山口富男の発言 (憲法調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。
日本共産党を代表いたしまして、憲法調査会の五年と報告書について意見を表明いたします。
憲法調査会は、二〇〇〇年一月、日本国憲法について広範かつ総合的に調査を行うことを目的に、調査のみに限定された機関として出発した。
日本共産党は、日本国憲法の歴史的、現代的意義を明らかにするとともに、憲法の諸原則に照らして現実政治を点検する調査こそが憲法調査会の目的、性格に沿うものであることを主張し、その立場で調査に臨んできた。しかし、憲法調査会には常に改憲の動きが持ち込まれ、こうした目的と性格にふさわしい五年間とはならなかった。
焦点となった憲法九条をめぐって、集団的自衛権の行使を明記することや前文の改定を求めるなどの改憲論が述べられた。しかし、これらは、二十一世紀の世界と日本の平和を展望する上で説得力あるものではなかった。むしろ、世界の平和をめぐって鋭く問われたのは、米国が単独行動主義、先制攻撃戦略に基づいて進めたイラク戦争と、それを支持した日本政府の態度であった。
米国の行動とイラク戦争は、国連憲章、国際法に反するものとして世界の批判にさらされた。日本政府は、米国のイラク戦争を無批判に支持し、戦後初めて、現に戦争が継続している地域への自衛隊の派兵を進め、憲法の平和原則を深く傷つけた。
このもとで、イラク戦争と自衛隊のイラク派兵にかつてない批判と抗議の世論、運動が広がったことは、憲法問題を考える上でも極めて重要である。
本調査会においても、参考人、公述人等を含め、米国の無法と日本政府の対応に厳しい批判がなされた。そして、国連憲章に基づく平和のルールの実現とともに、戦争のない世界を目指す憲法九条は、世界の平和にとってかけがえのない生命力を持っていることが示された。
基本的人権をめぐっては、いわゆる新しい人権が取り上げられた。これは、憲法十三条の幸福追求権、二十五条の生存権などに立った国民の運動によって確立してきた権利である。問題は、それを実効あるものにするための努力をなすことである。実際、環境問題を初めとして、その実現に逆行する現実政治を変えることこそが課題であるとの意見が、多くの参考人、公述人等から述べられた。
今日、憲法問題で問われていることは、憲法を改変することではない。憲法の諸原則と現代的意義を改めて深くとらえ、立法、行政、司法など政治と社会の各分野で、憲法を守り、生かす豊かな営みを進めることである。
本報告書は、こうした調査の経過と結果を反映したものではない。それどころか、憲法調査会規程をも逸脱した、憲法改定に向けた論点整理の報告書となっているのである。
第一に、九条を初めとする憲法の各条文において、何を明記するかの是非を論じるものとなっている。自衛隊の憲法上の明記、「集団的自衛権の行使の是非」、国民に「新たな義務規定を設けることの是非」、「国民も憲法尊重擁護義務を負うことを明記すべきか否か」など、明記することの是非を中心に論じることは、まさに改憲に向けた論点整理であって、調査に限定し、特定の結論を出さないという本調査会の性格に反するものである。
第二に、「各論点ごとに、発言の数ではなく、意見を述べた委員の数をもってカウント」し、「概ねダブルスコアの開きがある場合に、大小関係をつける」という手法は、国会内の委員数によって改憲の論点を殊さら大きく見せるものである。さらに、「委員の意見を論点ごとに類型化」することによって、「前文に我が国固有の歴史・伝統・文化等を明記すべきか否か」、「家族・家庭に関する事項を憲法に規定することの是非」を論点に挙げるなど、事実上、与党などの改憲論議に沿うものとなっている。
このような改憲に向けた論点の整理は、本調査会の報告書たり得ない。
なお、本報告書では、「今後の憲法論議」として、「憲法問題を取り扱う国会の常設機関」の設置、「憲法改正手続法」の整備を取り上げ、憲法調査会に憲法改正手続法の起草、審査権限を与える方向を打ち出しているが、これらは九条改憲に向けた道を開くものであり、認めることはできない。
本憲法調査会は、「概ね五年程度を目途とする。」調査が終了したのであり、衆議院議長に報告書を提出した後は、静かにその幕を閉じるべきである。
日本国憲法は、平和の問題でも、国民生活、人権、民主主義の問題でも、今日、日本と世界が直面するさまざまな課題に対して、その解決の指針となる豊かな内容を持っている。
憲法とともに生きてきた多くの国民は、九条改憲を志向する勢力に抗して、憲法の目指す平和、人権、民主主義の日本に向かって、さらに前進するであろう。そして、この道は、アジアや世界の平和、友好に新たな段階を切り開く展望を持っているのである。
以上の諸点を申し述べ、憲法調査会の五年と報告書に対する日本共産党の意見表明といたします。(拍手)