田英夫の発言 (憲法調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○田英夫君 社民党の考え方を申し上げます。
私どもは、現在の日本国憲法を全く変更する必要はないと考えています。特に、憲法第九条の平和主義、不戦の基本は最も大切なものであり、人類のスケールで考えて、世界に誇るべき条項だと思っております。
特に、中心になって作られた幣原元総理の言われているとおり、原子爆弾ができた以上、人類はもう戦争をしてはならないという言葉は、これから先も日本人の一つの生きていく基本として、世界の中で動いていく基本として大切にしなければならないものだと思っています。特に、広島、長崎の体験、唯一の核兵器の悲惨な体験を持っている我が国は、この問題を世界の先頭に立って、戦争をしてはならないということの基本として考えなければならないと思います。
その具体的な私どもの行動ですが、残念ながら現在政治の大勢は逆さまの方向に進んでいるように思いますけれども、まず日本がやるべきことは、具体的な行動として、この世の中から核兵器をなくすと、そして憲法に書いてあるとおり軍隊は持たないと、不戦の国、不戦国家ということをまず衆参両院で決議をする。その決議を受けて、総理大臣が宣言という形で、日本は不戦国家であるということを世界に向かって宣言をする。その宣言を国連総会が受け止めて、日本は不戦国家であるということを国連総会として承認をすると。こういうことを私どもは主張しています。
これは前例のないことではないので、今、モンゴルが非核国家宣言というのをして非核国家になっております。一九九二年に大統領の名においてモンゴルは非核国家の宣言をいたしました。それから、世界各国に国連の場を通じてこのことを訴えて、六年後の一九九八年に国連総会がモンゴルは非核国家であるということを承認しております。
日本の場合は、これを不戦国家ということで、最終的には国連総会がこれを承認すると。もちろん世界で初めてのことですけれども、これは誇るべき地位だと、こう考えるべきではないでしょうか。それは、この人類の社会から戦争というものをなくす第一歩です。
残念ながら、人類という生物は、何千年か何万年か分かりませんけれども、戦争を続けてきました。しかし、それをすれば人類が消滅するという時代になったということを私どもは考えなければならない。今の憲法は、その意味で、幣原さんを中心に人類というスケールで人間の生き方を世界に向かって提案したすばらしいものだと思います。
残念ながら、まだ世界の多くの国は軍隊を持ち、現にイラクで戦争がある、各地で紛争が起こっていますが、私は、小泉総理に、小泉さん、あなたは戦争というものをどういうものだと考えていますかという質問をしたことがあります。それに対して小泉総理は、それは国と国が武器を持って戦うことだというごく当たり前のことを言われました。私は、もっと簡単なことです、人間が人間を殺すことですよという答えをこちらから示したんですが、それに対しては反論も何もありませんでした。
私は、個人のことになりますが、恐らく今、国会の中で本当に数少ない、自分自身が軍人として戦争に行って死に掛けたという体験を持っております。その戦争というものがどんなに人間にとって悲惨なものか。それは命がなくなって体の中に鉄砲玉が撃ち込まれるというだけではないのですよ。もっと精神的なものを含めて、しかも近代の戦争は、昔は戦争といえば軍人が死ぬというものでしたが、現在は、第二次世界大戦は特にひどかったようですが、軍人の死んだ数よりも一般人の死んだ数の方がはるかに多い、各国とも。
したがって、小泉総理が靖国神社に参拝をする、被害を受けた方の中国や韓国の人からすればそれはもっとひどいことですけれども、靖国神社に参拝をすれば亡くなった方の霊を慰めることができるというそういうものではありません。靖国神社に行っても、広島、長崎で亡くなった一般の人の霊はあそこにはおりません。軍人しか祭ってない。明治維新の戊辰戦争以後、二つの例外があります。一つは沖縄のあの少女たちが祭られています。民間人です。なぜ祭ってあるのかと靖国神社に問いただしたら、これは銃を持って戦ったからだと、こういう答えです。もう一つの例外は、今、中国などがしきりに問題にしている十四人のA級戦犯。もちろん東条のような軍人もいますが、何人かの文人、シビリアンがおりますね。そういう意味で、昨日、ここ数日の間の小泉総理の言葉は非常に気になります。
さっき吉川さんが言われたように、チリのAPECで中国の胡錦濤国家主席と会われたり、最近はラオスで中国の温家宝首相と会われた。同じ言葉を言っておられますが、靖国神社に参拝するのは、心ならずも戦争で亡くなった方を慰霊する、それと不戦のための、不戦の誓いをするためですと、こう言っておられますね。二度とも同じ言葉を言っておられます。靖国神社に参拝をすると不戦の誓いになりますかね。
これは、私はじかに小泉総理にこの場に来ていただいてお聞きしたいなと思っているんですが、靖国神社に行って不戦の誓いをする、総理が不戦の誓いをしておられるなら、憲法をどうして改正する必要があるんですか。憲法第九条は正に不戦の誓いです。第一項でそのことがずばり書いてある、そしてそのために軍隊は持たないと書いてある。これをそのまま大事にしたらいいじゃないですか。
私どもは、あと余り多くて挙げる時間がありませんけれども、この憲法九条を守るために何をしたらいいか。さっき一つだけ申し上げました、不戦国家宣言を国連で承認してもらうと。同時に、幣原さんが指摘しているように、この根源は核兵器です、広島、長崎の核兵器ですから、この世界から核兵器を根絶する、なくしてしまうために、日本は国を挙げて取り組むべきだと、世界の国々に呼び掛けて率先をしてこれをやるべきだと。
既に、確かに、非核地帯条約を結んでいる。一九六五年に中南米非核地帯条約ができました。そして、今や南半球は全部、南極大陸を含めて核のない地域になりました。残念ながら、私どもの北半球はありません。中国、ロシアは持っていますし、朝鮮半島、これは南北で一九九二年に、対立しながらもこの半島は非核地帯にしようと合意しているんです。モンゴルは、先ほど申し上げたとおり、非核国家宣言をしている。日本は非核三原則を持っています。この四つの国は今すぐにでも非核地帯になれるんじゃないでしょうか。こういう問題を、憲法を改正するよりも、こういう問題を先駆けて推進する役割を日本はやるべきじゃないでしょうか。
ニュージーランドのことも申し上げようと思いましたが、時間がありませんから、簡単に言えば、ニュージーランドで二十年ほど前、ロンギ首相は、核を積んだアメリカの軍艦や飛行機の着陸、入港を禁ずる法律を作りました。日本と同じように、日本の安保条約と同じように、ニュージーランドはオーストラリアとともにANZUS条約を結んで、一種の安全保障条約をアメリカと結んでいるにもかかわらず、こういうことをあえてやりました。
なぜこういうことができるのか。私はニュージーランドにすぐ行きました。それで分かったことは、全く数人の女性が始めた核のない家という小さなシールを張る市民運動です。それが全国に広がって、本当に家の入口に、玄関に張ってあります。一つの道路が全部張った家になると、その通りは非核ロードになる。ちょうど交通標識と同じような大きさの同じデザインのものが道に立ちます。その町の道路が全部非核道路になると、その町は非核シティーになります。
その運動を始めた女性は、私が行ったときにはオークランドの市長でしたが、今、もうニュージーランドは全部のシティーが非核シティーになりましたから、もう非核国家です、こう言っていましたが。したがって、ロンギ首相は労働党ですけれども、反対党の国民党が政権を取ってもこのやり方は全く変わらず、今日に至っています。
日本が本当はやらなければならなかったことをニュージーランドが今やっています。これからでも遅くはないと思います。
以上です。