岡崎トミ子の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○岡崎トミ子君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました政府案提出、公益通報者保護法案に対して、反対の立場から討論を行います。
 公益通報者を保護する法律、それは、公益のためにやむにやまれず通報を行った通報者を保護することによって私たちの社会を正義感に基づいた勇気ある行動が報いられる社会にする法律であり、行政や企業の不祥事が私たちの生命、健康、財産に被害をもたらすことを防ぎ、また不正が正されるようにする法律であるはずでした。
 私たち民主党は、正にそうした法律として、公益通報者を保護する法律の必要性をいち早く訴えてまいりました。しかし、残念ながら、今日この場で採決されようとしております政府提出の法案は、私たちの期待したものとは全く異なったものとなっており、また、私たちが最低限必要であるとして提案された修正もことごとく否決されてしまい、反対せざるを得ません。
 本来、この法案によって自分が所属する組織等の不正を通報しようとする人々が安心して通報を行い、確実に保護されなくてはならないはずですが、この政府案では、通報して保護される人、通報して保護される内容、外部に通報して保護される場合を過剰に制限しており、このままでは今までよりもかえって外部通報を行うことが困難になってしまいます。
 委員会審議を通して、この法案は公益通報者保護法案ではなく、公益通報抑制法案、公益通報思いとどまらせ法案であるという疑いが解消されるばかりか、ますます強くなったのです。また、政府案の立案過程でどんどんその内容が後退してしまった点についてもますます疑念が深まりました。
 そして、後に述べるように、違反した場合に通報対象事実となる法令の指定を国会審議の対象とならない政令にゆだねてしまい、そのイメージすら示さなかったことは、国会による実質的な審議をはなから拒否するもので受け入れることができません。
 以下、反対する理由を具体的に申し上げます。
 第一に、本法案は、通報した場合に通報者が保護される通報対象事実を極めて狭く特定の犯罪に限定してしまいました。
 本来、民主党が一貫して主張し、修正案でも示したとおり、法令違反一般、個人の生命、身体に重大な影響を与えるおそれがある事実を通報した場合にはすべて保護されなくてはなりません。私たちの健康や安全にかかわる法令の整備はどうしても後追いになっており、そうした後追い規制の更に一部だけを保護対象としていては、現実の問題の多くに対応できないからです。
 委員会においては、各委員が様々な実例を挙げて、それぞれが通報対象事実となるか政府に確認をいたしました。薬害エイズやシックハウス、回転遊具による事故、六本木ヒルズの回転ドア事故、三菱自動車のリコール隠し、どなたもよく御存じの問題です。
 労働者が、これらによる被害を心配して外部に通報したとしたら、その通報者が保護されるのが当然だと思われるでしょう。ところが、いずれも当時や現在の規制法違反ではないため、ストレートには通報対象事実とはならない、すなわち、これらの問題について改善を願って外部に通報した労働者が守られないということでした。業務上過失致死傷罪に該当すれば通報対象事実となるという説明でしたが、実際に死亡事故、傷害事故が発生する前の時点で業務上過失致死傷罪を主張することは容易ではありません。
 審議に際して、政府側から、各種の事例について、すべてこの法案の枠組みで対応しなくてはならないのかという発言がありましたが、薬害エイズ、シックハウス、回転遊具による事故、六本木ヒルズの回転ドア事故、三菱自動車のリコール隠しのいずれにも対応がおぼつかない公益通報者保護法案は、一体何に対応していると言えるのでしょうか。
 政府は、通報対象事実を狭く限定した理由を、通報した内容が通報対象事実となるかどうか当事者間で見解が分かれてしまっては、結局裁判で争わなくてはならず、制度の安定性が保てなくなってしまうからであるとしています。しかし、ある問題が特定の法令による罰則の対象となるかどうかという問題は、決して判断は簡単とは限らず、当事者間の見解の相違が生じる可能性があることには違いがありません。
 養鶏業者が半年前の生卵を出荷した京都の事件についても、行政が食品衛生法違反として処分を行ったのは、事件が発覚した次の月の二十日になってからでした。この例は、法令違反の判断が行政にとっても常に容易ではないことを示しており、通報対象事実を狭く絞ったからといって対象が明確化されたとは言えないことを明らかにしています。
 また、特定の法令違反のみを通報対象事実とした場合、自分が通報しようとする事実が法令違反であるかどうかの判断が労働者に迫られます。そういう判断を自信を持ってできるだけの知識を一般の労働者に求めることは非現実的です。政府は十分な広報をしていくということでしたが、そのような広報をまじめにやろうとすればするほど広報をしなくてはならない範囲が際限なく広がってしまい、とても現実的とは言えません。
 また、一方、中途半端な広報をしてしまっては、かえって限られた場合にしか通報が保護されないという印象のみが強く広がるおそれがあります。このままでは通報しようとする人々を萎縮させるだけではなく、多くの場合に不利益な扱いから保護することができなくなってしまいます。
 政府側からは、相談等々ができる仕組みを作る、通報者が信ずるに足りる相当の理由がある場合に保護されるので細かな知識がなくても大丈夫だという発言がありました。こうした内容は答弁で訴えるのではなく、法案中にはっきりと明記すべきであります。
 また、通報対象事実の狭さが最も大きな問題点の一つと指摘されているのにもかかわらず、結局どの程度の法令を政令で指定するのかも、委員会質疑ではついに示されることがありませんでした。
 本会議での代表質問でも指摘したとおり、どういう法令違反に関する通報がこの法案で保護されることになるのかが分からなければ、この法案が成立してからどのように機能するのかが全く分かりません。委員会でもこの点についていろいろな角度から何度もただしましたが、結局何も意味のある答弁は得られませんでした。
 立案過程で政府がリストアップした四百八十九の法令のうち、ほとんどが対象となるのか、わずか数本なのか、その程度のことも示されませんでしたし、ほとんどだれもが対象となることを疑っていない独占禁止法や道路運送車両法も含めて、ただの一本の法令も対象とすることが明言されませんでした。繰り返し明らかにされたのは、政治資金規正法と公職選挙法が対象とならないことだけです。立法府による実質的な審議を拒否した全く容認できない姿勢で、これだけでも私たちが責任を持ってこの法案に賛成することができない十分な理由であります。
 第二に、本法案は、外部通報先の範囲についても、外部通報要件についても、過度に限定されており、これも公益通報を抑制する要因になりかねません。
 国民生活センター、消費者団体、NPO、労働組合、国会議員のすべてが外部通報先として認められるということでしたが、広く外部通報先として認めるということであれば、通報先の要件を、通報対象事実の発生、若しくは被害拡大の防止のために必要であると認められる者から、発生や拡大防止に資する者に修正した方がその趣旨をよく表し適切だったはずです。事実、委員会では、必要であると認められる者がだれであるかケース・バイ・ケースであるという答弁もあり、これでは当事者間で見解の相違が生じる可能性が高く、やはり制度の趣旨に沿った運営が担保されません。
 外部通報要件についても、特に「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合」として、昨年十二月の骨子でも、今年二月の法案要綱でも必要とされていなかった急迫性を要求している点について疑問の声が相次ぎました。
 委員会では、六本木ヒルズ回転ドア事故を取り上げて、一体いつの時点で正に生じようとしていると認められるのか具体的に追及しました。しかし、答弁は、一般論として、事故が続発しているにもかかわらず安全上の措置を怠っている場合には急迫した危険があると考えられる、また、業務上過失致死傷罪の構成要件に該当することが前提であるとするにとどまり、これでは実際に生命、身体に被害が及ぶ前に通報しても保護されることが担保されません。
 民主党は、危険の急迫性を必要としないものとするとともに、「公共の利益が著しく阻害され若しくは阻害されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合」の外部通報も保護の対象とする修正を提案しましたが、これも受け入れられませんでした。
 第三に、本法案は、公益通報者の範囲として、労働者のみを対象としています。私たちは、雪印食品の問題で、勇気を持って声を出しながらその後長く苦労されてきた西宮冷蔵のようなケースに報いたいという思いを共通して持っていたのではなかったでしょうか。政府案の規定では、西宮冷蔵のような弱い立場にある取引事業者は保護されません。
 公益通報者保護制度の立法趣旨からしても、内部情報に接し得る者は、その立場を問わず、基本的には何人も保護されるべきです。
 第四に、本法案は、公布から二年以内に施行、見直しは施行後五年後にということになっており、見直しまでの時間が余りにも長過ぎます。政府が言うように小さく産んで大きく育てるのであれば、私たちが提案するように公布から一年以内に施行、施行後三年以内に見直すべきであります。
 本法案は、その立法の趣旨からいって、そのほかにも多くの問題点を抱えています。
 以上述べてきたように、公益通報者保護制度を実効あるものとするためには、法案で示している公益通報の内容、保護されるべき通報者の範囲を広げ、保護による効果を拡大し、さらに、公益のために事業所外部へ通報を行った者が必要な保護を受けられるように十分配慮されるべきであります。
 政府は、この法案で保護されないケースについては、従来どおり一般法理で守られる、裁判の判例水準が切り下げられることはないと繰り返しましたが、いったん制度がスタートしてから、判例水準が切り下げられないことを行政が保障することがどの程度できるというのでしょうか。
 繰り返しになりますが、私たちは、公益通報を行った方たちを保護する制度の必要性、緊急性や社会的な要請を痛感しており、何とか公益通報者を保護する制度を確立しようと、本法案の抜本的な修正を訴えてまいりましたが、残念ながら修正は実現しませんでした。ざんきに堪えません。
 最後に申し上げます。
 政府答弁の中には、制度の趣旨、運営について前向きと受け取れることがありました。本来、それらは法文の中に明確に書き込まれるべき内容であり、どんなに前向きな答弁があっても、私たちの心配を払拭するに足りるものではありません。
 しかしながら、今、日本じゅうで不正や不祥事を正したいという良心と悩みを抱えておられる皆さんや、その方たちを支援する立場にある弁護士、NPOそのほかの皆さんにはこうした政府側の答弁をよく知っていただき、万一この法案が成立した場合には、十分武器として活用していただきたいと思います。
 また、裁判所、その事業者の方たちにも、十分その法案が必要とされてきた背景、本来の趣旨について深く理解をしていただき、正義に報いることができる社会を作るための、そして個人の生命、身体、財産への被害を防止できる自浄能力の高い社会を作るための努力に参加をしていただきたいと思います。
 政府が自らの責任をよく自覚すること、委員会の場で約束した取組、附帯決議で求められた措置を始めとしたできる限りの対応を誠実に進めることが不可欠となることは言うまでもありません。
 本法案が成立したとしても、立法の趣旨に基づいた内容に高めるために、機をとらえて絶えず改正の訴えを続けていく決意を申し上げまして、反対の討論を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 115915254X03020040614_009

発言者: 岡崎トミ子

speaker_id: 6694

日付: 2004-06-14

院: 参議院

会議名: 本会議