有馬朗人の発言 (文教科学委員会)
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○有馬朗人君 おはようございます。自民党の有馬朗人でございます。よろしくお願いいたします。
放射線に関しての法律でございますので、少し放射線の歴史を振り返ってみたいと思います。ただし、それだけやりますと五時間ぐらい掛かりますので、かいつまんで十分程度、そこの話をした上で質問に入らせていただきたいと思いますが。
レントゲンによるエックス線の発見ということが人類の上で極めて重大なことでありました。一八九五年のことであります。このレントゲンの発見によって人間の病気の治療、診断等に画期的な変化が起こったわけであります。
その翌年、ベックレルというフランスの物理学者が放射能を発見いたします。それは偶然のことでありまして、感光板、光を感ずる感光板の上にウラン化合物を置いておいたと。偶然置いておいた、文鎮ぐらいのつもりで置いておいたんでしょう。そして、少したってその感光板を露出してみますと不思議な影が映っていたということによりまして、ウラン化合物より何らかの不思議な光線が出てくるということを発見するわけです。それが放射能の発見であります。
その翌年、ピエール・キューリーとマリア・キューリーという夫婦が、これもやはりフランスの大学者でありますが、ウラン鉱石を煮詰めてまいります。煮詰めるという言い方は日常の言葉でありますが、ウラン鉱をどんどん濃くしてまいりまして、鉱石の中の液を濃くしてまいりまして、最終的にラジウムを発見いたします。と同時に、ポロニウムというのを発見しておりまして、ポロニウムというのは、マリア・キューリーがポーランド人でありましたので、ポーランドを記念いたしましてポロニウムという名前を付けたわけであります。
驚くべき時代でありまして、その三年後の一九〇〇年にはプランクという、これはドイツの大大物理学者でありますが、これが溶鉱炉から出てくる光を見て、そして溶鉱炉の温度を定めようといたします。すなわち、鉱業の方の要請から物理学的に溶鉱炉の中の温度を決めようとするわけですが、それ以前のすべての物理学は役に立ちませんでした。新しくプランクが、極めて奇想天外な、エネルギーというのは粒々であるということを言い出し、現在、プランクの量子仮説として知られている大業績を発表するわけであります。そのことによってにわかに量子の世界が解明されるようになります。
一九〇四年に、これもまた驚くべきことでありますが、日本の、日本の長岡半太郎先生が、当時の大問題であった原子の構造は一体どうなっているんだろうということを考え、土星型原子模型という考えに到着いたします。驚くべきだと申しました理由は、当時、大学は日本に一つしかなくて、もっとも京都大学は同じころでき上がりますが、東大と少したったときの京都大学しかなく、東大が開設されるのが一八七七年でありますから、三十年もたたないうちに世界的な物理学者が日本に生まれたわけであります。この土星模型というのは、原子というものは、中心に、原子核という名前は付けておりませんでしたけれども、球があって、正に、プラスの電荷を持っている、正に帯電している、そういう球があって、その周りに電子が回っているという考えでありました。
当時、電子を発見した人はJ・J・トムソンというイギリスのこれもまた大物理学者でありましたが、その人はスイカのようなもんだと原子のことを思ったわけであります。スイカが、赤いところがプラスに帯電している電荷、中に入っている粒々の種がこれが陰電子。陽電子、陰電子とよく言いますが、その陰電子。普通にある電子はみんな陰電子です。その陰電子が粒々であると、こういう模型を提案いたしましたが、どっちが正しかったでしょうか。
それは、一九〇九年にラザフォード、イギリスの物理学者がマダム・キューリーよりポロニウムをもらってまいります。そのポロニウムからアルファ線というものが出てまいりますので、そのアルファ線をぶつけて金の原子の構造を調べたわけです。もし、J・J・トムソンのようなものであれば、飛び込んだアルファ線はほとんど曲がらずに前の方へ進んでくるのに、もし長岡半太郎のような考えが正しければ中に非常に大きく曲がってくるアルファ線があるはずでありまして、ラザフォードは正に大きく曲がってくるアルファ線があるということを発見するわけです。
残念ながら、ラザフォードはそのとき長岡半太郎先生の仕事を知りませんでした。長岡先生、日本人離れしていると言ったらそれまででありますが、ラザフォードに抗議の手紙を書き、一九一一年にラザフォードは長岡の仕事を注目すべき論文であるということを認めて引用しております。
それよりも少しさかのぼって、一九〇五年にはアインシュタインの有名な特殊相対性原理が発見され、来年はアインシュタイン・イヤーということになると思います。世界じゅうでアインシュタインの研究を顕彰するという百年祭を行う予定であります。そして、有名な、エネルギーと質量の等価性、エネルギーは質量である、E=mc2という公式をお聞きになった方大勢おられると思いますが、そういうものを提案し、大変な大革命を起こしたわけであります。
また、ラザフォードは、先ほどの原子構造というものを発見する前に、アルファ線、ベータ線、ガンマ線というものが、厳密に申しますとアルファ線とベータ線を発見するわけであります。そして、現在、放射能というのはアルファ線、ベータ線、ガンマ線、ガンマ線の種類であるエックス線というふうなものがあるということになったわけであります。
ここまで申し上げたことから一つ注意してみたいことは、現在、ナノテクノロジーの何のかんのとか、原子力であるとか、医療であるとか、エックス線である放射線を使った医療である、様々なことが言われておりますが、これは全部この当時、すなわちちょうど百年前ぐらいに発見されたことによって起こったわけであります。ですから、お願いは、基礎科学というものを絶対軽視をなさらないでいただきたい。今ここで我々が議論しているような現代の最前線の科学というのは、五十年、百年の先においては極めて重要な技術になるだろうということを申し上げたかったわけであります。
さて、一九三八年にはハーンと女性の大科学者であったシュトラスマンという二人がウランというものは分裂するのであるという大発見をいたします。これは、アインシュタインの予言に従って、原子核の質量を丁寧に量っていますと原子核は二つに割れる可能性があるということが言われておりましたので、そのことを実験的に実証したわけであります。
そこからの発展が極めて人類にとって不幸なことでありました。それはナチス・ドイツというのがこの核分裂を使って兵器を作ろうとしているというふうなことがありましたので、アメリカもまたいわゆる原爆を作ろうという努力をするに至るわけです。
一九四一年にマンハッタン計画が立てられ、それに従って多くの優れた科学者、技術者が原子爆弾の作製に従事するようになります。一九四二年、すなわちマンハッタン計画が始まった翌年にはフェルミという物理学者が原子炉を発明しております。フェルミはそれ以前の仕事でノーベル賞をもらっているのですが、シカゴの大学の前の運動場に原子炉を初めて造ります。ですから、原子炉を平和利用するということによって原子力が進んでいけば我々にとって非常に良かったのですが、残念ながら一九四五年に広島の原爆になったわけであります。
ここに、科学の発展、技術の発展というものをうまく使わなければ人類にとって大変な損害を引き起こすということを強調いたしたかったわけであります。今後、科学技術が発展する際には、やはり科学者、技術者は、人類に対して福祉に貢献するけれども、絶対人類に対して害を与えるような研究をしないようにしていくべきだと私はこういう経験から思う次第であります。
そこで、質問に入らせていただきます。
こうやって発見されてまいりましたエックス線、ラジウム、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、そしてまたアイソトープというふうなものは様々なところで利用されていると思いますが、どういう利用例があるでしょうか、お聞きいたします。