樋口美雄の発言 (経済・産業・雇用に関する調査会)
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○参考人(樋口美雄君) 慶応大学の樋口と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
このような調査会で私の意見を述べる機会を与えてくださったことに対し、心より感謝申し上げます。
私の話はパワーポイントを使ってお話ししますが、お手元に同じものが配付されていると思いますので、そちらをごらんいただいてもよろしいかというふうに思います。(資料映写)
話の流れは三本から成っておりまして、現在何が起こっているのかというようなこと、そして二番目に、その問題の背景に何があるんだろうか、そして三番目としまして、ではその問題を解消するためにはどのような対策といったものが求められているんだろうかということについて私見を述べさせていただきたいというふうに思います。
まず、問題意識でありますが、こちらの調査会のタイトルからしましても、私も全く同感するところでありますが、経済を活性化するための雇用の多様化の在り方あるいは働き方の多様化の在り方というものについて考えてみたいということを申し上げたいというふうに思います。
日本におけるそのタイトルとしまして、非正規雇用をめぐるというタイトルちょうだいしているわけでありますが、まず非正規社員というのは一体どういうものであるのか。それをパートタイム労働者を例に取りながら考えてみたいというふうに思います。
日本でもこのパート労働者についての統計調査というのはたくさんございますが、調査によって定義が異なっている。主に二つの定義によっているのかなというふうに思いますが、一つは、労働時間の違いに着目して、一般労働者に比べて労働時間の短い労働者、これをパートタイム労働者と言います、それについて賃金を調べますといったような統計がございます。
そこにおいては、これは国際的にもこの定義が使われているわけでございますが、その対立用語として出てくるのはフルタイム、一般労働者ということでありまして、その一般労働者に比べて労働時間が短いというのが通常、あるいは中には三十五時間以下の労働者をパート労働者というふうに言いますというふうになっております。この定義に基づきまして日本におけるパート労働法はつくられているわけでございます。
もう一つの定義は、企業における呼称、呼び名としてのパートさんというようなことでありまして、こちらは対立用語というのはおそらく正社員というような言葉で使われるわけでありまして、ある意味では身分を示す、あるいは中には資格を示すというような言葉で使われていることがございます。労働時間は一般労働者と同じなんだけれど、会社でパート労働者、非正規社員だというようなことで呼ばれている人もいるわけでございまして、よく言われるのは、偽装パートという言葉で示されている人も存在するということになるかというふうに思います。
特に後者、二番目の定義に従いますと、正社員とそれとパート労働者、あるいは非正社員労働者というのは何が違うんだろうかということを考えてみますと、パート労働者に対して正社員というのは、いわゆる保障の対象になってきたということでありまして、先ほど橘木さんからお話ありましたような、生活給をそこにおいては支給するんだと。しかし非正社員に対してはこれは出しませんよというようなことで、ある意味で給与の決め方について線引きを行ってきたということがあるかと思います。
あるいは能力開発につきましても、正社員については企業内訓練の対象者だということで考えていくのに対して、パート労働者あるいは非正社員労働者というのはその対象にならない、自己啓発でやれというようなことになってきたかというふうに思います。
正社員、私はよく使う言葉でありまして、それは保障と拘束の関係といったものが会社との間にあったんではないか。保障というのは、今申し上げました生活給、あるいは能力開発というところで、会社の方がそういうことについては保障していきますよということがある一方において、この正社員に対しては拘束を掛けますということが行われてきました。労働時間を考えますと、残業は正社員は断れないとか、あるいは辞令一本で転勤するというようなことで、その保障の代償としてこういった拘束が掛けられていた。ところが、非正社員、例えばパート労働者についてはそういう拘束は掛けられないというようなことがこれまではあったんではないかというふうに思います。
ところが、ここのところ増えてきている非正社員については、給与については保障の対象じゃないわけでありますが、その一方で拘束は掛けるよというようなところも起こってきているというようなことがあるんではないかというふうに思います。
日本全体で労働市場で今何が起こっているのかというようなところから少しレビューをしてみたいと思いますが、こちらの図におきましては、男女別に見たときに、雇用者数、会社で働いている人たちの数がどう推移してきているのかということを示しておりまして、男性と女性で非常に対照的な動きを示しているかと思います。
男性につきましては、このブルーの線、九七年がピークでありまして、その後、減少し続けるというようなことがありました。景気の影響もあるかと思いますが、やはり産業構造の転換といったものも大きく影響してきたかと思います。その一方、女性については右肩上がりというようなことで、依然として増加を続けているというような違いが見られます。
なぜこうした違いがあるんだろうかということを考えますと、やはり一つは、産業構造が、従来男性をたくさん雇っていた産業の構成比が高かった。例えば建設業でありますとか、あるいは重厚長大産業というようなところが多かった。ところが、そこら辺が九七、八年から、企業のリストラもありますし、同時にそういう産業構造の転換が急ピッチで、例えば建設業が雇用を減らしますというようなことが起こって、男性の雇用といったものが減少を続けているんだろう。
その一方、女性について見ますと、例えば介護ですとかあるいは病院、医療ですとか、そういうサービス業のところで雇用が増えていく。こういうところは女性の比率が元々高いというようなことで、そういうものを反映していることではないかと思います。
その影響も受けまして、失業率にも男性と女性では大きな差がありまして、九七年以前については、この図を見ましても、図の二を見ますと、点線、女性の失業率の方が男性よりも高かったということであります。ところが、その後、先ほどの雇用の変化の影響を受けまして男性の失業率の方が上昇するというようなことです。
このことは何を考えればいいのかということでありますが、やはり企業だけではなくそれぞれの世帯、家計においても、従来の男が外で働いて女は家庭を守っていくんだというような性別役割分担についての見直しというものを求めているんではないかというふうに思います。従来のような産業構造であれば、男性が外で働いて所得を稼いでくる、女性は専業主婦でもということであってもまあリスクはそれほど高くなかったわけでありますが、男性も雇用が減らされる、給与が減らされるというような時代になっては、ともに働き、ともに家庭を守っていくんだというような男女共同参画ということがこれいや応なしに求められていくというようなことではないかというふうに思います。
その背景、ここには公共事業費の推移というものを見ておりますが、日本では公共事業が、九五年、六・四%ということで、GDPの六・四%あったわけで、今までは景気対策という形で雇用の受皿をつくるために公共事業というものが取られてきたというようなことがあります。ところが、その後、財政再建というようなことで、現在は、六・四%であったものが三・七%まで削減される。これは私はやむを得ないことだろうというふうに思いますが、それに代わって産業がなかなか興ってこないというようなところにその経済産業の活性化を求めるという動きがいろんなところで起こってきたんではないか。で、ここのところに至って景気の回復がやっと本格化したというような背景があるんではないかというふうに思います。
これ、橘木さんがおっしゃった労働分配率との関係でありますが、企業における経常利益、それと労働者に対する雇用者報酬、給与総額の動き、これを見ますと、従来は景気が低迷して経常利益が下がると雇用者報酬も下がりました。逆に景気が回復してくると雇用者報酬も上がるというようなことであったわけでありますが、二十一世紀になってからはこの動きがどうも逆転してきている。給与の方は抑制される一方において経常利益の方が拡大していくというような動きがありまして、これが先ほど問題提起のあったところかというふうに思います。ただ、これを法律とか政策でどうこうしろといっても私はどうにもならない面があるわけでありまして、これについては正にそれぞれの労使で考えていくべきことであって政府が介入するべきことではないんではないかというふうに思っております。
ただ、その中で気になりますのは、雇用者報酬が低迷している背景として、実は一人当たりの給与総額、これを計算しましても、ここ何年来ずっと下がってきているかというふうに思います。例えば、九八年当時に比べて一人当たりの人件費、給与といったものは大体八%ほど下がってきています。しかし、では正社員の給与が下がったのか、あるいはパート労働者の給与が下がったのかということを見ますと、必ずしもそうではない。正に構成比が変わったということで、賃金の低いパート労働者、非正社員の数が増えたことが全体の一人当たりの給与を抑制してきたということで八%のうち大体七%ぐらいはこれで説明してしまうというようなところでありまして、こういったところにも実は非正社員の増加ということが非常に敏感に反映しているというふうに思います。
ここら辺は簡単に飛ばしたいと思いますが、図五というのは男女別に見たときに非正規雇用者の比率がどう推移してきたのかということでありまして、男女ともに増加してきているということがあります。
では、その内訳はどうなのかということでありまして、非正社員というふうに言われてもいろんな呼称があります。企業において、パートというふうに呼ばれている人、あるいはアルバイトというふうに呼ばれている人、さらには嘱託というふうに呼ばれている人、さらには派遣労働者ということでありますが、パート、アルバイト、嘱託の特徴というのは、これは雇用主に直接雇われて、その職場において働いているというような特徴があります。それに対して、派遣は、これは雇用主は派遣会社だということでありまして、そこから派遣されて別の会社で働いているというような間接雇用というようなことがある。実は、これと関連して請負というような問題があるわけでありますが、請負については、この雇用形態ということには入っておりません。むしろ、例えば請負労働者の中でも正社員がいたり、あるいは有期雇用者がいるということで、非常に有期雇用者、期限の定めのある契約に基づく労働者が多いわけでありますが、この中では別掲されていないというようなことがあります。そういう人たちを含まなくても、九三年の二〇・七%だったものが二〇〇六年には三四・三%まで増えましたということがあります。
しかも、もう一つ注目しなければいけないのは、従来非正社員というのはやはり既婚女性が多かった。特にパート労働者という人たちが多かったわけでありますが、その層が若い人たちにも広がりを見せてきたというようなことがあるんじゃないかというふうに思います。
そうしますと、従来の非正社員というのは、例えば、会社においても仕事上補助的な存在であるのと同時に、それぞれの家庭においても世帯主の稼いできた所得で足りない部分を補償していくんだというような、そういった受け止め方をされていた。その結果として、職場においても、また家庭においても、ある意味では同じような存在だったということであったわけであります。これがいいかどうかは別の問題として、そういう存在として受け止められてきた面がある。
ところが、男性の方でもそれが増えていく。世帯主にもこの非正社員が増えていくということになったところにおいて問題が日本ではクローズアップされて、その世帯主、世帯の中心的な稼得者であるにもかかわらず会社から給与がたくさん払われないというような、そういった意見の食い違いというものが起こってきているんじゃないかというふうに思います。
若者にこういった非正社員の層が拡大していくというようなことにおいて、私は少子化の要因にもなってきているということでありまして、こちらに掲げましたのは、慶応大学で調査しているパネル調査というような、同一の個人をずっと追跡する、その結果何が起こっているのかというようなものを見たものであります。フリーターとして例えば学校を卒業して一年目に働いていた人と、今度は正社員として働いていた人が、その後結婚がどうなっていったんだろうかというようなものを見ております。
九一年以前につきましてはこのブルーの線になっておりますが、正社員であろうとフリーターであった人であろうと結婚する年齢には大きな差がなかった。ここでは未婚率を示していますが、その後だんだん未婚の人たちが減っていくというようなことになっています。タイトル、婚姻率って書いてありますが、これは未婚率の間違いであります。ところが、九二年以降の赤い線になりますと、フリーターだった人と正社員だった人で大きな差が生まれてくる。
要は、九〇年代に入っての非正社員というのは、ある意味でそれが長期間続くということで、なかなか正社員に登用されないというような事態が起こっていて、ある意味では、一時的な所得格差の問題と同時に、所得の階層化、固定化といったものが進展してきているというようなところに私は大きな問題を感じるということであります。
これはパート労働者の正社員、一般労働者に対する時間当たりの賃金の格差を示したものでありますが、これを見ましても、かつての七六年のころは七〇・一%ということでありますから、差が三〇%、三割程度だということであったのが、二〇〇五年になりますと五六・三%というようなことで差が四四%ほどに拡大しましたというようなことを示しております。
その一方、原因は何かということを考えてみますと、やはり基本的に経済の好調さがどうであったかというようなことが私は影響してきたなというふうに思っておりまして、長期的な九〇年代に入っての景気の低迷といったものがこういう非正社員を増やしていったということに大いに影響していたんではないかというふうに思います。
さらには、競争が激化してくるというようなことで、お二人の先生からお話ありましたような、人件費をなるべく抑制して、そして人件費の固定費化を回避したいというようなことがあったんではないか。
同時に、労働法制において私は不備があったんではないかというふうに思っております。例えば、規制緩和を進めてきたわけでありますが、その中心的な対象というのは、やはり非正社員という人たちを対象の法律についての規制緩和を進めてきた。例えば労働者派遣法もありますし、あるいは労働基準法における有期労働者の扱いというようなところがあって、その一方で、正社員についてはほとんど手が付けられないまま現在に至ってきている。その法律における二極化といった問題がやはり全体的に影響しているんじゃないかというふうに思います。
また、職業教育等々において性別役割といったものがどうも存在するんではないかというふうに思っております。
そして、四番目の要因は、これは先ほどから出てきております税、社会保障制度、あるいは企業の配偶者手当において、この制度が存在することによって、この有期労働者あるいはパート労働者が年収を調整して何とか手取りの所得を増やしたいというような行動があったんではないか。そしてさらに、社外における日本では職業能力開発の機会といったものが欠如しているというような問題があったんではないかというふうに思います。
では、政策を見直す上で何が目標になるんだろうかということでありまして、大きく二つここでは掲げさせていただいています。
一番目は、労働市場やあるいは生活のゆがみといったものが今起こってきているわけでありまして、それが現れているのが所得格差の問題。そして、その一方において今度は労働時間、正社員については長時間労働者が増えていくというようなことで、労働時間については長時間労働者が増える一方でパート労働者が増えるというような、要するに三十五時間から四十八時間程度の労働者が逆に減っていくというような二極化が進展してきている。そしてまた、地域格差というようなことで、従来、公共事業を中心として地方の雇用の受皿をつくっていたものが、それがつくれなくなってきている。にもかかわらず、それに代わって地域分権化に対するその具体的な施策というものがそれぞれの自治体、地域から上がってこないというようなところがあって、それが特に固定化してきているんじゃないかというような懸念が持たれるということであります。
そして、二番目としては、これは長期的に見た場合、一番目が現在起こっている問題に対する問題提起であったのに対して、二番目としましては、もう少し長期的に見てもやはり人口減少社会になっていく、そういった中において個人が意欲と能力を発揮できるような社会をどうつくっていくのか、それの結果として完全雇用を量、質両面において達成するというためにはどういうものが必要なんだろうか。例えば、失業率の引下げというものが従来は雇用政策のターゲットであったわけでありますが、最近はこれを余り言わなく、むしろ就業率の引上げという言葉を使うようになってきました。これは妥当だというふうに思います。
例えば、失業者を減らすという場合に、働く人を増やすというのももちろんその一つでありますが、もう一つの方法は、職探しをあきらめてもらう、引退してもらう、あるいは専業主婦になってもらう、中にはニートとして自宅に引きこもってもらうというようなことになれば、この人たちは求職活動、職探しをしないわけですから、失業者としてもカウントされない、非労働力ですというふうになってしまう。これでは少子高齢化の社会において労働力、人々の個人の意欲、能力を発揮できるような社会としてはとても達成することができないわけでありまして、そこでは就業者の拡大というような、働くことのできる人たち、自立できる人たちをつくっていくというような、そのためには単に短時間雇用がまずいですねというようなことではなく、正に個人が選択できるような雇用形態の多様化といったものを促進していくというようなことも必要ではないかというふうに思っております。
こちらは、図表の7というのは、厚生労働省の雇用政策審議会の中で二〇一五年の労働力についての見通しをつくったものでありますが、現状のままが進行しますと二〇一五年で四百十万人ほど労働者が減りそうだと。その一方、企業の雇用慣行の見直し、あるいは雇用対策、さらには法律改正等々によって、この右側の労働市場への参加が進むとするならば百十万人の減少で済みますよと。三百万人ほど企業とかあるいは政府の対応によってこの労働力人口というのは増加させ得るんだというようなことで、そこでは正に働き方の柔軟性とか、あるいは労働時間についての柔軟性というようなものを促進することの重要性ということがいろんな世代にわたって共通して言えるんではないかというふうに思っております。
具体的な対策としまして、幾つかここでは掲げさせていただきました。まずは何よりも、やはり景気の回復というようなものと経済成長の維持というようなことが必要でしょうと。これがなければ、企業としてはどんなに雇用の拡大を願ったとしても、あるいは雇用の保障というものを願ったとしても実現することができない。企業が倒産してしまうというような状況では、なかなか均等という問題は進まないというふうに思っておりますので、これを進める必要があるだろう。
その上で、これもうお二人の先生から出てきております均衡処遇についての法律の強化というものが必要ではないかというふうに思っております。
その場合に、問題は、非正社員というものが、先ほども言いましたように多岐にわたっているということでありまして、パート労働法における均衡処遇の強化、現在審議会の方でも検討しているテーマでございますが、ここではやはり短時間労働者が対象というようなことになります。その一方、有期契約の労働者については、これは労働基準法の方で考えていかなければいけないというようなこと、また、派遣労働者についての均衡問題というのは労働者派遣法で取り扱わなければいけないということでありまして、法律が多岐にわたっているというようなことが一つ問題かというふうに私は思っております。
この点、それぞれの部署、まあ官僚の人たちも考えているというふうに思いますが、議会として、国会としてやるべきことというのは、それぞれ細かい個別法についてはこれはそれぞれの個別法に任せればいいということでありまして、全体の日本の労働市場をどういうふうなビジョンで持っていくのか、それについての基本法が必要なんではないかというふうに思っております。これについてはまた後で申し上げます。
三番目は、これは税、社会保障制度の改革ということで、ここではあえて働くことが損にならないような制度にしてほしいということであります。長く働いてしまうと、これ所得税払わなくちゃいけないとかというようなことが起こったり、あるいは年金についても同じようなことがあったりする。そして、ましてや、先ほどもお話がありましたように、事業主のスタンスから見れば、この社会保険料を払うというのが人件費の増加ということで、その人たちをなるべく回避したいというような問題が起こっているんじゃないかと思います。
四番目は、これは学校教育も含めた職業意識の向上。
そして五番目は、これはヨーロッパでも取られておりますし、私も今、社会保障制度、セーフティーネットの見直しというようなところで、この社会による自立支援、能力開発といったものが必要なんではないかというふうに思います。事後的にそこに弱者が現れてしまう、だからその人たちを守る、シェルターを保護するんだというようなことをやると。そのシェルターに入っていれば安心ですよというようなことになると、いつになっても自立することができないというような問題が起こってくるわけでありまして、シェルターの保護よりも、殻の保護よりもむしろ翼をいかに補強していくか。そのためには職業カウンセラーと、それと能力開発バウチャーの適切な組合せというものを考えていくということが必要ではないか。
さらには、地域の問題を考える上では、地域提案による地域のための雇用戦略というものをそれぞれの自治体が既に幾つかもうつくり上げてきているかと思います。そういったものを広げていくということが必要じゃないかと思います。
そして最後に、この個別対策の限界を痛感しておりまして、仕事と生活の調和のための推進基本法というものを制定するべきではないかというふうに思っております。こういうことを進めると、企業にとってはコストが増加するだけで産業の活性化につながらないんじゃないかというふうな御意見があります。私は全く逆の考え方をしておりまして、ワーク・ライフ・バランスという言葉がしばしば誤解されて使われている場合がある。私どもが考えておりますワーク・ライフ・バランスというのは、まず、仕事のやり方を改革する、あるいは働き方を見直すことにおいて職場における時間当たりの生産性を向上させるというようなことが必要であり、同時に、個人が私的生活を充実させるということが必要なんじゃないかと思います。
これまで、生産性というと、労働生産性、一人当たりの生産性というようなこと、これが議論されてきた。そうしますと、労働時間を延ばせば、残業をたくさんやれば一人当たりの生産性が上がるじゃないかというようなことであったわけでありますが、その結果として、逆に個人の私的な生活がバランスを失っていくというようなことが起こっているんじゃないか。だとすれば、やはり処遇についても、あるいはこの仕事の生産性についても、時間当たりということについて考えていく必要があるんじゃないか。
そういうことを全体としていろんな問題抱えているわけでありまして、省庁の枠を超えたような、あるいはそれぞれの担当部署の枠を超えたような基本法を国会で提起していただきますと役人もやりやすいんじゃないか、どちらの方向に向かっていくのかというようなことが明記されることの重要性というのがあるんではないかというふうに思います。そこでは、国と地方自治体とNPO、企業、国民の連携というものを明記させるということが必要じゃないかと思います。
どうも御清聴ありがとうございました。