高原明生の発言 (国際問題に関する調査会)

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○参考人(高原明生君) 御紹介いただきましてありがとうございます。ちょっと風邪を引いておりまして、お聞き苦しい点があるかと思いますが、何とぞ御容赦くださいませ。
 それでは、時間に限りがございますので、早速ではありますが、御報告申し上げたいと思います。
 何についてお話し申し上げようか迷いましたが、日本のアジア外交、特に対中外交ということをお話し申し上げますが、それをする上でも、やはり等身大の中国、中国が今どういう姿にあるのかということを知らないと的確な外交政策も打ち出せないということは自明のことでございますので、中国、主には政治経済の問題ではありますが、今どういう状況にあるのかということを簡単にまず御説明申し上げた上で、私なりに日本がどのように対中外交を進めていったらいいのか、何を考えているかということをお話し申し上げようと思います。
 大体レジュメの順番に沿ってお話し申し上げてまいりますけれども、まずは、これは皆様もよく御承知の点だとは思いますけれども、中国のマクロ経済というのは非常な速度で成長しつつあります。経済成長率は、そのレジュメに六年ほど前から数字を出しておりますけれども、特に去年、その前の年、九%以上の高成長ということで、ただ、これは後で申しますけれども、中国当局がこのように速い速度で成長したいと必ずしも思っているわけではなくて、どちらかといえば経済の過熱が心配事でございまして、マクロコントロールがうまく利かなかった結果としてこういう速度になっている面もあるということをまず押さえておきたいと思います。
 しかし、高い成長率であることはいずれにせよ間違いのないことであって、中国社会、経済社会が非常な速さで変わりつつあると、変化が非常に速いということは、私たち、大事な点として理解すべきだろうと思います。
 同時に、中国というのは広い国でありますから、多様性に富んだ社会であって、私もこれから中国の現状はこうだというお話をするわけですけれども、実は中国というのは一言では語れないと。中国はかくかくしかじかでありますという人の話は皆さんは是非信じないでくださいといいますか、まゆにつばを付けて聞いてもらうという方が私はよろしいのではないかと思って、ちょっと最初に、あらかじめ変な話でありますがお断り申し上げておこうと思います。
 そういう変化の大きい中国の中でもやはり基本的な心配事というのは人口のことでありまして、そこの点から触れたいんですけれども、今、大体一千万人、毎年一千万人ずつぐらいのオーダーで中国の人口は増えているわけですね。様々な予測があってばらばらですけれども、それ、いつ止まるのかと。一説では二〇三〇年代に十五億弱で止まるんじゃないかと、あるいは二〇四〇年代に十六億弱で止まるんじゃないかとか、様々な予測がありますが、この人口の重荷というのが中国社会に今のし掛かっていることは間違いない、これが多くの問題の基本にあるわけですね。
 御存じのように、一九八〇年からもう既に二十五年の長きにわたって一人っ子政策というのを実施してまいりましたけれども、しかし、その次に申し述べますように、少子化・高齢化社会というもう一つの大問題が迫っておりますので、実は九〇年代の後半から徐々に一人っ子政策の緩和というのが始まっております。九〇年代の後半から多くの地方におきまして一人っ子同士が結婚した場合には二人目も産んでよろしいという、そういう政策を取っている地方が実は多いです。ただ、これまではそれにも制限がありました。条件がありました。例えば、女性は二十八歳以上でなければならないとか、あるいは間隔を四年以上空けなければならないとか、そういう制限を設けている地方が多かったんですけれども、そういう制限を取り払うところが最近増えているというのがここ一、二年の現状であります。
 ただし、中国社会、やっぱり大きく変わっているなと私なんかも感じますが、伝統的な中国のその家族観からしますと、家族はもちろん多ければ多い方がいいと、そういう考え方でありましたが、最近はそうではないんですね。特に、都市におきましてはもう子供は要らないよと。本当に変わったなと思います、中国社会。子供を欲しがるのは高学歴者、高所得者。所得が足らない者は、やっぱり教育費にすごくお金が掛かるものですから、子供は要らないと。今いる子供も邪魔だと、そこまで言う人もいるくらいであって、一般庶民の暮らしは実は大変厳しいものがあるという、そういう話でもあります。
 その高齢化の状況ですが、3.のところで一応リストにしておいたんですけれども、じわじわっと、徐々に六十五歳以上の年齢の割合、六十五歳以上の方の割合が増え、そして十四歳以下の子供が減っておりまして、多くの町で保育園や幼稚園が老人ホームに替わっています。それは非常に普通に見られる状況となっております。
 問題は、もちろん年金ということがその最大の問題なんですけれども、例えば経済的な先進地域である上海の例を取りますと、既に六十五歳以上年齢が二割近くなっているのでありまして、年金の資金が足らないと、もう四年前の数字で大赤字だという、そういうことであって、大問題ですね、やっぱり。
 それから、そうした庶民の暮らしということで申しますと、お金持ちが増えていることは間違いないんですね。よく最近では日本でもテレビ放映されますが、ニューリッチとか中産階級とか、後でちょっと御説明しますけれども、私たち、私なんかよりはずっといい暮らしをしている人が非常に多くなっているのですが、しかし問題は格差です。
 いろいろなレベルの格差があるんですけれども、特に大きな問題は、やっぱり政治的な問題を考えますと大きな問題は、都市、農村間格差であって、収入の統計で見ますと、マクロ的に総合すると三・二対一という、そういう二年前の数字がありますが、しかし、農民の場合はその収入の中から肥料を買ったり種を買ったり、生産コストがまた出ていってしまいますので、あるいは税金も払わなきゃならないというようなことがこれまでありましたので、大体五倍から六倍の格差があるのではないかというふうに中国当局も認めているところであります。これはならした数字ですから、もちろん都市のリッチなところとそれから農村の貧しいところというのは、もう何十倍もの開きがあるというわけであります。
 ただ、よくある議論は、底上げさえされていれば社会が不安定になることはないんじゃないかということですね。九・何%も成長があるのに社会がぐらぐらすることがあろうかというふうによく言われますけれども、実は絶対的な所得水準を落としている、そういう人も多いんですね。これも中国の公式な統計でありますが、二〇〇〇年から二〇〇二年まで、農家の間で絶対的な所得水準を落としている農家が四割以上あるという、そういう統計が実はあるので、これはゆゆしきことだということなんですね。
 で、どうするのか。農家の収入を上げるというのは日本でもどこでも大変なんですけれども、一つの対策は農民を減らせばいいじゃないかということなんですね。農民を減らせば農民の収入は増えるはずだということで、これまでの厳格な戸籍制度、つまり都市住民と農民とを厳格に分けて農民を都市に入れないという、そういうやり方を改めて、もっと都市への農民の移住を認めようという、そういうことになってきているのが現状なんですけれども、しかし、その制度がやはり問題、壁にぶち当たっていまして、何かというと、都市住民と農民の大きな違いは社会保障を得ることができるかどうかという、そういう違いがあったんですね。要するに、都市住民として認定されれば社会保障を受けることができると。
 ところが、都市の政府にそんな財政的なゆとりはないものですから、つまり農民が都市にどんどん入ってきて、その人たちにもこれまでの都市住民に対するのと同じような社会保障を手当てできませんので、表面的にはもう都市の住民と農民の区別はやめましたと言いながらも、実は区別を続けている、実態としては続けている、続けざるを得ないというそういう状況で、社会保障制度の整備というのは大問題なんですけれども、やっぱり財政的なゆとりが中国政府にありませんので思うようには進んでいないという基本的な状況があって、これはやっぱりセーフティーネットの欠如ということで社会の大きな不安定材料になっているわけですね。
 じゃ、市場化は他方進んでいるわけで、経済成長もできて明るい面もあるわけなんですけれども、ただ、そのときに社会主義の倫理体系に代わる新しい市場の倫理というものができていない、治安も悪い、どうするんだということで、最近は孔子様の復活なんということが見られます。その完全復活といいますか、全面的に認めているわけではもちろんなくて、封建的な部分は除いたいい面だけをまた取り入れていこうというような考え方があります。
 他方、生活、明日の生活に対する不安とかいうことが昔とは格段に大きくなっていますので、宗教を信仰し始める人も最近は非常に多いです。医療保険が整備されておりませんので、今病気になると大変なんですね。病院もかなり拝金主義になっていまして治療費も高いですので、なるべく病気にならないようにしなければならない。じゃ、太極拳や気功をやるかということで太極拳や気功をやる人増えているんですよね。ところが、そういう流派の中には準宗教的なといいますか、いろいろな、悪く言えばカルト的な教えも混じったようなものもありますので、共産党はそういうものとして法輪功なる一派を邪教と認定して数年前から弾圧しているといったような状況もありますが、しかし、今申しましたような基本的な社会状況というのは変わらないわけで、私はどれだけ弾圧されてもいろいろな宗教の流派が社会の間に広まっていくことは避けられないのではないかというふうに思っています。
 その宗教が絡みますけれども、新疆やチベットではいわゆる独立問題があって、中国はもう何十年も前からいわゆるテロ、中国当局から見るとテロですね、独立の側から見れば正当な独立運動ということになりますけれども、その対応にも今後も悩まされ続けていくだろうというふうに思われます。
 それからもう一つ、成長の影ということで見落とせないのは環境の問題であって、エネルギーについてはよく日本の新聞にも出ておりますけれども、あるいはレジュメの二ページ目に参りまして、深刻なのは水不足の問題ですね。中国の北部、本当に水がないですね。もう冗談じゃないんですよ。よく聞く話は、北京のゴルフ場のウオーターハザードはみんな水がなくなってしまって、全然ウオーターハザードではなくなってしまったとか、あるいは北京オリンピックが二〇〇八年にあるので、今一生懸命周りから水をかき集めて北京市の緑化をやっています。一見するとスプリンクラーで非常にふんだんに水をまいて、何といいましょうか、大変北京市内は緑になったんですけれども、北京の数百キロ西側に大同という石炭や雲崗石窟で有名な町がありますが、そこの六階のアパートに住んでいる住人の話では、もう夜中三十分しか水が出ないそうです。そういったような状況があります。
 北京オリンピックのオリンピック村の人工の池があるらしいんですが、その池の大きさも、設計図上の池の大きさがどんどん小さくなっているらしいですね。これだけ水があるはずだと思っていたのが、やっぱりないということで、何遍もかき直して今はかなり小さくなってしまったというふうな話もあります。
 北京の場合ですと、三分の二の水を地下からくみ上げているということがもう五年前にあって、そうすると、地下水には再生される部分と再生されない部分とあって、もう陥没事故が起き始めているという、そういう深刻な状況のようです。
 あと、汚染でいいますと、水もそうですし、大気もそうですし、それからCO2の排出ということで申しますと、今もう世界二位の排出国であって、中国もポスト京都議定書の話合いでは相当厳しい局面に立たされるのではないかというふうに思っております。
 こうした状況に対しまして、共産党はもちろん無為無策でいるわけではなく、さっき申しましたように、戸籍制度の改革であるとかいうような具体策もありますし、基本的にこういうバランスの取れた発展をしていかないとやっぱり持続的に発展していけないんじゃないかという、そういう認識はかなり深くもう根付いたと言っていいと思います。特に、胡錦濤、温家宝政権になってから、いわゆる科学的発展観という言い方の下に、バランスの取れた発展をしていこうということを大々的に宣伝しているわけですね。
 例えば、都市と農村の間のバランスであるとか、地域の間のバランスであるとか、あるいは経済開発と社会開発の間のバランスですね。つまり、おととしにはSARS騒ぎもあったわけで、衛生であるとか教育であるとか、そういった経済成長とは直接関係のないといいますか、いわゆる私たちの言う社会開発的な分野も大切ではないかとか、あるいは環境ですね、環境、生態系とそれから経済成長とのバランスを取っていかなければならないとか、そうしたことをスローガンとして強調はしているんですけれども、ただ、なかなか地方の指導者にしますと、人事考課の中にそういうバランスの取れた発展ということがまだきちんとした項目になっていないんですね。やっぱり成長第一の人事考課制度になっていまして、ここを変えないとやっぱりなかなか実際は変わっていかないんだろうというふうに思います。
 それから、最初に申しましたマクロコントロールがうまく利いてないから期待以上の成長率になってしまったという話なんですが、もちろん共産党中央としましては末端まで指示を出して、それこそバランスの取れた発展をちゃんとしなさいよと、成長第一じゃ駄目ですよと、いろんなセクターが過熱していますよと。物価は、去年は都市部はまだ三%台ですが、農村の消費者物価はもう五%近い数字になっていますので、インフレが大変怖いわけですね。
 ところが、昔と違いまして、党中央の威令が末端にまでなかなか届かないという、そういう現状があります。これは非常に深刻な問題だと思います、中国及び共産党にとってみると。これを何とかしようということで、去年の秋開かれました中央委員会の第四回総会、第四回中央委員会全体会議ということで四中全会と言っておりますけれども、党のその統治能力、彼らの言葉で言うと執政能力、これをどう強化するのか。
 一つは、その党の中のコントロールをどう利かせるのか、規律をどうするのか。規律を正すということですね。その規律の中には、重要なポイントとして、汚職、腐敗を取り締まるということも当然あります。汚職、腐敗は相変わらずしょうけつを極めていると言っていいと思いますね。これは本当に党中央にすれば何とか止めたいと思っているでしょうけれども、もう地方の幹部は好き放題をやっていると言うとやや大げさに聞こえるかもしれませんが、そう言って言い過ぎでないようなところもあるので、これもまた政治にとっては大問題であります。
 一つの対策としましては、もちろん法治の強化ですね、法治の強化ということを、これも二十何年間中国共産党はスローガンに掲げて推し進めようとしていますけれども、なかなか人々の意識も変わらないというのが実態だろうと思います。
 それから、ちょっと時間がないので飛ばしてまいりますけれども、七番、Ⅱの7.のところに「調和的な社会」と書いて、これは最近になって執政目標として立てられた項目なんですけれども、共産党の一党支配の下でどうやって人々の利害調整をしていくのかという、そういう大問題があるわけですね。その問題に中国共産党も気付いていないわけではなくて、このように明確に対応しなければならない課題として挙げるところまでは来ていますけれども、しかし、やはり大胆に、例えば多党制を認めるとかいうようなところにはまだ遠いという段階であります。それから、社会公正であるとかその道徳の問題であるとか、そういったようなことも問題としてはちゃんと認識はされていますよということがここに書いたことです。
 そして、最後の十一というところが外交問題にかかわるわけで、最後の十分間はそういうお話をしたいんですが、その前に今までのところをまとめてみますと、やっぱり中国、表面的には非常に景気がいいんですけれども、実は大変深刻な大きな問題を内部に多く抱えている。共産党はそういった問題の存在については分かっているんですけれども、なかなかうまく対応できないままでいると。国民の方は意識も多様化しますし、利益も多元化するし、外国の情報も一杯もちろん入ってきますし、そうするといろいろ文句はやっぱり募るわけですね。今、ですけれども、胡錦濤政権がやっていることというのは言論統制です。言うな、黙っていろ、そのうち何とかするからという、そんなのが基本的な態度で、政治改革が進むんじゃないかと期待した向きもあったんですけれども、やっぱり問題そのものが難しいですからね、簡単に解決できないということもあって政治改革の方にも手を付けかねているという、それが現状だと思います。
 じゃ、こうした中国に対して日本あるいは日中関係どうすればいいのかというお話なんですけれども、多分前回、国分先生からいろんなお話もあったと思うんですが、まず簡単に、日中関係今本当にどういう状況にあるのかということなんですけれども、政冷経熱という言い方が中国から始まって、面白いといいますか分かりやすい、ある意味では分かりやすいのでメディアでもよく使われますけれども、もちろん冷たい部分もあれば協力している部分もたくさんあるということもあると思いますし、それから今中国側が売り出そうとしているラインは、政冷経熱、気を付けないと政冷経冷になっちゃうよということですよね。
 例えばどういう数字を中国側が挙げてくるかというと、貿易に関して言えば、これまで日本はずっと中国の第一位の貿易相手国だったんですが、去年はEUとアメリカに抜かれて第三位になっちゃったじゃないのと。日本の占める割合というのがどんどん下がっていきますよということを言うんですけれども、しかし、そうはいってももう数十%の伸び率を日中間の貿易は示しているわけで、それは物すごく熱いか、もうあちちちちかあちちの違いであって、日中間の経済関係が熱いことはこれは間違いのないことだと思います。今グローバル化の時代で、中国はもう世界じゅうと自由に貿易をするわけですから、世界の経済に占める日本経済の割合くらいの割合を日本は当然中国の貿易相手の中で占めるわけですよね。ですから、別に三位になろうと何位になろうとそのことでがたがたする必要はないんじゃないかと私なんかは考えます。
 それから、もう一つよく言われることは、相手に対する国民感情が両国で悪化の一途をたどっていると、そういう言い方がよくされます。これはメディアでもされますし、会議なんかに出ましてもこういう言い方をする人が多いんですが、それは本当だろうかということなんですね。
 確かに、内閣府の毎年やっております世論調査で日本国民の対中感情というのを測ってみますと、去年は一〇ポイント以上落ちたことは間違いないんですね。何が落ちたかというと、中国に対して親近感を感ずるという人の割合が一〇ポイント以上減ったんですね。じゃ、その前はどうなのかといいますと、二〇〇三年までの状況はどうだったのかというと、どこから測るかというか、どこから見るかという問題があって、例えば一九九六年という年を取ってみますと、九六年より悪くなった年はないんですね、実は。一九九六年に中国に対する親近感を感ずる人の割合が一番低かったんです。あるいは、中国に対して親近感を感じない人の割合が一番高かったのが一九九六年であって、それから対中感情が良くなったり悪くなったり良くなったり悪くなったり、そういうアップス・アンド・ダウンズを繰り返して二〇〇三年まで来たんですね。ですから、九六年から二〇〇三年までを取ってみると、日本人の対中感情が悪くなったということはその調査からは言えません。ところが、二〇〇四年になって、アジアカップのサッカーの影響が大きかったと思いますけれども、だあんと一〇ポイント下がった。それは間違いのないことなんですが、しかし、だからといって悪化の一途をたどっているという言い方をするのは正確ではないんじゃないか。
 じゃ、中国側はどうなのかと。中国側で反日感情が高まっているように見えますね。実際高まっている部分があると思います。じゃ、どういう調査でそういうことが裏付けられるかというと、新聞、中国側の新聞社がやったり中国側の研究所がやった世論調査なるものがあるのですが、それらは決して社会学的に非常に確かな調査方法に基づいて行われたのではありません。実はもう一つ別な調査結果があって、それによりますと、数年前と比べると、去年ですね、二〇〇四年の中国人の対中感情は一〇ポイント以上改善されているというそういう統計も実はあるのです。調査結果もあるんです。
 だから、なかなか本当のところが分からない。ただ、印象論をいえば、良くなっている面もあるし、悪くなっている面もあると。中国という国は大きいですから何か矛盾していることが同時に進行するということはよくあることであって、一部では対日感情が悪くなっている、あるいはいよいよ悪化しているということは言えると思いますし、しかし、他方においては親日感情は広まっている部分もあると。それが現状に近いのではないかと、実際の状況に近い言い方なのではないかというふうに感じているんですが、いずれにせよ、その中国の当局は、よく言うことなんですけれども、最近はもう国民感情を無視して私たちも外交政策考えられないんだと、日本と似てきましたよということを言うんですけれども、じゃ、中国当局は何を見て自分の国の国民感情を測っているのか、これはよく分かりません。そのインターネットを指導者がよく見ているという話はあるんですけれども、じゃ、インターネットが正しく国民、中国人の国民感情を映し出しているかというと、決してそんなことはないのであって、この辺やや心配を覚えるところであります。
 それが一のところで言いたかったことですが、最後にもうあと五分しかありませんけれども、どういうふうにじゃこれからするべきかということで何点か時間のある限り申し上げたいと思うんですけれども、一つは、基本的なポイントとして、好むと好まざるとにかかわらず、やはり東アジア共同体に向けて今後二十年とか三十年とか世の中が動いていくことは私は間違いないと思います。そのときに、日本人の立場からすれば、でき得れば日本がイニシアチブを取ってその共同体のデザイン作りを引っ張っていくと、日本にとって日本がいいと思うような共同体を作っていくといいましょうか、そういうことが大切なんではないかと思っているんですけれども、そうしたその基本的な認識の下に対アジア外交、対中外交ということを考えた場合に、どうしてもクリアしなければならない問題がいろいろあって、一つはやっぱり安全保障の問題だと思いますね。
 安全保障につきましては、中国は非常にはっきりとした軍事力強化の政策を持っておりますし、それから東シナ海、南シナ海において自分たちの支配を確立したいという、そういうことも非常にはっきりとした政策になっているわけですから、もし今の調子で中国の経済成長、それに伴う中国の軍事力の強化拡充ということが行われてまいりますと、どうしてもその日米安全保障協力とぶつかる面があると思います。なので、それをどう折り合いを付けるのか、あるいはどのようにそのクライシスを避けるのかということですね。これが大変重要な課題だと思います。短期、長期のいろいろな危機を避けるために、もう様々なレベルで軍人も含めてですね、安全保障協議を盛んにしていかなければならない。頻度を高め、あるいはチャンネルを増やしていかなければならないと、そういうふうに私自身は考えていますし、やがては中国を含めた新しいその東北アジアの信頼醸成のメカニズムを作らなければならない、そういうふうに考えています。
 それから、直近の問題としては朝鮮半島問題とともにこの台湾海峡の問題があって、その点については若林先生からもちろん詳しいお話があるわけですけれども、東アジア共同体という観点からはやっぱり台湾にも東アジア共同体に入ってもらった方が日本にとってもいいですし、台湾にとってもいいですし、それから中国にとってももちろんいいわけであって、じゃ、それをどうするのか、どうやって引っ張り込んでいくのかというときの第一歩として、香港・マカオと台湾の間のFTAはどうだろうかというのが私自身の提案です。
 それから、ODAに関しましては、私は、もちろんいずれは卒業の時が来るでしょう。もうマクロ経済的には中国は援助を必要としない国であるはずなんですが、しかし分配がうまくできないんですよね。分配がうまくできないというのはやっぱり途上国だからなんですね。まだそのレベルの国だということだと思います。ですので、私は、当面は対中ODAは維持する、なぜならば、その開発協力の必要がそこにあるからというのが基本的な考え方です。
 それからもう一つは、中国の安定、発展ということが日本の国益にもなるということで、しかしやがて卒業することは間違いないんで、日本だけじゃなくていろんな国がエクシットのための道を考え始めているわけですね、口にはしませんけれども。だけれども、僕は、日本はやっぱりエクシットするときも最後にエクシットする国になるという宣言をするのはどうかというふうに思っています。最後はもうシンボリックな額になるかもしれません。だけれども、日本はやはり中国の隣にある大国として中国の安定、発展に対して最後まで面倒を見る国になりたいというような宣言をするのがいいのではないかと思っております。
 あと一分ほどあるでしょうか。申し訳ございません、時間がなくなりました。
 エネルギー協力、これは大消費国同士協力せざるべからずという話です。
 それから、歴史教育につきましては、私は、日本の子供にもっと教えるべきだと思いますし、戦争のことを、それから中国の子供にもっと戦後の日本のことを教えるべきだという考え方をしております。
 それから、メディアに非常に多くの誤りが出るんですね。誤りは困りますので、これは日本のメディアも中国のメディアも同様なんですけれども、メディアが自発的にオンブズマン制度を作れないかと。何か偏向報道何とかといったって、何が偏向かそうじゃないか、非常に基準は難しいですから、とにかく事実の誤りがあるかないかということをメディア自身がチェックするようなオンブズマン制度を作ったらどうかというのが私の提案でございます。
 それから、インターネット等で中国語情報を日本からも増やし、中国の側からは日本語情報は増やしてもらいたいし、結局、相互理解が大切なんですけれども、それとともに、相互尊重するということがプライド高き両国民にとっては大変重要なことではないかと考えている次第でございます。
 済みません、最後ちょっとはしょりましたけれども、以上で私の報告を終わらせていただきます。

発言情報

speech_id: 116214308X00220050216_003

発言者: 高原明生

speaker_id: 5882

日付: 2005-02-16

院: 参議院

会議名: 国際問題に関する調査会