仁比聡平の発言 (憲法調査会)

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○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。
 私は、この臨時国会から本調査会に参加をさせていただきましたので、二院制と参議院の在り方に関する論点の整理が小委員長から報告をされるに当たって、小委員会の会議録を読み直させていただきました。その中で、そもそも参議院の意義、役割をどう考えるべきかという大本の問題についての北海道大学名誉教授、高見勝利参考人の意見陳述に紹介された松本烝治説明書に大変示唆を受けました。
 参考人の紹介によりますと、松本説明書は、憲法制定に当たって、当初総司令部案にあった一院制ではなくあえて二院制を採用すべきとした日本案の理由について、世界各国の例に倣うとか、貴族院の伝統を墨守するといった横並び、後ろ向きのものからではなく、それは不当なる多数圧制の抑止と行き過ぎたる偏奇の制止にあるとしています。すなわち、議会政治はややもすれば多数党の専制を生じ、多数党の政策は時には一党の利害に専念する弊害があることは、従来幾多の実例が示すところであり、二院制を採用すれば、衆議院多数派の横暴なる提案はある程度参議院においてこれを抑止し得るだけでなく、こうした抑制機関の存在自体が多数党をしてもとよりその横暴を戒める機能を生み出すことになるというのです。
 この参議院の抑制機能がいかにあるべきかについて、我が憲法は、法律案再議決要件を特別多数決とし、参議院の構成についても国民代表である議員によって組織されるものとした結果、参議院は民主的で強力な抑制の府へ、すなわち強い参議院へと憲法制定当初からその役割を与えられることになったというのが高見参考人の紹介でした。
 憲法四十一条は国会が国権の最高機関であることを定めています。議院内閣制は立法と行政の抑制と均衡、協働を求める、その意味で高度のバランスを求める統治機構であると言われますが、仮に立法府が一院制であるとき、一院を構成する多数政党がそのまま内閣を組織し、これに対する第二院のチェック機能がなくなって、肥大化する行政権力、官僚制の弊害はますますひどくなるのではないか。三権分立と議院内閣制を国民主権のためにより良く機能させるには、全国民の代表として唯一の立法機関であり、強大な行政権力を監視すべき重大な任務を負った国会が本来の役割を果たしていくこと。そのために衆参の両院がともに多様な民意を反映し、抑制と協働の働きを果たしていくことが重要だと考えます。
 このような二院制の趣旨は、今日の参議院無用論、有害論そのものを考える上で大変重要なものだと思います。日本大学教授岩井奉信参考人は、強過ぎる参議院という批判を三つの点で整理されています。つまり、衆議院は自民党が単独過半数を取っているにもかかわらず、参議院の問題から連立を組まなければならないとか、政権交代効果といったようなものを結局のところ阻害してしまうのではないかとか、参議院の独自性が発揮されるときは立法機関としての効率性が阻害されるなどの点です。
 しかし、このような議論で参議院の無用、有害論を唱えることは、憲法が本来予定する三権分立と議院内閣制の本来の在り方を傷付け、かつて松本説明書が正に指摘したように、不当なる多数圧制による行き過ぎたる偏奇をもたらすものではないでしょうか。
 岩井参考人によれば、そもそもの一院制論というのは財界から出てきたことです。非常に効率よく法律を審議し成立させてほしいというのですが、しかし、現実に提案される法案が、憲法に照らし、そもそも国民と国の在り方にとってどういう意味を持つのか。現に重大な権利侵害や生活破壊、平和主義の侵害が法律によって行われてきた幾多の経験、また行われ得ることを直視するなら、より重要なのは、法案成立の効率性ではなく、民主主義の府として徹底した審議を十分に尽くし、国民の意思形成のかなめとなることだと考えます。
 また、一院がぎりぎりまで混乱して、どうなったか分からないような形で強行採決をされるとき、参議院がそれを良識の府として再考する大きな役割を果たしてきた数々の経験は、二院制の本来の趣旨を実証するものだと思います。
 本来の議会制とは何か、民主主義とは何かを考えるとき、本当の意味の非効率とは審議がきちんと行われていないことにあるとの指摘を今後の二院制と参議院の在り方を考えるときに正面から受け止めなければならない、このことを、私自身、本院の一員として改めて胸に刻み、その重い責任を果たすために自らを律しなければならないと痛感したことを申し上げて、発言とさせていただきます。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 仁比聡平

speaker_id: 18362

日付: 2004-12-01

院: 参議院

会議名: 憲法調査会