保岡興治の発言 (日本国憲法に関する調査特別委員会)

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○保岡委員 自由民主党の保岡興治でございます。
 今回は、国民投票制度に絞って欧州五カ国を極めて精力的かつ熱心に調査してまいりましたが、大変に貴重な経験をさせていただきました。まずは、中山団長を初め同僚議員、この御視察をお支えいただいた関係の皆様方に心から敬意と感謝を申し上げたいと存じます。
 この調査の概要につきましては、ただいま的確に要約された中山団長からの御報告のとおりでございますので、私からは、現在調査を進めている我が国の憲法改正国民投票法案の立案上、議論となっている論点との関係で、若干の感想を申し述べたいと存じます。
 今回の調査において、多くの懇談相手に対して私が質問をさせていただいたのは、国民投票の投票権者の年齢要件は何歳とされているのか、そしてそれは国政選挙の投票権者と同じかどうか、また民法上の成人年齢とも同じかどうかという点でした。これに対する先方の回答は、すべて、国政選挙と同じく十八歳以上とされていること、それは国政選挙と投票年齢と同じであり、また民法上の成人年齢とも基本的には同じであるというものでした。
 例えば、報告書百九十二ページで、スイス・ベルン大学のリンダー教授は、私の質問に対して、選挙権及び投票権が一律十八歳以上であるのは、十八歳という年齢が決定的重要性を持っているからである。なぜなら、スイスでは十八歳になると、民法上結婚が許され、成年者として扱われ契約を結ぶことができ、そして兵役の義務が課せられることとなる。また、納税の義務も発生する。このような義務に対応して権利が発生するものと考えられているのである。そして、議論の複雑化を避けることからも、選挙権、投票権を一律十八歳以上としているのであると述べています。
 このようなことにかんがみますと、我が国においても国民投票の投票権は国政選挙の選挙権等と同じにすることを前提とした上で、これを、現在の二十歳のままでよいのか、それとも公選法の投票年齢も合わせて十八歳に引き下げるべきかという議論をすることが適切なのではないかというふうに思う次第でございます。
 もう一つ、訪問前から大きな関心を抱いていたのは、マスコミ規制を初めとする国民投票運動に関する規制の有無とその内容についてでありました。
 事前の文献調査でもある程度予想はついておりましたが、各国とも国民投票運動は基本的に自由とされており、特段の規制はなされていないとのことでした。この点はマスコミについても基本的に同様でありました。
 ただ、各国とも選挙運動に関する規制自体がほとんどないようであり、選挙運動についてかなり厳格な規制がなされている我が国とは法制度的な状況が違っておりますが、むしろ今後、我が国でも公選法のあり方の抜本的な見直しが必要なのではないかと思った次第であります。
 ところで、最大の関心テーマであるマスコミ規制について、おもしろいと思ったのは、幾つかの国では新聞や雑誌の活字メディアとテレビやラジオなどの放送メディアを区別しておりました。
 例えば、スイスでは、新聞、雑誌については賛成、反対のいずれかの主張を社説に掲載した報道も認められているのに対して、テレビやラジオでは中立的報道を行うことが要請されているとのことでした。そのため、スイス国営放送のハルディマン編集長のお話でも、同放送局で毎週金曜日に放送しているアレーナという討論番組では、必ず賛成、反対の両派を出席させて議論をするようにしているとのことでした。
 このように扱いを異にしている理由は、放送メディアは一般的に扇情的な誇大広告となりがちで影響が大きいのに対して、活字メディアは、各メディアの思想的傾向がもともとはっきりしているし、大小取りまぜて多様なメディアが競合して存在していることによって全体としてのバランスがとられやすいことなどが挙げられておりました。
 また、フランスでも、テレビ、ラジオについては、民間放送、国営放送ともに公正な放送をするように努めることが求められており、国民投票運動期間中には、賛成、反対両派の発言時間をCSA、オーディオビジュアル高等評議会という機関がチェックをしているとのことでした。また、投票期日一定期間前からのテレビ、ラジオによる商業宣伝、賛成、反対の陣営のスポットCM、これは禁止されるなどの規制もあるようです。
 いずれにしても、このような各国の工夫を念頭に置きつつ、我が国でもマスコミの国民投票に関する報道は原則自由とし、その自主的な規制にゆだねる方向で検討すべきではないかと考えております。
 国民投票運動の規制に関してもう一つおもしろいと思ったのは、政府及び各政党の国民投票運動に関する規制及び助成のあり方でした。
 例えば、スペインでは、政府は国民投票において広報を通じて有権者の投票態度を誘導することが禁じられており、政府広報はあくまでも投票率を上げるための事務的なものに限定されているとのことでした。そして、政党が賛成、反対のキャンペーンを行う主体となるとのことであり、議会に議席のある政党に対しては、国営放送機関はその議席数に応じて国民投票運動のための無料の宣伝枠を提供しなければならないものとされているとのことでした。
 このような政府の中立性と、各政党主体の国民投票運動のシステムは、我が国でも大いに参考になるものと感じました。この意味では、昨年十月に発表された民主党の大綱素案の中で提案されています、国会に設置された国民投票委員会が賛否両方の意見を掲載した国民投票パンフレットを作成し、国民に対する周知、広報を行うというアイデアは、まさに真摯な検討に値する御提案ではないかと思っております。
 投票方法、投票用紙の様式について興味深く思ったのは、スペインでは賛成、反対のほかに白票という投票の仕方が認められているということでした。つまり、スペインでは、報告書二百七十八ページに記載されているような三種類の用紙のいずれか一枚を封筒に入れて投票するというのです。
 そこで私は、白票という投票を認める理由は何かという質問をしました。それに対する回答は、報告書二百二十八ページにあるのですが、政治憲法研究所のクロサ次長は投票率と関係があると。つまり、投票に行って白票を投じることにより投票率が上がるということは、白票を投じる者が投票に行かずに棄権する者と全く違い、ポジティブな一面を持つからであると述べられました。
 現在、与野党間では、投票の方法及び過半数の考え方の問題として、賛成がマル、反対がバツ、それ以外は無効票とした上で、有効投票総数の過半数がマルであるときに憲法改正は成立するとすべきか、それとも、積極的な賛成者のみをカウントするため、賛成がマルとのみ定めた上で、投票総数の過半数がマルであるときのみ憲法改正は成立とすべきかという議論がありますが、この白票に国民の意思をより明確に反映させるという趣旨と、スペインのように投票率を上げるという趣旨とを持たせることによって、両者の妥協を図るヒントにならないか、検討の余地があるように思った次第であります。
 以上、ポイントを絞って簡単に感想を述べてみましたが、最後に一言。
 中山団長の御報告にもありましたように、憲法改正国民投票を成功裏に導くためにとても大事なことは、まず国民に正確な情報をきちんと提供すること、すなわち憲法改正案の内容やその賛成、反対の趣旨を正確に国民に理解していただき、これに対して適切な判断をすることを可能にするシステムがぜひとも必要であること、その前提として議会内における各政党間のしっかりしたコンセンサスの形成が極めて重要であること、この二点が大事であると思います。
 現在、私どもが調査、立案中の憲法改正国民投票は、まさしくそのためのルールづくりの作業なのであります。したがって、憲法改正案本体の議論と同様に、与野党を超えた超党派による真摯な協議、合意に基づく各会派共同提案の議員立法として早急にこれを成立させることが必要であると考えております。
 委員各位の御協力をお願い申し上げまして、私の発言といたします。

発言情報

speech_id: 116404968X00220060223_002

発言者: 保岡興治

speaker_id: 16198

日付: 2006-02-23

院: 衆議院

会議名: 日本国憲法に関する調査特別委員会