舛添要一の発言 (憲法調査会)
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○舛添要一君 二院制と参議院の在り方に関する小委員会・小委員長報告(論点整理)、平成十六年十二月一日。
二院制と参議院の在り方に関する小委員会の経過について御報告申し上げます。
二院制と参議院の在り方については、従前より参議院憲法調査会が責任を持って調査検討を行うべきということが各会派共通した認識であり、本調査会では、このテーマに関し弾力的かつ機動的に運営できる小委員会方式により集中的に行うことが望ましいとの判断から、第百五十九回国会、平成十六年二月十八日の憲法調査会で、二院制と参議院の在り方に関する小委員会を設置いたしました。
そして、同国会中に、三月十二日、二院制と参議院の在り方をめぐる論点、四月十四日、参議院改革、五月十九日、選挙制度の在り方について、引き続き今国会では、十一月五日、選挙制度を中心とした参議院の在り方、十一月十九日、参議院と衆議院の役割分担について、合わせて五回の調査を行いました。
本小委員会では、多岐な方面にわたって活発な議論が交わされましたので、それらの議論を主な論点ごとに整理し、ここに御報告いたします。
一、一院制・二院制の長所・短所、是非。
一院制・二院制の長所・短所は、表裏の関係にあり、効率性や両院のすみ分けや調整の困難さ等の点から一院制を支持する意見がある一方、慎重審議や多様な民意の反映等の点から二院制を支持する意見が強くあります。
是非と理由。
小委員会におきましては、最初に二院制ありきということではなく、国民にとって一院制と二院制のどちらが望ましいかという立場からの議論が大事であるとの意見を踏まえ、議論してまいりましたが、二院制を堅持することで一致しております。
その理由として、先進国で大国である国は安定性が高い二院制が主流、一億人を超える我が国の有権者の多様な意見を一院で集約できるか疑問、一院制では議会を構成する多数政党がそのまま内閣を構成するため、結果として立法府に対する行政府の権限強化につながるし、ドラスチックな変化が行き過ぎて政治的安定性が失われることも起こり得る、実際にも国論を二分する問題で参議院が有権者の意識を反映し大きな役割を果たしてきているなどの意見が出されました。
ただ、理論的には二院制は自明のものではなく、多様化する社会の中で一院制とどう違いを発揮するかが重要、二院制が奥行きある政治をもたらすには第二院が政権から距離を置くことが必要、二院制の第一の目的は両院が互いの足らざるを補うことであり、参議院は与野党が対立する権力争いの場では抑制し、党派対立になじまぬ政策課題を処理することで国政に寄与できる等の指摘もなされ、その意味で、両院の違いを明確にすることが国民に理解を得る上でも重要との意見が多数を占めました。
なお、地方議会と国会を同一視した一院制の議論に対しても疑問、一院制は冷静な議論ができる国民性でないと混乱を招く等の意見も出され、参議院の英文名、ハウス・オブ・カウンシラーズも実体を正確に表すよう変更したらどうか、つまりセネットというような言葉を使うかということですが、との提案もありました。
二、参議院の機能、特に独自性を発揮すべき分野。
参議院の存在意義が補完・抑制、多様な民意の反映等を果たす等にあることは多くの小委員から指摘されましたが、そのためには、独自性を発揮できる機能は何か、衆議院とどのようなすみ分けを行うかが大きな課題であることは一致した意見でありました。
役割・機能分担の重要性。
二院制をいかすには、良識の府、再考の府としての役割をはっきりさせること、また賢い熟慮の院にするために衆議院との割り振りやルール作りが必要、第一院と行政府による政策形成をダブルチェックするという大きな意義があるとの指摘が多数なされております。その際、解散のない六年の任期をいかにいかすかが決め手であり、衆議院とは違った視点を持つことが重要との意見が多数出されました。
なお、今日、参議院が強くなり過ぎたと批判されることについて、活性化は日本には良いことであり、もっと弱くなれとはおかしいとの意見が出されたことを付け加えたいと思います。
参議院の補完機能の充実は無論のこととして、衆議院との違いを明らかにするため、後者をどのようなものにするかが大きな議論となりました。
独自性を発揮すべき具体的分野として、六点挙げたいと思います。
第一、長期的、基本的な政策課題。
長期的テーマは参議院で行うという点では意見は一致しており、基本法は参議院中心で審議すべき、年金や外交案件など中長期的な課題に取り組むべき、参議院調査会の立法などの成果は多様な意見を反映し、非党派的かつ客観的議論を背景に実現したものであり、これらを更に強化すべき等の意見が出されました。
第二、決算。
参議院は予算審査を簡便にし、決算審査は参議院が、予算は衆議院が中心に行う、参議院の決算議決内容は次の予算を拘束するような効果を持たせる、組織的には、会計検査院は参議院に帰属させ、その機能を充実させるべき等の意見が出されました。
第三、行政監視、政策評価。
国民の側に立った行政監視をすることが独自性発揮となる、国政調査や政策評価を更に充実させ、チェックに重点を置く監視の院としての権威を高めることが重要、行政監視の一環としてほとんど野放しになっている政省令のチェックが重要などの意見が出され、必要があれば会期にこだわらずチェックの院としての機能を果たすべきとの指摘もなされました。
第四、人事案件。
国会同意人事を参議院の専権とし、中立公正な立場からヒアリングも含めた審査を行う、特に司法部との関係を考え直すのも一案などの意見が出されました。
第五、国と地方の調整。
参議院が財政や権限など国と地方間の調整を行う仕組みを持つべきでないかなどの意見が出されました。
第六、憲法解釈機能。
最高裁判所がなかなか統治行為の憲法審査に踏み込まない状況の中では、参議院に憲法解釈ないし違憲審査権的な機能を持たせてはどうかなどの意見が出されました。
以上六点に加えまして、運営に関する事項ですが、両院の役割分担は政党内の運営によりある程度可能との指摘がありました。また、議員立法をもっと活発に行うべき、参議院は必ず修正案や附帯決議を出すようにし、修正案提出ルールを整備して意見が修正案に結集するようにすべき、修正協議に対する弾力化・柔軟化が実質的審議活性化の突破口になる、委員会でより客観的、非党派的議論を行い、修正案提出を活性化させること及び議論を報告書にして国民に提供するなどの情報発信を期待する、民意の反映として請願の扱いは重要などの指摘がなされ、さらに権限を実効あらしめるものにするには、霞が関への政策人材一極集中を是正し、国会のスタッフを充実すべきなどの意見が出されました。
三、両院間の調整、衆議院の優越規定及び意思不一致の場合。
国会が衆参両院で構成されていることから、意思不一致の場合にどのように調整するか、その際、両院協議会が実質的に機能できるような制度・運営への改革・工夫が必要なのではないか、また、憲法の定める衆議院の優越条項は適切妥当かなど、多くの問題提起がなされました。
三点申し上げます。
第一、法律案再議決要件。
一院制型両院制の考え方を推し進める観点から、五十九条二項を改正し衆議院による法律案再議決要件を単純多数決に改める、あるいはこれを緩和し停止的拒否権や遅延権にとどめるなどの指摘がありましたが、衆議院の権限強化となり、さらには行政権の強化につながるので参議院の権限を弱くすることには反対、三分の二を過半数に改めたのでは歯止めにならないなどの意見も出されました。
第二、総理大臣指名。
六十七条の改正も視野に入れるべきとの意見と反対との意見がありました。なお、指名は不行使にするなど明文改正なしでも運用で実質的に達成できるとの指摘もありました。
第三、両院協議会。
両院協議会が機能しないのは残念でありその使い方を工夫すべき、両院制の在り方や会期制などのマクロ的問題は両院が合同審査会等で議論し、それぞれ独自性を発揮できる体制を作る必要がある、などの意見が出されました。
なお、参議院が扱う議案はある程度の絞り込みが必要との観点から、一般的な法案は衆議院のみで成立させ、特別の法案や条約は参議院まで回してはどうか、総理大臣指名・予算・条約等は参議院の議論で変わる要素がないことから審議の意義に疑問があるなどの意見が出されました。
四、参議院と政党との関係。
衆議院は政党を軸に活動しているので、参議院が衆議院に対する独自性を発揮しようとする場合は、政党から距離を置かなければならないのではないか、緑風会時代が最も参議院らしさを発揮していた、などの問題提起がなされました。
必ずしも政党政治の枠にとらわれないことに参議院の意味がある、政党の中での意思決定の在り方は極めて重要で、衆参にまたがる党議拘束が参議院の独自性を阻害し、また立法過程最大の問題となっている、党議拘束については、特に参議院で再考の余地がある等の意見が多く出されたほか、脱政党化のためには、参議院では公的助成は一定の比率で議員個人にも行ったり、候補者段階から公的助成を行う等の方法が考えられるなどの指摘がありました。一方、選挙、特に再選されるためには政党の力が必要なので、緑風会の再来は難しいとの指摘、また、衆参の定数の較差により党派内の決定において参議院が従属となる現状をどうするかの議論が必要との指摘もありました。
さらに、参議院は政権から距離を置くべきとの点ではほぼ一致したものの、閣僚等を参議院から出すことを自粛するかについては議論がありました。
五、参議院の構成の在り方・選挙制度。
多様な民意を反映させるため、参議院の議員構成をどのようにして衆議院とどのような違いを出すかは、二院制にとって根幹となる問題であり、そのためには選挙制度の設計が極めて重要であります。
三点申し上げます。
第一、直接公選制の維持。
参議院選挙は定期的に行われ、また都道府県ないし全国の支持があって議員になることに意味がある、参議院も国民の直接選挙で選任されるべきで、任命制・推薦制はもちろん、間接選挙制も好ましくないというのはほぼ異論のないところでした。
第二、選挙の在り方・方法。
衆議院と異なる選挙制度にすること、そのためには政党の側面よりも個人の側面をより重視すべきことが意見の多数を占めました。すなわち、同じような選挙制度の二院制は混乱のもと、選挙制度の設計が衆参の在り方と連動して論議されてこなかったことを反省すべき、衆議院は多数者の、参議院は少数者の意見が表れるのが望ましい、民意反映には地域の多数意見を反映させる形もあれば全国の意見分布を反映させる形もあり、両方の形をそれぞれの院が持つことが本来的意味のチェック・アンド・バランスになる、二院制諸国に共通する上院組織原理はないが、両院選挙が類似していることは両院制の趣旨を損なう深刻な問題などの意見が出され、そのために、政党単位ではなく個人を選ぶ制度を工夫すること、識見を持つ個人が当選し得る選挙制度が必要などの意見も出されました。また、上院として敬意を集めるには議員数を少なくし直接選挙で選出すべきで、全国単位と地方ブロックを併用し、定数是正はブロックごとに行えばよい、参議院には全国区及び都道府県単位等ある程度の広さの選挙区が必要、地方分権理念にのっとる地域代表院もあり得る、年金問題等においては若い世代に代表者が出せない問題があるので比例代表で世代別クオータを考えられないかなどの意見が出されました。なお、参議院の定数につき、どの程度の規模が適正なのかきちんと議論すべき、任期を更に長期化するとともに再選禁止とすることも一案との指摘もありました。
第三、一票の較差問題。
参議院の投票価値の較差是正は喫緊の課題である、一票の較差問題については、憲法が国民代表とする以上は地方代表性よりも一人一票原則が優先する、一票の較差の点からは比例代表制が最も優れているのではないかなどの意見が出され、また、重要なのは一人の等価値ではなく一票の等価値であり、投票率が高い選挙区ほど多くの議員が割り当てられる制度について参考人から提案がありました。
今後、本小委員会では、次期常会においても引き続き「二院制と参議院の在り方」の議論を深めていくことが合意されております。
以上、御報告申し上げます。