直嶋正行の発言 (憲法調査会)

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○直嶋正行君 民主党の直嶋です。今日は、発言の機会をいただきましてありがとうございました。
 まず、本題に入る前に、民主党としての憲法についての問題意識と民主党の憲法調査会の現状について報告をさせていただきたいというふうに思います。
 今、世界は文明史的転換期にあるということがしばしば指摘をされます。今も国際テロの話がございましたが、事実、最近、世界各地で生じる様々な事件や現象を見ていますと、私自身もそう思わざるを得ません。こうした時代の変化、変動に対応し得る生きた憲法の確立を目指して議論を積み重ねてきました。
 一方、日本国憲法の現状を見ますと、解釈改憲といいますか、それを繰り返す政府によって憲法の形骸化、空洞化が進んでいると思います。そして、国民の憲法に対する信頼を大きく損ねつつあると、こう思います。こうした状況を克服し、憲法に基づく政治を確立するためにも、二十一世紀の新しい時代にこたえる創造的な憲法論議が必要ではないかというふうに思っています。
 そもそも日本の国は中央集権システムの下で官僚による恣意的な行政が横行し、法の支配が形骸化するという傾向が根強く続いてきました。その上、ルールなき自衛隊の海外派遣が繰り返されて、あたかも日米関係が憲法を超えるかのような政治の実態が生まれてきています。民主党が掲げる創憲は、このような危うい政治の現実に対して、立憲政治を立て直し、法の支配が確立された社会をつくり出すことにその大きなねらいがあります。過去を振り返るのではなく、未来に向かって新しい憲法の在り方を考え、積極的に構想していく、そういう意味での創憲を標榜いたしております。
 また、新しい憲法をつくるに当たっては、現日本国憲法が掲げる国民主権、平和主義、基本的人権の尊重の三つの根本規範を尊重し、さらにその深化、発展を図ることを基本にすべきと考えています。
 こうした考えの下、民主党憲法調査会では、本年六月に憲法提言の中間報告を取りまとめました。中間報告では、以下に述べる五点を大略の方向として打ち出しています。
 第一に、国際テロや地球環境問題を始め、新しい共通の脅威に対応するため、国際協調による共同解決が主流になりつつあります。またグローバリゼーションと情報化に伴う新しい変化や価値の転換により、国家あるいは国民という概念、今のネーションステートもそうかもしれませんが、こういった概念も変化しつつあると思います。例えばヨーロッパに見られるような国家主権の移譲や主権の共有、私どもとしてはアジアとの共生なども視野に入れる、そして新しい憲法を考えることが必要だと思います。
 第二に、政治主導の政府運営と国民主権の深化に向け、内閣総理大臣の執行権の明確化や政治任用の拡大、国民投票制度の在り方や憲法裁判所、行政監視院等の設置の根拠を盛り込むことであります。
 第三に、分権国家日本をつくり出すために、中央、地方の対等原則や補完性の原理、地方自治体の独立した立法権と課税自主権、住民自治に根差した多様な自治体の在り方の保障などを明記することであります。
 第四に、新しい人権の確立と、人権擁護のためにプライバシー権、名誉権、知る権利、環境権、自己決定権等を憲法上に明記することや、独立した第三者機関としての人権委員会やオンブズマンの設置を盛り込むことです。
 そして第五に、自衛隊のなし崩し的海外派遣という事態を許さず、国際協調主義で平和を確固たるものとするために、国連の集団安全保障活動への積極的な参加、そして専守防衛に徹した限定された自衛権を明確に位置付けることです。
 以上の五点の中で、憲法九条の問題に焦点を当て、民主党の基本姿勢と検討の方向を以下申し上げたいと思います。
 そもそも日本国憲法は、国連憲章とそれに基づく集団安全保障体制を前提としています。憲法前文にうたわれている国際協調主義は国連憲章の基本精神を受けたものであり、第九条の文言は、前文の平和主義を具体化したもので、国連憲章の条文を反映したものでもあります。
 日本は、憲章が掲げる基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小国の同権に関する信念を国際社会と共有し、その集団安全保障が十分に機能することを願い、その実現のために常に努力することを決意をしてきました。日本は、憲法九条を介して、一国による武力の行使を原則禁止した国連憲章の精神に照らし、徹底した平和主義を宣明しています。それはまた、日本国憲法が、その精神において、自衛権の名の下に武力を無制約に行使した歴史的反省に立ち、武力の行使について強い抑制的姿勢を貫くことを基軸としていることにも反映されています。
 以上の原則的立場については、現日本国憲法の前文及び九条の平和主義を国民及び海外に表明するものとして今後も踏襲していくべきだと考えます。
 この考え方に立った上で、憲法九条の問題を解決するためには以下の三点を明確にすべきだと思います。
 第一は、憲法の中に国連の集団安全保障活動を明確に位置付けることであります。国連安保理若しくは国連総会の決議による正統性を有する集団安全保障活動には、これに関与できることを明確にし、地球規模の脅威と国際人権保障のために日本が責任を持ってその役割を果たすことを鮮明にすることであります。
 第二は、国連憲章上の制約された自衛権について三つの要件を明記することであります。すなわち、緊急やむを得ない場合に限ること。つまり、他の手段をもっては対処し得ない国家的脅威を受けた場合に限定すること。国連の集団安全保障活動が作動するまでの間の活動であること。かつ、その活動の展開に際してはこれを国連に報告することであります。
 第三に、武力の行使については最大限抑制的であることの宣言を書き入れることです。国連主導の下の集団安全保障行動であっても自衛権の行使であっても、武力の行使は強い抑制的姿勢の下に置かれるべきであります。我が国の安全保障活動は、この姿勢を基本として、集団安全保障への参画と専守防衛を明示した自衛権の行使に徹するものとすべきであります。
 以上が民主党憲法調査会の中間報告として取りまとめた考え方でありますが、今後の検討課題として、以下、私見も交えて一、二申し上げたいと思います。
 まず、自衛権に関する問題についてであります。
 集団的自衛権の行使については否定的な見解も多くありますが、私は国家の自然権として認められている以上、個別的自衛権であれ、集団的自衛権であれ、その権利を有しており、自衛権の行使については恣意的な解釈で対応するのではなく、条文を疑義なく解釈できるよう明文化した上で、具体的な行使の場面においては先述した考え方に沿って限定的かつ厳格に考えていくことが日本の国益に資すると考えております。
 ただ、集団的自衛権ということで一言付け加えますと、集団的自衛権を考える場合、当面は日米安全保障条約を念頭に置くことになりますが、同盟のカウンターパートナーである米国は世界じゅうに七百以上の軍事基地を展開し、文字どおりグローバルに活動しています。したがって、集団的自衛権を有しているからといって無制約にその自衛権を行使することになれば、世界じゅうで集団的自衛権を行使することにもなりかねません。現に、今でも自衛隊は極東を越え、イラクに派遣されています。したがって、我が国の基本的立場を逸脱しないようきちっと議論を詰める必要があることを申し添えておきたいと思います。
 次に、国連の集団安全保障活動についてであります。
 国連安保理若しくは国連総会の決議による正統性を有する集団安全保障活動に基づく平和維持・創造活動に対して日本が参画する場合に、国権の発動たる武力行使との関係をもきちんと整理しておく必要があります。現憲法下でも、正統性を持つ国連の平和維持・創造活動への参加は憲法九条の禁じる国権の発動たる武力の行使にそもそも該当しないという考え方があります。
 その一方で、日本として参加の有無を決定する以上、国権の発動に該当し、憲法九条の制約を受けるという考え方もあります。また、両者の中間的な考え方もあると思います。これらについて、先ほど述べた武力行使は最大限抑制的であるべきとの考え方を踏まえ、日本が国連の安全保障活動に参加するにしても、どのような活動まで可能であるのか、また、主権国家との関係においても明確にすべくしっかりとした議論が必要であります。
 日本の主権の行使と国連の平和維持・創造活動とを明確に区分する意味で、国連待機軍若しくは待機部隊という構想は重要な選択肢であると思います。迅速な派遣、国民の理解やアジア諸国からの理解の得やすさ等長所もあります。自衛隊との組織の切り分けの考え方、現実論などの観点を踏まえて積極的に検討すべきではないかと思います。
 その他にも、憲法で明確化する国連中心の安全保障活動への関与と日米安全保障条約や将来的に誕生することも想定される日本とアジアの地域安全保障のかかわり方について、どのように整理していくかなどについても幅広い議論をしていく必要があると考えます。そして、これらに関する憲法上の規定は可能な限り明快で簡潔であるべきだと思います。
 このため、これらの原則を法規定として明確にした憲法附属法としての性格を持つ安全保障基本法を同時に定めることも必要と考えます。今や憲法は、国民の日常生活や現実生活とは遠いところに置かれています。どのように立派な法であっても、それが不断に守られ、生かされるのでなければ、国の枠組みや在り方を規制する基本法としての役割は果たせません。憲法の形骸化、空洞化に歯止めを掛け、世界の潮流、時代の流れに対応し得る新しい憲法をつくることが重要である、このことを強調して、私の発言を終わります。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 直嶋正行

speaker_id: 7583

日付: 2004-11-10

院: 参議院

会議名: 憲法調査会