高原明生の発言 (国際問題に関する調査会)
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○参考人(高原明生君) 市民社会化ということが中国共産党にとって大問題なんですね。といいますのは、準宗教組織だけではなくていろいろな結社が中国社会に現れていまして、それは同好会、趣味を同じくするような人々の集まりのようなものもあれば、あるいは環境NGOのようなものもあれば、いろいろな結社ができているんですね。中国共産党にすれば、これは一面においては実は慫慂するべきことであって、社会主義にも社会主義民主という概念があって、やっぱり社会主義民主を発展させていくということはこれは圧倒的なプラスの価値があることでもありますし、ただ、もちろんそうした自発的な、自立的な組織の出現というのが彼らの、中国共産党の社会に対するコントロールを弱めるという可能性も当然あるわけですから、どのようにこうした市民社会化に向けてのダイナミックスを制御していくのかということが一党支配体制を維持する上では大変深刻な問題で、いまだにいい答えは出ていない。
しかし、現状を見ると、もうみんな、やっぱり一党支配体制にはいろんな問題があって、やっぱり耐用年数というのはあるんだよねという、そういう意識というのが中国のインテリあるいは共産党員自身の間にも次第に広がっているというのが実情ではないかという気がしております。
それから、続いて国際問題ですけれども、確かにアメリカと一緒に、アメリカとさえ仲良くしていればいいと考えていた時期があったと思います。しかし、それが、そうした幻想が打ち砕かれたのが一九九九年。一九九九年にいろんな出来事がありまして、一つはNATOがコソボ紛争に介入して、あのときにブレア首相は人権は国権の上位にあると言って域外の紛争に介入していったわけですね。中国はこれに大変びっくりして、怒って、自分のところにも人権問題あるわけですから、そんなことを言われて介入されたらたまらぬと。特に台湾、民主化した台湾と対峙しているわけでありますので、これは大変なことだと。
それから、当時WTOの加盟交渉をアメリカと盛んにやっておりまして、朱鎔基さんがワシントンに大幅譲歩案をかばんに詰めて持っていったら、それをけっ飛ばされただけじゃなくてインターネット上で暴露されて、朱鎔基さんは中国へ帰って大変な目に遭ったというようなこともありましたし、それから、決定打は何といっても五月の在ユーゴ中国大使館のいわゆる誤爆事件ですけれども、中国人の多くはあれは誤爆だったとは思っていないわけで、台頭する中国を牽制するためにやられたことだという、そういう解釈をして、ここで完全に幻想が切れて、幻想が打ち砕かれて、アメリカとの関係というのはいいときもあれば悪いときもある、悪いときに、自分たちの活動空間として自分の周囲に仲間、グループを作っておかなければならないということを非常に深く理解したというのが一つあると思います。
それからもう一つは、アジア金融危機、アジア通貨危機ですか、あの経験から、やっぱりグローバル化にはリスクが伴うものであって、ヨーロッパやアメリカで地域統合が進んでいるのはなるほど理由のあることなんだと、グローバル化のリスクに対抗するために地域というヘッジを、地域統合というヘッジを作っておいた方が、近隣諸国の仲間の間で協力し合うことが大切なんだという、この二つを大きな要因として中国が九〇年代後半に大きく外交政策を変えたと言っていいと思うんですね。
大体、そのときの彼らの外交政策の変更を正当化する理屈が新安全保障観なるものであって、そこでは包括的安全保障とそれから協調的安全保障という、対話でもって安全を確保するという協調的安全保障の考え方と、それから、安全保障にはいわゆる伝統的な国防だけではなくて経済安全保障もあればエネルギー安全保障もあればという、そういう理屈でもってその政策転換を正当化し、今一生懸命になって東アジア共同体構想を推進しようとしている。それが中国の基本的な立場だというふうに思います。そのときに、そういうその多国間の、あるいは多角的な枠組みというのは、おっしゃるとおり主権を規制することになるわけで、だからこそ中国は昔嫌がっていたわけですよね。
そういう嫌がっていたのをまあよろしいじゃないかということに変わった大きな要因、今二つ申しましたけれども、それに加えてもう一つは、やっぱり中国、自信が付いたんですね。中国は非常に高度成長を遂げて地域の大国として自信を付けて、なおかつアジア通貨危機のときには自分は直接影響がなかったんですけれども、大見えを切ってよその周りの国のためには自己犠牲を払うと言って、そのときは元の切下げが問題だったんですけれども、切り下げなかった。それに対してもうみんな拍手喝采して、中国ありがとうというふうに言ったということが大変な自信となって、今、今日の中国があるということですから、そういう地域の責任ある大国として、あんたはちゃんとCO2の排出の削減しなきゃ駄目じゃないのというのが今の段階だと思いますし、中国もそれはもう責任は避けられないと思っていると思いますね。
ただ、やっぱり途上国の代表というような顔、一面もやっぱりこの地球温暖化問題ではあると思いますので、何と申しましょう、途上国の立場からはもっとやっぱり先進国にできるだけ責任をかぶってもらってというようなこともあるか、そういう振る舞いも当然あるかとは思うんですけれども、最終的には正におっしゃったとおりに、こういう地域の枠組みに中国を引き込む形で、あなたもちゃんとやってくださいねと、あるいはCDMについて我々はこういうアイデアがあって、特に地域のCDMを重視してくださいねという、そういう言い方は私たちとしては十分できるし、向こうはそれを拒否する理由は何もないですね。拒否したら、こっちはわあわあ騒ぐというような作戦がいいんじゃないかなというふうに個人的には考えています。