龍井葉二の発言 (厚生労働委員会)

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○参考人(龍井葉二君) 御紹介いただきました連合の龍井でございます。
 今、私、検討分科会の委員の末席を汚しているんですが、実は就任一か月で、この議論には私個人は直接参加しておりません。そういう意味では少し場違いなことを申し上げるかもしれませんが、お許しいただきたいと思います。
 それで、本当は職場実態に即して今日お話をしたかったんですが、昨日の議論を伺っていてかなり素朴な疑問を幾つか感じましたので、今日はその話をさせていただこうと思います。
 お手元に「なくそう!男女差別」、リーフレットが配られておりまして、そこに私どもの趣旨は書かれておりまして、一ページ目の一番最後のところに私どもの改正要求ということで、仕事と生活の調和の明記、それから間接差別は例示列挙とすること、ポジティブアクションの義務化ということを中心に今回お願いをしているところです。
 素朴な疑問と申し上げましたのは、今お二方からありましたように、均等法二十年、この法律がどういう社会をつくろうとしていたのか、あるいはしているのか、あるいはその均等とか平等とかというときにどういう姿をイメージしているのかということをもう一度私は考えなくちゃいけないと思っています。
 法律には、男性と均等の機会、男性との差別的取扱いの禁止というふうになっているわけです。つまり、男性基準ですよ。今の働き方をあるいは処遇を基準にして、それに合わせていく、差を改善していく。もちろん八五年均等法制定時も、いや、そうじゃないよという議論はあったんですが、結果的にはやっぱり男性基準になっているんじゃないか。
 それで、その男性正社員基準というのは、もうこれはここで詳しく言うまでもなく、残業は恒常的だし、単身赴任も当たり前だし、有休も取らないで、育児、介護でも休まない。いわゆる家族的責任というのはほとんどもう消極的だというのが男性正社員基準。これは実はほとんど二十年たってこの基準は変わっていないわけです。
 この資料で三ページ目なんですが、右上に、昨日も紹介していただいていた図だったと思いますけれども、この十年間、この十年間というのは、要するに改正均等法後の十年です。何が起きているかというと、要するに働き方が二極化していると。短時間が増え、長時間が増え、三十五時間から六十時間が、これ絶対数で減っているわけです。
 御承知のように、九七年以降というのは、正社員がそこからずっと減り始める重要な画期に当たっています。ということは、結局、ここで主要には、短時間の方が女性が多い、長時間の方が男性が多いんですけれども、結果的に、今申し上げた話でいうと、この男性正社員基準に合わせられる女性と合わせられない女性というふうに、女性の中で働き方が二極化していく。さっき多様化っていう話があったんですが、私どもは多様化とは言っていません。なぜかというと、ここに、吹き出しに書いてありますように、長時間が当たり前で、長時間が嫌だったら非正規、パートしかないよ。二者択一のカード持たされてどっち選ぶのと言われたら、それで選んだ方は、じゃ自由な選択かと。それは冗談じゃないと。普通の働き方という選択肢を出してもらって選ぶんだったら、それは選択ですよ。でも、今はこれ二つしか選択肢がないような、これ今のハローワークもそうです。派遣でも恐らく残業を前提に今なり始めていますよ。そういう中で、女性自身が二極化していく。更に複雑なことに、この男性の中でも今の男性正社員基準に付いていけないという男性も増え始めている。いずれにしろ、そういうごちゃごちゃっとした形で二極化が進んでいる。これを、こういう働き方をこの元々の均等法は目指したのか、あるいは九七年の改正法は目指していた姿なんですかということを一番お聞きしたいわけです。
 別の角度で言います。今度、双方禁止規定になりました。ここでよく考えていただきたいのは、今までは男性基準だったから何が基準かということはそう問わずに済んでいたんですよ、男性に合わせればいいんだなと。今度は双方禁止基準です。そうすると、例えばこっちが長時間正社員、長時間労働パターンの男性社員、こっちはパート中心の女性。これ、双方差別禁止規定、じゃどっちに合わせるんですか、この二者択一のどっちに合わせることが均等の姿なんですか。いや、この問題の立て方が実は間違っているわけですよね。いや、それは両方直して普通の働き方にしなくちゃいけないはずなんじゃないですか。だけど、双方は、差別禁止の基準は何かということが実は余り議論されていないわけですよ。だから、今までだったら男性に合わせればいいと言っていたことがそうじゃない事態になっているときに、じゃどっちに合わせるのかと。その議論が実は一番大事なわけです。つまり、働き方の基準、あるいは均等とか平等とかいう物差し、それが何なのかということが今一番問われている。
 私どもが今回、仕事と生活の調和を入れるべきだと言っているのは、実は一般理念として正しいから入れてくれと言っているんじゃないです。そういう働き方の新しい基準、男性基準じゃもう通用しないわけですから、じゃ何に合わせるの、じゃ何を根拠に平等をつくるのといったときに、男女がともに仕事も生活も可能になる働き方に持っていくのが今求められている均等法の課題なんでしょうということを言いたいわけです。
 ですから、そういう意味で、これは厚労省に聞いてももう同じ答えしか返ってきていないんですけれども、働き方そのものの問題なんだということを、あるいは均等法そのものの問題なんだということを是非御認識いただきたいと思います。
 それと関連して、正規、非正規の問題が昨日も盛んに議論されていました。この二ページ目のチャートに、右側に、男性、女性という箱が結局均等法の後、総合職、一般職、あるいは正社員、パートというふうに名を変え、形を変えて生きていますよって指摘しています。ただ、これ別の言い方をすると、かつての男性、女性、特に八五年均等法前の男性、女性というのは、すべてと申し上げません、多くの女性が結局は非正規扱いだったわけですよ。つまり、それは一人前じゃないと。ですから、もう教育訓練もしないし、お茶くみで、それで花嫁修業で結婚退職でという扱いの女性が、名前は正社員だけれども、結局は半人前扱いだったわけです。
 それが結局、男女差別禁止ということで、元々そうあった正規、非正規というのが今度そういう形で露骨に顕在化したというふうにもこの問題はとらえられるわけなんで、したがって問題は、じゃ何でこの半人前のところに女性が集中する、女性だけがそうなっていくのか。これは結局、これはもうずっと議論されてきているように、古典的な性役割に基づいた分業関係、つまり、男性一人前、女性半人前という、正にその基準で今のこの分化が起きているという意味では、正にこの正規、非正規の問題というのはこのチャートに、これはこれで正しいわけですけれども、男女差別が名を変えたというよりは男女差別そのものだということだというふうに私どもは理解しています。もしもその問題にこの今の均等法が切り込めない、あるいは切り込まないとしたら、一体何のための法律なのというのが本当に素朴な感想として昨日持ちました。
 三つ目は、一番大きな間接差別の問題です。
 私どもやっぱり労働組合としても深刻な反省に立たなくちゃいけないと思っています。なぜかというと、もうこの国会の附帯決議で九七年に間接差別、提起されているんですよ。それで、この国連女性差別撤廃委員会の勧告の中でも、二〇〇三年の段階から既に間接差別の意味と範囲について意識啓発ためのキャンペーンをすべきだと。ここには、恐縮ですが国会議員というのも具体的に指摘されています。
 じゃ、一体今まで何を我々やってきたんだろうかと。何か今初めて議論がスタートしたようなふうな印象をお持ちかもしれませんけど、これは国際社会から見ても、あるいは九七年以前から見えない差別と闘ってきた、あるいはその問題で苦しんできた現場の人から見たら、一体何なのと。この我々自身の、言ってみれば、ちょっと口幅ったい言い方ですけれどもその怠慢さを棚に上げて、今ここでしか合意できませんから、果たしてそういうことが通用するんでしょうかという意味で、私はこの問題は、正に見えにくいからこそそれをこじ開けようというふうにしていろんな知恵で作られたこの間接差別法理、これをどれだけ実効あるものにするかというのが一番大事なことだと思っています。
 簡単に申し上げますけれども、労働側委員は分科会の中で主に三点言ってまいりました。つまり、間接差別というのは中身というのは時代状況や雇用関係でどんどん変わっていくし、そもそもこれがこれに限るということは言えないものでしょうというそもそも論。
 それから二つ目は、結局、何だかんだいろいろ説明はされても、対外的に見てこの三つがという限定がされればそれ以外は間接差別に当たらないということが、結果的にですよ、その意図がどうあろうと結果的にそれは労使関係の中あるいは企業の皆さんの中でも、そしてあるいは場合によったら裁判の中でもそういうことになっていくんじゃないですか。昨日の答弁では、例えば民法九十条に基づく裁判を排除するもんじゃない、ありました。いや、それはそうでしょう。私どもが聞いているのは、それがそういうふうに限定されちゃうおそれがありますねということについては、いやその心配はありませんということは残念ながら今まで一度も伺っていません。
 三点目、これを更に拡大するとおっしゃっていました。じゃ、これいつどうやって拡大するの、何に基づいて拡大するの、判例に基づいて、じゃ判例はどんな判例が出るの、何もないまま私どもはそう言われても見通しが立ちません。
 そういう、大きく言うとその三点からこれは大変問題だと。この問題は、残念ながら昨日の一連の討議を伺っていてもこの疑問は解明されておりません。したがって、私どもはここに書いていますように、本当にこれが実効あるものとなるためには例示列挙しかないんだという主張は、昨日の討議を伺った上でも言わざるを得ないと思っております。
 もう一点は、ポジティブアクションの問題です。これも私どもの修正要求の柱として掲げさせていただいておりますけれども、当然これは前向きな努力、試みを促していくということは、それは必ずしも義務化になじまないのかもしれません。しかし、結局十年たってみてどこまで進んだのかと。しかもこれは、分科会の議論の中では当然経営側の皆さんも、特に間接差別問題に言及をされていて、間接差別の問題があるのはそのとおりだと、だけどそれは別に法制、法律でやるよりはポジティブアクションでやるべきでしょうという前向きの御発言もいただいています。
 また一方で、そうはいってもコストが大変だという議論もございます。いや、それは別にコストの問題、これは幾らでも解決ができる方法が多分あるわけなんで、私どもはそれは、今回の次世代じゃございませんけれども、そんなしょっちゅうしょっちゅう報告求めるわけじゃなくて、きちんと適宜求めていくやり方だってあるし、中小企業に負担の掛からない法律の進め方もありますし、とにかく私どもはこの国会の議論の中で一歩でも前向きに進めていくことが全体を引っ張っていくんだということをどうやって、諸外国の多くの例がありますように、いずれそれはやっぱり義務化していくんだという見通しの中でお互いに努力し合っていくということを是非道筋を付けていただきたいと思っております。
 いずれにしましても、この均等法、八五年生まれる段階から、やっぱり労側と言うよりはむしろ本当に職場で一人一人苦しんでおられる方がもう本当に勇気を奮って争議にあるいは裁判に立ち上がる、そしてそれを国際世論がバックアップする、そしてしかもそれで行政の方々も御尽力いただくと、そういう長い長い積み重ねの中で一歩ずつこれが来たと思います。
 ただ、今私が冒頭に申し上げたような、その十年の結果が本当にそう望むようになっているかというと、とてもそうは言えない面があるんじゃないか。是非その辺の今までの積み重ねを無にしない、もう少しそれが期待と展望が見えるような改正の姿に今回していただきたいということで、私の意見表明にしたいと思います。
 ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 116414260X01620060426_006

発言者: 龍井葉二

speaker_id: 31756

日付: 2006-04-26

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会