保岡興治の発言 (憲法調査会)

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○保岡委員 自由民主党の保岡興治でございます。
 私は、今回のテーマ、国民投票制度に関して、まず日本国憲法九十六条に定める憲法改正のための国民投票制度につきまして所見を申し述べ、時間が許せば、一般的な国民投票の制度についても若干意見を申し述べたいと存じます。
 委員各位既に御承知のとおり、欧米諸国を初め成文の憲法典を持つ世界の国々は、例外なく、法治国家として憲法の最高法規性を維持するため、時代の変化に適応するように憲法を改正する努力を続けております。そのような各国の憲法改正手続を見てみますと、国民投票が行われる国というものがかなりの数に上っております。
 最近、外務省を通じて全在外公館に対して行ったアンケート調査の結果でございますが、回答のあった百一カ国のうち、憲法改正の際に国民投票が行われると回答した国は、約半数の五十一カ国に上っておりました。我が日本国憲法も、その九十六条において、憲法改正案は、両議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、発議し、国民投票に付してその承認を経なければならない旨定めているところであります。これは、憲法改正を国民代表機関たる国会と憲法制定権者である国民との共同行為と位置づけるもので、議会制民主主義と直接民主主義のバランスを基本的なところで定めた制度であると言うことができます。
 このような制度は、憲法七十九条に定める最高裁判所裁判官の国民審査にも見られるものです。これは、十五条の公務員の選定、罷免権の具体化という意味だけではなく、違憲立法審査権を行使する最高裁判所の裁判官について、民意による正当性を与える重要な制度でもあります。このような国政における重要な局面での国民の登場は、学者の言葉をかりれば、憲法の中に制度化された憲法制定権力そのものであり、国民主権の原理を高らかにうたう我が国憲法にとって最もふさわしいシステムであると考えられたからに違いありません。
 このような憲法九十六条の精神、趣旨に立ち返って考えてみるとき、憲法改正に関連する手続法は、最も重要かつ基本的な憲法附属法であって、憲法の根幹にかかわる、憲法と一体となすべきものであって、その整備は憲法の制定と同時期に行われてしかるべきものでありました。
 しかし、遺憾ながら我が国は、この憲法改正国民投票制度の構築を怠ったまま、戦後六十年近く過ごしてきたわけであります。このことの背景には、憲法が硬性憲法であることが大きな壁になってきたこと、最近では、具体的な憲法改正案が政治の場に提示されていないことなどが政治的理由とされてきたように思われます。しかし、このような理由によって、憲法改正が現実化していないから法整備は行わなくても支障はないのだというような理屈は、私は、国民主権原理に対する、あるいは憲法制定権力者、国民に対する冒涜であると言っても過言ではないと思う次第です。
 このようなことを踏まえるとともに、衆参の憲法調査会が設置されてから四年半以上経過し、また各党における憲法改正論議が活発化してきている昨今の状況にかんがみれば、憲法改正論議の土俵ともいうべき国会における憲法改正案の審議機関や審議手続の整備と、国民投票の実施手続を定める一連の法制度の整備は、これを早急に行う必要があると考えます。この点に関し、私が座長を務めております国民投票法等に関する与党協議会の実務者会議においても、冒頭で御紹介した世界各国の憲法改正国民投票制度に関する調査など、精力的に論議を進めているところでございます。
 それを踏まえて私見を申し述べさせていただきますと、この諸外国の調査結果から、投票の仕方や憲法改正案の周知方法など、国によって実にさまざまなバリエーションがあることがわかりました。それらを総合勘案してみますと、さきの通常国会における意見表明でも触れさせていただきましたが、平成十三年の暮れに、憲法調査推進議員連盟、中山先生が会長でいらっしゃいますが、作成した案、いわゆる議連案は、こうした世界各国の憲法改正国民投票制度と比較して極めて穏当な線でよくまとめられているのではないか、そのような印象を強く持った次第であります。
 同時に、二大政党が政権を争う国政選挙と、与党と主要野党間で合意した憲法改正案についての国民投票との性格の相違にかんがみれば、これらは別個に行うことが適当であり、それを前提に法案を作成すべきではないのか。国政選挙の投票権者と国民投票の投票権者は、実質的な観点からその範囲を同じくするべきではないか。
 前回の憲法調査会でも述べたように、本年の海外調査の際に面談した、EU議会の対日交流議員団長のヤルツェンボウスキー氏の発言に示唆を受けたことですが、国民投票を実施する際には、対象となっている憲法改正案の意義や趣旨、内容等を簡潔、平易な形で国民に情報提供するために、国会が憲法改正案を発議するごとにそれらを法律等で定めるなどの工夫が考えられるのではないかといった点も検討する必要があると考えております。
 今後、与党の実務者会議においては、これらの点について精力的に論議、検討を加え、早急に結論を得るように努力してまいりたいと存じますけれども、国家の基本法である憲法の改正手続法でありますから、これはやはりできるだけ早い機会に超党派で論議をし、制定に向けて一体的に取り組むことが肝要であると存じます。本調査会での議論を契機として、より活発な論議を進められんことを強く期待する次第です。
 次に、一般的な国民投票や住民投票の制度、すなわち議会制民主主義の補完制度として位置づけられている直接民主主義的な制度について一言述べさせていただきたいと存じます。
 私の理解するところでは、我が日本国憲法は、統治の原理として、代議制あるいは議会制民主主義というものを採用しており、個別の政策決定の場面で直接に国民が出てくるのは、憲法改正のような重要局面に限定しているものと存じます。国政の基本的方向性は国民が決めるけれども、場面場面に応じた適切な施策や具体的な制度設計については、国民代表である国会議員の真剣な討議とその総合的な政治判断にゆだね、その適切性については国政選挙のたびにチェックしていく、そういったシステムであります。このような統治機構の仕組みは、今後とも基本的に維持していくべきであると考えております。
 他方、地方政治の場面では、憲法九十五条に規定する地方自治特別法に関する住民投票の制度に象徴されているように、問題となる政策課題がより住民の生活に密接なものが多いでしょうから、直接に利害関係者である住民の判断にゆだねたり、その判断を参考にすることが適切な事項も少なくはないと思います。
 その限りでは、いわゆる住民投票のような制度が有効に機能するテーマもあるかと存じます。しかし、ありとあらゆるテーマが住民投票に適するわけではありません。いわゆる迷惑施設の建設の可否などの問題を考えればわかるように、テーマによっては、民意を問うというのは、一見民主的なように見えて実は大変な問題をはらんでいる場合があり得るからであります。特に、国家安全保障などの国家戦略や最低限守るべき国のガイドラインなどについては、地方の住民投票になじまない点は基本的にあると考える次第であります。
 逆に言えば、住民投票が有効に機能するテーマ、例えば特定の施策の効果を検証し、政策決定の参考に資するように目的や効果が限定されたテーマであれば、そこにこの制度を導入することは十分検討に値するものがあるとも考えております。
 時間が参りましたので、初回の意見表明はこの程度にさせていただきたいと存じます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 保岡興治

speaker_id: 16198

日付: 2004-10-28

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会