坂元一哉の発言 (国際問題に関する調査会)
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○参考人(坂元一哉君) 大阪大学の坂元でございます。
本日は、お招きくださりありがとうございます。今後の日米同盟の在り方につきまして、最近考えておりますことを少しお話しさせていただきたく思います。
かつて、国際政治学者高坂正堯は、日本外交のあるべき姿を、アメリカとは仲良く、中国とはけんかせずという言葉で表現いたしました。教授が亡くなってから今年で十年になります。私は、教授が今存命であれば、現在の日本外交をどのように評価されるか、そのことをよく考えます。
この正月、くしくも朝日新聞と産経新聞という、リベラルと保守の世論を代表する二つの新聞が高坂教授の別の言葉をそれぞれ引用して論説を展開いたしました。教授の言葉を思考の手掛かりにしたいと考えるのは私だけではなさそうです。
私は、今挙げた教授の言葉をもじって申しますと、ここしばらくの日本外交は、アメリカとは更に仲良く、中国とはなるべくけんかせずと、そういう姿勢になるんだろうと考えております。以下は、アメリカとは更に仲良くという部分について、一つの提案のようなものとお考えください。
現在の日本の安全と繁栄がアメリカ合衆国との良好な関係に基礎を置くことは改めて言うまでもありません。では、その良好な日米関係が何に基づくかと申しますと、これは両国の間で、政治、経済、文化、様々なレベルで様々なこれを支える要素がございます。しかし、その中で何より重要なものはといえば、やはり安全保障、互いが互いの安全保障に協力するという約束ほど両国を強く結び付けるものはないと思います。日米安保条約、日米同盟は、その意味で安全保障そのものの機能、すなわち東アジアの勢力バランスを日本に有利にして日本の平和と安全に貢献するという機能だけではなくて、日米両国を強く結び付けるかすがいのような機能も果たしていると考えます。
ただ、このかすがいという機能から日米同盟を見ました場合に、この同盟には一つ弱点がございます。それは、大分変わってきたとは申しましても、依然としてこの同盟が、基地を貸して安全保障を得る、そのことを基本とするものであり、互いに互いを守るという通常の意味での同盟関係の側面が弱いことです。
基地を貸して安全保障を得るという形、基地と安全保障の交換と言ってもよろしいでしょうが、この形の安保協力は日米それぞれに大きな利益がございます。ございますから長続きしてきたわけでありますけれども、残念ながら、ややもすると互いに感情の摩擦を生じさせやすいところがございます。
と申しますのも、基地を貸す方は、借りる方が基地の負担と危険を十分に理解していないではないかと疑い、逆に基地を借りて軍隊を置く方は、自国の若者に命のリスクまで負わせて抑止力を提供しているのに評価されない、こういう不満を抱く、しばしばそういうことになりやすいからです。例えば、今回の米軍再編の問題、これは米軍再編と日米同盟をすり合わせる問題と言った方が正確ですけれども、この問題でもその摩擦が出てきたように思います。
日本における基地の整理統合に関しては、抑止と負担のバランスということで進められたわけです。それは当然のことだと思います。ただ、抑止というのは目に見えにくく、負担というのは目に付きやすい。ですから、この二つのバランスと申しましても、どうしても負担をどう減らすかということがクローズアップされて、そうなりますと、今度は米軍の方が、あっ、何なんだと、おれたちはただの負担かと、こうなって面白くないということになります。
誤解のないように繰り返しておきますが、私は抑止と負担のバランスはとても大事だと思います。ただ、同盟が基地を貸して安全保障を得るというだけに限定されたままですと、そのバランスを図る作業が双方に不満をもたらしやすいと、そう心配するわけです。お互い安全保障上の必要があるから同盟を結んでいるけれども、基地と安全保障の交換だけですと、どうも互いに心が通わない。せっかくのかすがいが、かすがいの機能を果たさなくなってしまう、むしろ摩擦の種になる、そのことをどうしたら避けられるか、それを考えるのです。
私は、これまでずっと、日米同盟を強化するには、基地を貸して安全保障を得るという形だけではなくて、互いに互いを守るという形を強化する必要があると言ってきました。それは、冷戦が終わって国際環境が大きく変わったと、それに日本も過去半世紀の間、自衛力の育成に努め、それなりの能力を持つようになっている、そういう状況からくるところもございます。ですが、それと同時に、そもそも基地を貸して安全保障を得る、その形で同盟のきずなが強いものになるだろうか、日米両国関係のかすがいとしての機能をしっかり果たせるだろうか、そういう基本的な問題を意識するからであります。私は、互いに互いを守るという形の協力を強化すれば、抑止と負担のバランスということも今より気持ち良くお互い図ることができるのではないか、そう考えております。
そういう観点から今度の米軍再編を見ますと、私の目には、一昨年来、世間の注目を集めております重要な論点、すなわち沖縄普天間基地を始め日本国内の米軍基地の整理統合、米陸軍第一軍団司令部の座間基地移転、弾道ミサイル防衛協力体制の整備、こういった論点ですが、それらの論点以外に特に注目すべき、少なくとも長期的には注目すべき論点があるように映ります。それは西太平洋マリアナ諸島最南端に浮かぶ米国領の島グアムが日米同盟の将来に果たす役割です。
グアムは、皆様御存じのように、日本から飛行機で三時間ほどで行ける常夏の島で、毎年多くの、何十万もの日本人が観光に出掛けておりますが、実はこの島は、米国が米軍再編において、日本、イギリス、そしてインド洋のディエゴガルシアと並んで世界大の米軍即応展開を支える戦略展開拠点の一つと位置付ける島でもあります。
ラムズフェルド国防長官は、いったん米軍展開の必要性が生ずれば、世界のどこへも所要の戦力を十日以内に展開し、敵を三十日以内に撃破し、その後三十日以内に次の場所での戦闘が可能になるようにする、そういう体制をつくることを理想として米軍再編を推し進めています。その米軍の迅速な展開能力を支える前進指揮司令所あるいは兵たん補給拠点の一つに挙げられるのがグアムでして、グアムにあります広大なアンダーセン空軍基地、原子力潜水艦の基地であり、空母も接岸できるアプラ軍港などの施設が今後これまで以上の戦略的意味を持つようになると思われます。
ちなみに、レジュメに書きましたように、米軍再編につきましては、軍事評論家江畑謙介さんの「米軍再編」という御本を参考にしてお話をしております。
昨年十月に日米両政府がまとめました米軍再編と日米同盟に関する中間報告では、そのグアムの日米同盟における役割が明らかになっております。まず、沖縄駐留の第三海兵機動展開部隊司令部がグアムに移転します。これにより、沖縄からは七千名の海兵隊隊員及びその家族が県外に移転することになります。これはアメリカ政府が沖縄の基地負担軽減策の目玉として示した提案です。沖縄県も歓迎していると聞いています。
この中間報告ではまたグアムにおける日米共同訓練の強化がうたわれています。これはアメリカがグアムの訓練施設を拡張するのに合わせた措置だと言います。
これのどこが注目に値するかと申しますと、前者につきましては、一つにはこの島への司令部移転につきまして日本側から資金的援助の約束をしております。で、これをどういう建前で資金を出すのかと、それはこれから政治的に一つの争点になるのではないでしょうか。しかし、そのことより私が注目しますのは、この移転した海兵隊のその後の使い方について、日本は何ができるだろうかということです。
抑止と負担のバランスと言いますが、グアムに海兵隊司令部が移転して基地負担が減った分、抑止力維持のための日米間の仕事の分担はどう変化するのだろうかという問いでございます。私は、米国側にはこの移転した海兵隊が日米同盟の目的に即して移動をする場合には、日本側から輸送、整備、補給などの後方支援協力を得られるとの期待があると思います。今すぐにということではなくても、将来的にそういうことができるようになるならば、これは日米が互いに互いを守るという形の協力を増やすことになると思います。
後者、すなわちグアムにおける日米共同訓練の強化は、自衛隊と米軍の相互運用性、能力、即応性の向上に貢献します。既に陸上自衛隊と航空自衛隊が共同訓練を行い、成果を上げていますが、特に航空自衛隊は、広い訓練空域を使って、日本ではやりにくい電子戦の訓練ができますし、電子戦の訓練ができますし、米軍との真剣な訓練で戦技の向上にも役立つそうです。昨年初めて実弾を使った空対地射爆訓練を行ったとも聞いております。こうした訓練は、自衛隊と米軍が協力して日米同盟の有事対応能力を高め、東アジアの軍事バランスを日米両国に有利なまま維持するのに大いに役立ちます。
今、経済だけでなく軍事的にも台頭しつつある中国は、このグアムの戦略的価値をよく知っております。台湾海峡有事を考慮して、台湾の東方からグアム方面への海域調査にも余念がありません。一昨年の中国潜水艦による日本領海侵犯事件は、グアム周辺への偵察から帰還する途中で起きた事件だと言われています。
そのことにも関連いたしますが、防衛大学校の太田文雄氏は、推測と断りながらも、中国が東京都の沖ノ鳥島をあくまで岩だと主張して日本の排他的経済水域を認めないのは、この島がグアムと台湾のちょうど中間点にあると、その戦略的価値を考慮してのことではないかと興味深い指摘を行っておられます。将来、中国の潜水艦隊が更に増強されていくということになれば、グアムと台湾に近い沖縄、グアムと沖縄の間のシーレーン防衛が日米同盟の重要な関心事にならざるを得ないと考えます。
報道によれば先週、米国防総省は、安全保障政策の指針となる四年ごとの国防戦略見直し、QDRを公表しました。この中で、台頭する中国については、これを米国と軍事的に競い合える最も大きな潜在力を持つ国と指摘し、将来的にライバルになる可能性があるとの警戒感を鮮明にしています。その上で、太平洋には、空母を五隻から六隻に増強、七十隻保有する潜水艦の六割も太平洋に向けるなど、大西洋からの戦力シフトを打ち出しています。これは注意すべき動きだと思います。
私は、日米同盟の強化、発展を望んでいます。ただ、同盟の強化、発展と申しますと、大概は、まず米国側に強化、発展の構想が生まれて、次に米国のイニシアチブで提案ないし要求があり、そしてその後、日本はそれにどう対応するかを考える、時にはその考えることで国内が大もめになると、そういう話になりがちです。私は、たまにはこちらから積極的にアイデアを出せないものかと思います。
例えば、このグアムに関してはどうでしょう。そのことを考えますと、半世紀前の歴史的エピソードが思い出されます。一九五五年、時の外相重光葵は、吉田茂が締結した安保条約、つまり旧安保条約ですが、その改定を目指して私案、私の案という形ですけれども、米国政府に対し、西太平洋を条約区域とする相互防衛条約を提案しています。訪米した重光は、安保条約には米国の日本防衛義務が明示されていない、旧安保条約はそういうものでございましたが、明示されていないなど不平等なところがあると訴えて、ダレス国務長官に条約改定を迫りました。しかし、ダレス長官は、重光外相の話を聞いた後一言、グアムが攻撃されたら日本はグアムを守りに来ることができるのかと反論したのです。西太平洋の相互防衛と言うのなら、当然、日本は西太平洋の米国領グアムが攻撃されたら助けに来てくれるのでしょうねという反論です。ダレスは、日本は憲法上も実力上もグアム防衛には貢献できないと決め付けていたのです。重光は、もしグアムが攻撃されたら日米で対応を協議すると食い下がったのですが、ダレスは、これは協議の問題ではなくて相互防衛の問題であると、つまり互いに互いを守ることが問題なんだとして、重光の提案を拒絶しました。
旧安保条約は、その五年後に岸信介首相の下で改定されました。しかし、新しい条約は、わずかに、日本国の施政の下にある領域、つまり日本、沖縄返還まではこの日本に沖縄は含んでおりませんが、日本において日米いずれか一方が武力攻撃を受けたら日米は共通の危険に対処する、その意味でのみ相互防衛を約束するものでした。つまり、日本と在日米軍を日米が共同で守るということを約束するだけで、あとは基地を貸して安全保障を得る旧条約の基本を変えるものではありませんでした。しかも、この新条約でうたった日本と在日米軍を日米が共同で守るという約束でさえ、その共同防衛にちゃんとした実質が伴うのは大分後年になってからのことです。
冷戦中は、ソ連との全面戦争が前提でしたから、対ソ封じ込めの重要な基地である日本を守ることは米国の安全にも死活的な利益になりました。ですから、日本とアメリカが共同で日本を守る、それだけでも双方に大きな意味がありました。しかし、冷戦後はそうはいきません。地域紛争やテロとの戦いで相互性を求めようとするならば、日本国の施政の下にある領域を超えた場所での防衛協力が必要になります。
一九九七年、日米両国は新しい日米防衛協力のための指針、ガイドラインを制定しました。この中で、日本周辺で有事が発生したときには、公海上、これは戦闘が行われている区域とは一線を画するという条件付ですが、公海上で米軍に対して後方支援、後方地域支援を行うことができることになりました。二〇〇一年のテロ特措法では、インド洋での洋上補給協力、二〇〇三年のイラク特措法ではサマワでの人道復興支援を行い、現在も続けているわけです。
様々な評価がございますが、これらは皆、冷戦後に自衛隊と米軍の安保協力の幅を広げて、日米同盟を基地を貸して安全保障を得るというだけの関係から脱却させようとする努力の表れと見ることができます。もちろんその努力は、日本にできる範囲でできる限りの協力をするというものでありまして、例えばイギリスの協力の仕方とは違うし、ドイツの協力の仕方とも違います。しかし、現在、日米同盟関係が過去最高の状態にあると言われるその大きな理由が、こうした日本内の努力を米国政府が高く評価していることにあるのは間違いございません。
私は、中間報告に盛り込まれたグアムの役割を見て、日米同盟に新しい地平が開けると思っています。この島が、基地負担の軽減にしろ、訓練基地としての利用にしろ、日米同盟の強化に今後大事な役割を果たしていくのは間違いないでしょう。だとすれば、あとは、基地を貸して安全保障を得るというだけの関係から脱却する、その努力の延長線上でこの島に関して日本は何ができるのかを考えることになろうかと思います。
一つは、日米同盟といいますと、安保条約上、日本がアメリカに基地を貸すわけでありますが、私は、貸すばっかりでは面白くないところもありますので、突拍子もない話かもしれませんが、何か協定を結んでグアムに訓練目的の基地を借りたらどうだろうかと思っております。まあそれが現実には難しいとしましても、そのくらいの気持ちでグアムの基地施設を訓練に使わせてもらえばよいのではないかと考えます。そういうことなら、先ほど触れました海兵隊のグアム移転にかかわる資金援助の話も、早く出ていってほしいからお金を出すという後ろ向きの理由ではなくて、訓練施設の事実上の、言葉はあれですけれども、利用料のようなものとみなせるのではないでしょうか。
もう一つは、日米で協力してグアムと沖縄の間の公海上のシーレーン、この安全のためのシーレーン防衛を行うことです。これは事実上、グアムの共同防衛につながります。それができれば、半世紀前、日本が日米同盟を互いに互いを守る同盟に変えようとした、その際の障害を取り除くことになります。もちろん、日本は今のところ、正面切ってグアムの防衛に協力するとは言えないでしょう。というのも、政府が、同盟の理論的基盤である集団的自衛権について、持っているが行使できないという不思議な憲法解釈を取り続けているからです。
近年、この政府の憲法解釈への批判が高まっていて、少なくとも限定的には集団的自衛権の行使を認めるべきだという議論が強まりつつあります。実際のところ、万一、日本が武力攻撃を受けた場合における日米の共同防衛も、新ガイドラインにおける後方地域支援も、またテロ特措法に基づく洋上補給も、すべて限定的な集団的自衛権の行使として説明した方が無理がないのであります。
それでも、この不思議な憲法解釈の変更は簡単ではなさそうです。解釈の変更ではなく、憲法改正が必要だとの意見もあります。この院の中にも様々なお考えがあるかと存じます。集団的自衛権の行使に対する慎重論の背景には、いったん集団的自衛権の行使が認められると、日本の軍事活動はどこまでも広がり、戦前の二の舞になるのではないかという不安があるようです。しかし私は、この不安は世界と日本の現実を考えれば杞憂にすぎないと思います。思いますが、それでもやはりそういう不安を国民が抱かないで済むように工夫する必要はあるでしょう。
集団的自衛権の行使に関して、私自身は、一昨年、二〇〇四年の二月十八日、参議院の憲法調査会で参考人として陳述を行っております。詳しくはその記録をごらんいただければよいかと思いますが、私の基本的な考えは今の憲法でも集団的自衛権は行使できるというもので、その解釈に基づいて地理を限定した範囲で集団的自衛権を行使するための法律を制定する、この法律が歯止めになるわけですけれども、さらにその法律の範囲内でも武力行使そのものには慎重な政策を取ると、そういう前提で、日本の領土、領海、領空、そして公海とその上空、そこにおいて集団的自衛権の行使ができればよいと考えております。
日米同盟は、海洋国家同士の同盟ですから、これだけでも互いに互いを守るという色彩が随分と濃くなるはずです。もちろん、沖縄とグアムの間の公海上のシーレーン共同防衛も堂々と行うことができます。実際に戦争にならないようにする抑止力が問題ですから、日本の行動を誤解されないように、堂々と行うというのは大事なことかと思います。
さて、以上のように、私は、米国との良好な関係が大切で、日米同盟は互いに互いを守るという方向で更に強化しなければならない、そのためにグアムがこれから大事なポイントになる、集団的自衛権は限定的でもよいから行使できるようになるべきだと申し上げました。こう申し上げますと、本日私とともに意見を述べられる岡崎大使からは大体において御同意をいただけると確信しております。
しかし、私のような考えには、日米関係は大事だけれども、余り大事にすると、これまでの対米追随を継続するだけで日本外交の自主性はいつまでも回復できないではないか、日本外交の地平は狭いままではないか、横暴なアメリカに従うしかないのは悲しいといった批判が出てくるかと思います。これらの批判は戦後ずっと存在してきた批判であります。戦後の日米関係とともに還暦を迎えた批判と言ってもよいわけです。それだけ古くから続いてきた批判ですから、それに対する優れた反批判も歴史が長いわけでございます。
本日は一言だけ申し上げます。
日米同盟の在り方に対するこの手の批判は、力の強い者への自然の反発に裏打ちされております。そして私は、やや皮肉な物言いですが、そういう反発の背景にある日本人の気概をむしろ頼もしく思います。それがなければ日本の将来は暗いかもしれません。反発する気概は自尊心から生じるものです。そして、国民が自尊心を失えば国家の独立は危うくなります。独立自尊の大切さはつとに福沢諭吉が説いたところでございます。私は、日米同盟が日本人の気概と自尊心をどのように取り込んで活力を増していくか、それが今後も日米同盟、日米関係の最重要の課題だと考えています。グアムの事実上の共同防衛で互いに互いを守るという要素を増やしたらどうだと、米国側に言われる前にこちらからアイデアを持ち掛けたらどうだという考えも、結局はそういう課題を意識してのことでございます。
ただ、力の強い者への反発ということに関して付け加えますと、アメリカの力が幾ら強大だと申しましても、それにはやはり限界がございます。
イラク戦争前に、アメリカの一極支配ということがしきりに言われました。なるほどアメリカは政治、軍事、経済その他において他を寄せ付けない力を持っております。だから世界をリードするのですが、これを見て、これからの世界はアメリカが何でも勝手に決めることになるのではないか、そういう世界になったら困るし危険だという言説がはやりました。今でもかなり根強くあるかもしれません。ですが、イラク戦争で分かったことは、アメリカは世界でだれにも負けない軍事力を持っていて、戦争になったら無敵だけれども、イラク復興の困難、中東政策全体のつまずき、そして同盟国、友好国への支援要請、これらに見られますように、何でもかんでも自分一人で自分の思うとおりにできるわけでもありません。
アメリカは無敵ですが、決して全能ではないのです。アメリカは世界の多くの問題に関与するため、その力が分散されます。ですから、ますます同盟国、友好国の協力が必要ですし、アメリカの力すべてが他の一国の力と対峙するわけではありません。米国の力を議論するときには、そのことも忘れてはならないと思います。
いずれにしろ、我々は、無敵だが全能ではない国と仲良くしております。そこに私は、日本外交にとっての大いなる安心とチャンスを見いだすのであります。
御清聴ありがとうございました。