川上高司の発言 (安全保障委員会)

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○川上参考人 拓殖大学の川上でございます。
 今回の在日米軍再編協議は、私は、二つの大きな成果が上がったというぐあいに考えております。一つ目は、米軍再編に対して、日本政府は、沖縄を初めとする在日米軍基地を抱える自治体の負担を大幅に減らしたこと、それから二つ目は、この協議を通じて日米同盟が強化、発展することになったこと、そういった画期的な交渉であったと私は考えております。そして、この二つの成果は、この米軍再編特別法案を通すことによりなし遂げられるというぐあいに私は考える次第であります。
 今からその経緯を簡単に説明いたしまして、米軍再編特別法案の必要性の理由を述べたいと思っております。
 今回の米軍再編のアメリカ側の思惑それから日本側の思惑のそもそも論から御説明したいと思っております。
 まず、アメリカ側から見た米軍再編協議の理由は、二〇〇一年九月の米国同時多発テロで、アメリカは、世界の安全保障環境が大きく変わったということを認識し、テロを最大の脅威として国防戦略を立て直したことに始まるわけでございます。テロは、世界じゅう、いつどこで発生するか予測のつかないモバイル型の脅威であります。したがいまして、アメリカは、そういったモバイル型のテロの脅威に対しまして、世界じゅうのいかなる場所でもアメリカ軍を機敏に、敏速に投入するために米軍再編を行ったわけであります。そして、その作業の一環が、この在日米軍の再編にほかならなかったわけでございます。
 米軍再編協議に際しまして、アメリカ側には二つのねらいがあったと思っております。一つ目は、キャンプ座間に所属する在日米軍司令部を改編すること、二つ目は、韓国の対外政策がアメリカよりも中国寄りになりつつある中で、アメリカは、台湾海峡などでの危機の際、韓国のアメリカ軍基地を確実に使えるかどうかとの懸念を抱くようになり、その結果、韓国のアメリカ軍を段階的に縮小し、かわりに日本の基地を確実に使えるようにしたいというふうなことだと思っております。
 これに対して日本側のねらいというものは、在日米軍再編協議を基地負担の軽減を実現する千載一遇のチャンスとしてとらえ、基地を抱える自治体から負担を軽減し、一方で日米同盟の強化を図った、いわゆる一石二鳥の効果を図ったわけでございます。
 この在日米軍再編協議は、どちらかといえば、日本側が主導権をとって積極的に交渉を行って成果を上げたと言っていいと私は思っております。
 この成果は、在日米軍再編協議のバランスシートで見れば一目瞭然となると考えております。
 二〇〇四年九月に小泉前総理がブッシュ大統領との会談で取り交わした約束が、抑止力の維持と負担の軽減でありました。そこで、在日米軍再編協議の成果をこの抑止力の維持と負担軽減で見てみようと思っております。抑止力の維持と負担軽減は、抑止力それから負担軽減に因数分解ができ、それぞれのバランスシートで評価することができるわけであります。
 まず、抑止力のバランスシートであります。
 これをアメリカ軍独自の動きから見ますと、キャンプ座間に所属する在日米陸軍司令部が高い機動性と即応性を有し、かつ、有事の際の統合作戦の指揮所としての統合任務が可能な司令部に改編されることは、抑止力の維持強化となるわけであります。
 これに対して、同じように統合任務部隊を編成できる第三海兵機動展開部隊、3MEFの司令部などのグアム移転は、抑止力の低下につながりかねないというふうな声がありました。しかしながら、グッドマン海兵隊太平洋司令官が、実戦部隊である三一海兵遠征隊、31MEUを沖縄に残すことにより抑止力を維持し、かつ、モビリティーのある司令部機能をグアムへ移設させることにより、地元からの負担軽減を目指したと指摘しているように、実戦部隊が残るため、抑止力の低下とはならないというぐあいに考えられると思います。
 次に、日本側から見ますと、透明性が確保されないままで軍事力を毎年一〇%以上の割合で増強する中国、核を保有することになるかもしれない北朝鮮、この軍事的脅威に対する抑止力は、アメリカ軍なくしては十分に成立いたしません。
 アメリカはテロといったグローバルな脅威の方をリージョナルな脅威より優先させる傾向にあり、日本は何としてもアメリカ軍を日本に引きつけておかねば、独自の安全保障は十分に確保できない。そのために在日米軍再編協議で講じられた措置は、自衛隊と米軍との一層のインターオペラビリティーの向上化でありました。そのことにより、日本の抑止力は維持強化されることになるわけであります。
 その措置を具体的に述べますならば、第一に、冷戦後初めて、日米間に共通の戦略目標が設定され、それを達成するために日米の役割、任務、能力の分担が新たに設置されたことであります。これにより、自衛隊と米軍が十分な調整を行いながら、共通で多様な問題に実効的に対処する上で、協力することを明らかにしたわけであります。
 第二は、司令部機能の強化であります。
 座間に在日米陸軍司令部が改編されるのに伴いまして、陸上自衛隊の中央即応集団司令部が新設されます。このことにより、陸上自衛隊とアメリカ陸軍とのいわゆる肌と肌との接触が初めて可能となり、司令部間の連携強化、情報交換、協力体制、そういったものが強化されるわけであります。また、陸上自衛隊と共同作戦の運用がより可能になると考えられます。
 横田に航空自衛隊航空総隊司令部を移設してアメリカ第五空軍司令部と併置することになりますが、これによって、日本の防空及びBMDにおける情報共有を初めとする司令部組織間の連携が強化される。
 同じく、横田に共同運用調整所が創設されることで、統合幕僚監部と在日米軍司令部との間の情報の共有化が図られ、日本防衛の共同対処機能を果たすことにもなります。
 第三に、自衛隊及び米軍における施設の共同使用でありまして、これらによって、自衛隊と米軍の融合化が行われ、抑止力が向上されることになるわけであります。
 まず、自衛隊の米軍基地使用に関しましては、横田の米軍基地へ航空自衛隊の航空総隊司令部及び関連部隊が移動する、それから、キャンプ座間へ陸上自衛隊の中央即応集団司令部が移動する、厚木基地へ海上自衛隊のEP3、OP3、UP3飛行隊が岩国から移駐する、陸上自衛隊訓練のため、キャンプ・ハンセンを使用するというふうなことでございます。
 逆に、米軍が自衛隊の基地を使用することに関しましては、米軍のKC130十二機が海上自衛隊鹿屋基地へ定期的なローテーションを展開する、それから、緊急時における航空自衛隊新田原及び築城基地の米軍使用、それから三番目に、米軍訓練の移転というふうなことが挙げられるわけでございます。
 次に、負担軽減のバランスシート、これを考えてみたいと思います。
 在日米軍再編協議の結果、当然ながら、負担が軽減される自治体、それから負担がふえる自治体が出てくるわけでございます。
 例えば、沖縄の場合は米軍再編で大きく影響を受ける地域でございます。沖縄からは、在沖海兵隊約八千人及び家族九千人のグアム移転は目に見える地元の負担軽減となります。また、普天間飛行場の返還、県南部米軍施設の全面、一部返還は、沖縄中南部の住民にとっては負担軽減となりますが、北部の住民の皆さんには負担がふえるわけになります。特に、普天間飛行場の代替施設の移転先である名護市を初めとする自治体には多大の負担増となるわけでございます。
 厚木基地に関しましては、空母艦載機五十九機の岩国基地への移転があります。厚木からは負担が軽減されますが、当然ながら、岩国では負担がふえる。また、同時に普天間の空中給油機KC130十二機が岩国へ移動するわけですが、この移動から沖縄からは負担が減りますが、岩国では負担がふえる。このため、少しでも岩国から負担を軽減するために、岩国の海上自衛隊EP3、OP3、UP3飛行隊を厚木へ移駐させる。さらに、KC130十二機を海上自衛隊鹿屋基地及びグアムに定期的にローテーションで展開させ、少しでも岩国に負担を減らす努力をする。しかし、一方で、鹿屋の負担はふえることになる。
 このように、米軍再編の結果として負担が軽減された自治体はプラスとなりますが、逆に負担がふえることとなる自治体のバランスシートのマイナスをどうプラスで埋め合わせるか、これが問題となってくるわけであります。
 ここに、米軍再編特別法案の必要性が出てくると私は考えております。
 その埋め合わせる方法として、在日米軍再編により負担のふえる自治体の理解を得ることが重要なことは言うまでもありません。そこにおいては、地元が米軍再編を受け入れようとするインセンティブをいかに高めるかが重要でありまして、その方法論としては、強制的な法規もありますが、私は論外であると思っております。
 再編の実施に伴う基地負担の増加というマイナス面を地域振興策によるプラスで補うという米軍再編法案のやり方が現実的な方法であると考えられます。負担が大きくなるが、米軍再編という国の防衛に対して大所高所から前向きに協力する市町村に対しましては、国として配慮することは当然だと言えるのではないでしょうか。
 そのほかに、米軍再編法案の必要な点が二つあります。
 二つ目に重要なのが、地元からの負担を減らすためには、これがパッケージディールであるということを理解しなくちゃいけないと思っております。
 在日米軍の七五%が集中する沖縄から少しでも多くの米軍を削減することは、沖縄県民の長年の悲願であったわけでございます。日本政府は、米国に主体的、積極的に働きかけて、沖縄から大規模な米軍の削減、それから米軍の土地の返還の合意を今回取りつけました。今回を逃しましたら、このようなチャンスはいつ来るかわからない状況であります。
 それを実現させる再編実施のための日米ロードマップでは、普天間基地代替飛行施設の完成に向けた具体的な進展があること、これに加えまして、グアムにおける所要の施設及びインフラ整備のための日本の資金的貢献が取り決められているわけであります。その後に、沖縄からグアムへ第三海兵機動展開部隊の移転がなされ、その展開が行われた後に、普天間基地を初めとする嘉手納飛行場以南の相当規模の土地の返還がなされるというふうなパッケージディールになっているわけでございます。
 したがいまして、グアムのインフラ整備を行う資金調達をするための法的根拠となるこの米軍再編特別法案が成立せねば、すべてが無駄になってしまうということになってしまうわけでございます。
 また、海兵隊八千人とその家族九千人がグアムへ移転するためには、グアムにおけるインフラなどの大規模な整備が必要となり、これをアメリカのみで行った場合は、長期間を要することになり、沖縄の負担軽減が早期には進まないおそれがあるわけであります。このため、グアム移転を早期に実現するため、日本も応分の負担を行うことは合理的であると考えられます。
 さらに、グアム移転経費を民間スキームで行うことにより、在沖縄海兵隊のグアム移転に係る日本側の負担を将来的には日本に戻ってくる資金で賄うことは、アイデアとしては非常に合理的ではないでしょうか。民間資金を使えば使うほど税金を投入する額も減ることになります。こうした努力を期待したいと私は思っております。
 最後になりますが、この米軍再編特別法案が必要な理由は、三年半もかけましてようやく日米間で合意した在日米軍再編協議の合意事項を履行できなかった場合、アメリカ側の日本に対する多大な不信感を抱かせることになり、日米同盟に深い傷がいってしまうことになるということでございます。
 今後、ますます不透明化する我が国の戦略環境に対しての備えをしなくてはならないという観点からも在日米軍再編協議の合意事項は履行せねばならず、そのための必要条件としての米軍再編法案は重要であります。
 以上で私の参考人発言を終わらせていただきます。(拍手)

発言情報

speech_id: 116603815X00720070410_006

発言者: 川上高司

speaker_id: 13712

日付: 2007-04-10

院: 衆議院

会議名: 安全保障委員会