近藤基彦の発言 (日本国憲法に関する調査特別委員会)
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○近藤(基)委員 日本国憲法の改正手続に関する法律案等審査小委員会における審査の経過及びその概要について御報告申し上げます。
本小委員会は、去る十二日、会議を開き、参考人として、日本放送協会理事石村英二郎君、読売新聞東京本社論説副委員長上村武志君、毎日新聞論説委員近藤憲明君、産経新聞東京本社論説副委員長中静敬一郎君及び日本弁護士連合会副会長吉岡桂輔君をお呼びし、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案、特に国民投票運動規制・罰則並びにメディア規制・国民に対する周知広報について御意見を聴取した後、これらの参考人に加えて、日本弁護士連合会憲法委員会事務局長菅沼一王君にも御参加いただき、懇談を行いました。
会議における参考人の意見陳述の内容を本委員会全体で共有するために、その概要を簡潔に申し上げますと、
石村参考人からは、
まず、四月に出席した委員会において、放送のみを規制することには自主規制や第三者機関を設けたとしても表現の自由との関係から問題があると主張したが、この主張に沿って与党案、民主党案が報道を原則自由としたことは評価したい旨の発言がありました。
次いで、自主自律の立場から公平公正に的確な情報をわかりやすく放送し、放送法等に基づき視聴者の要望にこたえるというNHKの基本姿勢が示されました。
その上で、一般論としてメディアにおける意見広告は原則自由であるが放送される賛否の量が著しく偏らない仕組みが必要である、放送事業者の自主的、自律的な判断を前提としつつ投票直前の広告放送の禁止が適当かについてさらに議論が必要である、無料放送が認められるのが国会に議席を有する政党だけとするのが適当なのかさらに議論が必要である、無料放送の割当基準は賛否平等になるよう修正が検討されるべきである、広報協議会が国会に設置されることは理解できるが、報道の自由への配慮が必要であり広報協議会の構成や役割等については検討の余地がある、国民投票公報についてはさまざまな資料を多角的にわかりやすく掲載する必要があるとの意見が述べられました。
上村参考人からは、
まず、総論として、国民投票に当たっては幅広い自由闊達な論議が望ましいが、国の将来への責任、論議と投票の公正さのために必要な措置をとるべきである、メディアにおける意見広告を無制限に認めるかは新聞とテレビ、ラジオという放送媒体により異なるとの見解が述べられました。
その上で、投票日の七日前からの広告放送の制限に関して、投票直前に投票の意義を損なう過熱した広告がはんらんしてはならないと考えている、政党のみに無料広告を認めるのは妥当である、無料広告の割当基準として賛否平等も理解できないわけではないが議席数案分にも理由があるのではないか、発議の段階である程度民意はあらわれており単純な平等と公正はイコールではない、広報協議会を国会に設置することや委員を所属議員数の比率にすることは妥当であるとの意見が述べられました。
近藤参考人からは、
まず、総論として、メディア規制は憲法で保障する報道の自由に反するものであり、あらゆる規制に対して基本的に反対する、憲法改正の賛否を問う国民投票は、主権者である国民が公正に判断するために自由な憲法論議を保障するような制度設計をすべきである、広告も表現の一形態であり、自由な意見表明、情報流通を阻害する規制には基本的に反対するとの見解が述べられました。
その上で、メディアにおける意見広告を無制限に認めることの是非については基本的に規制すべきでない、投票日の七日前からの広告放送の制限については反対である、政党のみに無料広告を認めることの是非については基本的に政党以外の団体にも無料広告を認めることが望ましい、無料広告の割当基準については公平性の見地から賛否平等になるようにすべきである、広報協議会を国会に設置することの是非については、仮に国会に置かれるとしても最低限外部からの有識者委員を入れるべきであり、その構成については賛否の意見が平等に割り当てられるよう委員を選任すべきである、国民投票公報の内容については賛否平等とわかりやすさが原則であるとの意見が述べられました。
中静参考人からは、
民主主義と自由の維持、発展が言論機関の最大の使命であることから、憲法改正国民投票の実施に際し多種多様な情報や材料を正確かつ公正に国民に提供することが使命であるとの産経新聞の立場が示された上で、憲法改正手続法案には大きな意義がありその早期成立を期待するとの意見が述べられました。
その上で、メディアにおける意見広告は幅広い情報や判断材料を提供できるものであることから制限を加えるべきでない、投票日直前は議論が最も活発になる時期であり広告放送を禁止すべきではない、無料広告が認められるのは政党を基本と考え政党以外については慎重に判断すべきである、無料広告枠の割当基準については、少数意見は最大限尊重されなければならないが基本的には憲法改正が各議院の三分の二の多数で発議されたことを尊重するのが望ましい、広報協議会は憲法改正案を客観的かつ中立的に周知広報する機関と理解しており、その構成については基本的には発議を尊重した基準が望ましい、国民投票公報には憲法改正の理由を説明した上で賛否を併記すべきである、特定公務員の範囲、公務員等の地位利用による運動禁止、買収罪については国民投票の公正確保のため与党案で問題ないとの意見が述べられました。
吉岡参考人からは、
まず、国民投票運動の規制について、憲法改正のための国民投票においては公職選挙法の手法による規制がなされるべきではなく、国民の自由な意見表明、自由闊達な議論ができることが重要であるということを前提に、特定公務員の範囲が裁判官、検察官、公安委員会の委員、警察官に及ぶのは反対である、公務員等の地位利用による運動禁止及び買収罪等の設置は自由な意見表明や活動を萎縮させる危険があり反対であるとの意見が述べられました。
次に、意見広告の規制については、メディアにおける意見広告はできるだけ制限をしないで自由に認めるという原則に立ちつつ、賛成意見も反対意見も同等に扱うとともに資金力による不公平が生じないような工夫が必要である、無料広告は政党等以外の団体や市民も無料で利用できるための工夫が検討されるべきである、投票日前の放送規制は表現の自由の侵害として許されないとの意見が述べられました。
最後に、広報協議会については、周知の公正性、平等性を担保するために賛否の意見が平等に反映されるように委員を選出すべきであるとともに、外部委員の選任も検討すべきであるとの意見が述べられました。
このような参考人の御意見を踏まえて、小委員及び参考人の懇談が行われ、小委員及び参考人の間で活発な意見の交換が行われました。
特に、今回のテーマである国民投票運動規制・罰則並びにメディア規制・国民に対する周知広報について申し上げますと、まず、公務員等、教育者の地位利用による国民投票運動規制については、職権濫用罪等が適用される場合以外に可罰性のある地位利用行為が実際上あり得るのか疑問であるとの意見が述べられた一方、与党案提出者から、萎縮効果を生じないよう定義を厳格化するとともに適用上の注意を規定することで対応しているとの意見が述べられました。
次に、国家公務員法等の政治的行為の制限規定の適用の是非については、国民投票運動に関してはそのような規定を適用すべきではないのであり、先日の委員会において民主党案提出者から国民投票運動には国家公務員法等の政治的行為の制限規定を適用しないことを明記する修正を行う旨の方針が示されたが、この点について与党の態度は不明であるとの発言を受けて、与党案提出者から、与党としてもその旨の修正を行う方針であるとの発言がありました。
次に、メディア規制・国民に対する周知広報についてですが、テレビ等における有料の意見広告の制限の是非については、資金量の多寡による実質的不公平が生じるのではないかとの問題意識から、賛否の意見が同じくらいの量になるような総量規制を工夫すべきであるとの指摘がなされました。
この指摘に対して、賛否の意見の取り扱いの平等について配慮規定を設けることや、投票日前七日間の広告放送の制限が一種の総量規制として機能することに着目し、その期間を十四日間に延長することも考えられる、意見の内容に着目した規制を行うより、形式的に国会が憲法改正案を発議した日から投票期日までの間、広告放送を全面的に禁止することも考えられるとの意見が述べられました。
全面的禁止については、表現の自由の侵害として憲法上許されず、まずメディアの自主規制にゆだねるべきであるとの意見が述べられた一方、権力との関係においてはメディアの自主規制が正当化されるとしても、市民団体との関係においてメディアが自主規制により恣意的に市民団体の表現の自由を制限することが正当化できるのか疑問であるとの意見が述べられました。
政党等のみに無料広告を認めることの是非については、政党以外の団体にも認めるべきであるとの意見が述べられた一方、政党が中心となることは議会制民主主義のもとでは当然である、政党以外の団体のうちどのような団体に無料広告が認められるかの要件の設定が困難であるとの意見が述べられました。これを受けて、政党が指定した団体に無料枠を割り当てることも修正の方法として考えられるとの意見が述べられました。
無料広告枠の割り当て基準については、賛否の意見に平等に割り当てられるべきであるとの意見がほぼ共通の認識であったと思います。
広報協議会の業務については、民主党案提出者から、裁量の余地のないもののみを想定しており、説明会の説明内容等については裁量の余地があることから、民主党として説明会の規定を削除する修正を行いたいとの意見が述べられました。また、広報協議会の構成については、国民の議論をより喚起するため国会議員だけでなく外部の有識者委員を選任すべきであるとの意見が述べられた一方、広報協議会の業務が裁量の余地のないものであれば外部委員の選任は意味がないとの意見も述べられました。
会議を通じての小委員長としての感想を申し上げれば、第一回、第二回の小委員会において、国民投票運動規制・罰則並びにメディア規制・国民に対する周知広報について、参考人をお招きして議論を行ったのに引き続き、今回、小委員会において改めて議論を行い、このテーマについて十分な議論ができたものと感じております。
また、今回、与党案提出者から、公務員の政治的行為の制限規定の適用の是非について、その不適用の規定を修正で明記したい、無料の意見広告を政党のみならずその指定する団体にも認める修正を行いたいと見直しを行う旨の発言があったことは特筆すべきことであると感じました。
他方、テレビ等における有料の意見広告の制限については、一方ではできるだけメディアの自由な表現活動に任せるべきであること、他方では資金力の多寡による賛否の意見の不平等が生じないようにするべきであること、この二つの要請のバランスをどこでとるべきかという問題意識を共有しました。ただ、投票日直前期における制限の是非及びその制限期間の長短と、賛否を平等に取り扱う旨の配慮規定の是非に関して、その具体的な制限のあり方についてはなお意見の相違があり、いま少し工夫が必要であると感じました。
言うまでもなく、民主主義社会の基盤である表現の自由に基づいて、自由闊達な国民投票運動が展開されるとともに多様な観点からの自由な報道がなされることが、国民の知る権利に奉仕し投票に際しての判断に資するものであります。このような認識に立ち、各委員が知恵を出し合ってきたところであり、合意形成まであとわずかであると実感した次第であります。
今回のテーマである国民投票運動規制・罰則並びにメディア規制・国民に対する周知広報については、国民投票に際して国民の判断の基礎を提供する重要な問題であると考えております。本委員会におかれましては、小委員会における議論を踏まえて、さまざまな角度から国民投票運動規制・罰則並びにメディア規制・国民に対する周知広報に関する共通認識の形成を模索していただければと思っております。
以上、御報告申し上げます。