鈴木篤の発言 (厚生労働委員会)

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○鈴木参考人 ただいま御紹介いただきました全日本民医連の鈴木と申します。
 私は、元来外科医ですけれども、病院管理者を経て、現在、診療所を中心に在宅医療にも携わっている臨床医でございます。その臨床の現場から見まして、今回の医療制度改革はいささか乱暴過ぎるではないかということで、原則的に反対の意見を述べさせてもらいたいと思います。
 私も日本医師会員でありますし、先ほど内田常任理事が大変見識のある報告をしていただきまして、私も基本的に内田先生の意見に賛成でございます。私は、さらに、運動団体的な役割もしておりますので、全国の病院の声を届けるという役割を持って来たというふうに任じております。
 まず、総論的に疑問を呈します。
 第一に、このたびの医療制度関連法案は、すべて公的医療費、すなわち医療給付の削減を目的にしています。医療改革を論じるなら、本来、最適な医療を効率よく提供するための論議をすべきです。ひたすら公的医療費の給付の範囲の縮小や削減に向かうことは、それを超える医療は私的医療保険で補わせ、公私二階建ての医療制度を描いているとしか思えません。私的保険に入れない人々は、次第に医療からの制限、排除を受けることになりかねません。混合診療を一層拡大し、国民皆保険制度が実質的に崩れていくことになります。
 昨年暮れ、日本医師会や看護協会を初め、全国の医療団体が取り組んだ、混合診療に反対し国民皆保険制度の堅持を求める署名で、一カ月余で一千七百万筆もの署名が集まりました。私は、国民皆保険制度の堅持を国民の大多数が求めていることの証明ではないかと思っております。
 第二に、今回の医療制度改革案は、個人から保険者に至るまで、いわば自己責任論で貫かれていることが特徴ではないかと思います。七十歳以上にまで二割から三割の自己負担を求め、長期入院の食費、居住費を全額自己負担とし、患者負担の月額上限の引き上げなど、高齢者にまで個人の自己負担責任を拡大させています。
 ただそれだけではありません。世代間の自己責任を制度化するのが七十五歳以上の高齢者医療制度です。自治体への自己責任を制度化するのが都道府県医療費適正化計画です。日本の社会保障制度は、憲法二十五条に裏づけられました国や企業主の責任、そして国民健康保険のような相互扶助の精神で成り立ってきました。しかし、自己責任論の先には、国の責任放棄と弱者切り捨ての論理がまかり通ることになり、所得格差が健康格差につながることが危惧されます。
 第三に、今回ほど、はしご外しの制度変更がこれまであったでしょうか。介護療養病床の突然の廃止や、急性期病院や紹介加算の廃止など、それまで多くの費用をかけて施設改造をしたり、医療連携をつくるなど努力してきたものを、論議もなしに廃止するなど、これほど医療機関を足げにした政策変更はありません。国を信じたあなたがばかよ、それも自己責任のうちよとでも言うのでしょうか。
 このような総論から出てきた今回の医療制度改革案の具体的な内容の中で、今、最大の焦点となっております慢性期病棟の問題に触れたいと思います。
 三十年前に老人医療費無料化で生まれた社会的入院の解消と盛んにマスコミも持ち上げていますけれども、療養病床大幅削減のために、診療報酬の点数を大幅に下げて経営的に療養病床を維持できない状況をつくることは、どのような事態を生むのでしょうか。
 第一に、療養病床の運営を困難にすることは、急速に、高齢者の社会的強制退院を引き起こし、行き場のない高齢者が多数生まれることが予想されます。なぜなら、今日の社会状況の変化によりまして、急速に独居老人や老老世帯がふえてきており、虚弱高齢者を受け入れる基盤が縮小しているからです。
 資料にも触れておりますけれども、六十五歳以上の者が世帯主の家族でひとり暮らしまたは夫婦のみという割合が、二〇〇四年には、ひとり暮らし一四・七%、夫婦のみ三六%、合計五〇・七%と、約半数が独居か老老世帯になっているというのが実情です。一世帯の構成員は平均でも二・五人になっています。
 そうなりますと、在宅では終末期が無理な事例が多くなってきます。また、そのようなケースを在宅でみとろうとしますと、逆に医療費が高くなってきます。今日、在宅でみとることのできる家庭は、むしろ、一緒に住まわれている家族を持つ恵まれた方々になっているのです。
 実は、私の属する法人グループは、三十年余、その人らしくを目標に、訪問看護、在宅医療に積極的に挑戦し、家でのみとりを進めてきました。一九九四年からは厚生省のモデル事業として、二十四時間巡回型在宅ケアに取り組み、現在も、赤字を覚悟で、看護師とヘルパーがペアで深夜巡回しております。そのような在宅ケアに取り組んでいても、どうしても必要になってきたのが療養病床であり、リハビリ施設だったため、昨年、療養病床も含むリハビリテーション病院を発足させました。
 集合住宅にお一人で住む高齢者が多い都会における療養病床の役割、また一方、地方におけます限界過疎地に住む高齢者世帯までをケアする地方病院の療養病床の役割など、各地の療養病床が果たしている役割をもっと正確に分析すべきと思います。聞き古した平均化した数字だけを操る論議からの脱皮をお願いしたいと思います。
 第二に、これまで急性期加算などを目標に、急性期病院の在院日数短縮の受け皿になっていたのは、回復期リハであり、療養病床でありました。療養病床の縮小は、平均在院日数短縮を迫られる急性期病院の後方機能を低下させることになります。
 また、退院を迫られて苦しむのは、高齢者自身とその家族です。今日、高齢患者を抱えました御家族の共通の悩みが、病院から退院を迫られて行くところがないという訴えです。ここにおられる政治家の皆さん方も、実は支援者から、どうにかしてくれという話がいっぱい来ているのではないでしょうか。
 第三に、療養病棟の医療区分に対応した病棟入院料や加算がこの七月から廃止されるというのに、医療区分の設定があいまいでした。やっと出てきたものも、結局、重度の肢体不自由者、重度の意識障害者などでも、発熱がなければ医療区分一のままであるということがわかりました。つまり、胃瘻で栄養補給しているような方でも、熱や嘔吐がなければ医療区分一、介護に人手がかかるADL区分三の方も、医療区分一であれば極めて低い点数です。
 私ども全日本民医連が、全国の病院に療養病床削減に反対して団体署名を呼びかけました。その答えが資料の三から出ております。私の役割として、この声を届けることと思いまして、若干読ませていただきます。
 四ページの三の北海道、その他というところに、過疎地域には厳し過ぎる医師と看護師の人員基準、施設基準、このままだと過疎地域の中で中小病院がなくなります。実際に釧路ではなくなっております。
 六ページ、九十五番の秋田、国がやっていることは思いつき、行き当たりばったりだ、一般病床から資金をかけて転換し、戻さない念書もとっているので詐欺的で、犯罪行為に等しいというふうに言っております。
 それから、その他のところで、今困っている低所得者、障害者、弱者も高レベルの医療をどこでも受けられるべきだ、医師数、看護師数にこだわって地方の医療を壊している、厚労省のレベルの低さを告白すべきだ、厚労省は憲法二十五条を犯している。
 これらはみんな、全部民医連とは関係ない病院でございます。
 九十六番茨城、この療養病床廃止と削減の中止を求める運動をぜひやりましょう、初めに医療費削減ありきの政策は、患者の健康だけでなく、病院で働く医師や労働者の生活を脅かすことをもっと国は考えてほしい、全病院保険医返上も辞さずとの意気込みが必要。
 昔の武見派時代を思い出すようなことも言っております。
 また、次の七ページ目の百七番、療養病床は、最近政府の政策として制定されたばかりであり、朝令暮改も甚だしい。
 それから、百十七番の富山、余りにも行政の御都合主義だというようなことも言っております。
 そして、百十八番福井の、その他のところで、病室とか廊下幅を拡大し、やっと療養型に対応しました、一億二千万かけて、なのに、途中ではしごを外すとは不満いっぱいです。
 とほほというタイプでございましょうか。こういう声がいっぱい出ております。このような声がありまして、またぜひ、御参考にしていただきたいと思います。
 私は、一九九八年に地域医療支援病院の創設時も、地域の中小病院こそ在宅療養支援の基本をなすと、ある論文にも書きました。多くの地域の中小病院は、ケアミックスでその地域の医療需要にこたえてきました。そのような地域病院が、今回の乱暴なやり方で経営が立ち行かなくなり、地域医療が崩壊していくことに、私は強い危惧を抱くものです。
 療養病床を中心に述べましたけれども、診療報酬に関しましても、リハビリの回数制限など、多田富雄先生が投書しておりましたけれども、問題が多々あります。国民の求めているのは安全、安心の医療供給体制の確立です。その基本となるのが医師、看護師その他の医療スタッフです。
 今回の診療報酬で七対一という基準ができましたけれども、これまでより厚い看護体制に診療報酬がついたことは評価できますが、現実に地域により状況が異なり、全国平均では語られないものがあります。私ども、七対一看護を病棟単位で求める団体署名でも多くの賛同をいただいております。病院の淘汰を前提にした看護計画でなく、絶対的な看護師養成が必要と思います。
 また、急性期病棟の看護師とともに、勤務医が疲弊しています。産科、小児科医になろうとする若手はますます少なくなり、残された医師には労働が過重になります。小児科医の労働実態が最近報道されましたけれども、小児科医のストレスの多くの中に、単に労働時間だけでなく、小児科の診療報酬の点数が低く抑えられて、病院経営上のプレッシャーがかかっているという報告もありました。
 最後に、日本医師会が示した「改革と推進のヴィジョン」という、最近のパンフレットから後半の資料もつけさせていただきましたけれども、国民医療費、高齢者の医療費は、この数年横ばいになっています。関係各氏が、今日の医療現場や介護の現場の実態を把握し、将来に禍根を残さない制度改革を提言されることを申し上げます。
 そのためには、今回、医療制度改革案の一時撤回を求めて、私の意見とさせてもらいます。
 以上でございます。(拍手)

発言情報

speech_id: 116404260X01820060426_012

発言者: 鈴木篤

speaker_id: 27874

日付: 2006-04-26

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会