城繁幸の発言 (経済・産業・雇用に関する調査会)

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○参考人(城繁幸君) 城繁幸と申します。本日、このような場にお招きいただきましたことを深く感謝いたします。
 本日の私の話すテーマ、概要ですけれども、非正規雇用、現状と課題というふうに銘打ってはおりますけれども、非正規雇用はまず内実としてどういった存在なのかというところ、なぜ発生するのかというところを含めまして、それからその解決、これなかなか正社員への登用進んでおりません。その理由は何なのかといったところまで、時間に制約ございますけれども、踏み込んでまいりたいと思います。(資料映写)
 まず、現状の日本の給与システムについて簡単に説明をさせていただきたいと思います。
 いわゆる職能給と言われているものが、職能資格給と申しますけれども、これが一般的に取り入れられております。字のごとく本来は従業員の能力によって賃金に差を付けるというものでありますが、実質、勤続年数が長いほど能力は上がっていくであろうという一種の性善説に立ちまして勤続年数に応じてお給料を上げていくと、つまり年功序列制度のバックボーンとなっておる制度であります。
 こういった特徴がございまして、年齢とともに基本的には上昇していくと。それから、原則下がらないんですね、上がる一方です。これは判例でもそのように保護されておりまして、労働条件の不利益変更というものには非常に厳しい制限が付く、そういう現状がございます。
 日本は、こういった特徴がある職能給、ほとんど日本オリジナルと言ってしまって現状問題ないと思いますけれども、こういった体制で企業の側が人件費を抑えなければいけないという状況になった場合、どのように圧力が働くかと申しますと、これから上がるのを抑えようという方向で働くんですね、下げることできませんから、既に上がったものは。結果として、年が若ければ若いほど不利であるという方向でプレッシャーというのは働きます。
 昨今の日本の企業の成果主義、大失敗しておりますけれども、その原因というのは正にこれですね。過去上がった人間、例えば管理職、部長さん、非常に高給取りでいらっしゃいますけれども、そういった方のポストであるとかお給料を見直すことなしにこれから上がるのを抑えようとした結果、モチベーションダウンであるとか人材の流出が起きていると、そういった状況がございます。
 そしてなお、これだけでは問題解決しない場合、更に人件費を抑えなければいけない場合どうなるかと申しますと、こちらです。正社員としてではなくて、正社員としての待遇すら与えずに非正規雇用として若年層を取り込もうと、こういった傾向が起きるわけでございます。
 若年層の非正規雇用者の割合の推移につきましては、お手元の資料をごらんいただきたいと思います。こちらでは特に説明はいたしませんけれども、割合が非常に高まっておると。二十四歳以下の層に関しては、四五%非正規雇用者の割合がもう超えていると、そういった状況でございます。
 ちなみに、この非正規雇用者、例えば派遣社員であるとか請負労働者、典型ですけれども、こちらは職務給なんですね。欧米で一般的な賃金システムです。つまり、業務によって値段が決まっておるんですね。簡単に申しますと、時給千円、千二百円、そういった単価で労働をされるわけです。そして、職能給との違いですけれども、こちらは決して上がることは基本的にはありませんと。本人がスキルアップをしてそれが評価されない限り、時給というのは上がらないんですね。
 現状、つまりこのように、日本というのは年功序列の職能給、それからそうではない非正規労働者の職務給と、こういったダブルスタンダード構造というのが既にでき上がっておるということが言えると思います。
 もう少し内実を詳しく見てまいりたいと思いますけれども、こちら書きましたように、同一労働同一賃金の原則というのが欧米では一般的なんですね。確かに、非正規雇用者というのは国によってはございます。けれども、基本的には同じ労働をしていれば同じ同一賃金を払うという原則がありますので、日本における正規と非正規という明確な序列のようなものは基本的には存在しておりません。ただ、日本はこの同一労働同一賃金、この原則、認められておりませんから、法律でも、現状、判例においても。
 じゃ、企業内で何が起きているのかといいますと、こういうことですね。一例として、年功序列制度において今一番基本給の高い世代というのは大体五十代前半の方でいらっしゃいますけれども、この正社員の方であれば、定期昇給世代で定期昇給の恩恵受けられた方ですけれども、大体二十代の正社員の二倍から三倍はお受け取りになられておるんですね。二十代の方というのはもう入社以来成果主義で定期昇給ありませんから、二倍から三倍受け取っておられると。同じ労働をしていてもこれだけ違いがあるんです。まだこれはいい方ですね、二十代正社員。
 二十代の派遣社員はどうでしょうか。もし仮に同じ作業をしていたとしても、大体正社員の半分、六割ぐらいというふうに言われています。つまり、これだけ、同じ労働をしていたとしても、これだけもう明確なヒエラルキーというのはあるんですね。これ異常な搾取構造だと言えると思います。
 実例幾つか紹介させていただきたいんですけれども、例えば、私もよくお付き合いしておる出版社、大手出版社のケースなんですけれども、雑誌の編集部。取材にいらした記者の方というのが、名刺をいただくと、社員じゃないんですね、社員の方ではないんですよ。フリーライターの方なんですね。ちょっとその辺の話を伺いますと、こうおっしゃるんですね。社内で正社員の方いらっしゃいますと、デスク以上のいわゆるマネージャーの方なんですね。非常に大手出版社では高給取りでいらっしゃいます。ただ、現場で取材されているのは、若手の二十代の新入社員じゃないんですね。フリーライターなんですね。大体、原稿一本何万円の世界ですから、時給に直すと千円とか、下手すると八百円ぐらいになってしまわれると。正社員の方、雇われないんですかというふうに質問、編集長なんかにしますと、いや人件費がないんですよとおっしゃる、一千五百万ぐらいもらっていらっしゃる方が。これ、正に搾取構造ですね。
 これ、別に民だけの話ではございません。官の現場でもこういった現象は多々見られます。例えば、独立行政法人なんか仕事なんかで取材させていただくと、本体の方から天下って来られた方、管理職以上の方、たくさんいらっしゃるんですけれども、現場で実務を回していらっしゃる方、電話の応対をしてくださる方というのは、大体派遣社員若しくは契約社員なんですね。やっぱりこれ時給制です。むしろ逆ですね。そちら、そういう方の方が一生懸命仕事されている場合あるんだけれども、こういうヒエラルキーの一番下で搾取されておられると。これは本当に、まあ基本的には世代間の問題に私は帰結できると思うんですけれども、是正すべきゆがんだ構造だというふうに考えています。
 それから次に、年功序列制度自体が持っておる負の面についても簡単に説明をさせていただきたいと思います。
 これは、なぜここで取り上げましたかと申しますと、非正規雇用がなかなか減らないと、正社員の登用が進まないと。現政権もフリーターを最盛期の八割に減らすという目標を重点課題として掲げておられますので、私も非常にこの問題、関心はあるんですけれども、なぜ減らないのかというところを簡単に説明させていただきたいと思います。
 まず、年功序列制度においては、人の値段というのは年齢で決まるんですね。これは、現状、成果主義導入進みまして、若干上下に幅というのは出てきておりますけれども、基本的には、これ人の年齢で決まります。間違いがございません。
 どういうことが起きておるかといいますと、大体業種ごと、それから企業規模ごとに年代別の緩やかな相場というのが確立しておるんですね。大手電機であれば、三十五歳であれば大体七百万円から八百万円とか、そういう具合の相場が確立しておるんですね。ですので、例えば中高年の方、四十五歳の方、中途採用に応募しました方、新入社員になったつもりで頑張りますとおっしゃられても、まず年功序列企業は内定出しません。理由というのはコストが高いんですね、四十五歳ぐらいの方、非常に高いんですね。ですから、もう年齢である程度さばかれてしまうという現状ございます。そうはいっても、いざ企業の業績傾きましたら、早期退職であるとか配置転換の対象になるのはこういった中高年の方ですから、こういった非常に陰湿な面だと言えると思います。
 同様のことは若年層に対してもやはり言えるんですね。こちらのキャリアの、具体的な企業から見たキャリアの概念というものを示してみました。年功序列制度におけるキャリアの概念ですね。正社員としてのキャリアの積み上げというふうに企業はみなすんです。正社員として新入社員から二年間これだけの仕事をしました、主任としてこれだけの仕事をしました、そういうふうな積み重ねであるというふうにみなすんですね。ですので、例えば派遣社員として働いた期間、二年間ありましたよという場合、もうこういった方、非正規雇用の方というのは採用対象としない企業が非常に多いんですね。二年間キャリアが足りない、コスト的に釣り合わないというふうに考えてしまうんですね。
 非常に今問題とすべきは、九〇年代後半、九九年から、大体九八、九、それから二〇〇〇、二〇〇一年辺りというのは非常に就職氷河期と言われておりまして、特に二〇〇一年春卒業の学生というのは新卒求人倍率が一・〇を割っておったんですね。正社員の口が、もうどんな仕事でもいいといっても正社員の口のない若者というのが一定数発生しております。こういった方は当然派遣社員であるとかフリーターとして働かれておるわけですけれども、今、企業というのは大体業績が良くなってきて、業績というよりは来年から団塊が退職されるのが一番の理由なんですけれども、その中で採用を増やそうとしているときに、どうしてもやっぱり今の新人であるとか、あるいは他社で正社員として働いている人間だけに偏重してしまう傾向ってあるんですね。だから、こういった方というのをうまく取り入れていけるようなサポートというのは私は必要になるというふうに考えています。
 最後に、求められる対策の方向性というのを二点まとめてみました。
 まず一つは、正社員と非正規雇用者の待遇格差を一定の割合で是正していただくということですね。完全に、私の個人的な意見としましては、完全にイーブンにするというのはややナンセンスかなというふうに考えております。非正規雇用自体というのは時代的なニーズというのも非常に強いというふうに考えておりまして、完全に同一にするのは若干難しいかなというふうに考えております。そうはいっても、現在の例えば同じ二十代の非正規雇用者、五十代の正社員の六分の一ぐらいというような状況というのは是正されてしかるべきかなというふうに考えております。
 ただ、引き上げるだけでは徹底って非常に難しいと考えています。人件費、やっぱりパイが有限であるという状況がバックボーンとしてあるわけですから、ですからこれは強く提案したいんですけれども、引き下げる方向の緩和、こちらの規制緩和というのもお願いしたいと思います。労働条件の不利益変更に関するルールの策定ですね。現状、非常に厳しい制限付いておりますので、こちらのルール、そのルールさえ満たせば基本的には認めるというようなものというのも私は策定は必要であるというふうに考えております。
 一点御留意いただきたいんですけれども、本来、労働者の権利擁護というのは労働に対する適正な対価が支払われるように働き掛ける方向でなされるべきであるというふうに私は考えております。分不相応にもらわれている方の待遇を保障するというのは全く別次元の話であるというふうに考えています。まして、労働者の権利というのを標榜されるんであれば、同じ仕事をしていて二十代、五十代、二倍から三倍開きがありますよと、この状況を是認されるのは全く理解できないというふうに考えております。世界的に見てもそんな労働者制度ございませんから。ですので、こちらは是非前向きに検討をお願いしたいと思います。
 それからもう一点、先ほど申しましたけれども、就職氷河期を中心として、あるいは九〇年代の不況の間に卒業、非正規労働者としてずっと働かれている方、この方の正社員へのキャリアパスですね、こちらはまた別途対策を取る必要があると考えております。
 この構造的な問題の解決には、私はもう職務給の普及しかないというふうに考えていますけれども、これは行政の側で法律をつくって企業にどうこうする問題ではございません。自助努力に任せるしかないと考えております。企業の側もこれは認識していると思います。もう一部の企業で職務給への切替えって進んでおりますから。ただ、これがスタンダードになるのは、私は二十年掛かると考えています。
 ですから、この氷河期の若者たちを救済するには時限的な対策というのが必要になると考えておるわけであります。
 次に紹介したいのが、民間企業で、じゃそういった対策をどういうふうに考えて実践しているのかという一つのケースでございます。
 リクルート社が二〇〇〇年から導入を始めましたCV制度、キャリアビュー制度という制度がございまして、三年間の有期雇用契約なんですね。その後、三年間の延長があって、最長六年間なんですけれども、原則としてこの六年間だけであると、再々延長は原則ないと。
 これだけ話をさせていただきますと、それは単に派遣社員の代わりじゃないのか、使い捨てじゃないのかと危惧される方いらっしゃると思いますけれども、こういった特徴、以下にあるんですね。まず、学歴であるとか前職、年齢、これ一切不問です。これは理由がありまして、リクルートはもう年功序列、完全に撤廃していますから年齢は関係ないんですね。本人のやる気と能力さえあれば、年齢は重要じゃないと。実際、前職の方、企業の正社員から移られる、転職される方もいらっしゃいますけれども、フリーターの方たくさんいらっしゃいます。年齢も、三十代いらっしゃいますし、最長で四十代の方いらっしゃいますね。
 それから次ですけれども、これ非常に重要なんですけれども、正社員、つまり、リクルートは正社員、非正社員という区分けは特にございませんけれども、従来型の採用コースを経た社員と同等以上の教育研修制度を与えているんですね、提供しているんですね。
 これは理由ございまして、例えば、よく非正規雇用者というのはモチベーションが低いであるとか自己啓発の意欲が全くないというふうな課題、指摘される方がいらっしゃいますけれども、これは誤りですね。そういった業務しか与えないからです。ふたをしちゃっているんですね。ふたをしちゃったら人間伸びませんから、リクルートさんはその辺よく理解されて、しっかり研修制度の機会を提供しているんです。そのおかげで、六年の間に管理職クラスに上られる方もいらっしゃいます。
 ちなみに、人数の割合で申しますと、今、同社の大体半分がこのCV制度を経て入社された方なんですね。この半分の従業員の、使い捨ててモチベーションを下げるというのは非常にマイナスなんですね。どんどん頑張って成長してもらいたいと、つまりウイン・ウインの関係なんですね。企業の側もサポートする、それでそれによって利益を得ると。お互いしっかりそういった依存して利益を得ようと、そういう関係でございます。
 その三年若しくは六年間期間を過ごされた後、これ非常に重要なんですけれども、ほとんどの方は転職をされるんですね、立派に。同業他社であるとか、あるいはリクルートのグループ企業さんに転職をされると。これを可能としておるのが、結局はここですね、履歴に正社員としての職歴が残るんですね。これが非常に重要なポイントになると考えています。正社員としてのキャリアの積み上げ、これが現状求められるという話は先ほどいたしましたけれども、これをサポートする結果になるんですね。
 これ、下の方に書いておりますけれども、同社がこれ導入したコンセプトというのが幾つかございまして、通常のほかの企業であればなかなかここまで踏み込めない点もございます。例えば、同社はもう完全に職務給に移行していますから、年齢は関係ないんですね。ただ、現状、その他の日本企業というのは職能給の年功序列ベースですから、なかなかここまで踏み込むのは難しいかと考えております。
 ただ、試用期間の延長、通常、現在ですと最長一年というような判例がございますけれども、これ例えば三年に延ばすことで、非正規雇用者限定で三年に延ばすことで私は同様のメリットというのは通常の企業においても得られるのかなというふうに考えております。
 では、私からの話は以上になります。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 城繁幸

speaker_id: 9388

日付: 2006-11-22

院: 参議院

会議名: 経済・産業・雇用に関する調査会