岡崎久彦の発言 (国際問題に関する調査会)

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○参考人(岡崎久彦君) いただいております時間が三十分でございますんで、三十分、まあこれだけの方がおそろいでございますから、やっぱり一番大事なことだけ申し上げたいと思います。それは、やはり今後、日本の政策をどうするかということでございます。
 アジアで日本が孤立しているというんでございますけれども、これは構造的な孤立なんですね。日本は日米同盟だけができるように、これはもうありとあらゆる国会答弁でもってできるようになっているんです。ところが、それ以外の国とが何もできないようになっているんです。これはもうこの構造を変えない限り日本の孤立というものは避けられないですね。もうアジアだけじゃなくて、これ世界的に孤立ですけれどもね。
 要するに、世界の国というのは、どの国でも一番心配なのは国民の安全、あとは経済の繁栄ですけどね。国民の安全にとって日本という国は、これ何の役にも立たないです。これが日本の体制上そういうふうになっている。ですから、これ孤立するというのは自ら選んで孤立しているんですね。それを例をもって申し上げたいと思います。
 私は、八八年から九二年までタイの大使をしておりました。それで、八四年というのは、これ中国が南沙群島まで進出してきた初めての年でございますね。
 中国というのは非常にこれは大きな国で、ゆっくりとゆっくりと動くんでございますけれども、四九年に国をつくりまして、それからすぐ朝鮮半島と。それから、五九年になりましてやっとチベット制圧ですね。それから、主に国内建設に集中しておりまして、外国に出てきたのは、西沙群島でさえもたしか七五年か六年です。それで、南沙群島まで出てきましたのが一九八八年、これが私がタイに赴任した年でございます。
 それで、そのときに、時のタイの総理大臣はチャチャイという総理大臣です。で、日本の防衛庁長官が公式訪問をしておりました。それで、チャチャイ総理大臣が日本の防衛庁長官に言ったことは、どうも中国が南シナ海に出てきてうるさくてしようがないと、これから日本海軍とタイの海軍が南シナ海で共同演習しようじゃないかと、そうやって自衛をしておけば中国も出てこられないと。それを公式に申しました。
 これに対して、これはもうその場で私は、この問題若干知っていたものですから、知恵を付けまして、共同演習はできないけれども訓練ならいいと。そんな話してもお分かりにならないと思いますけれども、共同演習ですと集団的自衛権の行使になるんです、共同訓練ならばならないんです。そういうことになっていると。そんなことを言っても、実際やることはほとんど同じですから。そんなことを言ってもお分かりにならないと思いますけど、それが一応、国会答弁みたいな形でもって返事をしておきましたけれども。もう訓練だろうと演習だろうと、日本は絶対その話に乗れませんと。
 その時期に、もし日本の海上自衛隊を出して共同訓練をしようと、ましてそれが中国の南方進出に対して抑えになろうと、これはもう全然問題にならないです。これはもう軍国主義者というか、右翼、軍国主義者、好戦主義者と言われて、これもう全然問題にならないと。それを伝えるだけでも私は危険感じたぐらいですね。もちろん伝えました。公式の電報で伝えていますけれども、これ何の反応もないですね。これは反応しようがないです。ちょっとでも反応したら批判されますから。そういう日本は国だった。今でもそうかもしれないですね。
 それで、その後タイは、非公式ですけれども、非公式というか裏からですけれども、同じことを言ってきております。これも日本は全く何の反応もしません。で、タイは幾ら言っても日本は反応しないと、そういう状況がちょっと続いている。そうしますと、タイという国はこれは外交の天才ですから、第二次大戦でもってこっちに付いたりあっちに付いたり上手に立ち回って独立を守った、そういう外交の天才ですから、ああ、これは日本は何の役にも立たないなと、これはよく分かります。それから後は中国を許容する政策ですね、中国の政策になびく政策。それから後は大体中国の政策の言うとおりになっているというのがタイの外交でございます。特に、最近のタクシンは非常に親中国です。これは、特にタクシンがそうでありますけれども、それに至る過程でも、もうとにかく日本は何の頼りにもならないと、だんだんだんだんとそちらに流れていったというのが事実でございます。
 日本が過去二十年間ぐらいの間にもうどれだけのチャンスをミスしているかということですね、集団的自衛権行使の問題ですね。それは本当に数え切れないです。
 冷戦が一番ひどかったのは一九八〇年、八〇年代ですね。ソ連がカムラン湾を一大海軍軍事基地にしまして、そこにソ連の艦艇をどんどん送り込むと。そこに来た艦艇が、今度は日本海まで来てウラジオストクに来ると。これ、その中にはミンスクという航空母艦もあると。そういう状況がございました。
 当時もまた、中近東はもう、今もそうですけど、いつもごたごたしておりまして、七九年のシャーの革命がありまして、八〇年にはイラン・イラク戦争と、それで非常に航海の危険もあった。それで、アメリカの第七艦隊がパトロールをするんですね、マラッカ海峡からインド洋を通って。これがもう大変なつらい任務なんですね。これはもう鉄板の、甲板の上でこれ外を見ているわけですから、甲板の上は夏はもう日中四、五十度になると。それで、夜になって下に入っても冷房利きませんから、これすぐ四十度ぐらいになるんですね。船に大体冷房が入ったのは今のイージス艦が初めてですから。今のイージス艦も、あれはコンピューターを守るための冷房で、乗員のための冷房じゃありませんから。
 で、あのころはまだイージス艦がない時代。そのつらさは今度の海上自衛隊が行って初めて分かっていますよね。ところが、それを第七艦隊がやっている。それで、まあ二、三か月ごとの交代でしょうけれども、非常につらい任務をしている。そうすると、通る船、通る船が全部日本のタンカーだという。それで、一体どうして日本の海上自衛隊は一緒にパトロールしてくれないんだと。これは、水兵辺り、もう相当の上のレベルからもそういう声が非常に強かったんです。
 ただ、まあペンタゴンの一番上の人間だけはそれは分かっていますよ。日本に集団的自衛権というものがあって、行使を禁止というものがあって、そこに行けないんだということが、それが分かっている人が百人いないでしょうね。でも、百人はいます。それはペンタゴンの日本関係者ですね。これ分かったら大変なことですよ。
 つまり、これはアーミテージが時々言っていますけれども、日本海で日本の護衛艦とアメリカの駆逐艦が一緒に並んで走っていると。で、日本の護衛艦がやられそうになったらアメリカがすぐ助けに来る。アメリカの方がやられても、日本はこれ助けに行けない。そんなばかな話があるかと。これが分かっているのはペンタゴンでも百人ぐらいでしょうね。これがもしアメリカ国民全部が知ったら、それは本当に怒りますよ。こんな同盟があるかと言って。それがまあ集団的自衛権だ。しかし、水兵なんかは分かりませんからね。非常なその不満を持って勤務している。
 ところが、日本はこれできないんです。どうしてかというと、日本の海上自衛隊が、これはまあできると言ったって出しませんけれどもね、もう当時の雰囲気では。もう怖くて出しませんけれども、理論的には出せた。出しても日本の船しか守れない。アメリカの船やインドネシアの船は守っちゃいけないんです、集団的自衛権の行使になるから。
 しかも、もっと変な話は、日本の船なるものがないんです。日本の持ち船で、船長も日本人ですけれども、船籍はほとんどリベリア船かパナマ船籍なんですね。これは便宜船籍です。そうしますと、日本の海上自衛隊がパナマ船籍、リベリア船籍の船を守ることはどうかというと、これは集団的自衛権の行使に当たるんですね、法制局の解釈で。守っちゃいけないんです。
 もうそんな話って、皆さん、どうしてそういうくだらない議論をするんだとおっしゃるでしょうけれども、もうそれは今までの国会答弁の積み重ねでそうなっているんですね。そうすると、行ったって守るものがないんですね。だから、どうせ、また、守るものがあったって、その当時の雰囲気じゃ行かせないですけれどもね。
 で、もしあのときに日本が海上自衛隊を出していたらどうなったかと。そのときはもう東南アジアはもろ手を挙げて賛成です、日本が来てくれたということで。先ほどの、タイの総理大臣の発言から見ても分かるとおりです。
 それから、当時は中国さえも賛成です。中国は、八〇年代の初めというのはソ連の脅威、これがもう何より第一。日本は、日本に、あのころなら、日本が同盟できる国であったら中国とさえ同盟できたんだ。日本にGNPの二%を使えと言ったのもそのころです。それで、私は防衛庁おりましたけれども、中国のいろんな軍の代表団が日本に来たいんですね。で、日本に来ると言わないんで、メキシコへ行った帰りに寄るとか、そういう口実でもってしょっちゅう来て、来て、日本の防衛庁の幹部に会いたいと。そういう時代もあったんです。しかも、カムラン湾にソ連が大海軍持ってますから、中国自身のシーレーンが脅かされている。で、中国も大賛成です、そのときもし日本が出ていれば。
 それで、もし日本の海上自衛隊が出ておりますと、それは海上自衛隊というのは規律は正しいし、能率はいいし、それから、ほかの国の水兵というのは悪いことばっかりしますけれども、規律厳正ですからね。だから、東南アジアの国では、それはもう絶対に評判いいはずなんだ。それで、すべてをきちんとやって、しかも、それで日本の軍隊というのはもう一度東南アジアを攻めに来るような軍隊でないということは、みんなもうよく分かります。で、もし、あのときに派兵、派兵というか、パトロールしていれば、日本という国の東南アジアにおける地歩というのは確立していたはずなんだ。
 日本は、戦後半世紀、もう大変なお金と技術援助、好意、ありとあらゆるものをみんな東南アジアに注ぎ込んできた。にもかかわらず、例えばFTAなんというのは、今はやっていますけれども、初めに中国がFTAを言い出した。中国のFTAなんというのは何にも内容はないはずなんだ。それでも中国が言ったら、ああ、じゃそうしましょうと。こういう中国の言うことをやっぱり聞かざるを得ないと。それはどうしてかというと、日本は安全保障にとっては全くのゼロなんですね。日本と仲良くするということがその国の安全にとって何の意味もない、全くゼロなんだ。
 それは、もっと端的な話申し上げますと、これは実はちょっと、リストを自分でチェックしてないんですが、人から聞いた話ですけれども、今度の日本の常任理事国入りですね。あれは各国がスポンサーを付けて決議案を出すと。例えば、ドイツの常任理事国入りはフランスとベルギーなんかがちゃんとスポンサーになった。それから、インドに、インドがもちろんセイロン、スリランカですね、スリランカとかネパールなんかがそれを支持している。それから、ブラジルも周りの国が支持している。ところが、日本はアジアの国が一つも支持してないですよ。それで、近い国といえばキリバス。キリバスというのは南太平洋の島ですよね。その辺りは共同提案国になっているんだ。アジアと名の付く国が一つも入ってないんだ。
 インドネシア、タイなんというのは、日本が戦後どれだけの善意とお金をつぎ込んで、日本の金城湯池であるべきなんだ。やっぱり中国が怖いんです。その意味で日本は、これは全く孤立しているんですね。それはどうしてかというと、もうたった一つですよ。集団的自衛権というのが行使できないからだけです。
 つい、つい二、三日前も何かいろんな話をしていましたら、日本はアジアで孤立していると言ったけれども、じゃ、インドと同盟したらどうだと、そういうような話があって、そのアイデアは別に悪くはないんですけれども、同盟って何するのということですよ。何の役にも立たない国と同盟するということは、意味成さないですよね。インド洋のパトロールをインドと一緒にやれるという話ならば、それならもうすぐにでも乗れる話なんだ。ですから、民主党の前原さんがマラッカ海峡、インド洋のパトロールぐらい一緒にやったらどうだと言うのは非常な正解だと思います。
 これを今やろうとすれば、これは中国は反対でしょうね。それで、東南アジアは内心黙ってます。内心は日本に来てほしいんだ、だけど黙ってます。だけれども、これを日本がアメリカと一緒になって強行すれば、これまた反対できない、だれも反対できない。これを実施すれば、今からでも遅くないです、日本は東南アジアにおける自分の力を回復できます。過去二十年、三十年間、日本がどれだけのチャンスをミスしているか。これは全部、集団的自衛権行使の問題です。これはもう国民に対して恐るべき損害を与えているんですね。
 それで、集団的自衛権そのものの話は皆さんもよく御存じと思いますけれども、もう一度復習しますと、集団的自衛権は日本はあるんです。これはむしろ憲法上あるんですね。というのは、憲法を作って、それから後に国連加盟、日米安保条約、サンフランシスコ平和条約、これ全部結んでおりますけれども、その中にそれぞれ項目があって、日本は集団的及び個別的自衛権を有すると書いてある。しかも、憲法には条約遵守義務が書いてある。ということは、日本は集団的自衛権を持っています。
 これは、ただ私の解釈じゃなしに、これ、大体憲法の有権解釈権というのは裁判所が持っているんだ。裁判所が、いろいろ判決出しておりますけれども、憲法九条は日本固有の自衛権を否定するものでないと。固有の自衛権を否定するものでないというのが今のところ裁判所の有権解釈です。
 固有とは何かということなんですけれども、これは、英語というのは変な言葉でもって、何かよく分からないんです。英語の、日本の固有の自衛権というのは国連憲章の固有の自衛権取っているんですけれども、国連憲章は五十一条に、各国は固有の集団的及び個別的自衛権を有すると書いてある。英語はインヒアラントって、インヒアラントっていうのは、これはもう何というか、初めからあるというような意味ですね。これでは意味は成さないんですけれども。
 これは、フランス語が、国連憲章というのはフランス語の正文なんですね。フランス語の正文によりますと、これは、ドロア・ナチュレール・ドゥ・ディファンス・レジティームですか。だから、正当防衛の自然権となっておる。インヒアラントということは自然権なんですね。つまり、いろんな憲法とかありとあらゆる法律がある、その前からある権利が自然権なんです。人間が眠る権利とか、食事をしたりする権利、息を吸う権利とかですね、息を吸ったら炭酸ガスを吐く権利とかですね、これは、いかなる憲法といえどもこれは否定できないですからね、否定したって意味がないですからね。だから、そういうのは自然権ですよね。
 だから、集団的自衛権というのは自然権としてあるんですね。憲法上の文面上ある上に憲法解釈上もある。それを、これは本当にもう何とも言いようがないんですけれども、権利はあるけれども行使は許されないという判断をずっと続けてきているわけですね。
 これはもう皆さん、特に自民党の皆さんはもう私の意見に完全に御賛成だろうと思いますから今更言うこともありませんけれども、どうしてこういうむちゃくちゃなことを言っているのか本当に分からないですね。まあ、私、これは多分、東大法学部がいけないんだろうと思うんですよね。これは要するに、東大法学部というのは六法全書の勉強ばっかりしていますから、あるテキストの解釈しかできない。その前の法哲学になると、みんな何だか分からないんですね。常識の、一般庶民の常識からいえば、権利があるということは行使できるということなんですよ。権利があって行使できないといったら、ただばかだって言って、ばかだって言ってしまえばそれで済む話なんです。それを、権利があるけれども行使が、憲法上行使が許されないって、そういうことを一生懸命書いて何か形を作っているというのは、これは本当に日本の法学教育の誤りですね。
 そんなことを言ったら、世の中に取引というものは成立しないですよ。物を買って、私は物を、お金を払うと。そうすると領収書くれますよね。領収書をもらったんだからその商品よこせと言うと、相手が、確かにあなたは領収書を持っていると、だからあなたはこの物品を受け取る権利があると、だけどその権利を行使することは許されないと。これ取引成立しないですよ、人間社会の。そういう訳の分からぬことをこれだけ長い間、これちょっと本当に、それで、それがただその言葉だけの上ならいいですけれども、先ほど申し上げました日本の外交、それから日本の国民の繁栄にとってどれだけの害を及ぼしているかですね、この過去二十年間ですね。
 という意味で、これは、私はもう一言だけ一番大事なことを申し上げるといえば、集団的自衛権行使の解釈を変えるとも言わないですね、そもそも権利があって行使できないというのは解釈じゃないですから、ばかを言っているだけですから、だからもうばかなことは言わないということでもって、これはいろんなことがもう、いろんなことが解決します。そこで、それができればということで、結局、この日本の外交の展望というのが、展望というものは開けてくるわけですね。
 そこで、今後のアジアの情勢でございますけれども、これは中国の軍事力というのはやはりこれ相当な脅威です。これ、今はまだ脅威ではないとも言えるんですけれども、軍事問題というのは長期的に考えなきゃいけない。
 具体的に申しますと、東シナ海の平和はどうやって保たれているかと。それは日本の海空軍兵力が圧倒的強いんです。それで、しかも日本が専守防衛であって平和主義の姿勢を取っていると。今度、中国が政策は極めてアグレッシブです。これはもう勝手にどんどん海底のガスを掘ったり、それから艦船が自由に出没したり、これはもうあたかも中国が大海軍を背後に持っているかのごとく傍若無人にやっている。だけども、力がない。結局、力のない国が、アグレッシブな国は力を持たない、日本のように力を持っている国が平和主義、専守防衛である、これならバランスが取れるわけです。それで東シナ海というものの平和が保たれている。
 これが崩れますと、例えば力が五分五分になってくるとこれはどういうことが起こるか、ちょっと。例えば大陸棚の理論によりますと、もう中国の大陸棚というのは沖縄の近海まで延びていますから、そこまでの地下資源というものはこれ中国が勝手に何をやってもいいんだということもできるわけで、今の中国のビヘービアからいえば、力がなくてもあれだけのことをしている。まあこれは日本が力を使わないということを見越した上でのことでありますけれども、あれをやるんですから、これ力のバランスが崩れてきますとこれ相当な難しい状況になってくる。
 それで、過去、これいろんな統計がございますけれども、結局、過去、日本もアメリカも共通して言っておりますことは、過去十数年間中国の軍事費というものが毎年二けた増えていると、一年を除いて。一年といったって、たしか九%ぐらいですから、実質上そうですね、二けた成長。これ、十年間の二けた成長というのはかなり恐るべき、十数年というのはかなり恐るべきことなんです。まあ、元の大きさがどうかということがありますでしょうね。元の大きさは、これはアメリカの国防省、国防省の推定、それからロンドンの戦略研究所の推定、これもう大体一致しておりまして、公表の数字の二、三倍であろうと。日本の予算が今は大体五兆円として、七兆円ぐらいだろうと言っておりますね。それが毎年十何%ずつ増えていると。
 しかも、特に急に増え出したのが一九九七年からですね。九七年から、それまではこれ中国のインフレを差し引くと、本当に二けたになるのが九七年からです。ただ、まあインフレということが中国の物価というか武器調達の費用にどれだけ反映されているか、これはまた全然別の議論があり得るんですけれども、取りあえずはインフレというものを差し引けば、九七年から先はもう完全に二けた成長、十数%増えている。
 しかも、その九七年に陸軍を五十万人削減しているんですね。つまり、人件費を減らして、しかも全体の額を増やしている。これは近代化ですね。これは兵力を近代化する場合の常套手段です、全くの。例えば一九二五年の日本の宇垣軍縮、四個師団削減したときも、あれ一次大戦でもってヨーロッパの兵器がうんと進歩して日本が後れてしまったものですから近代化しなきゃいかぬと、そのために四個師団削減したんで、これはまあ近代化の常套手段です。ですからそれを、それを始めたのが九七年とすると、もうそろそろ十年近くなる。これは相当な力になっている、なってくるんですね。そうすると、極東のバランスというものがいつか崩れてくる。
 それからもう一つは、どうもこの膨大なお金、これ正直申しまして、それだけのお金を使っていれば東アジアのバランスを崩すことはできたはずなんです。それをまだやっていないんですね。それは一体何をやっているかというと、恐らくはこれ推測で、私の推測でございますけれども、アメリカの推測も同じでしょう、心の中では。それから、平松さんとか、そういう専門家の推測も同じでございますけれども、やっぱりICBMですね、大陸間弾道弾に相当な金を使っている。これは、要するに冷戦時代の米ソ間の恐怖の均衡、それと同じようなものを作ろうとしている。それも、それも十分想定できます。ということで、極東の軍事バランスというものがだんだん悪くなってくる。
 そこで、最後の結論に参りますけれども、例えば朝鮮半島、台湾海峡、これについての軍事バランス、これは国際的ないろんな書類がございますけれども、見ますと、日本の軍事力というのは特に近代的な非核の海空軍力に関しては世界第二位と言って差し支えないんです。アメリカの次です。イギリスより強いですから。この力が朝鮮半島、台湾海峡の軍事バランスの中でゼロに計算されているんですね。これは非常に不思議な不思議な状況なんです。
 台湾海峡なら中国の攻撃能力と台湾の防衛能力と第七艦隊の来援能力、それを足してこちらの方が強い、こちらの方が弱いと、いつになったら追い付くと、そういう議論になってくるんですね。これが、日本が集団的自衛権を行使できると決まった途端に、これは別に行使できるってことで、するとは全然限らないんですけれども、理論的に行使できると決まった途端に、日本の戦力を全部そこに計算しなきゃいかぬ。そうしますと、東アジアの戦略環境というのは一変します、もう非常に安定します。恐らく二十年、三十年単位で東アジアの戦略環境というのは安定して、非常にこれ、平和で安定した地域になります。
 それが平和で安定してない限りは、中国は、いつかは日米の間を裂けるかもしれない、あるいは日本を脅かして日本の兵力あるいは基地を使えないようにさせられるかもしれない、その期待を持って外交を行いますから、いつまでたっても問題が起きると。ところが、日米同盟の力というものは、これは一体であるということになりますと、戦略環境というのは一遍で安定します。もう二、三十年間平和で安心していいような状況になります。これまた集団的自衛権の行使の問題です。
 そこで、最後に、これ日米同盟というものは日本にとって非常に大事なものなんですけれども、だから、これはもう日米同盟さえ維持していりゃ大体、我々まあこういういい生活していますけれども、この生活を我々の子供や孫の代まで大体保証できます。これ、同盟切って保証しろったって私は全然そんな自信ありませんけれども、この同盟さえあれば今我々がやっているこういう生活、それは維持できます。これは日本としては得なんです。
 だから、アメリカにとって得かどうかという問題があるんですね。アメリカにとって得なように日米同盟をつくっていかなきゃならない。それは、これはもうアーミテージが何度も言っていることでありますけれども、日米同盟を米英同盟と同じようにする。つまり、アメリカは一応覇権国なんですけれども、アメリカ大陸にこもっていると。それで、旧大陸にはドイツとかフランスとかロシアとか中国とか、もう一筋縄でいかない国がたくさんある。これを扱うには、東に大西洋を挟んでイギリス、西に太平洋を挟んで日本と、これが極めて信頼できる同盟国ならば、これはアメリカの国際国家戦略というのは非常に楽になるんです。むしろこれが理想型になるんです。ですから、日米同盟がアメリカにとって理想型になると、そういうふうに外交を持っていけば、これ日米同盟万全です。そうしますと、我々日本国民の、これ我々全部です、これもう左翼の方も全部含めて日本人全部の安全と繁栄、これは二十年、三十年、守れると思います。
 以上でございます。

発言情報

speech_id: 116414308X00120060208_013

発言者: 岡崎久彦

speaker_id: 3639

日付: 2006-02-08

院: 参議院

会議名: 国際問題に関する調査会