葉梨康弘の発言 (憲法調査会)

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○葉梨委員 自民党の葉梨康弘です。
 前文について意見を申し述べます。
 まず、現行憲法前文についての評価です。
 現行憲法前文は、確かに翻訳調でわかりづらい悪文です。具体的には、英語の決議文に特有の留意点等を多用しており、例えば、正当に選挙された代表者を通じて行動しという文言がこの憲法の確定に係るのに、これを時に代議制民主主義をあらわしたものと誤解されるなど、法律の中の法律としては極めてよい文章と言うことはできません。しかも、主権在民、民主主義、平和主義、国際協調といった人類普遍の原理や普遍的政治道徳をうたうのみで、諸外国の憲法にあるような固有の民族的価値への言及がなく、どこの国の憲法だかわからないという批判もあります。ただ、私は、現行憲法は現行憲法なりに我が国の固有の価値と人類普遍の原理の融合を図っていると考えます。
 私は、現行憲法における上諭の存在にもっと注目すべきと思います。一般的に、上諭は単なる公布文で、規範性は持たないものとされており、憲法の制定過程を示す意味を持っていると解されます。そして、戦後であっても、日本国憲法施行前は上諭が付されている法律案は幾つかあります。ただ、そのいずれも、形式的に、朕は○○法を裁可し公布せしめるという内容です。
 ところが、日本国憲法は、「朕は、日本国民の総意に基いて、新日本建設の礎が、定まるに至つたことを、深くよろこび、」という天皇の意思を示す、極めて特異な上諭と言うことができます。このような上諭を持つことは、この憲法の枢密院審議で、当時の入江法制局長官が、前文は国民の中核としての天皇が発案され、こういう趣旨で改正することを明らかにしたものと答弁していることと符合します。
 私は、押しつけの経緯は経緯として、前文は、法形式的には憲法の制定過程を示す上諭とセットで、天皇御自身の主体的意思により、いわゆる八月革命の精神を受容したことを示していると考えます。その意味において、現行憲法の前文は、日本民族の象徴、日本国に固有の存在であり、伝統文化の代表者である天皇が普遍的原理を受容した歴史的文書と言うことができます。
 私は、新しい時代においては、我が国が長い歴史の経験の中で培ってきた国家や民族に固有の価値と、民主主義、平和主義、人権といった人類普遍の原理を融合し、ともに発展していく姿勢が、グローバリゼーションの時代に対応しつつ、日本国民のすべてが国民であることを誇りに思える国づくりのため必須と考えています。
 もしも憲法が改正された場合、天皇がこれを公布することとなりますが、立法技術的には、現行憲法に置かれているような上諭は削除されることとなります。この場合、私は、前文それ自体に我が国が固有の価値と普遍の原理をともに発展していく国柄を持つことを明らかにしなければ、それこそどこの国の憲法だかわからなくなってしまうのではというおそれを持っています。そして、私たちが未来に向かって進もうという意思を持つのであれば、より積極的で前向きな意義を前文の中にうたっていくべきでしょう。
 すなわち、第一に、今まで述べたような、天皇に代表される我が国の伝統文化、共同社会の尊重と主権在民、民主主義、平和主義、人権、自由等の普遍の原理を融合させ、すべての日本人が日本国民であることを誇りに思うことができる国をつくる決意を明確にすることが必要です。
 第二に、このような日本国は、国際協調主義のもと、国際社会に対して積極的な貢献を行う決意を明確にすることも大切です。
 第三に、現行憲法にもある普遍的政治道徳を発展させる決意を確認することも大事と思います。その上で、我が国が進むべき方向として、文化国家、環境国家、共生国家等の目標、理想を提示していくべきではないでしょうか。
 このような作業を行うことにより、私は、これからの我が国の生きざまに、より積極的な意味を付与することが可能と考えます。
 以上でございます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 葉梨康弘

speaker_id: 24180

日付: 2005-02-24

院: 衆議院

会議名: 憲法調査会