前川清成の発言 (憲法調査会)

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○前川清成君 民主党の前川清成です。
 統治システムとその相互関係に関して意見陳述の機会を与えられましたが、基本的な視座として、私は、法と正義が社会の隅々にまで行き渡った自由で公正な社会を実現し、そこに暮らしたいと願っています。
 もちろん、ここに言う法は、形式的に国会による立法であれば足りるという法治主義における法ではなく、法の支配における法、すなわち実質的に国民の基本的人権を擁護するルールとしての法を指します。
 かかる視座から、違憲立法審査権と裁判官任用システムに関して申し上げます。
 戦後六十年間に最高裁による法令違憲の判決がわずか六件という現状、憲法によって保障される基本的人権は国民の代表機関である国会が制定した法律によっても侵害されてはならないこと、その意味で、憲法こそが自由の基本法であることにかんがみれば憲法保障は極めて重要であり、違憲立法審査権が活性化する方策を検討することには、多くの委員同様に私も賛成です。
 しかし、その方策として抽象的違憲審査制度を創設すべきであるとの意見に私は反対です。なぜならば、政治部門に憲法裁判所を設けることは、法制局の上に屋上屋を重ねるにすぎないことに加え、何よりも政治、とりわけそのときの政治勢力からの強い影響を受けることは否定できず、そこにおける判決は公正な第三者による判断という裁判の本質を失っています。
 憲法判断に対する政治からの圧力を排除するためには司法裁判所に限って違憲審査権の行使を認めるべきでしょうが、最高裁に抽象的違憲審査権限を付与したとしても、裁判官の任命権と予算編成権が内閣に存する以上、最高裁の政治部門に対する過度の気配りは改められるはずもなく、結局、最高裁は政治部門の憲法判断に合憲というお墨付きを与え追認する機関に堕することは火を見るより明らかです。伊藤正己元最高裁判事も、官僚裁判官制度の日本において積極的な憲法判断を望んでみても無い物ねだりだと述べておられます。
 また、そもそも、具体的事件を離れて法令そのものの憲法適合性を判断したとき、真実、社会の実態を反映した判断が可能か疑問です。例えば、尊属殺重罰規定の違憲判決は、実の父親に十年間以上性的関係を強要し続けられ、かつ実の父親の子供さえ出産していたという被告人の置かれた悲惨な状況を抜きにして理解することが可能でしょうか。
 それゆえに私は、現行の付随的審査制度を維持することが適当であると考えています。その上で、下級裁判所も含めて司法裁判所における違憲立法審査権を活性化し、憲法保障を実効あらしめるためには、現行の官僚裁判官制度、キャリアシステムに替えて法曹一元制度を導入するしかないと確信をしています。
 法曹一元制度は、英米法系の各国で採用されている裁判官任用システムであり、在野法曹、すなわち弁護士の中から任期を定めて裁判官を採用し、任期が満了したならば裁判官は再び市民の中へ戻っていくという制度です。この制度においてこそ、裁判官は、自らの出世や昇給、保身にきゅうきゅうとすることなく、法と自らの良心にのみ従った判断が可能になります。
 下級裁判所、とりわけ高裁での違憲判決は、定年間近の裁判長によって下されることが多いという現実に照らしても、ヒラメ裁判官、すなわち市民生活や社会の実態を顧みることなく上だけを見て自らの出世にきゅうきゅうとする官僚裁判官こそが、違憲立法審査権の活性化を妨げていると言わざるを得ません。
 なお、法曹一元制度の導入は憲法改正を待つこともなく直ちに可能であり、むしろ現行憲法第八十条第一項の「裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。」という文言に照らせば、現行憲法も法曹一元制度を予定していることを付言いたしまして、私の意見を終わります。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 前川清成

speaker_id: 22257

日付: 2005-02-09

院: 参議院

会議名: 憲法調査会