森元恒雄の発言 (憲法調査会)

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○森元恒雄君 自由民主党の森元恒雄でございます。
 それでは、私の方から地方自治・住民投票について十五分お話しさせていただきます。
 現行の憲法が地方自治に関する特別の章を設けまして四条にわたって規定をしたということが、この今日の日本の地方自治の発展、充実を図る上で非常に大きな貢献をしてきたということは、私は認めるべきであると思います。
 ただ、日本のその地方自治制度が現状においてもなお不十分であることは一致した見方ではないかと。それゆえに、現在、地方分権の方向に向かって改革が進められておるわけでございまして、そういうことを考えますと、やはり憲法もなお手を加えるべきところが幾つかあるんではないかなというふうに考えております。
 現在の日本のこの国家体制の中で地方自治体が極めて重要な役割を果たしている。単一国家の中では、世界の主要国の中でも日本の自治体ほど内政の大きなウエートを占めておるところはないと言ってもいい状況であるかと思いますが、しかしその実情は、本当の意味での地方自治というものがそこで行われているかというと、いささか疑問でございまして、過日の地方分権一括法におきまして事務の整理が一応できました。まま子扱い的な性格を持っておりました機関委任事務が廃止され、自治事務と法定受託事務に新たに仕分をされたわけでありますが、法定受託事務の中には、必ずしもこれが法定受託事務として位置付けることが適当かどうかと疑問を抱くようなものもまだ幾つも残っておりますし、さらに今回、三位一体の改革ということで財政の面における分権化というものが検討されておるわけでありますけれども、この事務配分と財源との関係というものがきっちりと整理されていないと、そういうところに問題がある。
 で、日本の地方自治体は、自主性、自立性、独立性というものが必ずしも十分ではなくて、国の大きな企画立案、あるいは指示、チェック等の下で実際の事務事業を、仕事を行っておるというのが実態ではないかなというふうに思います。そういう意味では、自治事務をもっと増やしていくということが基本でありますし、財政の面におきましても自主財源の強化という観点で自治財政権を更に確立、拡充していくということが必要ではないかというふうに思います。
 で、そういうふうな自治、地方自治体の実態が必ずしも本来の自治に必ずしも十分に沿っていないと。そのよって来る一つの原因は、私は憲法に規定するこの地方自治の本旨と、こういう、ここの概念のあいまいさに起因しているところがあるんではないかと。この、余り憲法ですから事細かいことまで書くのは、逆にその柔軟な制度改正といいますか、実態に即した、時代の変化に即した改正を束縛するという意味ではいささかまずい面もあるわけでありますが、しかし余りにも抽象的で、その意味するところが必ずしもはっきりしないというのも、これは逆に問題ではないかと。
 今申し上げた自治の限界というものがそこにあるんじゃないか。新たに憲法を改正するとすれば、この地方自治の本旨というものをもっと明確な自治の基本原則という形で規定をすべきではないかというふうに思います。
 それから次に、国と地方自治を考えるときには、国と地方との関係においてこの地方自治をどう位置付けるかということの議論が必要かと思いますけれども、ここのところが必ずしも憲法上は明確ではありません。
 それで、私は、最近EUの諸国がヨーロッパ地方自治憲章というものを採択をして、それに沿って各国が今分権改革を進めておるわけですけれども、そこで言われている一つの基本原則が補完性の原理ということでありまして、これは住民に身近なところの団体が原則的にすべての分野をまず責任を持って仕事をすると。その団体では処理し切れないような部分についてはより広域的な団体が処理をする、そこでもまだ無理な場合には最終的に国がすると。要するに、まず基本的なところの基礎的な自治体が最優先で仕事の分担をすると。これを補完性の原理ということで言っておるわけでありますけれども、日本の分権一括法も基本的にはそういう考え方を踏襲しているというふうに私は理解しておりますが、そういう考え方を憲法上も明記するということが必要ではないかというのがもう一点でございます。
 それから三点目として申し上げたいのは、先ほども申し上げたように、この財源の裏付け、自治を確立するためには権限、事務配分のみならず、それの実際の仕事をするときの財源的な裏付けがこれまた自治の面でどこまで確立されているかということが非常に重要な点であります。
 日本の場合には、よく言われますように、まあ三割自治という言葉に象徴されるように、財源が極めて限られております。足らないところは国からの補助金あるいは負担金等でカバーをし、あるいはまた借入金に依存せざるを得ないという状況でありますが、基本的には、自治事務は本来全額自主財源で執行できるというのが一番望ましいんではないか。あるいはまた、法定受託事務というふうに区分されるものがあるわけですけれども、それは本来国の仕事であり、ただ執行を地方団体に任せた方が全体として能率的、効率的だというものであるとすれば、その財源は全額国が負担をするというのが、このことが原則ではないかと。その中には一部例外的なものもあろうかと思いますが、基本原則はそういう考え方でいくのが望ましいんではないかと私は考えておりますけれども、そういう物の考え方というものを憲法上にも基本原則を明確にするということが非常に大事じゃないかなというように思います。
 そうすることによって、仕事の執行の面あるいは財源の面でも地方の自主性が高まるわけでありまして、そうすることによって、本当に自分たちの団体のことは自分たちの意思で決めると。そしてまた、その決めた結果責任は自分たちが負うと。自己決定と自己責任の原則がそういう事務と財源を通じて確立する、それが本来地方自治の在り方ではないかと、こういうふうに思うわけでございます。
 それからもう一点申し上げたいのは、日本の現在の地方自治は市町村と都道府県の二層制になっております。御案内のとおり、今、市町村合併が全国的に推進されておるわけでありますが、これは今、現象的には財政的な制約からそういうインセンティブが働いている面もありますけれども、本来の考え方はやっぱり分権化を進めていく、地方自治を確立するなら基礎的団体であります市町村を優先すべきだと。市町村にもっと仕事をやってもらうためには、責任を果たしてもらうためにはその権能を拡大しないといけないと。そのためには、規模が余りにも小さければ不十分だろうと。そういうことが背景にあっているわけでありまして、合併推進は、私は流れとしては当然そうあるべきだろうと。
 ただ、市町村合併についても、これは強制的にやるべき性格のものでもありませんから、いろんな事情でどうしてもできないところについては、やっぱり一部事務組合とか広域連合とか、今でも事務の共同処理の仕組みが設けられておるわけですから、そういうものも併せながら市町村の事務処理能力、権能というものを拡充していくというのが望ましい方向ではないかなというふうに思っております。
 そういうような状況がこれからどんどん進んでいきますと、市町村と国との間に位置しております都道府県の役割と位置付けというものがおのずと見直す必要が出てくるんじゃないか。中間団体と言われる都道府県の仕事、役割というものはどんどんどんどん小さくなってくる、そのときに今の都道府県制度で、そのままでいいんだろうかと、これが道州制の一つの背景だろうと思います。
 私は、大きな流れとしては、日本においても道州制というものを都道府県制に代えて、新たにそういうものを置くんではなくて、都道府県制に代えて道州制というものを導入するということが望ましいんではないかというふうに思います。
 道州制の必要性はその都道府県の位置付けの変化が一つでありますが、それに加えて、やっぱり今、市町村の思いは、何で我々のような弱いところばっかりにしわ寄せが来るのかと、そういう思いをされている関係者が非常に多いわけでありますが、道州制を導入することによって、都道府県のみならず国の行政改革も一気に進むんではないかと。都道府県が廃止され、事実上統合されるわけでありますので、組織、体制が大幅に簡素化される部分が出てまいりますし、国としても、従来国が直接やっておった仕事を更に道州に移管して執行してもらうということになってくるわけでありますので、国としてのスリム化も図られると。
 そういう意味で、行政改革を更に国を挙げて進める意味でも道州制の導入というのは効果があるんじゃないかというのが一点。
 それからもう一つ、今、現象的には東京一極集中の現象がとどまらないわけでありますけれども、これを政策的にどういうふうに有効な手段があってこれを食い止めれるのかと。なかなかこれといった手はありませんけれども、まず、私は、その一極集中化を是正する方法としても道州制というものが有効に働くんではないかというふうに考えております。
 現在、都道府県、市町村を憲法上位置付けていないのと同じように、憲法改正しなくても道州制は導入できると思いますけれども、是非憲法改正をする場合にはこの道州と市町村を憲法上も位置付けるということが地方自治の前進のためには有効ではないかというふうに考えております。
 それからもう一点、地方分権も進めていくとすれば、知事や市町村長の首長に権限が大幅に強化されてまいります。そうなりますと、今も多選云々という議論がございますが、これは憲法の職業選択の自由との関係があって法律や条例で規制できるのかという議論がございますので、憲法上、法令によって多選を禁止できる根拠規定を置くということが有効ではないかというふうに思います。
 それからもう一点、現在のこの憲法九十五条には、一の地方団体にだけ適用される特別法については住民の投票を必要とする条項がございますが、これは現在ほとんどといいますか、ほとんど、戦後直後はありましたけれども、その後全く案件がございません。事実上死文化しておりますので、これはもう廃止してはどうかというふうに思います。
 それから、併せて地方自治体の住民投票でございますが、これは我が国が代表民主制を取っている中で、直接民主主義の一つの手法であります住民投票にどこまでゆだねていくのかというのがこの代議制との関係において慎重に議論しないといけない。代議制が有効に機能しない部分を補完するというのが基本ではないか。それからまた、住民投票を導入するに当たりましては、対象の案件をどの範囲に設定するのか、あるいは具体的なその執行に当たっては項目の設定をどうするのか、あるいは住民に対する情報の提供をどうするのか、あるいはその拘束力をどうするのか、いろいろ検討する部分があります。代議制を、代表民主制を補完するものとして有効に機能する面もありますが、また弊害もあるわけでありまして、私自身はこの住民投票については慎重になお議論する余地が多いんではないかと、こういうふうに考えております。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 森元恒雄

speaker_id: 3780

日付: 2004-10-27

院: 参議院

会議名: 憲法調査会