濱野健の発言 (教育基本法に関する特別委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(濱野健君) 御紹介をいただきました品川区長の濱野でございます。
 本日は、大切な教育基本法にかかわる特別委員会にお招きをいただきまして、意見を述べさせていただく機会を与えられましたことを心から感謝申し上げます。
 私からは、具体的な事例を挙げまして品川区が取り組んでいる教育改革の内容を御紹介させていただきながら、もう一つは、首長として、今子供を取り巻く環境の中で地方公共団体がどういうことに取り組まなければいけないかという、そういう課題について少しお話をさせていただきたいと思います。
 具体的な事例に入ります前に、私が思っておりますことでありますけれども、国では安倍総理が、これからの社会のありようの中で教育はいかにあるべきか、子供たちはどのようにあるべきかということを考え、実践し、発言をされているわけであります。それは、これからの国家というものを考えたときに当然のことであろうかと思います。
 しかしまた、教育というのは、国家だけではなくて、その地域社会を次代において担っていく人材を育てる営みでもございます。品川なら品川の地域社会を担っていく人間をはぐくんでいくという、そういう営みでございます。そこにやはり、安倍総理が国の文科省に対して一定の指揮なり発言力があるのと同じように、首長としてもやはり教育の問題について一定の、権限とは申しませんが、そういうものが必要ではないかというふうに思っております。
 今の加戸知事のお話とも関連いたしますけれども、実際には、例えば予算の査定でありますとか議会との関係でありますとか、こういったことで首長が教育の問題について言及はするわけでありますけれども、現在の法制度の中では、首長の役割というのは学校の設置者ということであります。つまり、校舎を建て、校庭を整備する、これだけが明示されている首長の役割でありますけれども、先ほど申しましたように、次代の地域社会の担い手をはぐくむという営みに関して首長はもう少し明文的に影響力を行使できるような、そういう仕組みが必要なのではないかなというふうに思っております。
 私自身は、教育委員会の存廃については特段独自の意見は持っておりませんが、教育委員会と並立するような形で首長が一定の権限を持つ明文の明示があってもいいのではないか、こんなふうに思っております。
 私、品川区では、教育改革の根幹を、これは区政すべてそうでありますけれども、子供本位というふうに考えております。子供本位、これは区政が区民本位というのと同じでございます。象牙の塔とか白い巨塔といって、病院や学校というのは一種の権威性と閉鎖性の中にあるという、かつてそういう時代がありましたけれども、そうではなくて、やはり社会の構成員として、一つの社会を構成する組織として学校というものはあるはずだというふうに思っておりまして、学校が社会性を持つべきだというふうな思いを持っております。そんなことで、そういうことを観点に、それともう一つは、経営感覚が学校経営に必要だという、そういう観点から教育改革を進めてまいりました。
 平成八年に戸越台中学校という中学校を特別養護老人ホームと合築をしたんです。これは思わぬ効果があった。これは、学校が世間と向き合わざるを得ない装置になったわけであります。学校といえば、塀を巡らせて学校の中だけで自己完結する、そういう施設でありますけれども、特別養護老人ホームと合築することによりまして、お年寄りといやが応でも直面する、こういう言わばハード的な仕掛けになったわけでありまして、ここに初めて品川区の学校が社会と直接向き合うようになったというふうに思っております。
 そして、平成十八年に、これは第三次長期基本計画という地方の基本計画を作る段階の中で、これは前の区長が、非常に素朴な発想でありますけれども、何で子供たちは自分の行く学校が決められているのか、何で自分で選べないのかという、そういう発想から学校選択の自由化という問題に取り組んだわけでございます。
 長期計画の策定の中でこの学校選択の自由化に積極的に取り組もうということになりまして、平成十一年に、いろんな面で大変に名前が知れておりますけど、若月教育長を招聘をいたしました。この若月教育長は、その前に私どもの指導室長をやっておりましたので品川区の実態をよく知っているということと、非常に大胆に改革を断行してくれるという、そういう期待を持って十一年に招聘をいたしまして、早速、教育改革プラン21というのを策定をいたしました。プラン21の初版本でございます。
 これは、中身は、学校選択の自由性と、それからもう一つは、選ばれる学校という、学校が今度は選ばれる立場になるという観点から特色ある学校をつくっていこう、こういう学校独自の取組をしなければ選ばれないという、そういう仕組みをつくったわけでございます。その仕組みをつくって、平成十二年、十三年で小学生、中学生にこの制度を導入して実際に実施をいたしました。この時点で教育改革が始まったわけでございます。
 もう一つ重要なことは、教育においては社会との先ほど付き合うということでありますけれども、この平成十三年にすまいるスクールというのを立ち上げました。これ、従来、学童保育クラブという格好で、学童保育ということで、いわゆるかぎっ子対策として一部の子供たちを放課後見守るという、そういう事業をやっておりましたけれども、それを学校の中でやっていこうということでございます。したがって、すべての小学生が対象になる、すべての小学生が放課後、学習であるとか、それから遊びであるとか、あるいは得意分野のことをやっていくと。その中に、地域のボランティアの方々あるいは地域の指導者が入っていただいたわけであります。ここにおいて、放課後、学校が地域に開かれている、そういう時間帯を設けたということになります。そういう意味で、学校が社会性を持つということにこのすまいるスクールというのが一役を担ったというふうに思っております。
 そして、その十三年にそのすまいるスクールを始めたわけでありますけれども、十四年にもう一つの試みでございます、今日お手元に資料でこういう「二葉すこやか園」という資料を付けさせていただきましたが、幼保一体化の施設を十四年、品川区で設立をいたしました。これは、先ほど申しました理念である子供本位というところからの発想でございます。つまり、子供が、親が働いているかどうかでもってその扱いが、行政の扱いが異なってくる、幼稚園なのか保育園なのか。これは子供が選んだわけではありません。親の就労という、その親の事情によって子供の見守り方が違ってくるという、これは子供本位ではないだろうということで、幼稚園と保育園というものを一体化していく必要があるんだと、こういう観点から保育園と幼稚園を一体的に設置をしたものでございます。
 それは、平成十六年になりまして、もう一つ、ぷりすくーるというものを立ち上げまして、これは私立幼稚園のマンパワーであるNPOを活用して幼保一体化の施設を造りまして、平成十八年、今年でありますけれども、もう一つのびっこ園台場というのを造りました。今三つ、そういう意味で幼保一体化の施設がございます。
 のびっこ園台場には、先ほどデンマークの首相夫人がお見えになりました。デンマークの首相夫人というのは、横道にそれますが、現職の保育士だそうでございます。そういった意味で、私どもが出迎えるという儀礼的なことよりも、まず園長さんとお話がしたいということで、デンマークの首相の夫人がのびっこ園を訪問していただきました。そういったことで、子供本位ということから幼保一体化施設を造ってきたわけでございます。
 一方、学校の改革でございますが、学校選択をつくった、制度を導入した、そして選ばれる学校になった。それでは、その選ばれる学校が、あるいはそれぞれの学校がどうやってこの子供たちの教育を保障していくかということで、そこで取り入れましたのがいわゆる学校評価制度でございます。今はもう一般的になっておりますけれども、外部評価委員によって学校を評価していただく、社会から見てどうなのか、あるいはその先生方の努力をどう見ていただいているのかというのを外部評価をしていただくという仕組みを取り入れました。
 そしてもう一つは、学力の定着度調査というのを区独自で実施をいたしました。一斉テストです、一言で言えば、品川区独自です。これをホームページに公表いたしました。個人個人ではありません。各学校のホームページに、うちの定着度はこうでしたということを発表いたします。そして、それだけが大切なのではありません。その学校が、うちの学校は算数がちょっとこうこうこういうことで落ちている、あるいは低いと、特にこういう分野について問題があるということであれば、ここにどういうふうな手を打つかという、いわゆる学校の態度表明を併せて載せるようにしております。つまり、各学校が自分の学校の現状を振り返って、そしてこれからどうするかということをワンセットでもって子供たちにあるいは保護者にあるいは地域に明らかにしていくと、そういうシステムを取ったわけでございます。
 したがって、外部評価と、もう一つは定着度調査と、そしてそれに伴う態度表明、そして具体的な手法としては、習熟度別授業を平成十五年でしたか、取り入れました。
 習熟度別というのは、先ほど申しましたように、学校としてのその出っ込み引っ込みがある、このへっこみをこういうふうに改善していくということと同時に、生徒一人一人の状況に着目して、この子にはこういうところが必要だ、こういうところの補習が必要だということで、習熟度別の授業を展開するということを始めております。そういう改革を進めまして、そしてそういう改革を小中一貫校ということで、あるいは小中一貫教育ということで体系化していったわけでございます。
 これは、私ども品川区における小中一貫の教育要領でございます。この小中一貫の教育要領の中で、今申し上げたような事柄を全部体系化をして全区的に小中一貫教育というものも展開しているところでございます。
 この中で、ちょっと話が行ったり来たりになって恐縮ですが、市民科という科目を設けておりますが、これは、市民科というのは従来の道徳でありますとか総合学習の時間とかというものをくくりまして、いわゆる社会性ですね、先ほど冒頭で学校に社会性をということを申し上げましたけれども、生徒の社会性を高めていく必要がある、地域社会の担い手をはぐくむという意味では市民性を持ってもらうことが必要だ。自分がしっかり生きる、その生きる力を養うと同時に社会の一員としてしっかりと構成員になるという、そういう意味での市民科というのを設けております。
 この一端としまして、これは、その市民科というのが始まったのは今年ないし去年でありますけれども、平成たしか十四年ですか、スチューデント・シティというのを、八潮南小というところにスチューデント・シティというのを、シティバンク、外資系の銀行ですけれども、シティバンクと提携をいたしましてスチューデント・シティというのをつくりました。これは、その学校の中に仕掛けをつくります。スーパーマーケットをつくります、区役所をつくります、銀行をつくります、店舗をつくります。それぞれ生徒がそこの店員になったり、銀行員、バンカーになったり、あるいは役所の職員になったりするということで、ロールプレーイングをしながら社会がこうして成り立っているんだということを実体験をさせる、そういう場でございます。そういうスチューデント・シティをつくりまして、各学校がそこへ行って、そういう実践としての社会の成り立ちを学んでくると、そういうものをつくりました。
 そして、一昨年でありますけれども、十七年には今度はファイナンス・パークというのをつくりました。これは城南中学という中学校の中でありますけれども、これもやはりハード的な仕掛けをした上で人生設計というものを自分なりに立ててみようということです。
 生きるにはお金が掛かります。その生きるための費用なりあるいは力をどうやって養っていくのかということで、例えば税金が幾ら、例えばこういう職業を選ぶ、収入がこうだ、そうだとすると、そういうその経費でありましょう、生きるための経費、税金あるいは公共料金、生命保険料、こういったものが一体どういうふうに掛かってくるんだろうかというようなことを身をもって各人がシミュレーションをするという、そういうファイナンス・パークというものをつくって、これも現在の市民科の中で生かしておりますけれども、子供たちが社会性を持つという、そういう観点で改革を行ってきたところでございます。
 ちょっと時間がないんですが、もう一つだけ言わせていただくのは、これから首長の役割としましては親育てだろうというふうに思っております。親育て。今、教育力が低下していると言っておりますけれども、教育力どころではない、養育力が低下している、朝御飯を食べてこない。
 その親育てというのは、今品川区の例で申しますと、ゼロ歳児は八五%がお宅にいます。お宅にいるというのは、子供がですね。その他は保育園のゼロ歳保育に預けています。八五%が、子供がお宅にいるということは行政とのかかわりがないということです、親御さんが。それから、一歳で七五%だと思います。三歳で六五%かな。つまり、ゼロ歳から三歳まではほとんどの親御さんが行政とかかわりなくお宅にいらっしゃる。そこをどうやって親育てに引っ張り出していくかということが非常に大きな課題だと思います。
 申し述べたいことは幾つかあります。学校の適正配置の問題とかありますが、もし機会がありましたら御質問をいただく中でお話をさせていただきたいと思っております。
 どうもありがとうございました。

発言情報

speech_id: 116514048X01020061211_005

発言者: 濱野健

speaker_id: 26367

日付: 2006-12-11

院: 参議院

会議名: 教育基本法に関する特別委員会