土井たか子の発言 (憲法調査会)

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○土井委員 大きなテーマは内閣と国会ということなのでございますけれども、この臨時国会も、ずっとこの憲法調査会の中で憲法に対して調査をするという立場が総合的になされる、包括的になされるということで今まで論議が進められてきたはずでございます。けれども、昨今は、何だか憲法調査会自身が改憲のために設けられ、また、ここでなすべき仕事は改憲のための作業であるがごとき認識を持たれる方々もあるわけで、どうも議員の中にもそういう認識をお持ちになっていらっしゃる方が政権党の中にもあるようでして、これは、この憲法調査会設立の趣旨に反しますし、運営の趣旨に反します。したがって、そこのところをはっきりさせなければならないというふうな思いを込めて、政党法の問題について申し上げさせていただきたいのです。
 今の政治というのは信用できないというふうに考えている国民が多いんですね。世論調査のたびごとに、支持する政党なしというパーセンテージはいつも大変に高いです。一番高いパーセンテージを示しているのがその部分じゃないのでしょうか。その原因はいろいろあろうと思います。その最大理由の一つには、政党に対する不信感があるということは否定できないんですね。したがって、どの政党も支持できないということだろうと思うんです。つまり、政治不信は政党不信というふうにも言えるわけです。
 しかし、この認識をさらに一歩進めて、政党に対して法的な規制を加えて、各政党に党内民主主義などの中身を法的に要求する必要があるという主張が最近そこで聞かれるんですね。政党政治を再生しようと思ったら、政党法を制定すべきであるという主張がまたあるわけですね。また、政党の役割をしっかり憲法で明文の規定として明記することによって、議会政治に対する政党の重要性を示す必要があるという意見もあるわけですね。
 私は、いずれもこれはわかりません。特に、政党に対して、なぜ今政党法が必要なのか、加えて、憲法上明記することが必要なのか、わからないです。これに力を込めて、政党を蘇生することのためにはそれが必要だとおっしゃる根拠というのがどうももう一つはっきりしないんですけれども、少なくとも、国民の皆さんの側から見れば、法律をつくったり、ましてや憲法の明文に一条そういうことを書き加えるということによって信頼を回復することができるのであるか、私はそう思わない。むしろ、ただいまの日本国憲法というのを誠実に、九十九条の指し示しているとおりです、尊重擁護する義務をどれだけ具体的に実行しているか、誠実に行っているか、そこが実は問題なのではないでしょうか。
 例えば、政党法を制定するというふうな場合、しばしばその代表的な内容として党内民主主義というのが要求されることになるわけですが、憲法が国会に要求する民主的な手続とは違いまして、党内の民主主義の内容というのは本来一義的ではございません。したがって、党首選挙を行うということが民主的であるかというと、現在も、必ずしもこれはそうであるとは言えないのです。
 例えば、実際に党首選挙を行っている政党の選挙実態を見ると、架空の党員をでっち上げたり、金権選挙を繰り広げたり、派閥抗争を行ったりするようなことが日常茶飯事みたいに行われているのじゃないでしょうか。政策選挙が行われるという約束に反して、そうでないという実態が余りにもあり過ぎますよ。ここに問題があるからといって、法律をそれに介入させるということになりますと、例えば党首選挙における選挙違反を処罰するということになると、結社の自由は政党には保障されなくなってしまいかねない。
 また、政党が国会で自分たちに関する法律をつくるというわけですから、どうしても多数派の肯定あるいは許容する内容になってしまいます。少数党並びに少数派の意見というのは取り上げられなかったり無視されたりするということが少なくともそこでは現実の問題としてあるのじゃないですか。
 したがって、党内民主主義の問題だと言われることについても、人数や綱領や規約や運営方法などについて少数党に不利な規定というのが、当然のことながら、その結果、行われない保障はどこにもないです。現に、ただいま、そういう法律がまだない、そういうことの討議がまだされていない、その段階においてすら、日常の法案の取り扱い一つ見ても、多数党中心で事柄が運営され動いていっていることははっきり目に見える問題であって、国民の側から見ると、例えば年金法なんかの取り扱いについては、一体あれはどういうことなのかと。国民の立場というのを果たしてどれだけ、力を持っている多数党が受けとめて、誠実にそれを履行しているかどうか。憲法からいえば、まさしく二十五条ですよ。そういうことが現実の問題としてまず考えられなければならないと思うのです。
 議会制民主主義の点で見ましても、議会内多数派が少数派に対して、これを抑える、そして抑制するということが政党法を利用して行われるということになると、自由な議論、政策論争を通じて政権交代が行われるということに対しても阻害要因をつくっていくことにもなりかねない。
 そしてまた、政党活動を規制するということは、すなわち憲法二十一条で保障されております結社の自由ということに対してこれを侵害するものになってしまうということが大変懸念されるという結果になります。戦前の無産政党への弾圧や翼賛政党化というのが、戦争遂行を食いとめることができなかった。この問題に対して、今の憲法二十一条も反省の上に立って制定された中身であるということは言うまでもないわけで、結社の自由をうたうことの中に、政党それ自身を規定していないけれども、含めて考えている。言うまでもなく、それは、政党の問題もこの結社の自由の中に入るというのが、戦前の反省を踏まえてのことだ。この点がもっともっと生かされていなければならないと私は思うんです。
 憲法の理念に立脚するならば、結社の自由によって日本の民主主義を豊富にさせて戦争体制づくりをストップさせようということになっていかなきゃならない、そして、政党活動の自由への規律、規制は必要最小限度でなければならないというのが当然のことだと思います。
 政党に対する不満は、究極的には、国民の監視を通じて、つまり、選挙における投票行動を初めとして政党の命運を決する場面で国民が勇気ある行動で選択していくということでなければ決して解消され得ない。憲法の前文の冒頭にございますとおり、「国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」というのもそういう意味としてあるということを原点に返って考えるべきだと私は思います。
 したがって、政党法なるものの制定、また憲法に対して明文の規定を設けること、私は、解せないと同時に、これに対しては反対です。
 終わります。

発言情報

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発言者: 土井たか子

speaker_id: 16322

日付: 2004-12-02

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会