岡田直樹の発言 (憲法調査会)

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○岡田直樹君 自由民主党の岡田直樹でございます。
 前回表明されました国民投票法制に関する各党の御意見を踏まえながら、論点を絞って私の意見を申し上げたいと思います。
 第一に、国民投票法制を早期に制定することの必要性であります。前回も、国民投票法制は急ぐべきではない、あるいはつくるべきではないと、こういう御意見もございましたが、私はもはやこれ以上先延ばしすることは許されないというふうに考えております。
 近代憲法には様々な国民の権利が規定をされておりますが、そのうち最も根本的なものは、主権者である国民自らが憲法を定め、あるいは改める権利であると思います。これを憲法制定権力なんと言うと非常に難しいので、簡単に憲法を作る権利と呼びたいと思います。あるいは国の形を決める権利と言ってもよいかもしれません。しかし、日本国民は歴史上いまだ一度もこの権利を行使したことはないし、また行使したくても行使できなかったのであります。
 戦前の日本では国民に憲法を作る権利はありませんでした。御承知のとおり、帝国憲法を起草したのは伊藤博文始め明治の元老や官僚でありました。帝国憲法は当時主権者であった天皇から国民に対して下しおかれたものなのであります。また、帝国憲法七十三条には憲法改正の規定もありましたが、それは勅命によって発議をされ、帝国議会が議決をするものでありました。国民は直接関与できませんでした。そして、戦後、日本国憲法の制定は、形式上この帝国憲法七十三条による改正でありますが、実際にはアメリカの意思と力によるものであったことは周知の事実であります。
 戦後、この日本国憲法九十六条において初めて憲法改正の最終の決定は国民投票によるものとされました。そして、新たに主権者となった国民が初めて憲法を作る権利を手にしたわけであります。
 ところが、せっかく国民投票の規定がありながら、この六十年間国民投票のルールである手続法が制定されませんでした。これは事実上、国民から憲法を作る権利を奪ってきたことになり、国民主権の大切な一部分が侵害されてきたと言っても過言ではないと思います。
 先輩各位に対して大変失礼でありますが、国会はこれまで憲法九十六条をないがしろにしてきたと言わざるを得ないように思います。立法不作為による憲法違反と言えるかどうかは分かりません。しかし、国会は怠慢のそしりを免れないと思います。どうせ六十年も放置してきたのだからもうしばらくはいいだろうと、こういうふうなわけにはまいらないと思います。
 以上、憲法改正の是非を論ずることとは別に、手続法たる国民投票法制を早急に整備し、国民が本来持っているはずの憲法を作る権利を実際に行使できるようにしなければならないということをまず申し上げたいと思います。
 第二に、国民投票法制を憲法改正の国民投票に絞るか、あるいはそのほかの国政の重要問題も対象とする一般的国民投票をも同時に導入するかという論点がございます。私は、この二つの国民投票は次元を異にするものでありまして、二段構えで進める必要があると考えております。
 地方自治はある程度直接民主制を取り入れておりますが、これと異なって、日本の国政は原則として代議制、そして間接民主制であります。このことは、憲法前文に「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」とあるとおりでございまして、また国会を国の唯一の立法機関としていることもその表れであると思います。
 その中で、しかし、憲法は一つだけ大きな例外を設けました。それが先ほどから申し上げております九十六条でありまして、憲法を定めるあるいは改めるという国の根幹にかかわる意思決定は、最終的に国民自ら行うべきものとしたのであります。その裏を返せば、それ以外は原則として間接民主制を取る、これが日本国憲法の原則だと思います。
 ちなみに、少し余談になりますけれども、去年の総選挙で、小泉総理はほとんど一つのことしか言いませんでした。郵政民営化であります。私は、当時、総理の全国遊説の前座を務めておりましたので覚えておりますが、総理の演説の九〇%は郵政民営化是か非か、これだけでありました。そして、総理は決まり文句のようにこう言っておられた。国会が郵政民営化にノーと言ったんです、だから私は衆議院を解散して郵政民営化イエスかノーか、このことを国民の皆さんに直接お聞きをしたいと思って解散をしたんだと、こういうことを繰り返し言っておりました。結果は自民党の勝利になり、郵政民営化が実現しましたけれども、こうした単一のテーマを定めた国民投票的総選挙、こうしたものが本当に良いのかどうか、私にもはっきり分からないのであります。そして、皆様にも賛否両論あることと思います。
 また、一歩進んで、国会や国民が発議する形で、国政の重要問題について一般的国民投票を行うことも検討に値するとは思います。しかし、幾ら拘束力を持たない諮問的な国民投票といっても、その結果は国会の判断に大きな影響を及ぼすでしょう。したがって、一般的国民投票の導入は、国会を国の唯一の立法機関とする日本国憲法の原則を実質的に変更するものでありまして、法律の制定だけでは足りない問題、それ自体が憲法改正を必要とする問題ではないかと考えます。
 繰り返し申しますが、私は一般的国民投票を一概に否定するものではありません。前回、簗瀬先生は、直接民主主義の二十一世紀的な発動の姿、こういうふうにおっしゃいました。このことに共鳴するところもあるんですけれども、しかし、二つの国民投票を一挙に導入するというのは少し無理があるのではないかな、こう思うものであります。
 手順を踏んで、まず憲法改正国民投票法制を整備し、しかる後に一般的国民投票を書き込む憲法改正の是非について問うのが筋道と考えるものであります。そのほか、投票権者は何歳以上にするとか、あるいは投票運動やメディアの規制をどうするとか、投票の方式は一括がよいか個別がよいかとか、何をもって過半数とするかとか、いろいろ詰めなければならない論点はたくさんあると思いますが、これらは、党派を超えて大いに論議することによって十分に公正中立な法制をつくることができると、こう確信をいたしております。
 最後に、私は今の日本国憲法はおおむね良い憲法であると思っております。国民主権、基本的人権、平和主義、こうした人類普遍の理念というものをしっかり受け継いでいかねばならないと思います。
 しかし、人間がつくるものに完全無欠なものはございません。そして、制定から六十年を経て、時代に合わなくなった部分も見られるわけであります。こうした部分を改め、自らが生きる時代に即したより良き憲法を作る権利が国民にあるということを再確認したいと思います。そして、憲法九十六条の本旨に基づき、速やかに国民投票法制を整備することこそ、国会が長年果たさずにきた責任であり、私たちはもはやこの責任を回避することはできないんだと、こういうふうに申し上げまして、私の意見の表明を終わりたいと存じます。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 岡田直樹

speaker_id: 6015

日付: 2006-04-26

院: 参議院

会議名: 憲法調査会