愛知和男の発言 (日本国憲法に関する調査特別委員会)
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○愛知委員 自由民主党の愛知和男でございます。
本日議題となりました両法案につきまして、本委員会における実質審議入り、これはある意味でいうと歴史的な一ページということが言えると思いますが、そのトップバッターとして発言させていただく光栄に浴しましたことを感謝申し上げたいと思います。
まず、トップバッターの責務といたしまして、憲法改正国民投票法案に対する基本的なスタンスを委員各位とともに確認させていただきたいと思います。
先日の本会議の趣旨説明において与党案の筆頭提出者である我が党の保岡議員が言われたとおり、憲法制定権力の担い手である国民がその権利を行使する制度を早急に整備することは立法府としての責任であること、そして、改正手続に対する国民の主権を回復し真の国民主権を具体化することは国民の代表者としての使命であること、これが冒頭に確認しておきたい第一の点でございます。その意味では、今回提出されました両法案は、民主党案の筆頭提出者である枝野議員が、本会議における趣旨説明でも同じ趣旨のことを述べられたと理解をいたしております。
次に、この国家の基本ルールを定める憲法の改正にかかわる論議が、意見の異なる各会派の真摯な議論と協議の上に立って行われ、かつ、最終判断者である国民に対して正確な情報が提示される上でその判断がなされるようにすることが必要であります。そのためには、まず、その発議手続と国民投票の実施手続とが相互に体系性を持って構築されると同時に、その内容が公正かつ中立のものでなければなりません。すなわち、憲法改正国民投票法は、特定の改憲のためのルールでも、特定の護憲のためのルールでも、どちらでもあってはならない、これが第二の確認事項であります。
この点につきまして、特に共産党、社民党の人たちなどは、憲法改正国民投票法制は九条改憲のための条件づくりだというような発言を時々されることがありますが、私どもの前に提案されております与党案、民主党案いずれも、憲法改正の内容とは切り離された、改憲でも護憲でもない公正中立なルールに関する提案になっていると存じます。与党案、民主党案いずれの案も、憲法改正を容易にするためとか、あるいは難しくするためとか、そのような発想で立案されたものではないということは一目瞭然であると言ってもよろしいかと思います。同じ趣旨のことを枝野議員も本会議で言われていると理解をいたしております。
さて、以上の二点を確認した上で、以下、両案の相違点について若干の意見を申し上げたいと思います。
第一は、両案における国民投票の対象でございます。
私は、今回の法案はあくまでも日本国憲法九十六条の実施法として位置づけ、国民投票だけを対象とするのがいいのではないか、このように考えております。民主党案には一般の国民投票ということも含まれているわけでありますが、それを読んでみますと、その条文の基本的な構成は与党案と全く同じでございまして、まず憲法改正国民投票に関する条項を詳細に規定した上で、一般法であるはずの諮問的国民投票に関する規定は、この特例法であるはずの憲法改正国民投票制度に関する規定を準用するという仕組みになっております。民主党案の立案者においても、暗黙のうちに、本当は憲法改正国民投票法が基本で諮問的国民投票はそれの周辺的な事例なのだと考えておられるのではないかと思えてなりません。
そうであるならば、この諮問的国民投票に付される案件というものは、憲法改正に準ずるような場面、例えば、ある特定の事項について国会が憲法改正の発議に向けた作業に着手することの是非を問うようなケースに限定するのが筋ではないでしょうか。日本の民主主義を成熟させるという意味で、民主党のアイデアを真摯に受けとめるにやぶさかではございませんが、基本的にはこれらのことは憲法改正論議の中で行うべき事項であると考える次第でございます。
第二は、国民投票の投票権者の年齢要件でございます。
私は、十八歳以上でも構わないというふうに思いますが、しかし、国政投票と国民投票でこの年齢要件を違えるということはどうしても理解ができません。両者で年齢要件を異なるものとする理由をあえて探せば、人を選ぶ判断能力は二十歳以上になってからでないと身につかないけれども、国家の基本政策をみずから判断する能力は十八歳でも大丈夫だ、こういうことになってしまうのでありますが、こういう理由が本当に合理性があるかどうかということについては疑問を呈せざるを得ないのであります。
そう考えますと、年齢要件は、本委員会で論議すべき国民投票法制固有の問題ではなくて公選法の問題であり、また、民法その他の成人年齢一般の引き下げ問題に帰着すると考えるべきではないでしょうか。
第三は、投票方法の問題でございます。
与党案におきましては、本会議での質疑でも提出者からたびたび答弁があったとおり、他の選挙等における投票と同様に、国民の明確に表明された賛成または反対の意思をもって民意として理解しております。この立場からは、一般に、わからないとか賛否いずれでもないなどというような多様な意思が含まれていると思われる白票について、これを一律に反対の意思表示とみなすことは、民意を解釈するという許容範囲を超えて、民意をつくり出すことにもなりかねない危険を持っている方法ではないかと考えることになります。
他方、民主党案におきましては、国民投票において問われる民意は、提案されている憲法改正案に対して承認するかどうかだと考えているようです。つまり、投票者全体の中における積極的な改憲への同意を測定するということでありまして、わからない、どちらでもいいということは少なくとも積極的な現状変更の意思ではないというわけであります。
この民主党案の立論の一つの理由は、憲法九十六条が承認という文言を使っていることとされております。しかし、法令用語として承認というのは、提示されている原案にそれなりの合理性があることを前提にし、この原案を維持するか、それとも積極的に拒否するかという場面で用いられる例も少なくありません。つまり、憲法九十六条は、国民代表である国会の、しかも両議院において三分の二という特別多数で議決されたことの重みを基礎に、国民がこれを是とするかどうかということを承認するという用語で表現されているとも考えられます。
そういう意味ではなかなかこれは難しい問題だとも思いますけれども、今後の論議の中で両者が折り合えるようないい知恵を出す必要がある論点であろうと思います。
最後に、先般の本会議での趣旨説明、質疑において、与党案の提出者からも民主党の提出者からも述べられておりましたけれども、本法律案はいわゆる対決法案では全くありません。それどころか、我が党の甘利議員がいみじくも言われたように、ほとんど違いがない、わずかに残っている違いも乗り越えられない違いとは思えないというものでございます。準憲法的法律として、できるだけ幅広い会派の合意の上で成立されるよう、あらゆる会派を含めた委員全員の積極的な参加によりましてよりよい法律をつくることができるように、各委員の御協力、御理解をお願い申し上げまして、私の発言にさせていただきます。
ありがとうございました。