赤松正雄の発言 (憲法調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。
公明党を代表いたしまして、この憲法調査会の最終報告書に対しまして、細かいことではなくて、全体の受けとめ方につきまして意見を申し上げます。
現行憲法が、一九四六年に公布されて以来今日までの約六十年間に日本人の生活において果たしてきた役割の大きさは、いかように宣揚してもし過ぎるということはありません。主権が天皇から国民へと移るに伴って、より一層多くの基本的人権が保障されることになりました。そして、戦争を否定し、戦力不保持をうたった恒久平和主義を中軸に据えることによって、そのほかの条件もあったというものの、世界においてまれなる平和の時代を享受することができました。憲法基本三原則の名で呼ばれてきたこれらの原理を守り抜くことは、立党以来貫いてきた公明党の変わらぬ基本姿勢であります。
このたび五年間の歳月をかけて行われた衆議院憲法調査会における議論が一たび幕を閉じました。この最終報告書を一見しましてわかりますように、現行憲法を広範かつ総合的に調査するとの目的がそれなりに達成されたことを素直に喜びたいと存じます。中山会長初め各党各委員が精力的にかつ熱心にこの調査に参加されたことは大いに評価されていいと考えます。とりわけ、毎年の海外調査を含めて、現行憲法をあらゆる角度から点検することにおいて、大いなる成果を上げ得たと言っていいのではないでしょうか。これを今後の日本における憲法論議の共通の財産として活用していくことは大切であると考えます。
もとより、この調査はあらかじめ憲法を改めようとのねらいを持ったものではなく、あくまでもその実施がどのようになされているのかを点検するものでありました。しかし、現実に調査会の場で行われた議論では、明文を改正すべしや、規定されていないものは新たに加えてみてはとの意見がしばしば展開されたことは、周知の事実であります。報告書は、それを一定の基準のもとに、意見の数の大小の差が二倍以上あった意見については、多かったとの表記で反映させています。
これについて、公明党にも異論なしとしません。初めに改正ありきではないがゆえに、意見の数が多いか少ないかの基準で、一定方向に報告書をまとめることは、本調査会のねらいをいささか逸脱してはいないかとの指摘であります。ただ、私は、数多い意見を羅列するだけでは、最終報告書の名に値せず、その際に一定の基準をもって整理をしてまとめることはやむを得ず、おおむね穏当なものではないかと思います。
今日の報告書での記述を含め、五年間で展開されてきた議論を一つ一つつぶさに点検すれば、明文の改正がどうしても必要とされる項目というのは、かなりの程度削られ、そう多くはないのではないかと思われます。数の大小にかかわらず、憲法に関する議論をぎりぎり詰めていけば、政治の対応の貧困さが原因であることも少なくないのであります。
そのことを棚上げにしたまま、明文を変えさえすれば事態に対応できるとの考え方はいささか短兵急ではないかと思われます。これを受けて、公明党としては、真に憲法上の明文を改めなければならないものがあるとしたら、それは何か。また、何かつけ加えなければならないものがあるとすれば、それは何か。憲法を変えずとも、法律や行政のあり方を変えることで対応できるものは何か。こういった観点から、今後徹底的に洗い出す作業をしていくことが必要ではないかと考えています。
あえて、九条に限って概括的に言及すれば、現実との乖離を埋めることに急な余り、理想を見失うことがないとは言えません。現状を追認するという良識の明記にこだわり過ぎていると、抑制なき現実の陥穽にはまり込むおそれなしとしません。どのような措置を加えるか、あるいは加えないか、両者を含めて、恒久平和の担い手たらんと立ち上がった原点に立ち戻ることが必要なのです。
憲法調査会の今後については、この最終報告書を受けて憲法論議をどうするのか。今までの広範かつ総合的な調査から一歩進めて、繰り返しになりますけれども、どこをどう変えるか、それとも変えなくてもいいのかということを、枠組みは維持した上で、名称は別にしまして、引き続き議論する場が必要であると考えます。その際に、憲法改正をめぐる国民投票の手続法に限って議決権を与えることが必要ではないかと思われます。改正に向けて具体的な内容が煮詰まっているわけではないにせよ、手続の整備は憲法自体が予定している基本的な備えの一つだからであります。
ともあれ、施行六十年もたったからそろそろいいのではないかとか、諸外国に比べてどうだとかとの議論に浮き足立つのではなく、今こそ冷静な論議が必要だと考えます。五年間の調査会報告書の内容を意識しつつも、それに縛られることのない発想で、公明党は憲法論議に堅実に取り組んでいきたいと思います。憲法論議はいよいよこれから本番が始まるのだと申し上げて、終わります。(拍手)