郡和子の発言 (本会議)

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○郡和子君 民主党の郡和子でございます。
 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。(拍手)
 この国に民主主義はないのか、医療はだれのものなのか。
 昨日の厚生労働委員会での与党による強行採決は、国民を愚弄し、政治を私物化するものであります。二〇〇二年の健康保険法改正案のときには五十六時間の審議が行われましたが、しかし、今回はまだ三十四時間にすぎません。国民を代表して、断固抗議するものであります。(拍手)
 政府のこれまでの失政により、日本の医療は今壊滅の危機にさらされています。理想の医療、それは、国内のどこででも、いつでも、最善、最良の医療を無理のない金銭負担で、安心して受けられることです。医師を初めとする医療従事者と患者、患者家族との間で培われた確かな信頼関係の中で、平等、公平に受けられる医療、この日本が世界に誇るべき医療体制は、政府の失政により崩壊の一途をたどっております。
 医師は、訴訟や逮捕を恐れて防衛医療に走り、あるいは診療環境の悪化によって地域の基幹病院から逃げ出し、周産期医療、小児医療を担う医療機関は次々と閉鎖され、医療難民が続出しているのであります。健康格差は拡大し、保険証を返還する世帯は、二〇〇〇年度十万世帯が二〇〇五年には百三十万世帯に激増し、受診がおくれ病状が悪化、死亡した患者が多数出ていると報じられております。まさしく、政治が人の命を削っているのであります。そして、犠牲者はこれからもまだたくさん出てきましょう。まさに、「苛政は虎よりも猛し」でございます。
 何がこの医療崩壊を招いたのか。
 第一に、戦略なき臨床研修制度導入の影響です。若い医師たちは、堰を切ったかのように臨床経験を積める市中病院へと流出しました。そして、それまで研修を軽視していた大学医局も研修に人手を割かなければならなくなり、人手不足だと大騒ぎしております。そして、医師を大学へと引き揚げ、地域の基幹病院の診療がストップしたのです。医師不足に悩む病院では、残された医師に診療が集中し、過労死寸前の労働を強いられております。
 厚生労働省は、労働基準法違反の状態を放置したまま、医師確保対策と称して、将棋のこまのように医師を動かし、配置することしか考えていません。そして、医師不在の病院に残されたのは国民であります。総理、いつまで国民を欺き、医師を消耗品として扱い続けるのですか。
 医療の原点は、患者の権利を保障すること、そして、医師を初めとする医療従事者が誇りを持って働ける基本的な権利を保障することです。しかしながら、政府案は、この権利を保障する責務を放棄し、何一つ実効性のない政策を改革と偽って、ツケばかりを国民に押しつけております。強行採決という恥ずべき手段で押し通そうとしているこの最悪の医療改悪のシナリオは、今すぐ撤回すべきであります。(拍手)
 医療費の適正化とは何でしょうか。それは、科学的な根拠、すなわち、エビデンスのある治療にお金を払い、効果も安全性もわからない治療を制限し、コストを節約することです。
 しかし、政府案の前提となっている二〇二五年の医療費推計値五十六兆円、これに始まって、政府案は、何から何まで根拠のない数字を並べ立てています。これまでも厚生労働省は、制度見直しのたびに医療費の伸び率を不当に高く見積もってきました。このように、国民を恐喝するかのような数字をでっち上げ、適正化と言い張り、削減目標とした推計値との差額は、ことごとく国民の自己負担へと回されることになります。政府は、医療費適正化のための方策を全く考えず、国民に負担を押しつけるばかりではありませんか。
 超高齢社会を展望した新たな医療保険制度と称して、現役世代と別枠の保険制度を導入しようとしております。この新たな制度創設の真のねらいは、今後増大する高齢者の医療費を、その人口に占める割合に合わせて削減する口実を獲得することであります。少ない年金暮らしの弱いお年寄りからも保険料を天引きするなど、むち打つような方策まで用意されています。
 さらに、唐突に決定された療養病床の二十三万床削減は、入院している患者を、地域における受け皿も十分に整わないうちにほうり出す通告です。行き場のない介護難民をつくろうとしている。これは、現在入院している患者を震え上がらせ、将来入院するかもしれないすべての国民に対して、老後に対する不安と危機感をあおる政策です。安心して医療が受けられず、さらに、体が弱ったときに身を置く場所もない。これでは、この国の未来に展望は開けません。国民は落ちついて仕事ができない。これによる社会不安は、必ずや経済不安を呼び起こすことでしょう。
 介護保険法の改正で導入された介護療養病床も朝令暮改で消えることとなり、新聞報道によれば、自民党は、介護保険の自己負担を一割から二割に引き上げるという策略を練っているそうではありませんか。
 政府案のすべてが砂上の楼閣であることを浮き彫りにしたのが、メタボリックシンドロームを柱とする生活習慣病対策の虚構性であります。
 日本の八つの学会が、WHOやアメリカで提案されたメタボリックシンドロームの診断基準を、日本向けにアレンジしたものをつくりました。しかし、その後間もなく、アメリカとヨーロッパの権威ある学会が、メタボリックシンドロームは診断基準として確立しておらず、批判的に吟味すべきであるとする共同声明を発表しました。厚生労働省は、この事実を知っていながらあえて無視し、検討会に提出して検討することすら避けたのです。私は、これを知ったときに、あの薬害エイズ事件で、海外の重要な情報を厚生労働省と医学の権威が握りつぶしたという記憶がまざまざとよみがえり、怒りで打ち震えました。
 地方公聴会で聞いた医師不足に苦しむ地域の方々の声は、翌日のメタボリックシンドロームの異様とも言える新聞報道でかき消されたのです。そして、ちまたにあふれる製薬会社のパンフレットにはメタボリックシンドロームの文字が躍り、いたずらに健康不安をあおり立てています。
 生活習慣病で医療費は抑制できない、これは医療経済学者の常識となっているところです。厚生労働省は、事実をねじ曲げて国民から医療費をまき上げる。まさしく医療詐欺社会であります。(拍手)
 医療費抑制と過剰な事務作業を医療機関に課せば医療が崩壊することは、イギリスの例を見ても明らかです。政府の医療法改正案は、良質な医療を提供すると称し、医師不足にあえぐ医療機関に、無意味でエビデンスのない書類を山のように書かせる難行苦行を強いるもので、劣悪な医療へと拍車をかけるだけであります。

発言情報

speech_id: 116405254X03120060518_014

発言者: 郡和子

speaker_id: 26173

日付: 2006-05-18

院: 衆議院

会議名: 本会議