伊藤基隆の発言 (経済・産業・雇用に関する調査会)

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○伊藤基隆君 今日はどうもありがとうございます。
 民主党・新緑風会の伊藤でございます。
 私は、この臨時国会の冒頭で安倍新総理の所信表明演説に対する代表質問を行いました。安倍総理の所信表明演説は、美しい国や片仮名が多いことが話題となりましたが、その経済政策は、小泉前内閣の構造改革を引き継ぎ、規制緩和や市場の競争原理を活用して成長を目指すとしています。一方、この間に生じた改革の痛みについては、勝ち組、負け組が固定化しないよう、再チャレンジが可能な社会を目指すというふうに述べています。
 私は、代表質問で格差問題を取り上げましたが、焼け野原から復興した戦後の日本の社会で、今日ほど所得の格差、大都市と地方の格差、持てる者と持たざる者の格差拡大を経験したことはありません。ワーキングプアや偽装請負にも触れましたが、雇用の面での格差拡大が将来日本の社会の中に階層の分化を生み出すのではないかと心配しています。
 しばらく前から、有名大学ほど学生の親の高収入がある傾向が指摘されています。最近では教育投資という言葉が使われますが、高収入と高学歴が結び付いて更に資産をも保有する階層が形成されつつあるように感じられます。一方で、ニートやフリーターと呼ばれる人々は、不安定な雇用形態から離脱できずに一生を送る可能性さえ出てきています。
 先週、アメリカの経済学者のミルトン・フリードマンが亡くなりました。国の関与を薄めた規制緩和と市場主義に重点を置くフリードマンの経済思想は、サッチャーやレーガンに採用されて、当時の英国や米国の経済・財政再建を成功させました。日本では、バブルの崩壊後、小渕内閣までの伝統的な景気対策が行き詰まった中で、小泉内閣の構造改革に影響を与えたわけであります。そういう一般新聞紙上での評価があるわけであります。
 しかし、構造改革、雇用における規制緩和は、格差拡大に伴う大きな社会問題を生み出してきています。一部では労働ビッグバンが叫ばれているようですが、経済成長の果実を一部の人だけに配分し、格差に泣く人々が増加する傾向は、今後、より強まるのではないでしょうか。
 安倍総理は、再チャレンジ支援策を推進し、ニートやフリーターの積極的な雇用を促進すると述べていますが、とても問題解決に至るとは思えません。セーフティーネットがあればとか、結果の公平ではなく機会の公平があればとする言い方は、市場主義の出口が弱肉強食の社会につながっていることをごまかしているだけなんだと、私は思うんです。
 こういうことをまず申し上げた上で、三人の参考人の皆さんに御質問いたします。
 まず、第一の質問でありますが、全国の総労働人口は約五千万人ですが、内訳は、正社員として働いている者は、正規雇用は約三千三百四十万人、パート、アルバイト、派遣等の非正規雇用は千六百六十万人です。労働者派遣法が制定された一九八五年は、総労働人口は約四千万人で、この間に約一千万人増加、正規雇用は三千三百四十万人でほぼ同数、非正規雇用は六百五十五万人で、この間に一千万人増加してきました。この二十年間で、ちょうど一千万人の総労働人口が増加しましたが、増加分はすべて非正規雇用ということになります。バブルがはじけた直後の一九九四年は、正規雇用が最も多いピークの年ですが、正規雇用は三千八百五万人、非正規雇用は九百七十一万人、現在と比べると、この十二年間で正規雇用が五百万人減り、非正規雇用が七百万人増加しています。
 終身雇用、年功序列賃金は、もう完全に過去のものです。バブル崩壊後、特に中高年層がリストラと直面する中で、労働市場の規制緩和が進んで、従来は正規雇用が担っていた職域が非正規雇用に置き換えられてきました。労働者派遣法の制定当時は、常用雇用の代替とならないよう、業務の専門性が考慮されて適用する業務を限定していましたが、三度の改正を経て、現在では偽装請負の隠れみのとしての役割さえ果たすような状況になっています。労働者派遣法の改正理由は、働き方の多様性に対応するため、ミスマッチの解消などと掲げられてきましたが、結局は、本音である安く雇用することだけを考えて、派遣労働導入時の理念など消え去ったと言えるのではないかと思っています。
 この状態では、少なくともGDPの六割程度を占める個人消費が伸びる可能性は低く、景気に与える影響も大きいはずです。私は、一体社会はだれのためにあるかという視点に立ったときに、働く者を大切にしないのでは政治に値しないと危機感を持つものです。三参考人の皆さんには、非正規雇用の現状についてどのような認識をお持ちになっているか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
 先ほど樋口参考人が、非正規雇用の未婚率の問題と職業技術の向上のチャンスが少ないということが挙げられています。私は、製造業の総合的な技術力の低下、正規雇用の労働者が少ないことから起こるのではないかと想定している不良製品とか製造物の危険性の発生など、日本の経済力の根幹が崩れ、また社会的な力といいますか、そういうものの弱体化が起こっているんじゃないかというふうに思いますが、御認識をお聞かせいただきたいと思います。
 次に、第二の質問ですが、バブル崩壊後の景気低迷期、一九九〇年代の後半期から数年間は企業の新卒者採用を極端に絞った就職氷河期と呼ばれたものがありました。たまたまこの不景気と新卒就業年齢が重なった人々にとっては大変な就職難が待ち受けて、そのままフリーターとなったケースも多いと聞いています。フリーターの数は二〇〇三年の二百十七万人をピークに漸減傾向にありますが、現在の二十五歳から三十四歳までの就職氷河期世代のフリーターには今更正規雇用への機会がほとんどないのが実態です。このままでは、男性は請負で、女性は登録型派遣として未熟練労働者として固定化される可能性が強まります。キャリア形成の面からは、均等処遇がままならないまま、勤続を重ねても賃金が上がらず、技能も評価されず、将来の見通しが立たないのが現実ではないでしょうか。この就職氷河期世代には特段の対策が必要なのではないかと考えますが、三人の参考人の方々の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
 そこで城参考人にお伺いいたしますが、政府は、再チャレンジ推進会議で本年五月三十日に中間取りまとめを行って、その中で具体的なフリーター等の関連する対策について、一に、フリーターの経験を企業の採用評価に反映させる仕組みの整備、二に、就職氷河期にあったフリーター等を国家公務員に中途採用する、三に、非正規労働者の正規労働者への転換制度導入、四に、年長フリーターに対しキャリアコンサルティングの実施、能力評価等を行う再チャレンジ機会拡大プランなどが挙げられていますが、現実問題として果たして効果が見込まれるのかどうか、どのようにお考えか評価をお聞かせいただきたいと思います。
 先ほど城参考人は、リクルートCVについて説明されまして、なるほどリクルートなるがゆえの制度だなというふうに私も大変感じたところでございます。しかし、これらの制度を企業が取り入れるとすれば、その意思があるか、長期的な企業戦略又は安定的な発展への意欲と実行力が伴うのか、多くの障害があってなかなか実現しないんじゃないかと思います。
 私は、城さんに聞きたいのは、企業外の職業訓練は実践に役立つのか、非正規を正規雇用にすることは可能なのか、現実に中途で採用できるのか、その際の賃金体系はどのような問題があるかについてお聞かせいただきたいと思いますが、城さんは、非正規雇用を正規雇用にすること又は中途採用の問題について、正社員としてのキャリアの積み上げが求められること、それに対するサポートが必要というふうにおっしゃっていました。果たしてどんなサポートが可能なのかと思います。さらに、職務給の問題と将来的には同一労働同一賃金との一体性というものが述べられたと思いますが、職務給の定着、一般化は二十年ぐらい掛かるということでありました。
 しかし、私は、その職務給の問題、労働に対する適正単価が払われるべきだと。労働条件の不利益変更に関するルールを変更すべきだということも述べられましたが、世の中の賃金体系というのは、私は労働組合をずっとやってきたんですが、善意のというか発展的な対応というのは企業から起こってきません、なかなか。リクルートの例というのは、私は驚くべきことだと思っています。ということからすれば、当面、就職氷河期世代に対するもの、また現状の当面の対応というものをどう取りながら、将来的には、やはり私は職務給、同一労働同一賃金が進むべき道だというふうには思っておりますが、当面の対策が非常に重要じゃないかというふうに今考えています。
 さらに、樋口先生にお伺いします。
 日本の議会としては日本の雇用制度にかかわる基本法の制定ということをおっしゃられました。しかし、今、労働基準法も労働組合法もほとんど守られていません。こういう日本の法治国家としての非常に重大なところが守られていないことについて大変苦労しました。例えば、労働基準法は、前にも言いましたが、労働組合の正に異常な努力と一人一人の労働者の勇気によって辛うじて守られるというようなことになっておりまして、これが実は、労働組合の結集率も弱くなってきておる現状の中で大変なもう格差を生んでくる、交渉力の低下、まず相手にされないような感じということになってきているんじゃないかと。
 これは私は、先ほど申し上げたような社会的力の低下ということにつながっていきつつあるというふうに思いますので、その基本法の考えについてもう少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。
 以上です。

発言情報

speech_id: 116514061X00220061122_015

発言者: 伊藤基隆

speaker_id: 4563

日付: 2006-11-22

院: 参議院

会議名: 経済・産業・雇用に関する調査会