか、日本人が一神教とは比較的無縁であったがゆえに、キリスト教的、西欧的な考えですと善悪両極端に判断するような場合があるときに、その中庸で灰色の部分というのが理解できるのが日本人の強みではないかと思っております。これが、現地でとにかく二極化されてしまうような構造の中で、どちらかが善、どちらかが悪というのではなくて、両方の意見を考え、聞けていけるという部分が日本人の強みであり、日本のNGOの特性にもなっていくのではないかと思っております。
以上です。