吉井英勝の発言 (憲法調査会)

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○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 財政、地方自治について発言いたします。
 日本国憲法の財政条項を見ていく上では、憲法の国民主権、恒久平和主義、基本的人権の尊重という基本的原則に照らして見るということが大事だと思います。
 日本国憲法は、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」と八十三条でうたい、財政国会中心主義の規定を置いています。具体的基本原則として、八十四条で収入の面における租税法律主義、八十五条で支出の面における国会議決主義、八十七条、八十八条で予備費や皇室費に対する国会の権能、九十条で決算の国会への提出、九十一条は財政状況の国会、国民への報告の義務、そしてさらに、財政処理の原則として宗教団体等への公金の支出を禁じ、国家の中立性を保つとともに、財政民主主義の見地から公費乱用の防止を図っているのが八十九条の規定であります。
 日本国憲法が八十三条の総則的規定を初め詳細な財政条項を定めたのは、これは、明治憲法下で財政に対する議会の関与が厳しく制限されるもとで、天皇制政府が起こした侵略戦争遂行のために国債を乱発し国の財政を破綻させたことへの反省があり、また、一二一五年のマグナカルタ以来の財政立憲主義、財政議会主義をさらに発展させた財政民主主義の思想を取り込んだものと言わなければならないと思います。
 こうした憲法の原則に照らして、日本の財政状況は今どうなっているか。まず、財政規律、財政健全化の問題について述べたいと思います。
 憲法に基づいて制定された財政法では、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」としています。公共事業費などに限って公債の発行等は認めるものの、国の歳出は租税等をもって財源とするという原則を定めています。
 ところが、歴代の政府はこの原則をないがしろにして、一九六五年に戦後初めて国債を発行し、均衡財政システムの一端を崩してきました。七五年度からは、公債発行特例法を制定して特例公債、赤字国債を発行し、バブルの一時期を除いてそれが常態化しています。その結果、国の長期債務残高は五百兆円を超え、国と地方を合わせた債務残高は対GDP比で一六一%と、先進主要国の中でトップという事態になってしまいました。
 自民党などの一部から、国の財政を悪化させた原因が、憲法に財政健全化の規定がないからだとする主張がありますが、これは、みずからが所属する政党の政権がこれまで行ってきた行為を省みない主張であり、これは無責任だと言わなければならないと思います。
 次に、税金の集め方の問題について述べたいと思います。
 憲法の租税法律主義に基づいて、戦後の日本は、直接税中心主義、生計費非課税と、負担能力に応じた累進課税、申告納税制度という原則は一応確立してきました。これらの原則は、経済所得格差の縮小、緩和を図り、所得再配分機能を果たすものでありました。
 ところが、この点でも歴代政府はこの原則を踏みにじって、累進性の緩和、消費税の導入などによって所得再配分機能を著しく低下させ、富める者はますます富み、貧しい者からも厳しく取り立てる制度へと変えられてきました。定率減税の縮小、廃止、消費税の税率アップは、さらに税制における貧富の格差を大きくするもので、許されないものであります。
 次に、会計検査院について述べたいと思います。
 憲法第九十条二項に基づいて会計検査院が設置されていますが、これがふさわしく機能してきたのかどうか。特に、最近では警察の裏金づくりの問題が国民の大きな批判の的になっていますが、会計検査院は戦後一度も警察の不正経理について告発したことがありません。機密費の検査も含め、会計検査院が憲法の規定にふさわしくその役割を果たすように、体制と機能を強化していくということが今重要な課題になっていると思います。
 財政問題の最後に、私学助成の問題について触れたいと思いますが、本調査会でも一部の委員から、私学助成は憲法第八十九条に違反するとの主張がなされておりましたが、私学助成は憲法上も是認され、かつ確立しているというのが政府の一貫した見解でありました。このもとで私学振興助成法が制定され、厳に運用されています。教育を受ける権利を定めている憲法二十六条の立場からも、私学助成というのは憲法上当然の措置であるというふうに考えるものであります。
 次に、地方自治についても述べたいと思います。
 日本国憲法は第八章に地方自治を規定していますが、これを見るときも、憲法の基本原則を踏まえることが重要です。憲法の地方自治の原則は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と、九十二条で総則的規定を置いています。この地方自治の本旨の内容というのは、団体自治と住民自治であります。住民自治の上に立つ団体自治、これが大事なところであります。
 以下、住民自治の具体化として、議会の設置、地方公共団体の長、議会の議員等についての住民の直接選挙制を九十三条で定めており、団体自治の具体化として地方公共団体の行政的機能と立法的機能を定め、これは九十四条、さらに九十五条で、住民自治の保障として、地方自治特別法に関する住民投票を定めております。
 明治憲法のもとでは、知事が官選であったことを初め、地方公共団体に自治が認められていなかったもとで、天皇制政府が起こした侵略戦争に国民を駆り立てていく道具とされてしまったという経過があります。日本国憲法の地方自治の原則というのは、こうした戦前の反省と、地方自治は民主主義の源泉であり民主主義の学校であるというブライスの言葉に象徴される地方自治の原理を取り込んでいったものであります。
 こうした憲法の地方自治の原則に照らして、日本の地方自治の現状は今どうなっているか。地方分権改革、三位一体改革は叫ばれておりますが、分権にはほど遠く、逆に、国の地方に対する統制が強まっているというのが現状ではないでしょうか。
 九九年に制定された地方分権一括法は、それまでの機関委任事務は廃止したんですが、その四割強が法定受託事務として残りました。しかも、それまで憲法の規定から権力的関与は認められてこなかった自治事務に対しても、法的義務を負う是正の要求を明示し、それを出すのも、内閣総理大臣一人からすべての大臣に拡大しました。また、個別法で代執行できる旨の規定が初めて地方自治法に盛り込まれてきました。
 昨年五月の統治機構小委員会で辻山幸宣参考人からも、一括法施行五年が経過しても、国の行政統制は表紙を取りかえただけとの指摘があったところであります。これは、団体自治をないがしろにするものだと言わなければなりません。
 また、地方分権の名で米軍用地特措法の改悪を盛り込み、地方自治体、住民をアメリカの戦争に動員する仕掛けをつくったことも、団体自治への侵害であり、憲法の平和原則に背くものであるということを言わなければなりません。
 地方議員の定数削減は、憲法九十三条が保障する住民自治を切り縮めるものであります。
 また、市町村合併が今強制的に進められておりますが、これについては、辻山参考人からも、地方自治体が住民自治の拡充の努力を呼びかけてもいわば地上げ状態で、そのことに大変憤りを感じているとの指摘がありました。合併した地方自治体では、負担はより高い自治体にならされ、住民サービスはより低い自治体にならされているということが起こって、住民生活を圧迫しているのが実態です。実際、合併によって、例えば乳幼児医療は就学前まで無料制度をしいていた自治体が、合併によって三歳以下までに引き下げられたという例などを見ることができます。
 市町村合併の先に道州制を導入すべきという議論がありますが、日本経団連を初めとした経済団体は、そろって将来の道州制の導入を提言しています。
 ことし一月に発表された日本経団連の「わが国の基本問題を考える」では、これからの中央政府は、外交、安全保障など、国全体としての整合的、一体的に取り組むべき課題に集中して政策資源を投入すべきとし、国民生活や企業活動に密着したインフラ整備や住民サービスについては地方の所管とすべきとして、官と民の役割分担という言い方で、地方レベルでの行政サービスの整理削減や効率化をうたっています。これは、国の役割を国防や外交などに特定し、国が対外政策上の国益に専念できるようにする、それ以外を道州自治体の役割としていくというものであります。
 今日、財界が進めようとしている新自由主義的改革の受け皿として道州制を位置づけているものでありますが、しかし、地方自治の本旨が住民自治を含み徹底した民意による政治を求めていることからすれば、道州制はそれに反する方向への変革にほかならないと指摘があるように、道州制の導入は、憲法が定める地方自治の原則にも地方自治の発展の歴史にも逆行するものと言わなければなりません。
 以上で、私の発言を終わります。

発言情報

speech_id: 116204184X00320050217_010

発言者: 吉井英勝

speaker_id: 7611

日付: 2005-02-17

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会