福田誠の発言 (郵政民営化に関する特別委員会)
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○福田参考人 ただいま御紹介賜りました全国地方銀行協会の副会長・専務理事を務めております福田でございます。
本日は、このような貴重な機会を設けていただきまして、まことにありがとうございます。せっかくの機会でございますので、今回の郵政民営化、中でも私ども地方銀行にとりまして影響の大きい郵便貯金事業の民営化に関しまして、意見を述べさせていただきたいと存じます。
郵便貯金事業は、明治八年に国営事業として創設され、かつて民間金融機関の発達が十分でなかった時期におきましては、国民に簡易で確実な少額貯蓄手段を提供するとともに、郵便貯金が集めた資金を、財政投融資制度を通じまして社会資本の整備等への資金供給に活用するといった、いわゆる財投システムにおける資金調達の担い手として、一定の役割を果たしてきたものと認識しております。
しかしながら、前者につきましては、民間金融機関のネットワークや各種サービスの拡充が図られ、民間金融機関で十分カバーできる状況となっておりますし、また、後者につきましても、財投改革によりまして郵便貯金の資金運用部への全額預託義務が廃止されたことから、いずれもその役割は終了し、もはや国営の郵便貯金事業を維持する意義は失われているというのが、私ども地方銀行のこれまでの主張でございます。
御高承のとおり、郵便貯金は、現在も官業ゆえの特典を残したまま、約二百十兆円にも上る巨大な規模を有しております。こうした巨額の資金を市場メカニズムのらち外に置くことは、我が国の金融・資本市場の公正な価格形成をゆがめるとともに、経済の活力を高める効率的な資金配分を阻害していると考えております。
そのような観点から、今回の政府の民営化案について申し上げますと、郵便局ネットワークという資源の有効活用や雇用面への配慮などを総合的にお考えになられた上で、郵便貯金銀行については、遅くとも平成二十九年までに政府の出資関係から切り離し、完全な民営化を実現するとされております。私どもといたしましては、こうした完全民営化によりまして公的金融部門の縮小が図られるという点で、今回の法律案を評価しているところでございます。
一方、今回の郵便貯金事業の民営化に当たりまして、私どもが懸念しておりますのは、民営化が進む過程において、民間金融機関との公正な競争条件の整備が進まないまま、経営の自由度だけが高まり、これによって一層の民業圧迫を招くことになりはしないかという点でございます。
民間との公正な競争条件を確保するためには、民間金融機関と同じように、納税義務を果たし、預金保険料を納めるのはもちろんのこと、これに加えまして、お客様の保護に欠かせない金融商品の販売ルールの遵守や、さらに、銀行業と他業とのリスク遮断など、民間と同じルールのもとで業務展開を行うことが不可欠と考えております。
私ども地方銀行は、地域社会の持続可能な発展を目指しまして、いまだ厳しさが残る経済情勢のもとで、地域の中小企業や個人のお客様とのリレーションシップを大切に守り育てながら、地域経済の立て直しや地域振興等に取り組んでおります。
こうした中、郵政民営化に伴い、仮に民業圧迫の深刻化が進んだ場合は、リレーションシップを維持しながら一生懸命に地域の中小企業経営や地域経済を支えております地方銀行の経営基盤に大きな影響があるのではないかと懸念している次第でございます。
このため、今後の検討に当たりましては、このような懸念が払拭されますよう、少なくとも、これから申し上げます次の三点を踏まえて、郵政民営化の本来の目的に即した御議論が行われますことを改めてお願いいたしたいと考えております。
まず第一の点でございますが、経営規模の縮小でございます。
郵便貯金事業改革の主目的は、郵便貯金が肥大化を続けてきたことによる市場原理のゆがみなどを、民間でできることは民間にという行政改革の根本原則に則して、国民経済的な観点から是正していくことと認識しております。
郵便貯金が現在の規模のまま民営化された場合には、世界にも類を見ない巨大な金融機関が誕生することとなり、地域金融の健全性維持に懸念が生じます上に、仮に郵便貯金銀行が経営困難に直面した場合、その規模の大きさから、金融システム全体に及ぼす影響は非常に大きいものであると考えております。
私どもは、民間金融市場への円滑な吸収、統合を図るためにも、リスクの軽減を図るという観点からも、郵便貯金の巨大な規模を縮小させることが不可欠であると考えており、民営化を進める中でぜひ有効な施策を織り込んでいただきたいと考えております。
第二は、民間金融機関との公正な競争条件の確保でございます。
移行期間におきましては、郵便貯金銀行の経営の自由度の拡大と競争条件のイコールフッティングの確保が並行して進められていくこととされておりますが、私どもが最も懸念しておりますことは、公平な競争条件の整備が進まないにもかかわらず、郵貯銀行の業務範囲が拡大されていくなど経営の自由度だけが高まっていくことであります。
とりわけ、郵便貯金銀行が政府出資の持ち株会社の配下にある移行期におきましては、政府の後ろ盾がある状態であり、純粋な民間の金融機関であるとは言えないものであると考えます。こうした状態は、お客様から見れば、実質的に政府による保証が付されているものと認識されてしまうものでありまして、競争条件は著しく公正を欠いていると言わざるを得ません。
こうした暗黙の政府保証を後ろ盾にして郵便貯金銀行が規模、機能のさらなる肥大化を進め、それによって民業圧迫が深刻化するのではないかという点に危惧を抱いているわけでございます。
申すまでもなく、金融機関の最大の経営資源は信用力でございます。この点で公正な競争条件が確保されなければ、幾らほかの条件整備が進んだとしましても、民間金融機関は郵便貯金銀行に比べて明らかに不利な状況に置かれるということになります。
このため、政府の関与が残る間は、中小企業や個人に対する貸出業務への参入などの業務拡大は認められるべきではないと考えております。
今回の民営化法案では、このような面につきまして郵政民営化委員会がチェック機能を担うものと理解しておりますが、このような機能は極めて重要であり、準備期の段階から民営化に向けたプロセスが始まる以上、その段階からこのような監視組織を設置する必要があるのではないかと考えます。
また、今後の運営に当たりましては、中立的な第三者の意見に加え、私ども地域金融機関の意見もぜひ十分反映されますよう御配慮いただきたいと考えております。
最後の点は、地域との共存ということでございます。
お客様の立場からしますと、金融機関同士が互いに競争し、良質で多様な金融商品・サービスを受けられるということは本来望ましいことであり、私ども地方銀行も、お客様の支持を得られるよう今後とも切磋琢磨する所存でございます。
他方で、今後、郵政民営化を進めるに当たり、我が国の金融システムの安定を損なったり、お客様に混乱を生じさせることのないよう、地域金融機関との共存を図り、郵便貯金事業を民間市場に円滑に統合させる視点も重要かと考えます。
特に、先ほど申し上げましたが、政府の関与が残る間における貸出業務への参入などの業務拡大は、地域金融機関のリレーションシップバンキングの前提となる健全で安定した経営基盤を揺るがし、地域金融の円滑化に重大な影響を及ぼしかねないものであります。
民営化を進めるに当たっては、地域経済に大きな混乱を生じさせないよう、地域との共存の観点にはぜひ十分御配慮いただきたいと考えております。
以上のとおり、経営規模の縮小、公正な競争条件の確保、地域との共存の三点を中心に地銀界の考えを申し述べさせていただきましたが、いずれにいたしましても、郵貯改革は、単なる郵政公社の経営問題を超えた、将来に向けた我が国の金融システムの制度設計にかかわる極めて重要度の高いテーマであると考えております。したがいまして、資金の流れを含め、官から民へという基本軸を徹底し、真に改革の名に値する郵貯改革にしていただくよう期待いたしております。
簡単ではございますが、私からは以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)