蔦谷栄一の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(蔦谷栄一君) 農林中金総合研究所の蔦谷でございます。
 私は、経営安定対策と併せて、農地・水・環境保全向上対策、これも含めて意見を述べさせていただきたいというふうに思っております。
 お手元にレジュメのような形で資料をお配りをしておりますけれども、結論的には、一九九九年に制定をされました新しい農業基本法、食料、農業、農村ということで、新たな方向付けをしたという意味で大変評価をしているわけでございますけれども、それに沿った形で価格政策から所得政策への転換が行われる、あるいは本格的な環境政策、こういったものが導入されるという意味では大変私は評価をしたいというふうに思っているわけであります。ただ、二番目に書いてございますように、かなり運用のレベルで問題がやはりあるのではないかということでありまして、この問題をどういうふうにクリアをしていくのかというのが最大の課題ではないかと。
 私が今日、特に申し上げたいと思いますのは、やはり基本的にその新しい基本法で方向付けができたとはいえ、なかなか日本農業の基本的なイメージが非常にばらばらではないんだろうかと。一方で非常に、構造改革といいますか大面積、コスト低減と、こういうことを一方でやりながら、一方では環境に優しい農業と、こういったものをどういうふうに調和をさせ、日本的な農業を形成をしていくのかと。そういった一つの共通したイメージみたいな、もっと言えばグランドデザインみたいなものを作って、それに向けて粛々といろんな政策を積み上げていく、あるいは今回の対策もそういった意味で運用もいろいろと改善をしていくと、こういうことが必要なのではないのかなというふうに思っております。
 まず初めに、経営安定対策について、若干危惧している点を幾つか申し上げたいと思います。
 やはり、面積で基準を作っているということから、とにもかくにも足切りが現実には発生をしてしまう。意図しているかどうかは別として、かなり担い手の絞り込みということが行われてしまうということであります。
 ここのところはいろいろ議論があるところでありますけれども、私は、基本的に特定の担い手に絞り込むということが、言ってみれば強靱な経営体といいますか、あるいはコストの低減をねらいとするということで言われているわけでありますけれども、むしろ実態としては、そういう部分は一部あろうかというふうには思うわけでありますけれども、現実には相当耕作放棄地なり遊休地が増加をしてくるというのが実態でありまして、こういった、農地を特定の担い手にある程度集積をしていくということが現実に求められてきているわけでありまして、そういった意味で、そういう農地の集積をバックアップする支援対策といいますか、そういう位置付けで理解することができないんだろうかと。
 これが今回の趣旨とどういうふうに関係するのかというのはあるわけでありますけれども、ある程度絞り込みをしながら農地の集積を図る、そういった農地の保全を念頭に置きながらということが大変重要ではないのかなというふうに思っております。
 もう一つの懸念が、やはり従来、集落ぐるみでやっていたその村社会でありますけれども、こういったこれまでの紐帯がこの措置によってばらばらになる可能性があるのではないかと、こういったことが大変懸念をされるわけでございます。
 もう一方、集落営農、その認定農業者に該当しない者については集落営農ということでありますけれども、順番として見ると、まず認定農業者ありきで、残った人たちで集落営農というのが、なかなか現実にその集落を維持していくためには、やはり両方あって初めて集落が成り立っていたわけでありますし、この認定農業者と集落営農のバランスといいますか、私は、基本的にはその地域営農といいますか、いろんな担い手が一緒になって地域計画を作っていく、そういうことがまず前提になってくるのではないのかなというふうに思っております。そういった意味でも、単純にまず認定農業者ありきと、で、残った人たちで集落営農と、これは一つの手法としてはそういう手法かもしれませんけれども、考え方としてはやはり地域の営農をどうしていくのかと、そこでの話合いが非常に重要なのではないのかなというふうに思っております。
 それから、農地・水・環境保全向上対策でございますけれども、いろいろ現場の声を集約をしてみますと、やはり一番出てきている声が、これまでの環境保全問題については有機農家がある意味では大変孤軍奮闘といいますか一匹オオカミ的な形で、日本の中でのその有機農業というのはなかなか認知をされてこなかったわけでございますけれども、そういった中でかなり努力を積み重ねてきたわけでございます。
 今回その共同作業に加えて、そういう環境に優しい対策を講じることによって政策支援の対象になるということでありますけれども、ここのところは非常にその地域とのこれまでの関係も含めて、あるいはもう一つは、有機農業あるいは環境保全型農業といっても非常にその手法といいますか、これまでの技術の体系というのはいろんなものがあるわけでありまして、そういった意味では地域ぐるみで取組がなかなか今やりづらいという、そういった現状もあるわけでございます。そういう、これまである意味ではリードをしてきた有機農家もこういった支援の対象になるような考え方といいますか、そういったことが運用の段階で盛り込むことができないだろうかと、こんなふうに考えているわけでございます。
 三番目のところでございますけれども、これからのその政策をちょっとお話しをしたいというふうに思います。
 私は、現地を聞いて大変痛感をするのは、やはり今回の措置は措置としていろんな弾力的な運用等々あったにしても、これからの日本農業はどうなるんだろうかと、先行き希望が持てるのかどうかという、ここに対する非常に不安が強いと思います。やはり、この不安を払拭するためには、一定の、もう一回、日本の農業とは一体何かという、こういった議論が本当に必要なのではないのかなというふうに思っております。
 時間の関係であれもこれもちょっと申し述べられませんけれども、基本的に私は今日強調させていただきたいと思っておりますのは、やはり農業が生命産業であるという、まあ工場の論理ではなかなか仕切れない不条理な、不合理な命というものを扱っている、あるいは農村の生産と生活が一体になっている、こういったものをやはり大事にしていくということが基本なのではないんだろうかということでございます。そういった意味では、経済合理性をより追求すると同時に、非経済的な価値、多面的機能を含めて、こういったものをより重視をしていく、バランスを取っていくということが大事なのではないのかなというふうに思います。
 それから、担い手の関係でございますけれども、やはりこれから人口減少の時代、あるいは真の豊かさは一体何かということが問われる時代になってきていると思うわけでありまして、そういった意味では、従来の高度経済成長期は農村から都市にいかに労働力を供給するかということだったわけでありますが、これからはむしろ、いろんな都市政策、生きにくさというものが募ってきているわけでありますけれども、そういった中でその農村の良さ、あるいは住みやすい農村をつくっていく、そういった都会から農村に対する人口の還流というものが必要なのではないかなというふうに思っております。
 そういった意味でも、どんどん高齢化が進む、あるいは荒廃が進んでくるわけでありまして、ただでさえ担い手というものがなかなか確保が難しい。それを選別をするということではなくて、むしろそういう担い手もできるだけ手厚く残す。新たな新規参入、そういったものを可能にするような措置というのがむしろ必要なんではないのかなというふうに思っております。
 それから、ここのところが非常に大事だというふうに思っておりますけれども、やはりアメリカ型の大規模、単作の農業というのは日本ではなかなか難しい、特に国際競争力を得るというのはほとんど不可能に近いのではないのかなというふうに思います。そういった意味では、日本の特徴を生かした農業というものが追求すべきではないのかなというふうに思っております。
 そういった意味では、ある程度の大規模化志向というのはあったにしても、基本は多品種少量生産、あるいは小規模も大事にしながらの農業ということになるのではないか。その中の大きい柱として、環境にも配慮した優しい農業ということになってくるのではないのかなというふうに思っております。こういった農業を、やはり専業農家、兼業農家あるいは自給的農家、定年帰農、そういったいろんな担い手が多様な形でかかわり合ってつくっていく、そういう農業というものがイメージされる必要があるのではないのかなというふうに思っております。
 特に、今回の措置、あるいはこれからの問題として重要だと思いますのは、やはりお年寄りが生きがいを持てるような、やはりそういう農業なり集落、あるいは女性が元気であってこそ農村というのは活気が出てくるのではないのかなというふうに思います。そういった意味で、特定の担い手に着目すると同時に、やはりお年寄りも住みやすい、生きがいを持てる、女性も元気が出るような、そういう農業、農村にしていく必要があるのではないのかなというふうに思っております。
 私は、地域社会農業という言葉、あえて地域農業に社会を加えておりますけれども、やはりこれからは農業に加えて地域文化、食文化、お祭り、いろんな多様な要素を農村持っているわけでありますけれども、こういったものを重視をしていく。あるいは、地産地消、消費者あるいは都会から交流をする方、そういった方々総体でつくっていく地域農業、地域社会農業、そういったものを一つのイメージとして立てていきたいなというふうに思っているわけでございます。
 そういった意味では、今回、価格政策から所得政策に移行するわけでございますけれども、こういった所得政策も含めて、あるいは環境保全対策も含めて、地域全体を見ての地域社会政策、そういった形でこれからいろいろと検討していく必要があるのではないのかなというふうに思っております。
 それから、環境関係でございますけれども、やはり今の非常に課題と思いますのは、これからの日本農業の環境に優しい、安全、安心、これをどこまでどういうふうに引っ張り上げていくのかという一つの目標なりステップ、こういったものを刻んでいく必要があるのではないのかなというふうに思っておりますけれども、残念ながら有機農業というものはなかなか今現実には認知をされていない状況になっているわけでございます。全体としては非常に、環境に優しい農業、環境保全型農業、これが大事だというふうに思いますけれども、これを、全体を含めてやはり一つの基本的な法律の中で、生産から表示、流通、いろんな形でのトータルの基本法的なものが必要なのではないのかなというふうに思っております。
 現状は、有機農業あり、GAPがあり、持続農業、エコファーマーがあり、IPMがありと非常に概念が混乱をしている、分かりにくい。そういうこともございますし、基本的にJAS法の中に有機農業も位置付けられているということでございまして、言ってみれば表示の世界に限定をされているということでありまして、むしろこれからの日本農業の在り方の中にきっちり位置付けて法的な対策も講じていくことが必要ではないのかなというふうに考えております。
 こういったことに向けて、取りあえず今必要とされる対応ということで最後にまとめさせていただきたいと思いますけれども、やはり基本的には、まず多様な担い手あるいは地域にふさわしい適地適作を基にした、やはりそういう地域営農計画、地域農業計画、これの策定を是非強力に進めていただきたいというふうに思います。補助金をもらうための集落営農だとか認定農業者と、そういうことではなくて、あくまで地域営農をどうしていくのか、地域農業をどうしていくのか、ここに本当に集落ぐるみあるいは消費者も含めて地域営農をどうしていくのかという、そこの岩盤をきっちりやった上で必要な担い手が支援を受けていくと、こういうのが筋道ではないのかなというふうに思います。
 それから二番目に、やはり要件がいろいろあるわけですけれども、北から南まで、あるいは多様な日本の自然条件というと、本当に盆地一つ隔てると相当状況が違うわけでございまして、そういった意味では極力可能な範囲で弾力的な措置をお願いをしたいというふうに思います。ある意味では、その地域事情を優先をした形で支払がなされればというふうに思っております。
 それから三番目でありますけれども、やはりこれからの日本農業の在り方といいますか展望といいますか、やはりこれを早く協議をしてほしいというふうに思います。いろんな食と農の再生プランなり、今回の新農政プラン等々出ておりますけれども、まだもう一つ、農家の実感として、これからの農村をどういうふうに持っていくのか、自分たちとのかかわり合いというのが非常にまだ希薄な部分が非常に多いのではないのかなというふうに思います。やはり今回の担い手問題、これだけ議論になっているわけでありますから、そういう担い手がどうやって地域を守っていくのか、そういったことが十分納得できるような、そういう計画、ビジョン、そういったものを早急に作っていくことが重要ではないのかなというふうに思います。
 以上です。

発言情報

speech_id: 116415007X01220060608_007

発言者: 蔦谷栄一

speaker_id: 24994

日付: 2006-06-08

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会